◇No.73◇大切な人には泣いてほしくありません
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リヴァイが部屋に戻ると、なまえは指示をしておいた荷造りをすべて終えていました。
ベッドの縁に座る彼女が、まるでクッションのように抱きしめる手提げバッグには、必要最低限の服と下着が入っています。
「他には持って行くもんはねぇのか。」
リヴァイは、部屋を見渡しながらなまえに訊ねます。
殺風景な部屋には、それには似つかわしくないぬいぐるみが幾つかと、デスクの上には雑誌や本のようなものもありました。
クローゼットや壁掛けのハンガーにもまだ洋服が残っています。
「はい、持って行く必要はありません。」
ベッドからスクッと立ち上がり、なまえが丁寧に答えます。
着替えの服と下着があるのであれば、とりあえずは問題ありません。
これから必要なものが出れば、その都度買えばいいだけです。
なまえが必要ないというのならそれで構いません。
「なら、行くぞ。」
「はい、わかりました。」
部屋を出るリヴァイの後ろからなまえがついてきます。
今日の彼女はもう、リヴァイの行動に疑問を持つことはありません。
リヴァイとなまえが船の外に出ると、ちょうど、シャチとベポがスロープを降ろしてくれているところでした。
見送りをしようとしたのか、ハートの海賊団のほとんどが集まっているようでした。
そして、リヴァイとなまえを見ると、少しだけ表情を曇らせます。
そんな彼らの前に、なまえがスッと出ました。
ペンギン達が、ゴクリと息を呑んだのが、リヴァイにも分かりました。
「ハートの海賊団幹部にて、ナンバー2。ペンギン。」
名前を呼ばれたペンギンは、驚いて目を見開きました。
急に喋り出した彼女の脈絡のないおしゃべりは、まだ止まりません。
細い指が次に見つけたターゲットは、シャチでした。
ペンギンが名前を呼ばれたのならー。
いつかのことを思い出したシャチは、グッと唇を噛みました。
「ハートの海賊団幹部、シャチ。」
「…はい。」
シャチが小さく手を挙げます。
「どうして俺達のことを知ってるの?」
ベポが、なまえに訊ねました。
視線は重なっているはずでしたが、なまえがどこか遠くへ行ってしまったように感じます。
彼女の黒目がちな瞳が、ベポには、ひどく寂しそうに見えました。
「この世界にいる海賊のデータがすべて入っています。」
「それはどうして?」
「この世から海賊を一掃するためです。」
彼女の一言で、ペンギン達はすべてが自分達の予定通りに進んでいることを知りました。
これが、自分達が望んだことです。
分かっていても、握る拳に爪が食い込み、心の痛みが止まりません。
「俺達を一掃しなくていいの?」
ベポがなまえに訊ねます。
「海賊を見つけ次第、始末するようにプログラムされていましたが、
リヴァイがそのすべてを削除しました。
現在は、自由に生きられるように、私を縛るプログラムはすべて無効になっています。」
なまえが、真っ直ぐに答えます。
それは、ペンギン達も知らない答えでした。
だから驚いて、リヴァイの方を向きました。
(あぁ…、そうか…。なまえは、俺達がいなくても自由でいられる…。)
ペンギンが空を仰ぐようにして顔を上げた横で、シャチはキャスケットを下に引いて顔を隠しました。
「おい、アンタさ、アタシのことは知ってんのか。」
声をかけたのは、イッカクでした。
強気なセリフとは裏腹に、彼女の声は涙で震えています。
「はい、知っています。」
「なんだよ。知ってるなら、言えよ。」
「ハートの海賊団、その他大勢。」
なまえが、堂々と答えます。
その途端に、至る所から、笑いが吹き出します。
「違ぇよ!!海軍もクソみてぇな情報しか持ってねぇんだな!!」
目も、顔も真っ赤にして、怒り出したイッカクのそばで、仲間達が腹を抱えて笑っています。
彼らの目尻には、涙まで浮かんでいます。
「そろそろ行くぞ。」
リヴァイは、なまえの腕を掴み引っ張ります。
これ以上、そばにいることは、なまえにとっても、ペンギン達にとっても、良いことだとは思えなかったのです。
彼らの仲間として永遠にそばにいることを信じていたはずのなまえからは、ほんのわずかな抵抗もありませんでした。
ベッドの縁に座る彼女が、まるでクッションのように抱きしめる手提げバッグには、必要最低限の服と下着が入っています。
「他には持って行くもんはねぇのか。」
リヴァイは、部屋を見渡しながらなまえに訊ねます。
殺風景な部屋には、それには似つかわしくないぬいぐるみが幾つかと、デスクの上には雑誌や本のようなものもありました。
クローゼットや壁掛けのハンガーにもまだ洋服が残っています。
「はい、持って行く必要はありません。」
ベッドからスクッと立ち上がり、なまえが丁寧に答えます。
着替えの服と下着があるのであれば、とりあえずは問題ありません。
これから必要なものが出れば、その都度買えばいいだけです。
なまえが必要ないというのならそれで構いません。
「なら、行くぞ。」
「はい、わかりました。」
部屋を出るリヴァイの後ろからなまえがついてきます。
今日の彼女はもう、リヴァイの行動に疑問を持つことはありません。
リヴァイとなまえが船の外に出ると、ちょうど、シャチとベポがスロープを降ろしてくれているところでした。
見送りをしようとしたのか、ハートの海賊団のほとんどが集まっているようでした。
そして、リヴァイとなまえを見ると、少しだけ表情を曇らせます。
そんな彼らの前に、なまえがスッと出ました。
ペンギン達が、ゴクリと息を呑んだのが、リヴァイにも分かりました。
「ハートの海賊団幹部にて、ナンバー2。ペンギン。」
名前を呼ばれたペンギンは、驚いて目を見開きました。
急に喋り出した彼女の脈絡のないおしゃべりは、まだ止まりません。
細い指が次に見つけたターゲットは、シャチでした。
ペンギンが名前を呼ばれたのならー。
いつかのことを思い出したシャチは、グッと唇を噛みました。
「ハートの海賊団幹部、シャチ。」
「…はい。」
シャチが小さく手を挙げます。
「どうして俺達のことを知ってるの?」
ベポが、なまえに訊ねました。
視線は重なっているはずでしたが、なまえがどこか遠くへ行ってしまったように感じます。
彼女の黒目がちな瞳が、ベポには、ひどく寂しそうに見えました。
「この世界にいる海賊のデータがすべて入っています。」
「それはどうして?」
「この世から海賊を一掃するためです。」
彼女の一言で、ペンギン達はすべてが自分達の予定通りに進んでいることを知りました。
これが、自分達が望んだことです。
分かっていても、握る拳に爪が食い込み、心の痛みが止まりません。
「俺達を一掃しなくていいの?」
ベポがなまえに訊ねます。
「海賊を見つけ次第、始末するようにプログラムされていましたが、
リヴァイがそのすべてを削除しました。
現在は、自由に生きられるように、私を縛るプログラムはすべて無効になっています。」
なまえが、真っ直ぐに答えます。
それは、ペンギン達も知らない答えでした。
だから驚いて、リヴァイの方を向きました。
(あぁ…、そうか…。なまえは、俺達がいなくても自由でいられる…。)
ペンギンが空を仰ぐようにして顔を上げた横で、シャチはキャスケットを下に引いて顔を隠しました。
「おい、アンタさ、アタシのことは知ってんのか。」
声をかけたのは、イッカクでした。
強気なセリフとは裏腹に、彼女の声は涙で震えています。
「はい、知っています。」
「なんだよ。知ってるなら、言えよ。」
「ハートの海賊団、その他大勢。」
なまえが、堂々と答えます。
その途端に、至る所から、笑いが吹き出します。
「違ぇよ!!海軍もクソみてぇな情報しか持ってねぇんだな!!」
目も、顔も真っ赤にして、怒り出したイッカクのそばで、仲間達が腹を抱えて笑っています。
彼らの目尻には、涙まで浮かんでいます。
「そろそろ行くぞ。」
リヴァイは、なまえの腕を掴み引っ張ります。
これ以上、そばにいることは、なまえにとっても、ペンギン達にとっても、良いことだとは思えなかったのです。
彼らの仲間として永遠にそばにいることを信じていたはずのなまえからは、ほんのわずかな抵抗もありませんでした。