◇No.22◇これが愛についての見解です
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今夜も、なまえとローは、天井の海に反射した明かりがユラユラと揺れるバーで過ごしていました。
大きなソファがお決まりの場所で、なまえの膝の上に頭を乗せてお気に入りの医学本を読むのが、ここ最近のローの夜の過ごし方です。
さすがに、膝枕で朝まで眠ってしまったのは初日だけで、2時までには2人とも自分の部屋に戻っています。
それでも、夜のすべての時間をたったひとりきりで過ごしていた日々と比べれば、なまえの夜はとても短くなりました。
いつもは、膝の上にローの頭を乗せた格好で、ただひたすら天井の海を眺めていたなまえでしたが、今日はイッカクに借りた本を読んでいます。
ですが、週刊誌は、小説のように分厚い本ではないので、すぐに読み終わってしまったようでした。
なまえは、読み終えた週刊誌をソファの上に置きました。
それに気づいたローが、医学本を少し下にズラすと、膝の上に頭を乗せたままの格好で、なまえを見上げました。
「もう読み終わったのか?」
「はい。終わりました。」
「それで、本当の愛ってのはどうだった?」
ローは少し意地悪く口元を歪めて言いながら、身体を起こしました。
ちょっとした好奇心、それから悪戯心が近かったかもしれません。
「愛とは、移り変わるもののようです。」
「へぇ。」
ソファの背もたれに肘を乗せたローは、頬杖をつきながら、なまえの見解を聞きました。
無意識に、意地悪く口の端が上がります。
たくさんの知識を持っていながら、愛についてだけは何も知らないなまえが、本や週刊誌の情報を素直に知識として受け入れていく様子は、ローにとって面白いものでした。
「物語で描かれていた愛は、ひとつしかありませんでした。
それが永遠に続き、とても美しいものだと描かれていました。」
「現実は?」
「愛を見つけておきながら、ひとつの愛では満足できず、
人間は、新しい愛を求めます。そして、汚い言葉で罵り合っていました。
物語には、愛は美しいものだと描かれていましたが、本当の姿はとても醜いものでした。」
なまえの愛についての見解は、イッカクのせいで悪い方向へ凝り固まってしまったようでした。
ですが、ローには、それが正しく聞こえました。
以前、愛について聞かれたとき、コラソンのことを話したのは、ローの知っている“美しい愛”が、彼から貰ったものしかなかったからです。
その後に出逢った『愛のようなもの』は、まるで、商品棚に並べられている大量生産品のように、全く同じカタチをしていました。
それをローは、美しいと思ったことはありません。
ですから、醜いという表現は、正解だとローに感じさせたのです。
「そして、愛には条件がありました。」
「条件?」
「はい。優しい人、笑顔が可愛い人、話が合う人、他にもたくさんありました。
そして、漸く見つけた条件に当てはまる相手がいても、その条件に自らが当てはまらなければ
愛にはなりません。」
「あぁ…、そうかもな。」
独りよがりの愛、とも言うが、それはなまえが知りたいと思っている愛とは違うのだろう。
そう考えて、ローは頷きました。
すると、なまえが、不意に、天井の海を見上げました。
そして、言うのです。
「それならば、安心です。」
「何がだ?」
「ロボットの私は、誰かの条件に当てはまることは、永久にありません。
私が愛に出逢うことは、生涯ないことが分かりました。
だから、私はずっと自由に生きていられます。」
天井を見上げるなまえの顔を、照明が波に反射して出来たユラユラと揺れる光が照らしていました。
それが、頬を流れる涙に見えたのは、これが二度目でした。
心のない機械であるなまえが泣くはずがない——、頭では理解しているのです。
それでも、ローには、彼女が泣いているようにしか見えませんでした。
とても悲しげに、悲痛に、悲鳴を上げて泣いている姿に——。
『なまえって名前はね、あの子が本屋で最後に読んでた本に出てくるヒロインの名前なんだ。
大切な仲間に囲まれて、愛してる人に心から愛された女の子の、名前なんだよ。』
ふ、と前にベポが言っていた言葉が蘇りました。
今、あのときのベポの気持ちが、ローの心に雪崩のように流れ込んでくるようでした。
誰もロボットである自分を愛するわけがないと、そう納得したなまえの心は今、本当に安心に包まれているのだろうか——。
悲鳴を上げているのではないではないか——。
心などないと分かっていながら、頭で考えるよりも先に、ローの心が苦しくなったのです。
きっと、あのときのベポもそうだったのでしょう。
気づけば、ローの手は、なまえの頬にゆっくりと伸びていました。
涙を拭ってやりたかったのです。
でも、頬に触れる直前に、ハッとして、手が止まります。
そして、流れてもいない涙なんて、誰も拭うことは出来ないのだと気づくのです。
頬に伸びていた手は、なまえの頭に優しく触れました。
頭に乗った重さに気づいたなまえが、ローの方を見ました。
ほらやっぱり、なまえは泣いていません。
泣いているはずがありません。
それでも、ローには、彼女を寂しさが包んでいるように見えていました。
だから、言ったのです。
「いいことを教えてやるよ。」
「何ですか?」
「愛ってのは移り変わるかもしれねぇが、仲間は一生ものだ。
だから、お前には俺達がいつもついてる。」
なまえはすぐに返事をしませんでした。
ただじっとローを見つめ返した後、数秒間をあけてから、口を開きました。
「はい、私はロー達と一緒に、広い海をどこまでも行きます。」
「あぁ、そうしろ。一生俺に尽くせ。」
髪をクシャリと撫でれば、なまえはいつも通り「はい、わかりました。」と頷きました。
大きなソファがお決まりの場所で、なまえの膝の上に頭を乗せてお気に入りの医学本を読むのが、ここ最近のローの夜の過ごし方です。
さすがに、膝枕で朝まで眠ってしまったのは初日だけで、2時までには2人とも自分の部屋に戻っています。
それでも、夜のすべての時間をたったひとりきりで過ごしていた日々と比べれば、なまえの夜はとても短くなりました。
いつもは、膝の上にローの頭を乗せた格好で、ただひたすら天井の海を眺めていたなまえでしたが、今日はイッカクに借りた本を読んでいます。
ですが、週刊誌は、小説のように分厚い本ではないので、すぐに読み終わってしまったようでした。
なまえは、読み終えた週刊誌をソファの上に置きました。
それに気づいたローが、医学本を少し下にズラすと、膝の上に頭を乗せたままの格好で、なまえを見上げました。
「もう読み終わったのか?」
「はい。終わりました。」
「それで、本当の愛ってのはどうだった?」
ローは少し意地悪く口元を歪めて言いながら、身体を起こしました。
ちょっとした好奇心、それから悪戯心が近かったかもしれません。
「愛とは、移り変わるもののようです。」
「へぇ。」
ソファの背もたれに肘を乗せたローは、頬杖をつきながら、なまえの見解を聞きました。
無意識に、意地悪く口の端が上がります。
たくさんの知識を持っていながら、愛についてだけは何も知らないなまえが、本や週刊誌の情報を素直に知識として受け入れていく様子は、ローにとって面白いものでした。
「物語で描かれていた愛は、ひとつしかありませんでした。
それが永遠に続き、とても美しいものだと描かれていました。」
「現実は?」
「愛を見つけておきながら、ひとつの愛では満足できず、
人間は、新しい愛を求めます。そして、汚い言葉で罵り合っていました。
物語には、愛は美しいものだと描かれていましたが、本当の姿はとても醜いものでした。」
なまえの愛についての見解は、イッカクのせいで悪い方向へ凝り固まってしまったようでした。
ですが、ローには、それが正しく聞こえました。
以前、愛について聞かれたとき、コラソンのことを話したのは、ローの知っている“美しい愛”が、彼から貰ったものしかなかったからです。
その後に出逢った『愛のようなもの』は、まるで、商品棚に並べられている大量生産品のように、全く同じカタチをしていました。
それをローは、美しいと思ったことはありません。
ですから、醜いという表現は、正解だとローに感じさせたのです。
「そして、愛には条件がありました。」
「条件?」
「はい。優しい人、笑顔が可愛い人、話が合う人、他にもたくさんありました。
そして、漸く見つけた条件に当てはまる相手がいても、その条件に自らが当てはまらなければ
愛にはなりません。」
「あぁ…、そうかもな。」
独りよがりの愛、とも言うが、それはなまえが知りたいと思っている愛とは違うのだろう。
そう考えて、ローは頷きました。
すると、なまえが、不意に、天井の海を見上げました。
そして、言うのです。
「それならば、安心です。」
「何がだ?」
「ロボットの私は、誰かの条件に当てはまることは、永久にありません。
私が愛に出逢うことは、生涯ないことが分かりました。
だから、私はずっと自由に生きていられます。」
天井を見上げるなまえの顔を、照明が波に反射して出来たユラユラと揺れる光が照らしていました。
それが、頬を流れる涙に見えたのは、これが二度目でした。
心のない機械であるなまえが泣くはずがない——、頭では理解しているのです。
それでも、ローには、彼女が泣いているようにしか見えませんでした。
とても悲しげに、悲痛に、悲鳴を上げて泣いている姿に——。
『なまえって名前はね、あの子が本屋で最後に読んでた本に出てくるヒロインの名前なんだ。
大切な仲間に囲まれて、愛してる人に心から愛された女の子の、名前なんだよ。』
ふ、と前にベポが言っていた言葉が蘇りました。
今、あのときのベポの気持ちが、ローの心に雪崩のように流れ込んでくるようでした。
誰もロボットである自分を愛するわけがないと、そう納得したなまえの心は今、本当に安心に包まれているのだろうか——。
悲鳴を上げているのではないではないか——。
心などないと分かっていながら、頭で考えるよりも先に、ローの心が苦しくなったのです。
きっと、あのときのベポもそうだったのでしょう。
気づけば、ローの手は、なまえの頬にゆっくりと伸びていました。
涙を拭ってやりたかったのです。
でも、頬に触れる直前に、ハッとして、手が止まります。
そして、流れてもいない涙なんて、誰も拭うことは出来ないのだと気づくのです。
頬に伸びていた手は、なまえの頭に優しく触れました。
頭に乗った重さに気づいたなまえが、ローの方を見ました。
ほらやっぱり、なまえは泣いていません。
泣いているはずがありません。
それでも、ローには、彼女を寂しさが包んでいるように見えていました。
だから、言ったのです。
「いいことを教えてやるよ。」
「何ですか?」
「愛ってのは移り変わるかもしれねぇが、仲間は一生ものだ。
だから、お前には俺達がいつもついてる。」
なまえはすぐに返事をしませんでした。
ただじっとローを見つめ返した後、数秒間をあけてから、口を開きました。
「はい、私はロー達と一緒に、広い海をどこまでも行きます。」
「あぁ、そうしろ。一生俺に尽くせ。」
髪をクシャリと撫でれば、なまえはいつも通り「はい、わかりました。」と頷きました。