◇No.73◇大切な人には泣いてほしくありません
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「そろそろ降りる。」
翌日の早朝、リヴァイは船長室にやってきていました。
猫背気味にソファに座るローの視線が、ゆっくりと上がります。
目の下に刻まれている隈は、昨日よりも濃くなっているようでした。
そういえば、濃くなりすぎて四六時中消えない隈も、リヴァイとローは似ていました。
「記憶は消したか。」
「問題ねぇ。」
「———なら、いい。」
ローは短く答えると、ソファに背中を預けるようにして深く腰掛けました。
斜め下を向き、逸らされた視線からは『すぐにこの船から降りろ。』と語っているように見えました。
なまえを取り戻すという目的を果たしたリヴァイにも、これ以上、ローと話す必要もありません。
部屋を出ようとしたリヴァイでしたが、ひとつ、ローに訊いていないことを思い出しました。
別に、必要な情報ではありません。
ただ、なんとなく、気になったのです。
「いつから、俺のことに気づいていた。」
リヴァイの質問に、ローはすぐに答えませんでした。
答えを思い出しているというよりも、ゆっくりと過去の自分の行動を思い返しているようでした。
「————お前が俺から逃げた森の中で見たその軍服みてぇな恰好に見覚えがあった。」
しばらくしてローが言った記憶に、リヴァイも身に覚えがありました。
放火騒ぎがあった凍えるような極寒の島で、なまえが森の中で彷徨う事件が起きました。
常になまえの行動を遠くから見守っていたリヴァイは、あのときも、ハートの海賊団の動きを常に監視していました。
そして、熊との格闘の後に着ていた服をすべて奪われたなまえを助けに行こうとしたとき、ローに見つかってしまった———。
「あれからずっと、俺となまえの関係を調べてたのか。」
「お前の顔が、死んだはずの英雄と同じだと気づいたときは、希望が見えた気がした。」
「そして?
俺とお前の声が同じだと知って、絶望でもしたか。」
途端に、ローが殺気を放ち、怖ろしいほどに目を歪めて睨みつけます。
必要のないことを言った自覚はありました。
ですが、なぜ、わざわざローの神経を逆撫でするようなことを言ってしまったのか———リヴァイにも分かっていませんでした。
「お前は、どうしてあのとき、なまえを助けに行こうとした。
ずっと、見守っておくつもりだったから、アイツを手放したんだろう。」
「それは———。」
それは、なぜだったのでしょう。
あのとき、ただ無意識に、リヴァイの身体は動いていました。
助けなければ———、自分こそが彼女を救わなければ———そんなことを考えていたような気がしますが、あのとき、ローに声をかけられて、ハッとしたのです。
「炎の中に飛び込ませたと思ったら、極寒の中でほぼ裸で放り出されて、
お前らに任せてたら、不死身のアンドロイドもすぐに使い物にならなくなると思ったからだ。」
リヴァイの答えに、ローは満足した様子はありませんでした。
スッと目を逸らすようにして、斜め向こうを見てから「そういうことにしといてやる。」と呟くように言います。
その横顔が、船縁に座って赤い夕陽を浴びながらローを待っていたなまえの横顔と重なりました。
「———見送りには出なくていいのか。」
気づいたら、リヴァイはそんなことを訊いていました。
答えなんて、分かりきっています。
「必要ねぇ。」
「そうだな。お前には、感謝してる。
———約束は、必ず守る。」
「当然だ。もし、破ったら、俺の命を懸けてお前をぶっ殺してやる。」
「あぁ、そうだろうな。」
リヴァイが、自嘲気味に口元を歪めます。
だって、殺してくれたらどんなにいいだろうか——なんて思ってしまったのです。
翌日の早朝、リヴァイは船長室にやってきていました。
猫背気味にソファに座るローの視線が、ゆっくりと上がります。
目の下に刻まれている隈は、昨日よりも濃くなっているようでした。
そういえば、濃くなりすぎて四六時中消えない隈も、リヴァイとローは似ていました。
「記憶は消したか。」
「問題ねぇ。」
「———なら、いい。」
ローは短く答えると、ソファに背中を預けるようにして深く腰掛けました。
斜め下を向き、逸らされた視線からは『すぐにこの船から降りろ。』と語っているように見えました。
なまえを取り戻すという目的を果たしたリヴァイにも、これ以上、ローと話す必要もありません。
部屋を出ようとしたリヴァイでしたが、ひとつ、ローに訊いていないことを思い出しました。
別に、必要な情報ではありません。
ただ、なんとなく、気になったのです。
「いつから、俺のことに気づいていた。」
リヴァイの質問に、ローはすぐに答えませんでした。
答えを思い出しているというよりも、ゆっくりと過去の自分の行動を思い返しているようでした。
「————お前が俺から逃げた森の中で見たその軍服みてぇな恰好に見覚えがあった。」
しばらくしてローが言った記憶に、リヴァイも身に覚えがありました。
放火騒ぎがあった凍えるような極寒の島で、なまえが森の中で彷徨う事件が起きました。
常になまえの行動を遠くから見守っていたリヴァイは、あのときも、ハートの海賊団の動きを常に監視していました。
そして、熊との格闘の後に着ていた服をすべて奪われたなまえを助けに行こうとしたとき、ローに見つかってしまった———。
「あれからずっと、俺となまえの関係を調べてたのか。」
「お前の顔が、死んだはずの英雄と同じだと気づいたときは、希望が見えた気がした。」
「そして?
俺とお前の声が同じだと知って、絶望でもしたか。」
途端に、ローが殺気を放ち、怖ろしいほどに目を歪めて睨みつけます。
必要のないことを言った自覚はありました。
ですが、なぜ、わざわざローの神経を逆撫でするようなことを言ってしまったのか———リヴァイにも分かっていませんでした。
「お前は、どうしてあのとき、なまえを助けに行こうとした。
ずっと、見守っておくつもりだったから、アイツを手放したんだろう。」
「それは———。」
それは、なぜだったのでしょう。
あのとき、ただ無意識に、リヴァイの身体は動いていました。
助けなければ———、自分こそが彼女を救わなければ———そんなことを考えていたような気がしますが、あのとき、ローに声をかけられて、ハッとしたのです。
「炎の中に飛び込ませたと思ったら、極寒の中でほぼ裸で放り出されて、
お前らに任せてたら、不死身のアンドロイドもすぐに使い物にならなくなると思ったからだ。」
リヴァイの答えに、ローは満足した様子はありませんでした。
スッと目を逸らすようにして、斜め向こうを見てから「そういうことにしといてやる。」と呟くように言います。
その横顔が、船縁に座って赤い夕陽を浴びながらローを待っていたなまえの横顔と重なりました。
「———見送りには出なくていいのか。」
気づいたら、リヴァイはそんなことを訊いていました。
答えなんて、分かりきっています。
「必要ねぇ。」
「そうだな。お前には、感謝してる。
———約束は、必ず守る。」
「当然だ。もし、破ったら、俺の命を懸けてお前をぶっ殺してやる。」
「あぁ、そうだろうな。」
リヴァイが、自嘲気味に口元を歪めます。
だって、殺してくれたらどんなにいいだろうか——なんて思ってしまったのです。