◇26ページ◇飲み会
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居酒屋を出た頃にはもう、終電の時間は過ぎていた。
終電に間に合うように帰ったペトラとニファ以外は、居酒屋の外でこれから二次会に行こうかと盛り上がっているようだったが、俺はその話には参加せずに何の連絡もこないスマホに苛立っていた。
「名前ちゃんから連絡ないんですか?」
エルドに訊ねられて、スマホを睨みつけていた顔を上げた。
こういうのに気づくのはいつもエルドだった。
それが、女にモテる所以なのだろうと、最近よく思う。
「よっぽど楽しんでるみてぇだな。」
今日は帰らないつもりなのかもしれないー。
俺は、スマホをズボンの後ろポケットに押し込んだ。
二次会はカラオケに決まったらしく、主役の俺は強制参加だとエルヴィンから命令が出た。
面倒くさそうにする俺をハンジが引っ張って歩き出そうとしたときだった。
「あれ?エレン達はどこに行ったの?」
聞き覚えのある名前に、俺は声のする方へ視線を向けた。
斜め向かいの飲み屋が幾つも入っている雑居ビルの前に、街路樹をぐるりと囲むベンチがある。
そこに、若者達の集団があった。
「先にダーツバー行って、場所取りしてるってよ!」
スマホで電話をしていたガタイのいい男が少し大きな声で、友人達に聞こえるように言った。
その隣にいる細長いと表現するのがしっくりくるような背の高い男が、そういうことかと納得するように頷いていた。
「ジャンはどうする?」
そばかすの男が訊ねたのは、長髪が死ぬほど似合わないあの男だった。
橋の上で会ったことがある。名前が幼馴染だと言っていた男だ。
「俺はこの酔っ払いを連れて帰るわ。」
ジャンと呼ばれた男が指さしたのは、街路樹を囲むベンチの上をスキップで歩いている若い女だった。
「ねぇ、リヴァイ。あれ、名前じゃない?」
「そうみてぇだな。」
「へぇ、すぐ近くで呑んでたんだ。」
ハンジも気づいたようで、俺に声をかければ、モブリット達も若者の集団に視線を向けた。
俺が遠の昔に通り過ぎた世界に、名前はいた。
酔っ払いの名前は俺達の視線には全く気付かず、友人達と陽気にお喋りをしていた。
「見て見てっ、フワフワするの~。
私、魔法の絨毯に乗ってない?」
「名前、フワフワじゃなくて、フラフラしてるんだよ。
危ないから降りて。ほら、私が支えてあげるから。」
「さすが、私のヒストリアは優しいなぁ。
ジャン坊、酔っ払いは魔法の絨毯に乗って帰る気らしいぜ~。」
満面の笑みで、とても楽しそうだ。
俺の前にいるときの名前の笑顔とは違っていた。
本当の名前を初めて見た気がした。
「帰る。」
気づいたら、俺はハンジの手を振り払っていた。
何かを考えたわけじゃない。
名前の元へ足が向かったのは、無意識だった。
「へぇ。なんだかんだリヴァイもその気なんだ。」
「ハンジさん…、いいんですか?名前ちゃんの正体、分かったんでしょう?」
「あぁ、だから、面白いじゃないか。」
「そんな…!面白がるところじゃないですよ。
名前ちゃんは、いつか消えてしまうんですよ。
それなのに、もし、リヴァイさんが本気になってしまったらー。」
「そのときは、自分でどうにかすればいいだけさ。
ザックレーが、もう二度と誰かのために人生を諦めないと誓わせたらしいし。
もう二度と誰かに何も奪われたくないって、リヴァイの気持ちが本物ならね。」
ハンジとモブリットがそんな会話を交わしていた頃、俺はただまっすぐに名前の元へ向かって歩いていた。
終電に間に合うように帰ったペトラとニファ以外は、居酒屋の外でこれから二次会に行こうかと盛り上がっているようだったが、俺はその話には参加せずに何の連絡もこないスマホに苛立っていた。
「名前ちゃんから連絡ないんですか?」
エルドに訊ねられて、スマホを睨みつけていた顔を上げた。
こういうのに気づくのはいつもエルドだった。
それが、女にモテる所以なのだろうと、最近よく思う。
「よっぽど楽しんでるみてぇだな。」
今日は帰らないつもりなのかもしれないー。
俺は、スマホをズボンの後ろポケットに押し込んだ。
二次会はカラオケに決まったらしく、主役の俺は強制参加だとエルヴィンから命令が出た。
面倒くさそうにする俺をハンジが引っ張って歩き出そうとしたときだった。
「あれ?エレン達はどこに行ったの?」
聞き覚えのある名前に、俺は声のする方へ視線を向けた。
斜め向かいの飲み屋が幾つも入っている雑居ビルの前に、街路樹をぐるりと囲むベンチがある。
そこに、若者達の集団があった。
「先にダーツバー行って、場所取りしてるってよ!」
スマホで電話をしていたガタイのいい男が少し大きな声で、友人達に聞こえるように言った。
その隣にいる細長いと表現するのがしっくりくるような背の高い男が、そういうことかと納得するように頷いていた。
「ジャンはどうする?」
そばかすの男が訊ねたのは、長髪が死ぬほど似合わないあの男だった。
橋の上で会ったことがある。名前が幼馴染だと言っていた男だ。
「俺はこの酔っ払いを連れて帰るわ。」
ジャンと呼ばれた男が指さしたのは、街路樹を囲むベンチの上をスキップで歩いている若い女だった。
「ねぇ、リヴァイ。あれ、名前じゃない?」
「そうみてぇだな。」
「へぇ、すぐ近くで呑んでたんだ。」
ハンジも気づいたようで、俺に声をかければ、モブリット達も若者の集団に視線を向けた。
俺が遠の昔に通り過ぎた世界に、名前はいた。
酔っ払いの名前は俺達の視線には全く気付かず、友人達と陽気にお喋りをしていた。
「見て見てっ、フワフワするの~。
私、魔法の絨毯に乗ってない?」
「名前、フワフワじゃなくて、フラフラしてるんだよ。
危ないから降りて。ほら、私が支えてあげるから。」
「さすが、私のヒストリアは優しいなぁ。
ジャン坊、酔っ払いは魔法の絨毯に乗って帰る気らしいぜ~。」
満面の笑みで、とても楽しそうだ。
俺の前にいるときの名前の笑顔とは違っていた。
本当の名前を初めて見た気がした。
「帰る。」
気づいたら、俺はハンジの手を振り払っていた。
何かを考えたわけじゃない。
名前の元へ足が向かったのは、無意識だった。
「へぇ。なんだかんだリヴァイもその気なんだ。」
「ハンジさん…、いいんですか?名前ちゃんの正体、分かったんでしょう?」
「あぁ、だから、面白いじゃないか。」
「そんな…!面白がるところじゃないですよ。
名前ちゃんは、いつか消えてしまうんですよ。
それなのに、もし、リヴァイさんが本気になってしまったらー。」
「そのときは、自分でどうにかすればいいだけさ。
ザックレーが、もう二度と誰かのために人生を諦めないと誓わせたらしいし。
もう二度と誰かに何も奪われたくないって、リヴァイの気持ちが本物ならね。」
ハンジとモブリットがそんな会話を交わしていた頃、俺はただまっすぐに名前の元へ向かって歩いていた。