◇No.56◇貴方が見せてくれた花火は記憶で永遠になります
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そのときが始まることを教える口笛のような高い音が響き、海水浴場へ集まっている人達の視線を夜空が独り占めしました。
あっという間に打ちあがった花火は、大きな破裂音と共に、夜空に大輪の花を咲かせました。
次から次に、夜空が歌うような口笛が響いては、色とりどりの大輪の花が夜空を彩ります。
(こんな風に…。)
こんな風に、自分や仲間が消えてしまったあとも、なまえが寂しいと思う暇すらなく、また次々に新しい誰かが現れてくれるでしょうか。
その誰かは、歌うような優しい声で愛の花を咲かせて、なまえの隣で笑ってくれるでしょうか。
そんな未来があれば、それはとても素晴らしいことです。
ローやイッカク達は、安心して、その瞳を閉じることが出来るでしょう。
でも、本当は———。
出来るのならば————。
花火を見上げていたローは、隣にいるなまえに視線を移しました。
なまえは、ただじっと、真っすぐに夜空を見上げていました。
真剣なその横顔を、色とりどりの光が、目まぐるしく照らします。
それは、ローがいつも見ている、なまえのたくさんの表情のようでした。
瞳を輝かせていたり、嬉しそうだったり、寂しそうだったり、悔しそうにしていることもありますし、ムッとしていることもあります。
なまえのたくさんの表情を、これからもずっと、隣で見ていきたい———。
他の誰かではなく、自分が、なまえの隣にいたい———。
それが、正直なローの願いです。
叶わないことは分かっていても、どうしても、そう願わずにはいられません。
シートの上に、無防備に放り出されていたなまえの手に、ローは、自分の手を重ねました。
ギュッと握りしめれば、夜空に咲く花火を見上げていたなまえが、視線をローに移しました。
「花火は、好きです。ローにそっくりです。」
「俺に?」
花火に似ているなんて言われたのは、初めてでした。
それに、花火というのは、人と似ているという括りで語るものではありません。
ですが、なまえは続けます。
「私に、たくさんの色をした綺麗な光を見せてくれます。
ローは、私の花火です。キラキラ輝いて、私の夜を照らしてくれます。
だから、私は、花火が大好きになりました。今日は、誘ってくれてありがとうございます。」
「…どういたしまして。」
ローはなまえの肩を抱き寄せると、そっと目を閉じました。
また真剣に花火を見上げだしたなまえは、気づいているのでしょうか。
ローにそっくりだと言ったその花火は、綺麗に咲いた花の余韻がまだ残っているうちに、たちまち消えてしまうのです。
儚く短い、人間の命のように————。
(あぁ、そうか…。確かに、そっくりだな。)
胸が、締め付けられるようでした。
だから、ローは、なまえの肩を抱き寄せる腕に力を込めます。
このまま、ひとつに繋がってしまえばいいのに———。
ローのそんな切ない願いも、花火が主役の夜では、星に届けることすら出来ません。
なまえを抱きしめて目を閉じるローの鼓膜を、花火が上がるときの口笛のような音と、大輪の花を咲かせる破裂音が、いつまでも響かせ続けていました。
あっという間に打ちあがった花火は、大きな破裂音と共に、夜空に大輪の花を咲かせました。
次から次に、夜空が歌うような口笛が響いては、色とりどりの大輪の花が夜空を彩ります。
(こんな風に…。)
こんな風に、自分や仲間が消えてしまったあとも、なまえが寂しいと思う暇すらなく、また次々に新しい誰かが現れてくれるでしょうか。
その誰かは、歌うような優しい声で愛の花を咲かせて、なまえの隣で笑ってくれるでしょうか。
そんな未来があれば、それはとても素晴らしいことです。
ローやイッカク達は、安心して、その瞳を閉じることが出来るでしょう。
でも、本当は———。
出来るのならば————。
花火を見上げていたローは、隣にいるなまえに視線を移しました。
なまえは、ただじっと、真っすぐに夜空を見上げていました。
真剣なその横顔を、色とりどりの光が、目まぐるしく照らします。
それは、ローがいつも見ている、なまえのたくさんの表情のようでした。
瞳を輝かせていたり、嬉しそうだったり、寂しそうだったり、悔しそうにしていることもありますし、ムッとしていることもあります。
なまえのたくさんの表情を、これからもずっと、隣で見ていきたい———。
他の誰かではなく、自分が、なまえの隣にいたい———。
それが、正直なローの願いです。
叶わないことは分かっていても、どうしても、そう願わずにはいられません。
シートの上に、無防備に放り出されていたなまえの手に、ローは、自分の手を重ねました。
ギュッと握りしめれば、夜空に咲く花火を見上げていたなまえが、視線をローに移しました。
「花火は、好きです。ローにそっくりです。」
「俺に?」
花火に似ているなんて言われたのは、初めてでした。
それに、花火というのは、人と似ているという括りで語るものではありません。
ですが、なまえは続けます。
「私に、たくさんの色をした綺麗な光を見せてくれます。
ローは、私の花火です。キラキラ輝いて、私の夜を照らしてくれます。
だから、私は、花火が大好きになりました。今日は、誘ってくれてありがとうございます。」
「…どういたしまして。」
ローはなまえの肩を抱き寄せると、そっと目を閉じました。
また真剣に花火を見上げだしたなまえは、気づいているのでしょうか。
ローにそっくりだと言ったその花火は、綺麗に咲いた花の余韻がまだ残っているうちに、たちまち消えてしまうのです。
儚く短い、人間の命のように————。
(あぁ、そうか…。確かに、そっくりだな。)
胸が、締め付けられるようでした。
だから、ローは、なまえの肩を抱き寄せる腕に力を込めます。
このまま、ひとつに繋がってしまえばいいのに———。
ローのそんな切ない願いも、花火が主役の夜では、星に届けることすら出来ません。
なまえを抱きしめて目を閉じるローの鼓膜を、花火が上がるときの口笛のような音と、大輪の花を咲かせる破裂音が、いつまでも響かせ続けていました。