◇No.80◇「生きろ!」
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それは、リヴァイにとって〝二度目の〟地獄でした。
壊れかけた身体を引っ張るように、最新式の立体起動装置で空を飛ぶかつての戦友と瓜二つの顔をしている機械達と、機械のはずなのに真っ赤な血にまみれて砲弾の海へと飛び込んでいく華奢な背中、そして———。
その地獄の真ん中で、エルヴィンは、あの日のように力強く叫んでいました。
(あぁ…。)
戦う彼の背中を見て、リヴァイはなんとなくわかったような気がしました。
エルヴィンがこの戦争のために心を殺したのは、海軍や世界政府を心の底から憎んでいたからでしょう。
リヴァイの声も聞こえなくなっていたくらいに、彼はこの戦争にかけていました。
でも、本当は、真意は、別だったのではないでしょうか。
それはもしかすると、彼自身、気づいていないことかもしれません。
でも、リヴァイには、エルヴィンが、あの日をやり直したがっているように見えるのです。
守れきれなかった仲間達を、今度こそ、守ろうとしているのではないでしょうか。
だから彼は、機械達よりも前に出て、叫んでいる————。
「兵士よ!!戦え!!二度と奪われぬため!!」
生きろ!!—————。
それは、あの日、エルヴィンが決して口にしなかった———いや、出来なくて、でも本当は、一番伝えたかった言葉でした。
(そうだ…!)
リヴァイは、自分の右の拳を見下ろし、改めて覚悟します。
今日は、あの日とは違う。そんなことは分かっています。
でも、あの日、守り切れなかったものを、今度こそ守るのです。
叶えてやれなかった、なまえとの約束を、今度こそ守るのです。
リヴァイは、すぐにローの姿を探しました。
少し離れた場所に、彼はハートの海賊団の仲間といました。
陸に降りてきている海兵達と交戦しながらも、空を舞うなまえに向かって「降りてこい!」と叫んでいます。
「ロー!!」
リヴァイが名前を呼ぶと、すぐにローがこちらを見ました。
驚愕の表情は、すぐに怒りに歪みました。
「おい!!どういうことだ!!どうしてなまえが———。」
「なまえは俺が連れてくる。それまでお前は仲間を連れてどこか隠れてろ。」
「この状況を見てみろ。最悪だ。お前のせいでな。
そのお前の指示をおとなしく聞くと思ってるのか。」
ローは、怒りと軽蔑、すべての負の感情を歪んだ目に宿していました。
それでも、リヴァイは冷静に続けます。
戦場で勝つのは、最も狂っている者か、最も冷静でいる者のどちらかです。
「お前達は、エルヴィンになまえを人間にさせるためにここにいるんだろ。」
「あぁ、そうだ!その間、お前がなまえを守っておく約束だった!!それが——。」
「それならもう、お前達がここに残る理由はねぇはずだ。
アレは———もう機械じゃねぇ。」
だからと言って、人間になったのか———と言えば、それは微妙なところでしょう。
人間らしい赤い血を流していますが、背中から白い翼は生えていますし、手のひらからはかろうじてか弱いビームもまだ出ているようです。
しかし、腕や手がマシンガンや銃には出来なくなり出した———という段階だと思われます。
彼女が完全に人間になってしまうまで、時間の問題です。
「————それでも、助ける。」
ローはギリリと歯を噛みました。
痛いほど、彼の気持ちが分かるのがリヴァイです。
だから、ローには、この場を離れて欲しいのです。
「あぁ、分かってる。それは俺も同じだ。」
「分かってんなら、どうしてここになまえを連れて来た。」
「なら聞くが、なまえが来なかったら、お前達は生きてたか?」
「…っ。」
「お前は生きてたかもしれねぇな。でも、何人が死んだ?
仲間を守る為に最前線で散ったアイツに、仲間を見殺しにしろと言うのか。」
「…あぁ、そうだ。俺達はその覚悟でここに立ってる。」
「なら分かるはずだ。アイツも、同じ覚悟でここにいる。」
「…っ。」
「俺なら上に行ける。」
「その腰につけてる錆びた機械でか。」
ローは、リヴァイの腰についている立体起動装置を訝し気に見下ろしました。
もう100年も昔に、巨人を討伐するために使用していたものです。
エルヴィンが作った機械達が腰につけている最新式の立体起動装置とは、威力も持久力も比べ物になりません。
ですが、試しにガスを噴出してみましたが、問題なく使えそうでした。
それに、身体に馴染んだものの方が、力を発揮できるというものです。
「すぐになまえを連れてくる。
なまえを泣かせたくねぇなら、お前は仲間達と避難してろ。」
「俺が———。」
ローの気持ちは、痛いほどわかります。
でもここで、リヴァイは引き下がることは出来ないのです。
「俺はなまえを連れてくることは出来る。
その後、エルヴィン達も救出出来れば、なまえにもまだ希望はあるかもしれねぇ。
だが、お前がここに残っても、エルヴィンを説得は出来ねぇ。」
だから、結局、なまえを救うことはローには出来ないのだとそう続ければ、ローが殺気を放ちます。
知っています。リヴァイには、分かるのです。
愛する女性を救いたい気持ちと、救えないと悟ってしまっている歯がゆさが、身体と心を蝕んで悲鳴を上げている———その気持ちが痛いほどに。
「お前は、自分と仲間を守れ。
なまえが命懸けで守りてぇと思ってるその命を、守れるのは俺じゃねぇ。お前だろ。
その命、死ぬ気で守れ。そして、死ぬな。」
なまえを泣かすなよ———。
リヴァイは、錆びついた立体起動装置で飛び上がりました。
今度こそ、なまえとの約束を守るのです。
『私の願いは、大切な人達が生きている未来がくることかな。』
『それは壮大だな。』
『そうかな?普通の願いだよ。』
『あ~、そうか。そうだな。普通の願いだ。叶えなきゃいけねぇ願いだ。』
『だからねぇ、リヴァイさん、守ってね。愛してる人に生きていてほしいの。
あなたにしか出来ないの。
私の愛してる人を、守って。死ぬ気で守って。そして、死なないで。私を、泣かさないでね。』
『あぁ、約束する。誓う————。』
約束した。彼女に誓った———!
砲弾の雨に打たれる彼女の元へと、リヴァイは急ぎます。
あの日、リヴァイが死ぬことはありませんでした。
ですがそれは、自分の命を〝守った〟わけではありませんでした。
仲間もほとんどが死にました。
彼女が望んだ未来が来ることは、もう二度とありません。
でもまだ、なまえなら———、なまえの願いならば、間に合います。
なまえが望んだ未来を、大切な人達と笑って生きる普通の幸せを————。
人間として生きていく上で、当然受けるべきである幸せの権利を———彼女に————。
「あぁああああああああああ!!!!」
リヴァイは叫びました。
腹の底から、声を張り上げました。
真っ白い雲の上で心配ばかりしているだろう彼女に、聞こえたでしょうか。
今から、守ります。
なまえを、なまえの愛する人達を。
エルヴィンを、仲間達を。
愛を、心を。彼女が愛した、自分を———。
————もう二度と、誰にも奪わせやしない。
壊れかけた身体を引っ張るように、最新式の立体起動装置で空を飛ぶかつての戦友と瓜二つの顔をしている機械達と、機械のはずなのに真っ赤な血にまみれて砲弾の海へと飛び込んでいく華奢な背中、そして———。
その地獄の真ん中で、エルヴィンは、あの日のように力強く叫んでいました。
(あぁ…。)
戦う彼の背中を見て、リヴァイはなんとなくわかったような気がしました。
エルヴィンがこの戦争のために心を殺したのは、海軍や世界政府を心の底から憎んでいたからでしょう。
リヴァイの声も聞こえなくなっていたくらいに、彼はこの戦争にかけていました。
でも、本当は、真意は、別だったのではないでしょうか。
それはもしかすると、彼自身、気づいていないことかもしれません。
でも、リヴァイには、エルヴィンが、あの日をやり直したがっているように見えるのです。
守れきれなかった仲間達を、今度こそ、守ろうとしているのではないでしょうか。
だから彼は、機械達よりも前に出て、叫んでいる————。
「兵士よ!!戦え!!二度と奪われぬため!!」
生きろ!!—————。
それは、あの日、エルヴィンが決して口にしなかった———いや、出来なくて、でも本当は、一番伝えたかった言葉でした。
(そうだ…!)
リヴァイは、自分の右の拳を見下ろし、改めて覚悟します。
今日は、あの日とは違う。そんなことは分かっています。
でも、あの日、守り切れなかったものを、今度こそ守るのです。
叶えてやれなかった、なまえとの約束を、今度こそ守るのです。
リヴァイは、すぐにローの姿を探しました。
少し離れた場所に、彼はハートの海賊団の仲間といました。
陸に降りてきている海兵達と交戦しながらも、空を舞うなまえに向かって「降りてこい!」と叫んでいます。
「ロー!!」
リヴァイが名前を呼ぶと、すぐにローがこちらを見ました。
驚愕の表情は、すぐに怒りに歪みました。
「おい!!どういうことだ!!どうしてなまえが———。」
「なまえは俺が連れてくる。それまでお前は仲間を連れてどこか隠れてろ。」
「この状況を見てみろ。最悪だ。お前のせいでな。
そのお前の指示をおとなしく聞くと思ってるのか。」
ローは、怒りと軽蔑、すべての負の感情を歪んだ目に宿していました。
それでも、リヴァイは冷静に続けます。
戦場で勝つのは、最も狂っている者か、最も冷静でいる者のどちらかです。
「お前達は、エルヴィンになまえを人間にさせるためにここにいるんだろ。」
「あぁ、そうだ!その間、お前がなまえを守っておく約束だった!!それが——。」
「それならもう、お前達がここに残る理由はねぇはずだ。
アレは———もう機械じゃねぇ。」
だからと言って、人間になったのか———と言えば、それは微妙なところでしょう。
人間らしい赤い血を流していますが、背中から白い翼は生えていますし、手のひらからはかろうじてか弱いビームもまだ出ているようです。
しかし、腕や手がマシンガンや銃には出来なくなり出した———という段階だと思われます。
彼女が完全に人間になってしまうまで、時間の問題です。
「————それでも、助ける。」
ローはギリリと歯を噛みました。
痛いほど、彼の気持ちが分かるのがリヴァイです。
だから、ローには、この場を離れて欲しいのです。
「あぁ、分かってる。それは俺も同じだ。」
「分かってんなら、どうしてここになまえを連れて来た。」
「なら聞くが、なまえが来なかったら、お前達は生きてたか?」
「…っ。」
「お前は生きてたかもしれねぇな。でも、何人が死んだ?
仲間を守る為に最前線で散ったアイツに、仲間を見殺しにしろと言うのか。」
「…あぁ、そうだ。俺達はその覚悟でここに立ってる。」
「なら分かるはずだ。アイツも、同じ覚悟でここにいる。」
「…っ。」
「俺なら上に行ける。」
「その腰につけてる錆びた機械でか。」
ローは、リヴァイの腰についている立体起動装置を訝し気に見下ろしました。
もう100年も昔に、巨人を討伐するために使用していたものです。
エルヴィンが作った機械達が腰につけている最新式の立体起動装置とは、威力も持久力も比べ物になりません。
ですが、試しにガスを噴出してみましたが、問題なく使えそうでした。
それに、身体に馴染んだものの方が、力を発揮できるというものです。
「すぐになまえを連れてくる。
なまえを泣かせたくねぇなら、お前は仲間達と避難してろ。」
「俺が———。」
ローの気持ちは、痛いほどわかります。
でもここで、リヴァイは引き下がることは出来ないのです。
「俺はなまえを連れてくることは出来る。
その後、エルヴィン達も救出出来れば、なまえにもまだ希望はあるかもしれねぇ。
だが、お前がここに残っても、エルヴィンを説得は出来ねぇ。」
だから、結局、なまえを救うことはローには出来ないのだとそう続ければ、ローが殺気を放ちます。
知っています。リヴァイには、分かるのです。
愛する女性を救いたい気持ちと、救えないと悟ってしまっている歯がゆさが、身体と心を蝕んで悲鳴を上げている———その気持ちが痛いほどに。
「お前は、自分と仲間を守れ。
なまえが命懸けで守りてぇと思ってるその命を、守れるのは俺じゃねぇ。お前だろ。
その命、死ぬ気で守れ。そして、死ぬな。」
なまえを泣かすなよ———。
リヴァイは、錆びついた立体起動装置で飛び上がりました。
今度こそ、なまえとの約束を守るのです。
『私の願いは、大切な人達が生きている未来がくることかな。』
『それは壮大だな。』
『そうかな?普通の願いだよ。』
『あ~、そうか。そうだな。普通の願いだ。叶えなきゃいけねぇ願いだ。』
『だからねぇ、リヴァイさん、守ってね。愛してる人に生きていてほしいの。
あなたにしか出来ないの。
私の愛してる人を、守って。死ぬ気で守って。そして、死なないで。私を、泣かさないでね。』
『あぁ、約束する。誓う————。』
約束した。彼女に誓った———!
砲弾の雨に打たれる彼女の元へと、リヴァイは急ぎます。
あの日、リヴァイが死ぬことはありませんでした。
ですがそれは、自分の命を〝守った〟わけではありませんでした。
仲間もほとんどが死にました。
彼女が望んだ未来が来ることは、もう二度とありません。
でもまだ、なまえなら———、なまえの願いならば、間に合います。
なまえが望んだ未来を、大切な人達と笑って生きる普通の幸せを————。
人間として生きていく上で、当然受けるべきである幸せの権利を———彼女に————。
「あぁああああああああああ!!!!」
リヴァイは叫びました。
腹の底から、声を張り上げました。
真っ白い雲の上で心配ばかりしているだろう彼女に、聞こえたでしょうか。
今から、守ります。
なまえを、なまえの愛する人達を。
エルヴィンを、仲間達を。
愛を、心を。彼女が愛した、自分を———。
————もう二度と、誰にも奪わせやしない。