◇No.68.◇そこには、生と死がありました
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男は、ローに胸ぐらを持ち上げられた格好で対峙していました。
少なくとも、シャチであれば、悲鳴を上げて身体を捻るほどの相当な痛みを与えられたはずです。
ですが、男は、眉ひとつ動かさず、自分を憎しみを込めた目で睨みつけるローを見据えます。
「俺は、お前がいてどうしてなまえが死んだのかを聞いてるんだ!!」
なまえ———。
その名前を聞いて思い浮かぶのは、ポーラータング号に残してきている自分達の仲間で、ローの恋人のなまえでした。
ですが、そうすると、ローの科白と彼女が重なりません。
だって、なまえは死んでなんかいませんし、男と知り合いだとも思えなかったのです。
ですが、男には、なまえが誰なのか理解しているらしく、平然とした様子で答えます。
「アイツは、俺より強かった。
世界を救うため、人類の為に心臓を捧げたんだ。」
「お前は、それを黙ってみてたっていうのか!?」
「俺との未来より、人類の未来を選んだアイツの死ぬほど苦しい覚悟を、
誰にも折る権利なんかなかった。誰にも…、折ることなんか、できなかった。」
「だから、逝かせたのか。」
「お前は何を怒ってるんだ。もう100年も昔の話だ。
あの日、なまえが死ななくたって、今頃はもう墓の下だ。」
彼らは、睨み合い合いながら言葉を交わしていました。
ですが、その声は全く同じで、途中でどちらが喋っているのかが分からなくなってしまったほどです。
ただ、シャチ達にも唯一分かったのは、ローは〝なまえ〟という女性の死に激しい怒りを感じていて、それは彼女を守り切れなかった男のせいなのだろう、ということです。
でも、それでも分からないのです。
なまえとは、誰のことを言っているのか、シャチ達は理解できません。
だって、なまえは生きているじゃなか———。
「お前は生きてる!なまえだって、死なずに済んだなら
あんな———。」
「お前には、俺が生きてるように見えるのか?」
男は、訊ねました。
まるで、感情など存在しないかのような、淡々とした口調でした。
だからこそ、シャチには、耳をかきむしりたくなるほどに嫌な音に響いたのです。
少なくとも、シャチであれば、悲鳴を上げて身体を捻るほどの相当な痛みを与えられたはずです。
ですが、男は、眉ひとつ動かさず、自分を憎しみを込めた目で睨みつけるローを見据えます。
「俺は、お前がいてどうしてなまえが死んだのかを聞いてるんだ!!」
なまえ———。
その名前を聞いて思い浮かぶのは、ポーラータング号に残してきている自分達の仲間で、ローの恋人のなまえでした。
ですが、そうすると、ローの科白と彼女が重なりません。
だって、なまえは死んでなんかいませんし、男と知り合いだとも思えなかったのです。
ですが、男には、なまえが誰なのか理解しているらしく、平然とした様子で答えます。
「アイツは、俺より強かった。
世界を救うため、人類の為に心臓を捧げたんだ。」
「お前は、それを黙ってみてたっていうのか!?」
「俺との未来より、人類の未来を選んだアイツの死ぬほど苦しい覚悟を、
誰にも折る権利なんかなかった。誰にも…、折ることなんか、できなかった。」
「だから、逝かせたのか。」
「お前は何を怒ってるんだ。もう100年も昔の話だ。
あの日、なまえが死ななくたって、今頃はもう墓の下だ。」
彼らは、睨み合い合いながら言葉を交わしていました。
ですが、その声は全く同じで、途中でどちらが喋っているのかが分からなくなってしまったほどです。
ただ、シャチ達にも唯一分かったのは、ローは〝なまえ〟という女性の死に激しい怒りを感じていて、それは彼女を守り切れなかった男のせいなのだろう、ということです。
でも、それでも分からないのです。
なまえとは、誰のことを言っているのか、シャチ達は理解できません。
だって、なまえは生きているじゃなか———。
「お前は生きてる!なまえだって、死なずに済んだなら
あんな———。」
「お前には、俺が生きてるように見えるのか?」
男は、訊ねました。
まるで、感情など存在しないかのような、淡々とした口調でした。
だからこそ、シャチには、耳をかきむしりたくなるほどに嫌な音に響いたのです。