◇No.47◇恐ろしいそれは身体を支配し操ります
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海岸通りに立ち並ぶ賑やかなショップが切れた先に、生い茂るヤシの木に隠れるように小さなスナックがありました。
少し距離はありましたが、そこにいる人間が見えないほど遠いわけでもありません。
スナックの入口の扉で、もう待てないとばかりに抱き合って熱い抱擁を交わしているのは、ローと美しい人、シェリーでした。
ローは、片方の手でシェリーの腰を自分の腰に押しつけ、もう片方の手で彼女の後頭部を押さえつけていました。
シェリーの赤い実のような唇をローの唇が必死に味わっています。
ほんの一瞬すら離れることを惜しむようなそれは、前に、イッカクが見せてくれた本に載っていたキスの描写に似ていました。
ローが、シェリーと交わしているそれは、なまえがローから教えて貰ってはいない〝愛の行為〟だったのです。
「なまえ!?何やってるの!?」
ベポが驚いたような声で叫びました。
だって、なまえの腕がマシンガンに変わり、それを熱い愛の行為を交わすローとシェリーに向けていたのです。
イッカク達もなまえを見て、驚きと恐怖で血の気が引きました。
声をかけることも出来ませんでした。
だって、そこにいるなまえは、彼らが知っている彼女ではなかったのです。
目の前にいる彼女は、まさしく、海軍が最高峰の知識を持って作り上げた〝殺人兵器〟そのものでした。
なまえの目は本気で『殺す!』と静かに叫んでいます。
いつもと変わらない無表情でしたが、その瞳には、怒りとも憎しみとも読める炎が燃え盛り、氷のように冷たく凍てついていました。
そのアンバランスが、彼女の本気を語っていて、恐ろしかったのです。
ベポの声が聞こえたのか、ローとシェリーもこちらを向きました。
そして、自分達に向けられた物騒な武器に驚いたようでした。
なまえと、ローの視線が重なりました。
その瞬間に、なまえは漸く、自分が何をしようとしていたのかに気がつきました。
彼女が、ハッとしたように目を見開いた途端に、マシンガンになっていた腕は、女性らしい華奢な細い腕に戻りました。
ローは、彼女の驚いた表情を以前に一度だけ見たことがありましたが、ベポ達は初めてでした。
だから、とても驚きました。
でも、自分の行動にも、目の前のすべてにも、一番驚いているのは、なまえでした。
そして、それを信じられないのもなまえだったのです。
彼女の脚は、立っているのもやっとのような状態で震えていました。
そして、見開いた目でローを凝視したまま、震えながら、何かから逃げるように、ほんの数センチずつ、後退ります。
「なまえ、どうしちゃったの…っ。
最近、変だよ…っ。おかしいよ…!」
ベポが、なまえの肩を掴みました。
ここ最近ずっと、彼女のことが心配で仕方なかったベポは、泣いてしまいそうでした。
いつもの無邪気な彼女に戻ってほしい、それだけなのです。
ですが、今のなまえに、それは到底無理な話でした。
彼女は、戸惑っていたのです。
この頃には、焦げ付くような痛みは堪えきれないほどにまで膨れ上がり、彼女の身体を蝕んでいました。
どうすればいいのか分からず、混乱するばかりだったのです。
今の彼女に分かるのは、自分が、この場所に居続けていけないということだけでした。
まるで荒ぶる刃のようになってしまった自分の腕を、なまえは必死に押さえ込みます。
そうしていないと、また、マシンガンを向けてしまいそうだったのです。
そんなこと選択していないのに、意識とは違うところで、身体が勝手に動くのです。
まるで、何か得体のしれないものに身体を支配され、操られているようでした。
本当に怖かったのは、ベポ達ではなく、なまえです。
だから、なまえは、地面を蹴りました。
「あ!!なまえ!!!待てよ!!」
背中を向けて駆けだしたなまえに、イッカクが手を伸ばしました。
でも、人間ではありえない速さで走り去る彼女には、どんなに急いだって追いつけそうにありません。
それに、追いかけるべきでは、自分ではないことをイッカクは知っていました。
ペンギンも、シャチも、ベポでさえも、知っていました。
だって、彼女は————。
少し距離はありましたが、そこにいる人間が見えないほど遠いわけでもありません。
スナックの入口の扉で、もう待てないとばかりに抱き合って熱い抱擁を交わしているのは、ローと美しい人、シェリーでした。
ローは、片方の手でシェリーの腰を自分の腰に押しつけ、もう片方の手で彼女の後頭部を押さえつけていました。
シェリーの赤い実のような唇をローの唇が必死に味わっています。
ほんの一瞬すら離れることを惜しむようなそれは、前に、イッカクが見せてくれた本に載っていたキスの描写に似ていました。
ローが、シェリーと交わしているそれは、なまえがローから教えて貰ってはいない〝愛の行為〟だったのです。
「なまえ!?何やってるの!?」
ベポが驚いたような声で叫びました。
だって、なまえの腕がマシンガンに変わり、それを熱い愛の行為を交わすローとシェリーに向けていたのです。
イッカク達もなまえを見て、驚きと恐怖で血の気が引きました。
声をかけることも出来ませんでした。
だって、そこにいるなまえは、彼らが知っている彼女ではなかったのです。
目の前にいる彼女は、まさしく、海軍が最高峰の知識を持って作り上げた〝殺人兵器〟そのものでした。
なまえの目は本気で『殺す!』と静かに叫んでいます。
いつもと変わらない無表情でしたが、その瞳には、怒りとも憎しみとも読める炎が燃え盛り、氷のように冷たく凍てついていました。
そのアンバランスが、彼女の本気を語っていて、恐ろしかったのです。
ベポの声が聞こえたのか、ローとシェリーもこちらを向きました。
そして、自分達に向けられた物騒な武器に驚いたようでした。
なまえと、ローの視線が重なりました。
その瞬間に、なまえは漸く、自分が何をしようとしていたのかに気がつきました。
彼女が、ハッとしたように目を見開いた途端に、マシンガンになっていた腕は、女性らしい華奢な細い腕に戻りました。
ローは、彼女の驚いた表情を以前に一度だけ見たことがありましたが、ベポ達は初めてでした。
だから、とても驚きました。
でも、自分の行動にも、目の前のすべてにも、一番驚いているのは、なまえでした。
そして、それを信じられないのもなまえだったのです。
彼女の脚は、立っているのもやっとのような状態で震えていました。
そして、見開いた目でローを凝視したまま、震えながら、何かから逃げるように、ほんの数センチずつ、後退ります。
「なまえ、どうしちゃったの…っ。
最近、変だよ…っ。おかしいよ…!」
ベポが、なまえの肩を掴みました。
ここ最近ずっと、彼女のことが心配で仕方なかったベポは、泣いてしまいそうでした。
いつもの無邪気な彼女に戻ってほしい、それだけなのです。
ですが、今のなまえに、それは到底無理な話でした。
彼女は、戸惑っていたのです。
この頃には、焦げ付くような痛みは堪えきれないほどにまで膨れ上がり、彼女の身体を蝕んでいました。
どうすればいいのか分からず、混乱するばかりだったのです。
今の彼女に分かるのは、自分が、この場所に居続けていけないということだけでした。
まるで荒ぶる刃のようになってしまった自分の腕を、なまえは必死に押さえ込みます。
そうしていないと、また、マシンガンを向けてしまいそうだったのです。
そんなこと選択していないのに、意識とは違うところで、身体が勝手に動くのです。
まるで、何か得体のしれないものに身体を支配され、操られているようでした。
本当に怖かったのは、ベポ達ではなく、なまえです。
だから、なまえは、地面を蹴りました。
「あ!!なまえ!!!待てよ!!」
背中を向けて駆けだしたなまえに、イッカクが手を伸ばしました。
でも、人間ではありえない速さで走り去る彼女には、どんなに急いだって追いつけそうにありません。
それに、追いかけるべきでは、自分ではないことをイッカクは知っていました。
ペンギンも、シャチも、ベポでさえも、知っていました。
だって、彼女は————。