◇No.23◇凍える島へやって来ました
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暖炉の奥で、熱を放つ薪がパキッパキッと音を立てていました。
オレンジ色の灯りに包まれたリビングは暖かく、窓の向こうの雪景色とは別世界のようです。
ソファや、ふわふわのカーペットの上、思い思いの場所に座ったハートの海賊団の船員達が、ホットミルクを貰って一息ついていると、リビング階段からカルラに連れられて、なまえが降りてきました。
水で濡れてしまった白いつなぎはまだ乾いていないので、なまえは、ウール生地の白いセーターと柘榴色の濃い赤のロングスカートに着替えていました。
「おー、ピッタリじゃねぇか。よかったな。それでだいぶ暖かそうだ。」
なまえを見て、イッカクが言いました。
「えぇ、本当に。私の若い頃の洋服をとっておいてよかったわ。」
カルラがホッとしたように息を吐きました。
海賊と子供が睨み合うおかしな現場に飛び出してきて、全てを悟ってしまった彼女は、エレンの母親でした。
あの後、すぐに頭を下げた彼女に、お詫びに着替えと食事を用意すると言われ、本当に身体が凍ってしまいそうだったハートの海賊団の船員達は、その好意に甘えることにしたのです。
カルラがハートの海賊団の船員達を連れて来た家は、廃村にしか見えなかった山のふもとの田舎町のさらに奥にありました。
こじんまりとした小屋のような家ばかりが立ち並ぶ中、エレンの実家は一際立派でした。
エレンの父親で、この街の唯一の医者であるグリシャが、自宅を改装し、半分を診療所として使っているのです。
ですが、そのグリシャも一昨日から、月に1回の中心街への往診に出かけていて、帰ってくるのは明後日以降を予定しています。
母親1人で、無鉄砲な息子のエレンを見張り続けることが出来るわけもなく、先刻のような驚きの出来事になってしまったようでした。
カルラは、なまえに適当に座るように言うと、キッチンへと向かいました。
「なまえさんにもホットミルクを出すわね。温まるわよ。」
「いいえ、私は飲食は出来ないので、必要ありません。」
なまえに言われて、カルラが立ち止まり振り返ります。
「あぁ、そっか。なまえさんはロボットだったわね。
どこからどう見ても綺麗なお姉さんだから、つい忘れちゃってたわ。」
カルラが苦笑すると、ハートの海賊団の船員達からも「分かる、分かる!」と同意の声と共にドッと笑いが上がりました。
「なまえ、こっち来いよ!ソファ、デカくて気持ちいいぞ!」
ベポがなまえに手招きしました。
素直にやってきたなまえを、ベポは自分とローの間に押し込むように座らせました。
白くまのベポと長身のローが座っていても、余裕のある大きなソファです。
なまえも、今まで感じたことのない感触に興味を持ったのか、ソファの座席を手のひらで押したり引いたりし始めました。
「なまえさん、うちの馬鹿息子がとんでもないことをして、
本当にすみませんでした。皆さんにも、気分を害してしまい
改めて、頭を下げさせてください。申し訳ありませんでした。」
なまえの前に立ち、カルラが頭を下げました。
2階の部屋で着替えを借りるときに、既に謝罪はしていたのですが、これはハートの海賊団の船員、皆に対しての謝罪でもありました。
すると、暖炉の方で、バンッと大きな音がしました。
罰として暖炉の薪をくべる係を母親に任命されたエレンが、暖炉の奥に薪を乱暴に放り投げたのです。
「なんで母さんが謝るんだよ!!そんなやつらに謝るなよ!!」
暖炉の前に立つエレンが、悔しそうに叫びました。
「エレン!いい加減にしなさい!!
関係ない人にバケツの水をぶちまけて、下手したら凍傷になるところだったんだよ!?
謝るのが当然だろう!?」
「知るかよ!!海賊なんて死ねばいいんだ!!
俺は悪いことなんかしてねぇ!!悪いのは海賊だ!!
俺は、海賊を駆逐しようとしただけじゃねぇか!!」
悔しそうに拳を握り、怒りと恨みで目をつり上げたエレンは、怒鳴るように叫ぶと、そのままリビングを飛び出して行きました。
その後を、黒髪の少女とアルミンが追いかけます。
バタンッ、と大きく虚しい音を立てて、リビングの扉が閉まると、暖まったリビングに少しだけ冷気が流れ込んですぐに消えました。
「あの子は本当に…。」
ため息を吐いたカルラは、もう一度、ローの方を向いて頭を下げました。
「失礼ばかりで、本当に申し訳ありません。
あの子には、私からキツく言っておきますので、
許してやってくれませんか。」
頭を下げるカルラの肩は、僅かに震えていました。
そこには、海賊を目の前にしている恐怖というよりも、悔しさや悲しさが漂っているように見えました。
それは、ロー達を睨むエレンや黒髪の少女の瞳、怯えるアルミンの瞳の奥に見えていたものと同じでした。
「お前の息子は、随分と海賊を恨んでるみたいだな。」
しばらくの沈黙の後、ローが言いました。
少しだけ、カルラの肩がビクッと揺れた後、彼女はゆっくりと頭を上げました。
そして、エレンが飛び出して行ったリビングの扉の方を向きながら、口を開きました。
「ミカサの…、エレンと一緒にいた黒髪の女の子のご両親が、
3か月前、————————海賊に、殺されたんです。」
重たい口を開いたカルラから聞いたのは、エレンがすべての海賊を憎み恨んでも仕方がないほどに、凄惨なものでした。
オレンジ色の灯りに包まれたリビングは暖かく、窓の向こうの雪景色とは別世界のようです。
ソファや、ふわふわのカーペットの上、思い思いの場所に座ったハートの海賊団の船員達が、ホットミルクを貰って一息ついていると、リビング階段からカルラに連れられて、なまえが降りてきました。
水で濡れてしまった白いつなぎはまだ乾いていないので、なまえは、ウール生地の白いセーターと柘榴色の濃い赤のロングスカートに着替えていました。
「おー、ピッタリじゃねぇか。よかったな。それでだいぶ暖かそうだ。」
なまえを見て、イッカクが言いました。
「えぇ、本当に。私の若い頃の洋服をとっておいてよかったわ。」
カルラがホッとしたように息を吐きました。
海賊と子供が睨み合うおかしな現場に飛び出してきて、全てを悟ってしまった彼女は、エレンの母親でした。
あの後、すぐに頭を下げた彼女に、お詫びに着替えと食事を用意すると言われ、本当に身体が凍ってしまいそうだったハートの海賊団の船員達は、その好意に甘えることにしたのです。
カルラがハートの海賊団の船員達を連れて来た家は、廃村にしか見えなかった山のふもとの田舎町のさらに奥にありました。
こじんまりとした小屋のような家ばかりが立ち並ぶ中、エレンの実家は一際立派でした。
エレンの父親で、この街の唯一の医者であるグリシャが、自宅を改装し、半分を診療所として使っているのです。
ですが、そのグリシャも一昨日から、月に1回の中心街への往診に出かけていて、帰ってくるのは明後日以降を予定しています。
母親1人で、無鉄砲な息子のエレンを見張り続けることが出来るわけもなく、先刻のような驚きの出来事になってしまったようでした。
カルラは、なまえに適当に座るように言うと、キッチンへと向かいました。
「なまえさんにもホットミルクを出すわね。温まるわよ。」
「いいえ、私は飲食は出来ないので、必要ありません。」
なまえに言われて、カルラが立ち止まり振り返ります。
「あぁ、そっか。なまえさんはロボットだったわね。
どこからどう見ても綺麗なお姉さんだから、つい忘れちゃってたわ。」
カルラが苦笑すると、ハートの海賊団の船員達からも「分かる、分かる!」と同意の声と共にドッと笑いが上がりました。
「なまえ、こっち来いよ!ソファ、デカくて気持ちいいぞ!」
ベポがなまえに手招きしました。
素直にやってきたなまえを、ベポは自分とローの間に押し込むように座らせました。
白くまのベポと長身のローが座っていても、余裕のある大きなソファです。
なまえも、今まで感じたことのない感触に興味を持ったのか、ソファの座席を手のひらで押したり引いたりし始めました。
「なまえさん、うちの馬鹿息子がとんでもないことをして、
本当にすみませんでした。皆さんにも、気分を害してしまい
改めて、頭を下げさせてください。申し訳ありませんでした。」
なまえの前に立ち、カルラが頭を下げました。
2階の部屋で着替えを借りるときに、既に謝罪はしていたのですが、これはハートの海賊団の船員、皆に対しての謝罪でもありました。
すると、暖炉の方で、バンッと大きな音がしました。
罰として暖炉の薪をくべる係を母親に任命されたエレンが、暖炉の奥に薪を乱暴に放り投げたのです。
「なんで母さんが謝るんだよ!!そんなやつらに謝るなよ!!」
暖炉の前に立つエレンが、悔しそうに叫びました。
「エレン!いい加減にしなさい!!
関係ない人にバケツの水をぶちまけて、下手したら凍傷になるところだったんだよ!?
謝るのが当然だろう!?」
「知るかよ!!海賊なんて死ねばいいんだ!!
俺は悪いことなんかしてねぇ!!悪いのは海賊だ!!
俺は、海賊を駆逐しようとしただけじゃねぇか!!」
悔しそうに拳を握り、怒りと恨みで目をつり上げたエレンは、怒鳴るように叫ぶと、そのままリビングを飛び出して行きました。
その後を、黒髪の少女とアルミンが追いかけます。
バタンッ、と大きく虚しい音を立てて、リビングの扉が閉まると、暖まったリビングに少しだけ冷気が流れ込んですぐに消えました。
「あの子は本当に…。」
ため息を吐いたカルラは、もう一度、ローの方を向いて頭を下げました。
「失礼ばかりで、本当に申し訳ありません。
あの子には、私からキツく言っておきますので、
許してやってくれませんか。」
頭を下げるカルラの肩は、僅かに震えていました。
そこには、海賊を目の前にしている恐怖というよりも、悔しさや悲しさが漂っているように見えました。
それは、ロー達を睨むエレンや黒髪の少女の瞳、怯えるアルミンの瞳の奥に見えていたものと同じでした。
「お前の息子は、随分と海賊を恨んでるみたいだな。」
しばらくの沈黙の後、ローが言いました。
少しだけ、カルラの肩がビクッと揺れた後、彼女はゆっくりと頭を上げました。
そして、エレンが飛び出して行ったリビングの扉の方を向きながら、口を開きました。
「ミカサの…、エレンと一緒にいた黒髪の女の子のご両親が、
3か月前、————————海賊に、殺されたんです。」
重たい口を開いたカルラから聞いたのは、エレンがすべての海賊を憎み恨んでも仕方がないほどに、凄惨なものでした。