ローが船から駆け下りようとしているところへ、シャチとペンギンが帰って来ました。
雨に降られてしまったせいで、頭からつま先までびしょ濡れです。
そして、なぜか、びしょ濡れの洗濯籠を抱えていました。
彼らは、外に出ようとしているローを見つけると、少し驚いた顔をした後に、矢継ぎ早に文句を言い始めました。

「キャプテン！！なまえを叱ってくださいよ！！
　アイツ、洗濯物干したまんまっすよ！！」
「とりあえず、俺達が運べる分だけ先に持ってきたんですけど
　まだ外にほとんど残ってるんで、アイツ呼んできてやらせてください。」

苦情を聞いたローは、ペンギンとシャチがびしょ濡れの洗濯籠を抱えていた理由をすぐに理解しました。
もう、嫌な予感しかしません。

「どけ！」

ローは、ペンギンとシャチを壁に押しのけ、昇降口を駆け下りました。
何が起こったのだろう——。
ペンギンとシャチはお互いに顔を見合わせて首を傾げます。
ですが、長い付き合いのローの様子がおかしいことは、分かりました。
きっと、ただごとではないのだろうと判断した彼らも、すぐにローの後を追いかけます。
昇降口を駆け下りたローは、なまえがいつも洗濯物を干しているスペースまで走りました。
そこには、洗濯物がほとんど残っていて、激しくなってきた雨に打たれてびしょ濡れになっていました。
ペンギンとシャチが言っていた通りです。
なまえに悪い何かが起こった——。
ローが漠然と抱えていた嫌な予感は、ついに確信に変わりました。

「何かあったんですか？」

ペンギンが後ろからローに声をかけました。
ローが勢いよく振り返ります。

「なまえが消えた…！」
「え！？」
「計画がバレたのかもしれねぇ！！探せ！！すぐにだ！！！
　町の住人の護衛を残して、他は全員でなまえの捜索だ！！！」

ローが叫びました。
事態を把握したペンギンとシャチはすぐに返事をして、慌てた様子で船内へ駆け込みました。

「クソ…ッ！」

びしょ濡れになった洗濯物に視線を戻したローは、悪態を吐き、乱暴に髪を掻きました。
ほんの数十秒外に出ていただけで、髪はあっという間にびしょ濡れになっています。
もしも、本当にグロスがなまえを攫ったとしたのなら、屋外に出されていたら危険です。
すべて、計画通りのはずでした。
それがどうして——。

「キャプテン！！護衛を残して、他全員連れてきました！
　指示をください！！」

すぐにペンギン達が集まってきました。
振り返ったローは、船員達の焦りと不安を映す目を見渡しました。
なまえを無事に見つけたいのは、彼らも同じです。
ローは、船員達を数名のグループに分けて、それぞれに子電伝虫を持たせると、探す場所や情報収集の指示を出しました。
ローもペンギン達も、必ずなまえを無事で見つけ出すつもりです。
なぜなら、なまえは自分達の大切な仲間なのですから——。