◇No.32◇罠と不吉な空です
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ポーラータング号を停泊させている裏の港には、たくさんの洗濯物が干してありました。
町の住人達も船内で寝泊まりをするようになり、ポーラータング号の甲板の広さだけでは場所が足りなくなっていたのです。
冬島の寒さに凍える船員達は、濡れた洗濯物を触るのを嫌がるので、この島にいる間は、なまえが洗濯係を任命されていました。
カルラや数名の町の住人は、大量の洗濯物を見て、手伝うと申し出てはくれましたが、ローの指示は絶対であるなまえが断固として拒否したという経緯もあります。
今日は、午後から雨になると航海士でもあるベポに言われて分かっていたので、昨日の夜のうちから洗濯物を干し始めていました。
そして今、なまえは、雨が降る前に洗濯物を取り込もうとしているところでした。
「ねぇ、なまえちゃん!!」
なまえがハンガーにかかっていたつなぎを洗濯籠に入れていると、後ろから声をかけられました。
振り返ったなまえの元に、血相を変えて走ってきたのは、以前、ローと深いオトモダチだと答えた若い女性でした。
ガリーナです。
彼女は、なまえの目の前までやって来ると、息を切らしたまま、焦ったように言いました。
「ベポが…!!森の中に入って迷子になったみたいなの…!!」
「ベポは今日は街で買い物です。森へ行きましたか?」
「そうなの!!森に木の実を探しに行っちゃって!!
それでいつまでも帰ってこないから、ローがなまえちゃんに探しに行ってもらうように
伝えてくれって、私が頼まれたのよっ。」
「そうですか。分かりました。
どこの森ですか?」
「あっちの奥にある森なの。」
ガリーナが指さしたのは、エレン達の故郷をさらに南へ行った先にある深い森でした。
もちろん、これはガリーナの罠です。
ベポは迷子にはなっていませんし、そもそも森には近づいていません。
昨日、ローに頼まれたお使いの帰りに聞いた世にも珍しい暖かいかき氷というのを探して、街を歩き回っているところです。
その噂も、いつも一緒にいるベポとなまえを引き離し、嘘を信じさせるためのガリーナの作戦でした。
ですが、人を疑うことをしないなまえは、焦るガリーナの言葉を信じてしまいます。
「森の中に行ったら、土とかでそのコートが汚れちゃうわ。
ローからもらった大切なコートを台無しにはしたくないでしょう?」
女性に指摘され、なまえは自分が着ているコートを見下ろしました。
そしてすぐに、答えを出します。
「はい、汚したくはありません。汚さないようにします。」
「そんなの無理だから、私が預かっててあげるよ。」
女性はとても人のよさそうな笑みを浮かべて言いました。
「そうですか。それは助かります。
ありがとうございます。」
なまえは素直に礼を言って、コートを脱ぎました。
その途端、ガリーナはひったくるようにコートを奪いました。
「さ!!早く!!森の中へ行って!!」
ガリーナは、なまえの背中を強引に押しました。
よろけるように前のめりになって、走り出したなまえの背中にガリーナが続けます。
「ローがベポを見つけるまで帰ってきたらダメだって!!
分かった?絶対に見つけるまで帰って来ちゃダメだよ!!」
「はい、わかりました。」
なまえは振り返って答えました。
「いちいちこっち見なくていいから!!とにかく走って!!
そして、雨に濡れても、帰って来ちゃダメだよ!!絶対に!!」
「はい、わかりました。」
今度こそ、なまえは森へ走りながら答えました。
その背背中を見送るガリーナは、作戦がうまくいったことに満足して、意地悪く口の端を上げていました。
町の住人達も船内で寝泊まりをするようになり、ポーラータング号の甲板の広さだけでは場所が足りなくなっていたのです。
冬島の寒さに凍える船員達は、濡れた洗濯物を触るのを嫌がるので、この島にいる間は、なまえが洗濯係を任命されていました。
カルラや数名の町の住人は、大量の洗濯物を見て、手伝うと申し出てはくれましたが、ローの指示は絶対であるなまえが断固として拒否したという経緯もあります。
今日は、午後から雨になると航海士でもあるベポに言われて分かっていたので、昨日の夜のうちから洗濯物を干し始めていました。
そして今、なまえは、雨が降る前に洗濯物を取り込もうとしているところでした。
「ねぇ、なまえちゃん!!」
なまえがハンガーにかかっていたつなぎを洗濯籠に入れていると、後ろから声をかけられました。
振り返ったなまえの元に、血相を変えて走ってきたのは、以前、ローと深いオトモダチだと答えた若い女性でした。
ガリーナです。
彼女は、なまえの目の前までやって来ると、息を切らしたまま、焦ったように言いました。
「ベポが…!!森の中に入って迷子になったみたいなの…!!」
「ベポは今日は街で買い物です。森へ行きましたか?」
「そうなの!!森に木の実を探しに行っちゃって!!
それでいつまでも帰ってこないから、ローがなまえちゃんに探しに行ってもらうように
伝えてくれって、私が頼まれたのよっ。」
「そうですか。分かりました。
どこの森ですか?」
「あっちの奥にある森なの。」
ガリーナが指さしたのは、エレン達の故郷をさらに南へ行った先にある深い森でした。
もちろん、これはガリーナの罠です。
ベポは迷子にはなっていませんし、そもそも森には近づいていません。
昨日、ローに頼まれたお使いの帰りに聞いた世にも珍しい暖かいかき氷というのを探して、街を歩き回っているところです。
その噂も、いつも一緒にいるベポとなまえを引き離し、嘘を信じさせるためのガリーナの作戦でした。
ですが、人を疑うことをしないなまえは、焦るガリーナの言葉を信じてしまいます。
「森の中に行ったら、土とかでそのコートが汚れちゃうわ。
ローからもらった大切なコートを台無しにはしたくないでしょう?」
女性に指摘され、なまえは自分が着ているコートを見下ろしました。
そしてすぐに、答えを出します。
「はい、汚したくはありません。汚さないようにします。」
「そんなの無理だから、私が預かっててあげるよ。」
女性はとても人のよさそうな笑みを浮かべて言いました。
「そうですか。それは助かります。
ありがとうございます。」
なまえは素直に礼を言って、コートを脱ぎました。
その途端、ガリーナはひったくるようにコートを奪いました。
「さ!!早く!!森の中へ行って!!」
ガリーナは、なまえの背中を強引に押しました。
よろけるように前のめりになって、走り出したなまえの背中にガリーナが続けます。
「ローがベポを見つけるまで帰ってきたらダメだって!!
分かった?絶対に見つけるまで帰って来ちゃダメだよ!!」
「はい、わかりました。」
なまえは振り返って答えました。
「いちいちこっち見なくていいから!!とにかく走って!!
そして、雨に濡れても、帰って来ちゃダメだよ!!絶対に!!」
「はい、わかりました。」
今度こそ、なまえは森へ走りながら答えました。
その背背中を見送るガリーナは、作戦がうまくいったことに満足して、意地悪く口の端を上げていました。