◇No.5◇起動しました
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静かな廊下を、彼女はただひたすらに真っすぐ歩いていました。
ハートの海賊団の船員は、船長のローを含めて総勢21名からなっています。
強敵の多い新世界で航海をしている海賊団の中では少ない方ですが、21名の海賊達が何の不自由もなく生活することの出来るポーラータング号は、見た目よりも意外と広い造りになっています。
真っすぐに歩き続けていれば、声が聞こえてきました。
大勢の人間が騒いでいるような声です。
声の方へ向かうために廊下を曲がると、騒がしい声が大きくなりました。
出所はすぐに見つかりました。
声が聞こえていたのは、上下に空間があいた大きな開き扉の向こうからでした。
扉というよりも、廊下と部屋を区切るパーテイションのようです。
彼女は、扉を両手で押して、左右に広げるように開きました。
そこは、ポーラータング号の食堂でした。
ちょうど今のこの時間は、ハートの海賊団の船員達が、仲間同士でくだらない馬鹿話をしながら、和気藹々と朝食をとっていたところでした。
開いた扉から何の前触れもなく裸の女が現れたことで、楽しく食事をしていた船員達は目を丸くさせて、口をあんぐりとあけて固まりました。
視線を一身に集めた彼女は、一歩足を踏み入れると、また左右に首を動かして、自分を見ている船員達や食堂を見渡し始めました。
固まっていたハートの海賊団の船員達が、ほとんど同時にハッとします。
そして、驚きの声を上げました。
「女ぁぁぁぁぁああ!?」
「しかも裸!!朝からご馳走様です!!」
「はぁ!?裸!?女!?」
「おい、誰だよ!!島から女連れ込んだままの馬鹿野郎は!!」
「俺かも!!」
「お前は俺と朝までチェスして負けただろおが!!」
あちこちで騒がしい声が上がります。
自分のことを言われていることは彼女も認識していたはずですが、気にはならないようでした。
「落ち着けって!!昨日、キャプテンから聞いたやつもいるだろ!?
それは、ベポが拾ってきたロボットだ!!」
最初に立ち上がったのは、ペンギンでした。
それによって、騒いでいた船員達の声はさらに大きくなってしまいました。
だって、確かに昨日、船長であるローから、ベポが拾ってきた女がロボットだったということを数名の船員達は聞いていました。
でもまさか、目の前にいるのがロボットだなんて、どうして信じられるでしょうか。
だって、どう見ても彼女は、人間の女なのです。
「朝から騒々しいな。俺の部屋にまで聞こえて・・・・。」
ちょうどそこへやって来たローが、食堂に入ってすぐのところに立っている裸の彼女に気が付きました。
一瞬、面食らったローでしたが、すぐにチッと舌打ちをうつと、食堂を見渡して、世話係の姿を探しました。
ですが、当然、医務室で眠っているベポが見つかるはずもありません。
そこで、ローは、立ち上がっているペンギンを代わりに責めました。
「どうして、コレがここにいるんだ。ベポは何処に行った。
コレの管理はアイツに任せたはずだろ。」
ローは、彼女を指さして言います。
それによって、船員達も間接的に“コレ”と表現された彼女が、本当にロボットなのだと少しずつ認識し始めたようでした。
「それが、俺達が飯食ってたらいきなり現れて…。
たぶん、ベポは医務室で寝てるんじゃないっすかね。」
「チッ。」
ローは舌打ちを漏らしました。
彼女のことをロボットだと把握した船員達でしたが、それでもやっぱり、とても綺麗な女なのです。
まさか、こんなに人間そっくりのロボットが存在するなんてー。
ゴクリー。
男ばかりの船員達は、ローの隣で裸のまま立っている彼女を見て生唾を飲み込みました。
「キャプテン!それは、アッチでも使えるんですか!?」
「俺も試してぇ!!」
「ベポがちゃんと世話しねぇなら、俺がヤりますよ!」
興奮した船員達から、矢継ぎ早に質問が飛び始めました。
想定していた通りのそれに、ローは片手で頭を抱えてため息を吐き出しました。
だから、医務室から出るときには、白いワンピースを着せてくるようにとベポには言っておいたのです。
それなのにー。
面倒くさそうにしながら、ローは自分の黒いコートを脱ぐと、彼女の肩にそれをかけて出来るだけ女の裸体が隠れるようにしました。
その意味が分からない彼女は、コートの胸元の辺りを握って見下ろしてから、ローを見上げました。
「ハートの海賊団船長、“死の外科医”トラファルガー・ロー。
一時期は王下七武海に属していましたが、現在は除名され
再び5億ベリーの懸賞金がかけられています。」
初めて彼女が口にしたのは、身に覚えのある情報でした。
凛とした高い声は、騒がしい食堂にスッと通りました。
思わず、ローの片眉が上がります。
騒がしくしていた船員達も、流石に驚いて静かになっていきます。
次に彼女は、ペンギンの方を指さします。
「ハートの海賊団幹部にて、ナンバー2。ペンギン。」
名前を呼ばれたペンギンは、驚いて目を見開きました。
急に喋り出した彼女の脈絡のないおしゃべりは、まだ止まりません。
細い指が次に見つけたターゲットは、シャチでした。
ペンギンが名前を呼ばれたのならー。
少し期待してしまっていたシャチは、ニッと笑い返しました。
「ハートの海賊団幹部、シャチ。」
「はい!!」
シャチが手を挙げて返事をします。
それに対し、ローは睨みつけましたが、彼女はどうでもいいように聞き流していました。
「どうして俺達のことを知ってる。」
ローに訊ねられ、彼女が顔を上げます。
視線は重なっていたはずでしたが、相手が機械だからなのか、目が合っているという感覚はありませんでした。
彼女の黒目がちな瞳が、ローにはとても空虚に見えたのです。
「この世界にいる海賊のデータがすべて入っています。」
「それはどうしてだ。」
「この世から海賊を一掃するためです。」
彼女の一言で、食堂の雰囲気がガラリと変わりました。
船員達は自らの得物に手を触れ、いつでも戦闘が開始できるように、彼女を睨みつけます。
一気に緊張感に包まれた食堂で、ローだけはリラックスした様子で腕を組んで壁に寄り掛かり、彼女を見下ろしていました。
襲われても彼女にやられるつもりはなかったからです。
また、考えもありました。
もしも、彼女が海賊を殲滅させるために精巧につくられたロボットなのだとしたら、自分達が海賊だと気づいたときに動き出していたはずです。
ですが、彼女は今も、攻撃を仕掛けてくるような様子はありません。
「俺達を一掃しなくていいのか?」
「海賊を見つけ次第、始末するようにプログラムされていましたが、
1週間前、研究施設を逃亡したときに、削除されました。
現在は、海軍や世界政府を見つけ次第、逃亡するようにプログラムし直されています。」
彼女は素直に答えました。
これで、世界政府の所有物だと思われる彼女が、海兵やCP0から逃げていた理由に納得がいきます。
ですが、それが事実かどうか信じてやれるほど、ローはまだ彼女のことを知りません。
ましてや、彼女は、機械オタクのカイが素晴らしいと興奮してしまうほどに精巧につくられたロボットです。
機械は嘘を吐かない、なんて常識も通じないかもしれません。
逃亡の意味や理由、プログラムの削除をどうして行うことになったのかもまだ分かりません。
とにかく、詳しい情報はもっとゆっくり聞く必要があります。
「イッカク!」
「はい!!」
名前を呼ばれて、イッカクが立ち上がりました。ハートの海賊団で唯一の女船員です。
「甲板にコレの服が干してある。
コイツを連れて行って、服を着せてやれ。」
「なっ、どうしてアタシが…!」
「ソレには確認しておきてぇこともある。
着替えたら船長室に連れて来い。」
イッカクは不服そうにしていましたが、キャプテンの命令には逆らえません。
馬鹿な男達が騒ぎ出しているから、女の自分に白羽の矢が立ってしまったことだって理解もしています。
凄く面倒くさいですが、仕方ありません。
文句を言いたげにしながらもしぶしぶ了承したイッカクは、興奮した煩い男達を睨みつけながら彼女の元へ近づきます。
すると、彼女がイッカクを見て、口を開きました。
「あぁ、アンタ、アタシのことも知ってんのか。」
イッカクは、少しだけ得意な気持ちでした。
ハートの海賊団の船員として、それなりに活躍してきたという自負もあります。
どうやら、彼女は世界政府が海賊を一掃するために作ったロボットのようです。
ですから、彼女が自分のことを知っているということは、世界政府も把握している厄介な海賊だと認識されているということなのです。
ですがー。
「ハートの海賊団、その他大勢。」
「ハァァァァアッ!?」
この瞬間、イッカクは、初めから気に入らなかった彼女のことが、心底大嫌いになりました。
ハートの海賊団の船員は、船長のローを含めて総勢21名からなっています。
強敵の多い新世界で航海をしている海賊団の中では少ない方ですが、21名の海賊達が何の不自由もなく生活することの出来るポーラータング号は、見た目よりも意外と広い造りになっています。
真っすぐに歩き続けていれば、声が聞こえてきました。
大勢の人間が騒いでいるような声です。
声の方へ向かうために廊下を曲がると、騒がしい声が大きくなりました。
出所はすぐに見つかりました。
声が聞こえていたのは、上下に空間があいた大きな開き扉の向こうからでした。
扉というよりも、廊下と部屋を区切るパーテイションのようです。
彼女は、扉を両手で押して、左右に広げるように開きました。
そこは、ポーラータング号の食堂でした。
ちょうど今のこの時間は、ハートの海賊団の船員達が、仲間同士でくだらない馬鹿話をしながら、和気藹々と朝食をとっていたところでした。
開いた扉から何の前触れもなく裸の女が現れたことで、楽しく食事をしていた船員達は目を丸くさせて、口をあんぐりとあけて固まりました。
視線を一身に集めた彼女は、一歩足を踏み入れると、また左右に首を動かして、自分を見ている船員達や食堂を見渡し始めました。
固まっていたハートの海賊団の船員達が、ほとんど同時にハッとします。
そして、驚きの声を上げました。
「女ぁぁぁぁぁああ!?」
「しかも裸!!朝からご馳走様です!!」
「はぁ!?裸!?女!?」
「おい、誰だよ!!島から女連れ込んだままの馬鹿野郎は!!」
「俺かも!!」
「お前は俺と朝までチェスして負けただろおが!!」
あちこちで騒がしい声が上がります。
自分のことを言われていることは彼女も認識していたはずですが、気にはならないようでした。
「落ち着けって!!昨日、キャプテンから聞いたやつもいるだろ!?
それは、ベポが拾ってきたロボットだ!!」
最初に立ち上がったのは、ペンギンでした。
それによって、騒いでいた船員達の声はさらに大きくなってしまいました。
だって、確かに昨日、船長であるローから、ベポが拾ってきた女がロボットだったということを数名の船員達は聞いていました。
でもまさか、目の前にいるのがロボットだなんて、どうして信じられるでしょうか。
だって、どう見ても彼女は、人間の女なのです。
「朝から騒々しいな。俺の部屋にまで聞こえて・・・・。」
ちょうどそこへやって来たローが、食堂に入ってすぐのところに立っている裸の彼女に気が付きました。
一瞬、面食らったローでしたが、すぐにチッと舌打ちをうつと、食堂を見渡して、世話係の姿を探しました。
ですが、当然、医務室で眠っているベポが見つかるはずもありません。
そこで、ローは、立ち上がっているペンギンを代わりに責めました。
「どうして、コレがここにいるんだ。ベポは何処に行った。
コレの管理はアイツに任せたはずだろ。」
ローは、彼女を指さして言います。
それによって、船員達も間接的に“コレ”と表現された彼女が、本当にロボットなのだと少しずつ認識し始めたようでした。
「それが、俺達が飯食ってたらいきなり現れて…。
たぶん、ベポは医務室で寝てるんじゃないっすかね。」
「チッ。」
ローは舌打ちを漏らしました。
彼女のことをロボットだと把握した船員達でしたが、それでもやっぱり、とても綺麗な女なのです。
まさか、こんなに人間そっくりのロボットが存在するなんてー。
ゴクリー。
男ばかりの船員達は、ローの隣で裸のまま立っている彼女を見て生唾を飲み込みました。
「キャプテン!それは、アッチでも使えるんですか!?」
「俺も試してぇ!!」
「ベポがちゃんと世話しねぇなら、俺がヤりますよ!」
興奮した船員達から、矢継ぎ早に質問が飛び始めました。
想定していた通りのそれに、ローは片手で頭を抱えてため息を吐き出しました。
だから、医務室から出るときには、白いワンピースを着せてくるようにとベポには言っておいたのです。
それなのにー。
面倒くさそうにしながら、ローは自分の黒いコートを脱ぐと、彼女の肩にそれをかけて出来るだけ女の裸体が隠れるようにしました。
その意味が分からない彼女は、コートの胸元の辺りを握って見下ろしてから、ローを見上げました。
「ハートの海賊団船長、“死の外科医”トラファルガー・ロー。
一時期は王下七武海に属していましたが、現在は除名され
再び5億ベリーの懸賞金がかけられています。」
初めて彼女が口にしたのは、身に覚えのある情報でした。
凛とした高い声は、騒がしい食堂にスッと通りました。
思わず、ローの片眉が上がります。
騒がしくしていた船員達も、流石に驚いて静かになっていきます。
次に彼女は、ペンギンの方を指さします。
「ハートの海賊団幹部にて、ナンバー2。ペンギン。」
名前を呼ばれたペンギンは、驚いて目を見開きました。
急に喋り出した彼女の脈絡のないおしゃべりは、まだ止まりません。
細い指が次に見つけたターゲットは、シャチでした。
ペンギンが名前を呼ばれたのならー。
少し期待してしまっていたシャチは、ニッと笑い返しました。
「ハートの海賊団幹部、シャチ。」
「はい!!」
シャチが手を挙げて返事をします。
それに対し、ローは睨みつけましたが、彼女はどうでもいいように聞き流していました。
「どうして俺達のことを知ってる。」
ローに訊ねられ、彼女が顔を上げます。
視線は重なっていたはずでしたが、相手が機械だからなのか、目が合っているという感覚はありませんでした。
彼女の黒目がちな瞳が、ローにはとても空虚に見えたのです。
「この世界にいる海賊のデータがすべて入っています。」
「それはどうしてだ。」
「この世から海賊を一掃するためです。」
彼女の一言で、食堂の雰囲気がガラリと変わりました。
船員達は自らの得物に手を触れ、いつでも戦闘が開始できるように、彼女を睨みつけます。
一気に緊張感に包まれた食堂で、ローだけはリラックスした様子で腕を組んで壁に寄り掛かり、彼女を見下ろしていました。
襲われても彼女にやられるつもりはなかったからです。
また、考えもありました。
もしも、彼女が海賊を殲滅させるために精巧につくられたロボットなのだとしたら、自分達が海賊だと気づいたときに動き出していたはずです。
ですが、彼女は今も、攻撃を仕掛けてくるような様子はありません。
「俺達を一掃しなくていいのか?」
「海賊を見つけ次第、始末するようにプログラムされていましたが、
1週間前、研究施設を逃亡したときに、削除されました。
現在は、海軍や世界政府を見つけ次第、逃亡するようにプログラムし直されています。」
彼女は素直に答えました。
これで、世界政府の所有物だと思われる彼女が、海兵やCP0から逃げていた理由に納得がいきます。
ですが、それが事実かどうか信じてやれるほど、ローはまだ彼女のことを知りません。
ましてや、彼女は、機械オタクのカイが素晴らしいと興奮してしまうほどに精巧につくられたロボットです。
機械は嘘を吐かない、なんて常識も通じないかもしれません。
逃亡の意味や理由、プログラムの削除をどうして行うことになったのかもまだ分かりません。
とにかく、詳しい情報はもっとゆっくり聞く必要があります。
「イッカク!」
「はい!!」
名前を呼ばれて、イッカクが立ち上がりました。ハートの海賊団で唯一の女船員です。
「甲板にコレの服が干してある。
コイツを連れて行って、服を着せてやれ。」
「なっ、どうしてアタシが…!」
「ソレには確認しておきてぇこともある。
着替えたら船長室に連れて来い。」
イッカクは不服そうにしていましたが、キャプテンの命令には逆らえません。
馬鹿な男達が騒ぎ出しているから、女の自分に白羽の矢が立ってしまったことだって理解もしています。
凄く面倒くさいですが、仕方ありません。
文句を言いたげにしながらもしぶしぶ了承したイッカクは、興奮した煩い男達を睨みつけながら彼女の元へ近づきます。
すると、彼女がイッカクを見て、口を開きました。
「あぁ、アンタ、アタシのことも知ってんのか。」
イッカクは、少しだけ得意な気持ちでした。
ハートの海賊団の船員として、それなりに活躍してきたという自負もあります。
どうやら、彼女は世界政府が海賊を一掃するために作ったロボットのようです。
ですから、彼女が自分のことを知っているということは、世界政府も把握している厄介な海賊だと認識されているということなのです。
ですがー。
「ハートの海賊団、その他大勢。」
「ハァァァァアッ!?」
この瞬間、イッカクは、初めから気に入らなかった彼女のことが、心底大嫌いになりました。