◇No.78◇あちこちから「共に生きたい」と叫ぶ心の声が聞こえます
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大きな白い翼を広げ空を舞うなまえに、真っ黒な砲弾の雨が降り注いでいました。
マシンガンにビーム、二丁拳銃と身体に組み込まれたありとあらゆる武器を使って、必死に応戦していますが、圧倒的な数の力の前では、時間稼ぎ程度にしかなっていないことは、彼女自身理解していました。
愛する人や仲間が、自分の名前を呼ぶ悲痛な叫びも聞こえています。
彼らが今、何を願い、何に怯えているのかも、ロボットだというのに、分かってしまうのが、つらくてつらくて仕方ありません。
それでも、諦めるわけにはいかないのです。
自分にとって脚が竦みそうなほどに強大な敵を前にしても、諦めずに戦った少年がいました。
大切な友人から家族を奪った非情な敵を前にしても、立ち向かった少年もいました。
大好きな友人達を守る為に強くあろうとしていた少女の努力も知っています。
そして、仲間のためならば、他の誰かの命を見捨てることも出来るし、自分の命すらも惜しくないと、決して諦めずに守ろうとする人間達がいることを学んだのです。
なまえは、彼らのようになりたかった———身体がマグマに耐えられる頑丈さではなく、冷凍庫で100日過ごせる耐久力でもなく、痛みを感じない身体でもありません。
永久不滅のロボットなんて、強い心を持つ彼らの前では、ひとたまりもないことを、ハートの海賊団と過ごす中で知ったのです。
そうして、願うようになったのは、彼らのように強い心を持ちたいということでした。
なまえは、人間になりたかった。
いえ、正確には、彼らのような強い心が欲しかったのです。
人間にだけにあるその臓器はきっと、人間になれば手に入るのだと考えていました。
ですが、違ったようです。
だって、なまえはもう———。
(私にはもう、ある———!)
なまえが、撃ち込んできた砲弾を両手で出したビームで受け止めます。
ですが、疲れを覚えてしまったなまえの身体は、普段のようにうまく動かせません。
それでも、出来る限りの力を込めて、反撃のビームを送り出し続けます。
強い心は、ありました。
それは、手や腕のように目に見える身体の一部ではありませんでした。それならば、臓器なのだと考えましたが、残念ながら、そこにだってそんなものは存在しませんでした。
でも、強い心は、確かにあったのです。
初めてローがなまえにかけてくれたコートに、ベポが差し出してくれた毛むくじゃらの白い手に、初めての恋に打ちのめされそうになっていたなまえの隣で共に苦しんでくれたイッカクの横顔に、危ないことをしたなまえを怖い顔で叱りつけたペンギンの怒鳴り声に、なまえを怒らせるばかりでこの世で最もくだらないシャチの悪戯に。
『なまえ。』
海賊を殲滅させるために生まれたロボットであるはずのなまえを受け入れて、仲間だと呼んでくれたハートの海賊団の船員達の弾けるような笑顔に。
『愛してる。』
愛されるはずがなかったなまえを、愛し、命をかけて守ろうとしてくれているローに。
なまえは、心なんて見たことがないと思っていました。
でも、そんなことはありません。
いつだって、なまえの目の前で、幾つもの心が光り輝いていました。
だから、なまえは分かるのです。
彼らの命を守る為ならば地獄にだって飛んでこれる白い翼にも、何度折れそうになってもビームを打ち続ける腕に、彼らと共に生きたいと叫ぶ心があることが、なまえはもう分かるのです。
そして、その心というものは、どんなに強大な敵にだって負けないことも、この世で最も強い刃で盾でもあることを、仲間達が教えてくれました。
きっと、勝てる。守れる————なまえは、心の中で、何度も何度も、呪文のように繰り返します。
そして、願うのです。
彼らと一緒に生きたい。大切な人が欠けた未来で生きるのなら、彼らを守る為に〝生きたい〟。
それが、なまえにとって〝生きる〟ということでした。
ただ、永らえるだけならば、ロボットと大して変わりません。
「なまえ!!降りてこい!!お前は俺が守る!!もうやめろ!!」
自分を想う沢山の声の中から、ローの声だけがやけに鮮やかになまえの心に響きます。
その瞬間、一瞬だけビームを出す手を止めそうになりました。
もしも、愛する人の温もりを知れたのなら————そう思ってしまったのです。
正直、身体はとっくに、悲鳴を上げていました。
(痛い…っ。)
なまえは、痛みを理解していました。
もう随分と前からです。
初めは、ほんの少しの違和感でした。でもそれは、次第に、指先から腕、足の先から脚にまで広がり、次第に身体の隅々を蝕むようになり、最近では四六時中、鈍痛に襲われていました。
そして、それは眠ることで、漸く解放されていたのです。
でも、今、身体中に受けているそれは、なまえが知っていた痛みの比ではありません。
ビームが掠めた左頬が痛い。砲弾で抉られた脇腹が痛い。そこから噴き出している真っ赤な血は、まるで自分をこれ以上の痛みの地獄へと誘おうとしているかのように思えました。
攻撃のすべてを受け止めている腕からは骨が折れていく嫌な音が響いています。
そして、今までは鈍く響くだけだった身体を蝕む痛みは、脳天を突き抜けて声にならないほどの痛みに変わっていました。
それでもきっと、今ならまだ、ローに触れれば、心の温もりを知ることが出来る————そう考えたのも束の間、なまえはすぐにまた、沢山の砲弾の元へと飛んでいきます。
ほんの一瞬でも、彼らと共に〝生きた〟と実感できるのなら、それはなににも勝る幸福となるでしょう。
そしてそれが、なまえにとっての今だったのです。
きっと、ロー達にとっての今は、生きた心地がしないのでしょう。
それでも、いつか、彼らが、知る日がくればいい。
愛する人達のために〝生きた〟今が、たとえこの瞬間に終わったとしても、なまえにとっては、永遠よりも価値のあるものだった、ということを————。
マシンガンにビーム、二丁拳銃と身体に組み込まれたありとあらゆる武器を使って、必死に応戦していますが、圧倒的な数の力の前では、時間稼ぎ程度にしかなっていないことは、彼女自身理解していました。
愛する人や仲間が、自分の名前を呼ぶ悲痛な叫びも聞こえています。
彼らが今、何を願い、何に怯えているのかも、ロボットだというのに、分かってしまうのが、つらくてつらくて仕方ありません。
それでも、諦めるわけにはいかないのです。
自分にとって脚が竦みそうなほどに強大な敵を前にしても、諦めずに戦った少年がいました。
大切な友人から家族を奪った非情な敵を前にしても、立ち向かった少年もいました。
大好きな友人達を守る為に強くあろうとしていた少女の努力も知っています。
そして、仲間のためならば、他の誰かの命を見捨てることも出来るし、自分の命すらも惜しくないと、決して諦めずに守ろうとする人間達がいることを学んだのです。
なまえは、彼らのようになりたかった———身体がマグマに耐えられる頑丈さではなく、冷凍庫で100日過ごせる耐久力でもなく、痛みを感じない身体でもありません。
永久不滅のロボットなんて、強い心を持つ彼らの前では、ひとたまりもないことを、ハートの海賊団と過ごす中で知ったのです。
そうして、願うようになったのは、彼らのように強い心を持ちたいということでした。
なまえは、人間になりたかった。
いえ、正確には、彼らのような強い心が欲しかったのです。
人間にだけにあるその臓器はきっと、人間になれば手に入るのだと考えていました。
ですが、違ったようです。
だって、なまえはもう———。
(私にはもう、ある———!)
なまえが、撃ち込んできた砲弾を両手で出したビームで受け止めます。
ですが、疲れを覚えてしまったなまえの身体は、普段のようにうまく動かせません。
それでも、出来る限りの力を込めて、反撃のビームを送り出し続けます。
強い心は、ありました。
それは、手や腕のように目に見える身体の一部ではありませんでした。それならば、臓器なのだと考えましたが、残念ながら、そこにだってそんなものは存在しませんでした。
でも、強い心は、確かにあったのです。
初めてローがなまえにかけてくれたコートに、ベポが差し出してくれた毛むくじゃらの白い手に、初めての恋に打ちのめされそうになっていたなまえの隣で共に苦しんでくれたイッカクの横顔に、危ないことをしたなまえを怖い顔で叱りつけたペンギンの怒鳴り声に、なまえを怒らせるばかりでこの世で最もくだらないシャチの悪戯に。
『なまえ。』
海賊を殲滅させるために生まれたロボットであるはずのなまえを受け入れて、仲間だと呼んでくれたハートの海賊団の船員達の弾けるような笑顔に。
『愛してる。』
愛されるはずがなかったなまえを、愛し、命をかけて守ろうとしてくれているローに。
なまえは、心なんて見たことがないと思っていました。
でも、そんなことはありません。
いつだって、なまえの目の前で、幾つもの心が光り輝いていました。
だから、なまえは分かるのです。
彼らの命を守る為ならば地獄にだって飛んでこれる白い翼にも、何度折れそうになってもビームを打ち続ける腕に、彼らと共に生きたいと叫ぶ心があることが、なまえはもう分かるのです。
そして、その心というものは、どんなに強大な敵にだって負けないことも、この世で最も強い刃で盾でもあることを、仲間達が教えてくれました。
きっと、勝てる。守れる————なまえは、心の中で、何度も何度も、呪文のように繰り返します。
そして、願うのです。
彼らと一緒に生きたい。大切な人が欠けた未来で生きるのなら、彼らを守る為に〝生きたい〟。
それが、なまえにとって〝生きる〟ということでした。
ただ、永らえるだけならば、ロボットと大して変わりません。
「なまえ!!降りてこい!!お前は俺が守る!!もうやめろ!!」
自分を想う沢山の声の中から、ローの声だけがやけに鮮やかになまえの心に響きます。
その瞬間、一瞬だけビームを出す手を止めそうになりました。
もしも、愛する人の温もりを知れたのなら————そう思ってしまったのです。
正直、身体はとっくに、悲鳴を上げていました。
(痛い…っ。)
なまえは、痛みを理解していました。
もう随分と前からです。
初めは、ほんの少しの違和感でした。でもそれは、次第に、指先から腕、足の先から脚にまで広がり、次第に身体の隅々を蝕むようになり、最近では四六時中、鈍痛に襲われていました。
そして、それは眠ることで、漸く解放されていたのです。
でも、今、身体中に受けているそれは、なまえが知っていた痛みの比ではありません。
ビームが掠めた左頬が痛い。砲弾で抉られた脇腹が痛い。そこから噴き出している真っ赤な血は、まるで自分をこれ以上の痛みの地獄へと誘おうとしているかのように思えました。
攻撃のすべてを受け止めている腕からは骨が折れていく嫌な音が響いています。
そして、今までは鈍く響くだけだった身体を蝕む痛みは、脳天を突き抜けて声にならないほどの痛みに変わっていました。
それでもきっと、今ならまだ、ローに触れれば、心の温もりを知ることが出来る————そう考えたのも束の間、なまえはすぐにまた、沢山の砲弾の元へと飛んでいきます。
ほんの一瞬でも、彼らと共に〝生きた〟と実感できるのなら、それはなににも勝る幸福となるでしょう。
そしてそれが、なまえにとっての今だったのです。
きっと、ロー達にとっての今は、生きた心地がしないのでしょう。
それでも、いつか、彼らが、知る日がくればいい。
愛する人達のために〝生きた〟今が、たとえこの瞬間に終わったとしても、なまえにとっては、永遠よりも価値のあるものだった、ということを————。