◇No.72◇頷きました
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地下のバーを出たリヴァイが向かったのは、裏甲板でした。
話し合いが終わるまでは、そこで待っているとなまえと約束をしていたからです。
なまえは、海に向かって船縁に脚を投げ出して座り、赤い夕陽が沈んでいくのを眺めていました。
赤い夕陽を浴びて影になっている小さな背中が、ひどく切ないほどに、虚しさが増すようでした。
『もう遅ぇな。』
話し合いが終わった後、ローは、そう呟きました。
確かに、今からなまえを連れて船を降りたら、壁の向こうにあるリヴァイの家に辿り着く頃には真夜中になっているでしょう。
でも、リヴァイもなまえも機械です。遅くなろうが、いつまでも歩き続けることになろうが、疲労に襲われることはありません。
誰に襲われてもそれに対抗できる高い戦闘力だって、ローは把握しているはずです。
それでも彼にとっては、〝もう遅い時間〟でなければ、ならなかったのでしょう。
沈んでいく赤い夕陽を眺めるなまえは、誰を待っているのでしょう。
「なまえ、待たせたな。」
リヴァイが華奢な背中に声をかけると、なまえの肩が踊るように跳ねました。
そして、勢いよく振り返ったなまえの嬉しそうな笑顔は、それがリヴァイだと知った途端に、キョトンとした表情へと変わります。
そして、きょろきょろと左右を見て、自分の名前を呼んだ声の主を探し始めます。
その姿があまりにも惨めで、リヴァイは、どうしようもない気持ちに襲われます。
「船を降りるのは明日になった。」
「———ローの声と同じですか?」
なまえが、不思議そうに首を傾げます。
話の内容よりもリヴァイの声の方が気になったようです。
「あぁ、そうみてぇだな。
お前がアイツに懐いちまったのもそのせいだろう。」
リヴァイが小さく首を竦めます。
ローの声を初めて聞いた時は、まさか、同じ声の人間が存在するだなんて想像もしていなかったので驚きました。
そんなまさかの偶然が、ローにとっても、なまえにとっても、不運でした。
そうでなければきっと、なまえはローを愛することは———。
「どうしてですか?私は、ローの声を愛したわけではありません。
ローという〝人間〟を愛しました。」
なまえが首を傾げながらも、迷いなく告げます。
リヴァイには、確信しているその姿がひどく痛々しく見えました。
「行くぞ。」
リヴァイはそう言うと、なまえから目を逸らすように背中を向けます。
船内へと入っていくリヴァイの後ろを、すぐに軽い駆け足がついてきました。
「地下の手術室を借りてある。そこで、今からお前の処置をする。」
上って来たばかりの階段を降りながら、リヴァイは言いました。
「私はどこも壊れていません。」
「あぁ、そうだな。だから壊れてねぇうちにお前の記憶を消す。」
「どの記憶を消しますか?」
なまえの疑問は当然でした。
手術室の扉の前で立ち止まったリヴァイは、チラリと隣に視線を向けます。
不思議そうに首を傾げる横顔だけではなく、ほんの小さな仕草までも、かつて愛した女そのものです。
でも、違うのです。彼女はもう、この世に存在していません。
そして、なまえは人間ですらありません。
人間が、愛する対象ではないのです———。
「ハートの海賊団に関する記憶のすべてだ。」
手術室の扉を開き、リヴァイは躊躇なく告げました。
機械へ、気遣いなど必要ないのです。
それから、リヴァイは、手術台の上になまえを座らせました。
素直に指示に従うなまえでしたが、まだ納得はしていない様子で口を開きます。
「どうして記憶を消さなければいけませんか?」
「邪魔なんだそうだ。」
リヴァイは正直に答えました。
それでも、なまえは、意味が分からない様子で首を傾げます。
『俺達に関するすべてのなまえの記憶を消してくれ。』
『———いいのか。』
『構わねぇ。アイツに、俺達の記憶は必要ねぇ。』
ローは、迷いのない目でハッキリとそう告げました。
ペンギンやシャチ、ベポとイッカク達もです。
彼らは、この船から降りるなまえから、自分達の記憶が消えることを望みました。
「ローが、そう言いましたか?」
「あぁ。お前はそもそも海軍と世界政府が作った海賊殲滅の為のアンドロイドだ。
仲間ではなくなったお前に、自分達の情報を持たせておくわけにはいかねぇんだと。
————要は、人間にはなれなぇお前と仲間ではいられねぇ、厄介な機械でしかねぇってわけだ。」
心が生まれてしまったなまえには、とても酷な話だったかもしれません。
でも、リヴァイは、ロー達から言われていた理由を、正しく伝えました。
こうしてハッキリと伝えることが、なまえの為だと思ったのです。
なまえは、瞬きもせずに、ただじっと聞いていました。
そして、しばらく黙り込んだ後、諦めたように頷きました。
話し合いが終わるまでは、そこで待っているとなまえと約束をしていたからです。
なまえは、海に向かって船縁に脚を投げ出して座り、赤い夕陽が沈んでいくのを眺めていました。
赤い夕陽を浴びて影になっている小さな背中が、ひどく切ないほどに、虚しさが増すようでした。
『もう遅ぇな。』
話し合いが終わった後、ローは、そう呟きました。
確かに、今からなまえを連れて船を降りたら、壁の向こうにあるリヴァイの家に辿り着く頃には真夜中になっているでしょう。
でも、リヴァイもなまえも機械です。遅くなろうが、いつまでも歩き続けることになろうが、疲労に襲われることはありません。
誰に襲われてもそれに対抗できる高い戦闘力だって、ローは把握しているはずです。
それでも彼にとっては、〝もう遅い時間〟でなければ、ならなかったのでしょう。
沈んでいく赤い夕陽を眺めるなまえは、誰を待っているのでしょう。
「なまえ、待たせたな。」
リヴァイが華奢な背中に声をかけると、なまえの肩が踊るように跳ねました。
そして、勢いよく振り返ったなまえの嬉しそうな笑顔は、それがリヴァイだと知った途端に、キョトンとした表情へと変わります。
そして、きょろきょろと左右を見て、自分の名前を呼んだ声の主を探し始めます。
その姿があまりにも惨めで、リヴァイは、どうしようもない気持ちに襲われます。
「船を降りるのは明日になった。」
「———ローの声と同じですか?」
なまえが、不思議そうに首を傾げます。
話の内容よりもリヴァイの声の方が気になったようです。
「あぁ、そうみてぇだな。
お前がアイツに懐いちまったのもそのせいだろう。」
リヴァイが小さく首を竦めます。
ローの声を初めて聞いた時は、まさか、同じ声の人間が存在するだなんて想像もしていなかったので驚きました。
そんなまさかの偶然が、ローにとっても、なまえにとっても、不運でした。
そうでなければきっと、なまえはローを愛することは———。
「どうしてですか?私は、ローの声を愛したわけではありません。
ローという〝人間〟を愛しました。」
なまえが首を傾げながらも、迷いなく告げます。
リヴァイには、確信しているその姿がひどく痛々しく見えました。
「行くぞ。」
リヴァイはそう言うと、なまえから目を逸らすように背中を向けます。
船内へと入っていくリヴァイの後ろを、すぐに軽い駆け足がついてきました。
「地下の手術室を借りてある。そこで、今からお前の処置をする。」
上って来たばかりの階段を降りながら、リヴァイは言いました。
「私はどこも壊れていません。」
「あぁ、そうだな。だから壊れてねぇうちにお前の記憶を消す。」
「どの記憶を消しますか?」
なまえの疑問は当然でした。
手術室の扉の前で立ち止まったリヴァイは、チラリと隣に視線を向けます。
不思議そうに首を傾げる横顔だけではなく、ほんの小さな仕草までも、かつて愛した女そのものです。
でも、違うのです。彼女はもう、この世に存在していません。
そして、なまえは人間ですらありません。
人間が、愛する対象ではないのです———。
「ハートの海賊団に関する記憶のすべてだ。」
手術室の扉を開き、リヴァイは躊躇なく告げました。
機械へ、気遣いなど必要ないのです。
それから、リヴァイは、手術台の上になまえを座らせました。
素直に指示に従うなまえでしたが、まだ納得はしていない様子で口を開きます。
「どうして記憶を消さなければいけませんか?」
「邪魔なんだそうだ。」
リヴァイは正直に答えました。
それでも、なまえは、意味が分からない様子で首を傾げます。
『俺達に関するすべてのなまえの記憶を消してくれ。』
『———いいのか。』
『構わねぇ。アイツに、俺達の記憶は必要ねぇ。』
ローは、迷いのない目でハッキリとそう告げました。
ペンギンやシャチ、ベポとイッカク達もです。
彼らは、この船から降りるなまえから、自分達の記憶が消えることを望みました。
「ローが、そう言いましたか?」
「あぁ。お前はそもそも海軍と世界政府が作った海賊殲滅の為のアンドロイドだ。
仲間ではなくなったお前に、自分達の情報を持たせておくわけにはいかねぇんだと。
————要は、人間にはなれなぇお前と仲間ではいられねぇ、厄介な機械でしかねぇってわけだ。」
心が生まれてしまったなまえには、とても酷な話だったかもしれません。
でも、リヴァイは、ロー達から言われていた理由を、正しく伝えました。
こうしてハッキリと伝えることが、なまえの為だと思ったのです。
なまえは、瞬きもせずに、ただじっと聞いていました。
そして、しばらく黙り込んだ後、諦めたように頷きました。