◇No.43◇だからやっぱり、彼女は泣くのでしょう
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数日、船を離れていた偵察班が戻って来たのは、その日の夕方でした。
早速、船長室では、新しく手に入った情報を元に、次の冒険の計画が話し合われていました。
メンバーは、この部屋の主で船長であるローと航海士のベポ、それから、船長の右腕達であるペンギンとシャチです。
雑談を交えながらの話し合いの中、シャチが、言いたくてウズウズしているという様子で、口を開きました。
「昼間、なまえが、裏甲板で1人でボーッと座ってたんですけど
何してたと思います?」
シャチは、ローテーブルを挟んで、向かいのソファに座って航海図を見ていたローに、そう訊ねました。
楽しいクイズのつもりだったのでしょうが、その途端に、ローから放たれる空気がピリついたものに変わったのに、ペンギンだけが気づきました。
「どうでもいい。」
「聞いて驚いてくださいよ!!
実は、なまえ・・・・・泣いてたんですよ!!」
空気を読まないシャチは、聞きたくないと暗に言ったはずのロ―の言葉も無視して、クイズの答えを教えました。
そのとき、見開かれたローの目に、罪悪感のようなものが浮かんだのを、ペンギンは見逃しませんでした。
ロボットのなまえが泣いていたという話を聞いて驚くのは分かります。
ですが、ローは確かに、何か後ろめたいことがあるような、そんな表情を浮かべたのです。
「本当に、泣いてたのか?」
ローは、確かめるように、シャチに訊ねました。
自分のクイズに興味を持ってもらえて、シャチは嬉しいようでした。
だから、気づかなかったようです。
ローの聞き方は、ロボットが泣くわけがないと信じられないという様子でも、驚きでもありませんでした。
そう、まるで———。
まるで、泣いてくれて嬉しいような———。
泣いていてほしいような————。
罪悪感が浮かんだ表情はそのままでしたから、余計に、ペンギンは違和感を覚えました。
「オイル漏れですよ。」
答えを勿体ぶっているシャチが面倒で、ペンギンが教えてやりました。
ネタバラシをするなと騒いでいるシャチを無視して、ペンギンは、ローの反応を見ていました。
オイル漏れだと聞いた途端、ローは少しだけ眉を顰めて、僅かに目を伏せました。
期待外れの答えに、ガッカリしているのは、明らかでした。
ペンギンは眉を顰めました。
話し合いが終わって、ベポとシャチが船長室を出て行きますが、ペンギンだけは残って、扉を閉めました。
ソファに座って、書類を見ながら計画した内容を確認していたローが、残っているペンギンに気づいて訝し気に口を開きました。
「どうした。何か確認しておきてぇことでも———。」
「なまえを泣かせたのって、キャプテンなんですか?」
他に誰もいない空間で遠回しにするのも馬鹿馬鹿しく、ペンギンはハッキリと疑問を投げかけました。
書類を持っていたローの手に力が入ったらしく、クシャリと紙が歪みました。
「オイル漏れだったんだろ。そもそも、機械が泣くわけがねぇ。
くだらねぇ質問をするんじゃねぇ。」
ローは、とても不愉快そうに言って、持っていた書類をテーブルの上に投げ落としました。
「はい、そうです。でも、原因は、目の辺りの電子部品がショートして破損したことです。
そうなってしまったのにも、何か原因があるはずでしょう。
それが、キャプテンなんじゃないんですか?」
「俺が何をしたって、アレが壊れることはねぇ。」
ローは、吐き出すように言いました。
拗ねてるように見えるその様子に、ペンギンの眉間の皴は深くなるばかりです。
少し前までは、お互いを気に掛けているように見えていたのに、今では、ローはなまえの名前すら口にしたくないようでした。
わざわざ彼女のことを〝アレ〟と呼ぶなんて、仲間を大切にする彼らしくありませんでした。
「最近、一緒にバーにも行ってないみたいですよね。
毎晩誘ってるのに、行かねぇって言われるって、なまえ、寂しそうにしてますよ。」
「機械が、寂しいなんて思うわけねぇだろ。お前の勘違いだ。
——わかったら、さっさと出て行け。」
ローはそれだけ冷たく言うと、立ち上がってデスクの椅子を引き、ペンギンに背を向けました。
話は終わりだ———、冷たい背中の無言の圧力を感じて、ペンギンは、軽く頭を下げてから船長室を出ました。
裏甲板に出ると、なまえが、船縁に座って、夕陽が沈んでいくのをじっと眺めていました。
真っ赤な夕陽に照らされた頬は赤く染まり、とても綺麗でした。
でも、胸がギュッと締め付けられる痛みも同時に感じたのです。
それはきっと、彼女の横顔が泣いているように見えたからでしょう。
機械が泣くわけがないことは、分かっています。
でも、彼女に心がないなんて、思っていません。
ローだって、そうだったはずなのに————。
一体、どうしてしまったというのでしょうか。
ペンギンには、分かりませんでした。
きっと、なまえにも、分からないのでしょう。
だから毎晩、ローの元を訪れるのです、きっと———。
「なまえ!!今日は、俺達と一緒にトランプパーティーするか!!」
ペンギンは、明るく振舞って声を掛けました。
なまえが振り返ります。そして、いつもの無表情で首を横に振りました。
「いいえ、今夜も、私はローと一緒にバーに行きます。」
なまえが、当然のようにそう答えるから、ペンギンの方が、泣いてしまいそうでした。
きっと今夜も、断られて、独りきりで寂しそうに廊下を歩くことになるのに———。
早速、船長室では、新しく手に入った情報を元に、次の冒険の計画が話し合われていました。
メンバーは、この部屋の主で船長であるローと航海士のベポ、それから、船長の右腕達であるペンギンとシャチです。
雑談を交えながらの話し合いの中、シャチが、言いたくてウズウズしているという様子で、口を開きました。
「昼間、なまえが、裏甲板で1人でボーッと座ってたんですけど
何してたと思います?」
シャチは、ローテーブルを挟んで、向かいのソファに座って航海図を見ていたローに、そう訊ねました。
楽しいクイズのつもりだったのでしょうが、その途端に、ローから放たれる空気がピリついたものに変わったのに、ペンギンだけが気づきました。
「どうでもいい。」
「聞いて驚いてくださいよ!!
実は、なまえ・・・・・泣いてたんですよ!!」
空気を読まないシャチは、聞きたくないと暗に言ったはずのロ―の言葉も無視して、クイズの答えを教えました。
そのとき、見開かれたローの目に、罪悪感のようなものが浮かんだのを、ペンギンは見逃しませんでした。
ロボットのなまえが泣いていたという話を聞いて驚くのは分かります。
ですが、ローは確かに、何か後ろめたいことがあるような、そんな表情を浮かべたのです。
「本当に、泣いてたのか?」
ローは、確かめるように、シャチに訊ねました。
自分のクイズに興味を持ってもらえて、シャチは嬉しいようでした。
だから、気づかなかったようです。
ローの聞き方は、ロボットが泣くわけがないと信じられないという様子でも、驚きでもありませんでした。
そう、まるで———。
まるで、泣いてくれて嬉しいような———。
泣いていてほしいような————。
罪悪感が浮かんだ表情はそのままでしたから、余計に、ペンギンは違和感を覚えました。
「オイル漏れですよ。」
答えを勿体ぶっているシャチが面倒で、ペンギンが教えてやりました。
ネタバラシをするなと騒いでいるシャチを無視して、ペンギンは、ローの反応を見ていました。
オイル漏れだと聞いた途端、ローは少しだけ眉を顰めて、僅かに目を伏せました。
期待外れの答えに、ガッカリしているのは、明らかでした。
ペンギンは眉を顰めました。
話し合いが終わって、ベポとシャチが船長室を出て行きますが、ペンギンだけは残って、扉を閉めました。
ソファに座って、書類を見ながら計画した内容を確認していたローが、残っているペンギンに気づいて訝し気に口を開きました。
「どうした。何か確認しておきてぇことでも———。」
「なまえを泣かせたのって、キャプテンなんですか?」
他に誰もいない空間で遠回しにするのも馬鹿馬鹿しく、ペンギンはハッキリと疑問を投げかけました。
書類を持っていたローの手に力が入ったらしく、クシャリと紙が歪みました。
「オイル漏れだったんだろ。そもそも、機械が泣くわけがねぇ。
くだらねぇ質問をするんじゃねぇ。」
ローは、とても不愉快そうに言って、持っていた書類をテーブルの上に投げ落としました。
「はい、そうです。でも、原因は、目の辺りの電子部品がショートして破損したことです。
そうなってしまったのにも、何か原因があるはずでしょう。
それが、キャプテンなんじゃないんですか?」
「俺が何をしたって、アレが壊れることはねぇ。」
ローは、吐き出すように言いました。
拗ねてるように見えるその様子に、ペンギンの眉間の皴は深くなるばかりです。
少し前までは、お互いを気に掛けているように見えていたのに、今では、ローはなまえの名前すら口にしたくないようでした。
わざわざ彼女のことを〝アレ〟と呼ぶなんて、仲間を大切にする彼らしくありませんでした。
「最近、一緒にバーにも行ってないみたいですよね。
毎晩誘ってるのに、行かねぇって言われるって、なまえ、寂しそうにしてますよ。」
「機械が、寂しいなんて思うわけねぇだろ。お前の勘違いだ。
——わかったら、さっさと出て行け。」
ローはそれだけ冷たく言うと、立ち上がってデスクの椅子を引き、ペンギンに背を向けました。
話は終わりだ———、冷たい背中の無言の圧力を感じて、ペンギンは、軽く頭を下げてから船長室を出ました。
裏甲板に出ると、なまえが、船縁に座って、夕陽が沈んでいくのをじっと眺めていました。
真っ赤な夕陽に照らされた頬は赤く染まり、とても綺麗でした。
でも、胸がギュッと締め付けられる痛みも同時に感じたのです。
それはきっと、彼女の横顔が泣いているように見えたからでしょう。
機械が泣くわけがないことは、分かっています。
でも、彼女に心がないなんて、思っていません。
ローだって、そうだったはずなのに————。
一体、どうしてしまったというのでしょうか。
ペンギンには、分かりませんでした。
きっと、なまえにも、分からないのでしょう。
だから毎晩、ローの元を訪れるのです、きっと———。
「なまえ!!今日は、俺達と一緒にトランプパーティーするか!!」
ペンギンは、明るく振舞って声を掛けました。
なまえが振り返ります。そして、いつもの無表情で首を横に振りました。
「いいえ、今夜も、私はローと一緒にバーに行きます。」
なまえが、当然のようにそう答えるから、ペンギンの方が、泣いてしまいそうでした。
きっと今夜も、断られて、独りきりで寂しそうに廊下を歩くことになるのに———。