◇No.27◇私は無敵ではありません
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無事に生き残った住人達に、燃え尽きた自分達の町を嘆く暇はありませんでした。
冬島の気候の中、住むところがないというのは死活問題です。
この町で唯一の診療所だったエレンの実家も燃えて全壊してしまった今、怪我や火傷を負った住人は中心街にある総合病院に運ばれました。
既に引っ越していなくなっていた住人が多い集落は、海賊が放った火の被害を免れていたことを知り、怪我はあるものの比較的軽症だった住人達は、しばらくはそこで寒さをしのぐことに決まりました。
病院には行かないと頑固なエレンも、カルラ達と一緒に集落に向かうようです。
「うちの息子のせいでこんな恐ろしいことに…。
本当に…、どう謝ったらいいのか…。申し訳、ありません…っ。」
頭や腕、脚に包帯を巻かれていく町の住人達に、カルラは深く頭を下げました。
その身体は、小刻みに震えています。
愚息がしでかしたとんでもないことは、彼女が1人で抱え込むにはあまりにも大きすぎたのです。
死人が出なかったのは、唯一の救いでした。
ですが、町の住人達の中に、怒っているものはいませんでした。
でも、許している、というわけでもありません。
ただただ、諦めている——というのが、正しい表現でした。
「気にするな、カルラ。どうせ、俺達ももうそろそろこの町を出て行くしかなかったんだ。
これはきっと、いい機会だ。」
「あぁ、そうさ。これで、心置きなく住み慣れた町を離れられるってもんよ。」
「俺も、やっと諦めがついたよ。」
町の住人達は、そう言って、カルラを慰めました。
そして、自分達の心の傷さえも、慰めようとしていたのです。
「俺達も帰るぞ。」
ローが船員達に声をかけました。
「アイアイキャプテン。」
力なく答えて、船員達も裏の港へ向かって歩き出したローの後をのろのろと追いかけます。
本当なら、今頃は、カジノで豪遊しているはずでした。
まだお昼なので遊ぼうと思えば間に合う時間ではありますが、今から中心街へ向かう元気は、流石にもう残っていません。
「なまえ、身体におかしいところはない?」
ベポが訊ねました。
「はい、問題ありません。」
「ったく、どんだけ心配したと思ってんだ。」
ペンギンが呆れたように言いました。
ですが、なまえは当然のように答えます。
「私は心配しませんでした。」
「うわ~、無敵ロボの自慢発言だぜ?」
シャチが意地悪く言って、なまえをからかいます。
すると、なまえは不思議そうに首を傾げました。
「私は無敵ではありません。無敵は、仲間です。」
「仲間?」
「はい、ロー達は必ず仲間を助けます。そして、私はロー達の仲間です。
だから、心配はありませんでした。」
「な…、なんだよ、それ!?
自分が助けに行くとかカッコいいこと言っておいて、
結局、アタシ達頼みだったのかよ!!」
イッカクが、大声で文句を言いました。
ですが、頬は少し染まり、なんだか嬉しそうです。
それは、他のハートの海賊団の船員達も同じでした。
でも本当は、彼らはなまえの考えなんて、とっくに気がついていました。
だって、瓦礫を撤去して、地下に閉じ込められているなまえを見つけたとき、ロー達の顔を見上げた彼女は、ホッとしたというよりも『待っていた。』という表情をしていたのを、たくさんの船員が見ていました。
地下に逃げ込んだのもきっと、閉じ込められることは想定の上で、ロー達が必ず自分を見つけてくれると知っていたからなのでしょう。
あのビームは、地下から逃げるためのものは無かったということです。
あれは、自分はここにいる、というロー達へのメッセージだったのだと、最初から、彼らは知っていました。
分かっていました。
なぜなら、仲間ですから。
でも、少しだけ、文句を言いたかっただけなのです。
とても疲れたし、それに、とてもとても、心配をさせられたから——。
「なまえ、お前のせいで俺達はくたくただ。
罰として、お前が飯作れ。鮭おにぎりがいい。」
ローがなまえに言いました。
「それいいね!!俺、魚!!」
「俺、ステーキ!!」
「ミートソースパスタ!!」
「焼肉丼!!」
ベポ、ペンギンやシャチ達も順に昼食のリクエストを出し始めました。
「はい、分かりました。皆さんの食べたいものを私が作ります。」
「やったーーーっ!!」
今日は仕事をサボれる、とコック達も大喜びです。
ガッツポーズをした海賊達の嬉しそうな声が、真っ青な空に響き渡りました。
身体は疲弊しきっていましたが、なぜかとても清々しい気持ちでいっぱいでした。
冬島の気候の中、住むところがないというのは死活問題です。
この町で唯一の診療所だったエレンの実家も燃えて全壊してしまった今、怪我や火傷を負った住人は中心街にある総合病院に運ばれました。
既に引っ越していなくなっていた住人が多い集落は、海賊が放った火の被害を免れていたことを知り、怪我はあるものの比較的軽症だった住人達は、しばらくはそこで寒さをしのぐことに決まりました。
病院には行かないと頑固なエレンも、カルラ達と一緒に集落に向かうようです。
「うちの息子のせいでこんな恐ろしいことに…。
本当に…、どう謝ったらいいのか…。申し訳、ありません…っ。」
頭や腕、脚に包帯を巻かれていく町の住人達に、カルラは深く頭を下げました。
その身体は、小刻みに震えています。
愚息がしでかしたとんでもないことは、彼女が1人で抱え込むにはあまりにも大きすぎたのです。
死人が出なかったのは、唯一の救いでした。
ですが、町の住人達の中に、怒っているものはいませんでした。
でも、許している、というわけでもありません。
ただただ、諦めている——というのが、正しい表現でした。
「気にするな、カルラ。どうせ、俺達ももうそろそろこの町を出て行くしかなかったんだ。
これはきっと、いい機会だ。」
「あぁ、そうさ。これで、心置きなく住み慣れた町を離れられるってもんよ。」
「俺も、やっと諦めがついたよ。」
町の住人達は、そう言って、カルラを慰めました。
そして、自分達の心の傷さえも、慰めようとしていたのです。
「俺達も帰るぞ。」
ローが船員達に声をかけました。
「アイアイキャプテン。」
力なく答えて、船員達も裏の港へ向かって歩き出したローの後をのろのろと追いかけます。
本当なら、今頃は、カジノで豪遊しているはずでした。
まだお昼なので遊ぼうと思えば間に合う時間ではありますが、今から中心街へ向かう元気は、流石にもう残っていません。
「なまえ、身体におかしいところはない?」
ベポが訊ねました。
「はい、問題ありません。」
「ったく、どんだけ心配したと思ってんだ。」
ペンギンが呆れたように言いました。
ですが、なまえは当然のように答えます。
「私は心配しませんでした。」
「うわ~、無敵ロボの自慢発言だぜ?」
シャチが意地悪く言って、なまえをからかいます。
すると、なまえは不思議そうに首を傾げました。
「私は無敵ではありません。無敵は、仲間です。」
「仲間?」
「はい、ロー達は必ず仲間を助けます。そして、私はロー達の仲間です。
だから、心配はありませんでした。」
「な…、なんだよ、それ!?
自分が助けに行くとかカッコいいこと言っておいて、
結局、アタシ達頼みだったのかよ!!」
イッカクが、大声で文句を言いました。
ですが、頬は少し染まり、なんだか嬉しそうです。
それは、他のハートの海賊団の船員達も同じでした。
でも本当は、彼らはなまえの考えなんて、とっくに気がついていました。
だって、瓦礫を撤去して、地下に閉じ込められているなまえを見つけたとき、ロー達の顔を見上げた彼女は、ホッとしたというよりも『待っていた。』という表情をしていたのを、たくさんの船員が見ていました。
地下に逃げ込んだのもきっと、閉じ込められることは想定の上で、ロー達が必ず自分を見つけてくれると知っていたからなのでしょう。
あのビームは、地下から逃げるためのものは無かったということです。
あれは、自分はここにいる、というロー達へのメッセージだったのだと、最初から、彼らは知っていました。
分かっていました。
なぜなら、仲間ですから。
でも、少しだけ、文句を言いたかっただけなのです。
とても疲れたし、それに、とてもとても、心配をさせられたから——。
「なまえ、お前のせいで俺達はくたくただ。
罰として、お前が飯作れ。鮭おにぎりがいい。」
ローがなまえに言いました。
「それいいね!!俺、魚!!」
「俺、ステーキ!!」
「ミートソースパスタ!!」
「焼肉丼!!」
ベポ、ペンギンやシャチ達も順に昼食のリクエストを出し始めました。
「はい、分かりました。皆さんの食べたいものを私が作ります。」
「やったーーーっ!!」
今日は仕事をサボれる、とコック達も大喜びです。
ガッツポーズをした海賊達の嬉しそうな声が、真っ青な空に響き渡りました。
身体は疲弊しきっていましたが、なぜかとても清々しい気持ちでいっぱいでした。