◇25ページ◇学生
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼食を終えた俺は、食後の一服をするために研究施設の裏庭に来ていた。
研究施設には不必要としか思えない立派な庭園もあるのだが、そこではピクニックと勘違いした女子社員達がシートを広げてお喋りをしながら弁当を食べていることが多く、落ち着かない。
静かなところでボーッとしたいときは、裏庭が一番いい。
建物の壁に寄り掛かって、慣れた手つきで煙草に火をつけた俺は、白い煙を空に吐き出した。
「------。」
どこからか人の声がしてきて、俺は寄り掛かっていた身体を起こした。
俺と似たようなことを考えたのか、その誰かもこの裏庭に向かって歩いているようで、少しずつ声がハッキリしてきた。
「すごく大変だったんだから、こういうことはこれっきりにしてくれよ。
-----ー分かってるよ、心配性だな、ジャン。連絡きたら、すぐに消すから。
------絶対だからね。今日は特上カルビを奢ってよ。食べ放題はダメだよ。」
聞き覚えのある声と話し方、研修で来た学生のアルミンのようだった。
電話をしながらやって来たアルミンは、煙草を吸っている俺を見つけるとぎょっとした顔をした。
「ごめん、切る…!じゃあ、7時にいつものとこで!」
アルミンは慌てた様子で電話を切った。
気まずい顔をされたが、このまますぐに踵を返すのは失礼だと思ったのか、躊躇いがちに隣に並んで話しかけてきた。
「今日はお世話になりました。」
「あぁ、ほんとにな。」
「…本当に、すみません。」
「特上カルビが食えるくらい腹が治ってよかったな。」
「あ…。はい…。よかったです…。」
目を伏せたアルミンをチラりと見て、俺は、煙草の煙を吐き出した。
午後は、研修に来た学生達の相手はペトラとオルオに任せて、研究施設の案内を頼んでいる。
腕時計を確認すると、まだ午後の就業時間までもう少しあった。
「リヴァイさんって、恋人いますか?」
会話をしないと気まずいとでも思ったのか、アルミンがプライベートな質問をしてきた。
どうして学生にそんなことを答えなければならないのか。
俺は、思い切り引き気味で、アルミンを見ながら答えた。
「・・・・・・・・いや。」
「僕の友達が、あ、今電話してた友達なんですけど
ずっと好きな娘がいるんです。」
「へぇ。」
学生の恋愛話を聞かされている理由が分からないまま、適当に相槌を打って、煙草を吸った。
「片想いしてるのなんて、友達みんなにバレバレなのに、
その娘だけは気づかないんですよ。」
「鈍感なのか。」
「ん~…、どうなんだろう?その娘も好きな人がいるんです。
たぶん、その娘は、その人しか見えてないんだと思います。
だから、アウトオブ眼中ってやつですね。」
「あぁ…、何て言うか。どんまいだな。」
「まぁ、どっちにしろ、気づいてもらえても叶わない恋なんですけどね。」
「辛辣だな。」
「だって、仕方ないですよ。
どうしても叶わない恋って、あると思うから。」
アルミンはそう言うと、自分のスマホを確認した。
ミカサから、どこにいるのかとLINEが届いたらしく、施設の中へと戻って行った。
足音が遠くなって聞こえなくなる頃、俺は、短くなった煙草を指で摘まんで口から離し、白い煙を吐き出した。
ゆるゆると青い空へと昇っていく白い煙を見上げる俺の隣には、アルミンが言った言葉だけがその場に留まり続けていた。
叶わない恋なんてないとは言えないよ
ただ、君への想いをそんな言葉で終わらせたくないだけだ
叶わない恋なんて、ないと思っていたの。
遠い昔の話よ。
努力をすれば、なんだって叶うんだと信じていたの。
今の私は、努力をして、叶わない恋の結末の準備をしている。
研究施設には不必要としか思えない立派な庭園もあるのだが、そこではピクニックと勘違いした女子社員達がシートを広げてお喋りをしながら弁当を食べていることが多く、落ち着かない。
静かなところでボーッとしたいときは、裏庭が一番いい。
建物の壁に寄り掛かって、慣れた手つきで煙草に火をつけた俺は、白い煙を空に吐き出した。
「------。」
どこからか人の声がしてきて、俺は寄り掛かっていた身体を起こした。
俺と似たようなことを考えたのか、その誰かもこの裏庭に向かって歩いているようで、少しずつ声がハッキリしてきた。
「すごく大変だったんだから、こういうことはこれっきりにしてくれよ。
-----ー分かってるよ、心配性だな、ジャン。連絡きたら、すぐに消すから。
------絶対だからね。今日は特上カルビを奢ってよ。食べ放題はダメだよ。」
聞き覚えのある声と話し方、研修で来た学生のアルミンのようだった。
電話をしながらやって来たアルミンは、煙草を吸っている俺を見つけるとぎょっとした顔をした。
「ごめん、切る…!じゃあ、7時にいつものとこで!」
アルミンは慌てた様子で電話を切った。
気まずい顔をされたが、このまますぐに踵を返すのは失礼だと思ったのか、躊躇いがちに隣に並んで話しかけてきた。
「今日はお世話になりました。」
「あぁ、ほんとにな。」
「…本当に、すみません。」
「特上カルビが食えるくらい腹が治ってよかったな。」
「あ…。はい…。よかったです…。」
目を伏せたアルミンをチラりと見て、俺は、煙草の煙を吐き出した。
午後は、研修に来た学生達の相手はペトラとオルオに任せて、研究施設の案内を頼んでいる。
腕時計を確認すると、まだ午後の就業時間までもう少しあった。
「リヴァイさんって、恋人いますか?」
会話をしないと気まずいとでも思ったのか、アルミンがプライベートな質問をしてきた。
どうして学生にそんなことを答えなければならないのか。
俺は、思い切り引き気味で、アルミンを見ながら答えた。
「・・・・・・・・いや。」
「僕の友達が、あ、今電話してた友達なんですけど
ずっと好きな娘がいるんです。」
「へぇ。」
学生の恋愛話を聞かされている理由が分からないまま、適当に相槌を打って、煙草を吸った。
「片想いしてるのなんて、友達みんなにバレバレなのに、
その娘だけは気づかないんですよ。」
「鈍感なのか。」
「ん~…、どうなんだろう?その娘も好きな人がいるんです。
たぶん、その娘は、その人しか見えてないんだと思います。
だから、アウトオブ眼中ってやつですね。」
「あぁ…、何て言うか。どんまいだな。」
「まぁ、どっちにしろ、気づいてもらえても叶わない恋なんですけどね。」
「辛辣だな。」
「だって、仕方ないですよ。
どうしても叶わない恋って、あると思うから。」
アルミンはそう言うと、自分のスマホを確認した。
ミカサから、どこにいるのかとLINEが届いたらしく、施設の中へと戻って行った。
足音が遠くなって聞こえなくなる頃、俺は、短くなった煙草を指で摘まんで口から離し、白い煙を吐き出した。
ゆるゆると青い空へと昇っていく白い煙を見上げる俺の隣には、アルミンが言った言葉だけがその場に留まり続けていた。
叶わない恋なんてないとは言えないよ
ただ、君への想いをそんな言葉で終わらせたくないだけだ
叶わない恋なんて、ないと思っていたの。
遠い昔の話よ。
努力をすれば、なんだって叶うんだと信じていたの。
今の私は、努力をして、叶わない恋の結末の準備をしている。