◇No.59◇儚く美しい光に願いをかけます
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その日の真夜中、ローは、なまえを連れて裏甲板へやって来ていました。
メイクを喜んで貰えず元気のないなまえの機嫌をどうにかして直そうかと考えていたところで、前回の島で買った花火が残っているのを見つけたのです。
激しい花火だけにしか興味がなかった海賊達が遊んだ余りなので、線香花火しかありませんでしたが、なまえに危ない花火を触らせたくないローにとっては、むしろ幸運でした。
見張りを残し、船員達が寝静まったポーラータング号の甲板には、静かな波の音と淡い月明かりしかありませんでした。
「線香花火ですね。」
袋の中から線香花火を取り出すローの手元を、なまえが覗き込みます。
「知ってたのか。」
「はい、おまじないがあります。」
「あぁ…、そうだったな。」
ローは、遠い昔に、幼い妹が楽しそうに線香花火を見つめているのを思い出しました。
『最後まで火が落ちなかったら願いが叶うのよ。』
線香花火をワクワクした目で見ながら、確か、彼女はそんな風に言っていました。
海賊を殲滅させるために生まれたなまえが、線香花火のおまじないを知っていたのは意外でしたが、久しぶりに思い出した幸せだった頃の遠い記憶に、胸の痛みと共に、温かさを感じました。
きっと、隣になまえがいなければ、ただ苦しいだけの過去だったはずです。
胸が張り裂けそうなほどに痛くなるせいで、必死に忘れようとしていた妹の笑顔まで思い出せたのは、なまえのおかげでした。
「はい。ローは、いつも下手でした。
今夜も私の勝ちです。」
自然な流れで出て来たなまえのその台詞は、ローの片眉を上げさせます。
同時に、マッチ棒を箱に擦りつけようとしていた手が、ピタリと止まりました。
今まで、なまえから昔の話を聞いたことはありました。
そのほとんどすべてが、海軍での研究施設のことや博士のことでした。
ですが、今のは違います。
想い出の話の中に、自分の名前が出て来たのです。
今初めて、彼女の前に余った線香花火を出しただけのローには、そんな記憶は、当然ありません。
「…そうだったか?」
「はい、そうです。私のお願いをいつもローが…
叶えてくれましたか?」
なまえも、自分で言いながら矛盾に気づいたのか、首を傾げながらローに訊ねます。
彼女が、記憶というデータを間違えるのを見るのは、初めてでした。
故障ではいけないので、後で、機械の得意な船員に見せた方がいいかもしれません。
あぁ、こんなとき———。
もしも、なまえが人間ならば、医者のローは、自分が診てやれるのに、とどうしても思ってしまいます。
「これからは、俺がお前の願いをなんだって叶えてやるよ。」
ローは、彼女の間違いを否定せずに、頭をクシャリと撫でました。
メイクを喜んで貰えず元気のないなまえの機嫌をどうにかして直そうかと考えていたところで、前回の島で買った花火が残っているのを見つけたのです。
激しい花火だけにしか興味がなかった海賊達が遊んだ余りなので、線香花火しかありませんでしたが、なまえに危ない花火を触らせたくないローにとっては、むしろ幸運でした。
見張りを残し、船員達が寝静まったポーラータング号の甲板には、静かな波の音と淡い月明かりしかありませんでした。
「線香花火ですね。」
袋の中から線香花火を取り出すローの手元を、なまえが覗き込みます。
「知ってたのか。」
「はい、おまじないがあります。」
「あぁ…、そうだったな。」
ローは、遠い昔に、幼い妹が楽しそうに線香花火を見つめているのを思い出しました。
『最後まで火が落ちなかったら願いが叶うのよ。』
線香花火をワクワクした目で見ながら、確か、彼女はそんな風に言っていました。
海賊を殲滅させるために生まれたなまえが、線香花火のおまじないを知っていたのは意外でしたが、久しぶりに思い出した幸せだった頃の遠い記憶に、胸の痛みと共に、温かさを感じました。
きっと、隣になまえがいなければ、ただ苦しいだけの過去だったはずです。
胸が張り裂けそうなほどに痛くなるせいで、必死に忘れようとしていた妹の笑顔まで思い出せたのは、なまえのおかげでした。
「はい。ローは、いつも下手でした。
今夜も私の勝ちです。」
自然な流れで出て来たなまえのその台詞は、ローの片眉を上げさせます。
同時に、マッチ棒を箱に擦りつけようとしていた手が、ピタリと止まりました。
今まで、なまえから昔の話を聞いたことはありました。
そのほとんどすべてが、海軍での研究施設のことや博士のことでした。
ですが、今のは違います。
想い出の話の中に、自分の名前が出て来たのです。
今初めて、彼女の前に余った線香花火を出しただけのローには、そんな記憶は、当然ありません。
「…そうだったか?」
「はい、そうです。私のお願いをいつもローが…
叶えてくれましたか?」
なまえも、自分で言いながら矛盾に気づいたのか、首を傾げながらローに訊ねます。
彼女が、記憶というデータを間違えるのを見るのは、初めてでした。
故障ではいけないので、後で、機械の得意な船員に見せた方がいいかもしれません。
あぁ、こんなとき———。
もしも、なまえが人間ならば、医者のローは、自分が診てやれるのに、とどうしても思ってしまいます。
「これからは、俺がお前の願いをなんだって叶えてやるよ。」
ローは、彼女の間違いを否定せずに、頭をクシャリと撫でました。