◇22ページ◇スマホ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リビングのソファに座って、夜を明かしてしまった。
嘘を吐かれていたショックと怒りは消えたわけじゃない。
だが、それよりも、俺は、スマホを隠していた理由が気になっていた。
だから、テーブルの上に置かれたスマホをガン見しながら、ずっと考えて、考えて、考えてー。
気づいたら、朝だっただけだ。
そこまで考えて、結局、出てきた答えは、1つしかなかった。
(俺に連絡先を知られたくなかったんだろうな。)
唯一出てきた答えが頭に浮かび続けて、無意識に舌打ちが出た。
好きだ、好きだ、と言っておいて、倒れるまで俺に尽くしておいて、連絡先は知られたくないとはどういうことだ。
とんだツンデレ野郎だ。
いや、駆引き上手か。
俺にスマホの存在を気づかせてもいなかったのだから、駆け引きにすらなっていない。
あぁ、本当に意味が分からないー。
そんなことが頭の中をグルグルと回っていれば、寝室の扉が開く音がした。
振り返れば、フラフラと足元も覚束ない様子で名前が歩いてきた。
疲れが残った身体は、いきなり休んだことで余計に重たくなってしまっているのかもしれない。
「…おはよう、ございます…。
リヴァイさん…、今日は、早いですね…。」
名前は目をこすりながら、ゆっくりと近づいてきた。
「いや、そうでもねぇよ。」
「そう、ですか…?
今から、朝ご飯、作りますね…。ふわぁ~…。」
名前は、両手で口元を隠して、欠伸を噛み殺した。
そして、俺に背を向けてキッチンに向かおうとして、ふ、と何かに気づいたらしく、足を止めた。
ゆっくりと振り返った名前は、俺を通り越してリビングのテーブルの上を見た。
そして、自分のスマホを見つけてしまったらしく、面白いくらいにギョッとした顔をした。
「え…、なんで…?あれ、えっと…、それ…、どうしたんですか…?」
名前が、軽くパニックになりながら、テーブルの上のスマホを指さした。
「あぁ、家の中で見つけたんだ。
俺のじゃねぇし、名前もスマホは持ってねぇはずだし。
持ち主がいねぇから、警察に届けようかと思ってここに置いてある。」
「…あ~…、そうですか…。それがいいですね。
失くした人も探してるかもしれないし。」
名前は目を泳がせながらも、この期に及んで、まだ嘘を吐き通す気のようだった。
それなら、それに乗っかってやる気で、俺は口を開いた。
「そうだな。エレンって男が、来週は飲みに来てほしいみてぇだったからな。
スマホがねぇと連絡も取れねぇから、困るだろ。」
「へ、へぇ~。そうなんですねぇ…。
でも、スマホの持ち主が、飲みに行く気がないなら、
別にいいんじゃないですかね?」
「そうか?一晩中、ピコンピコンとLINEが鳴り続けてたから返信はした方がいいんじゃないか?
約束破って夜に電話して悪かっただとか、でも昼間も電話出ねぇじゃんとか、
おっさんに惚れたとかマジかよありえねぇとか、見たくもねえのに画面にポップアップがー。」
「切腹します…!死に急ぎ野郎の分も…!」
「お前はすぐに侍流で謝ろうとするのをやめろ。」
ついに観念した名前を、俺はソファに座らせた。
戸惑いながら、隣に座った名前に、俺はとりあえず、体調を訊ねた。
不思議そうに首を傾げた後、名前はハッと目を見開いた。
「そうだ…!私、倒れましたよね…っ!?」
「思い出したか。どこか痛ぇところはねぇか?」
「いえ…、さっきまでは少し頭がぼんやりしてたんですけど…。
スマホのこととか、エレンへのイラつきとかで、今はすごくしっかりしてます。」
「そうか、そりゃよかった。」
「…はい。」
シュンと萎んでしまった名前に、俺はため息を零した。
それは、スマホを隠していたくらいで腹を立ててしまった大人げない自分に対してのものだった。
俺のために倒れるまで頑張ってくれていた名前の、そんな小さな嘘くらい許してやればいいのにー。
何がそんなに悔しくて、ショックなのか。俺には分からなかった。
それがまた、俺をイライラさせてしまっていたのかもしれない。
でも、申し訳なさそうに縮んでいる名前を前にすると、不思議と怒りという感情は消えていった。
とりあえず、倒れたことについては過労だろうが、今日はバイトを休んで病院へ行くように伝えた。
俺も仕事を午前休をとってついていくと言えば驚いていたが、病院へ行く途中に倒れてもいけない。
それに、ザックレーには名前が倒れたことも伝えて許可を貰っていることを言えば、渋々だったが受け入れた。
「倒れるほど無理をさせて、悪かった。」
「いえ…!それは…、私が好きでしてたことなので…!」
「それでも、だ。お前は俺が好きで無理をしていたのに気づいてくれたのに、
俺は気づきもしねぇで頼りきっちまった。本当に、悪かった。」
「いえ、本当に、リヴァイさんは謝らないでくださー。」
謝罪を受け入れる気のない唇を塞ぎたくて、自分の唇を重ねた。
名前が驚いて動きを止めたのを確認して、俺は唇を離した。
「黙って、謝られとけ。」
「…はい。」
「それでいい。」
名前の髪をクシャリと撫でると、俺の母親みたいだと少し照れ臭そうに教えてくれた。
そういえば、子供の頃に、俺も同じようにされたことがある。
どうやら、俺は親にしてもらっていたことを名前にもしていたらしい。
(仔犬から、子供へ格上げか?)
あぁ、だから、嘘を吐かれてショックだったのだろうか。
俺はそう思った。
自分の子供に、隠し事をされたら、きっと親はショックを受ける。
きっと、そういう感情だ。
そう、納得して、俺は話を次の話題に変えた。
「それで、どうして、スマホを持ってることを俺に隠した。」
「…それは…。」
名前は言い淀んだ。
俺をチラリと見ては、目を伏せる、という行動を繰り返しながら、必死に言い訳を探しているようだった。
ジャンは、訊ねればちゃんと教えてくれると言ったが、教える気があるようには見えなかった。
それでも信じて待ってみたが、名前が口を開くことはなかった。
「言えねぇならいい。だが、今後一切、俺はお前を信じない。」
「待って…!ちゃんと話します…!」
諦めて立ち上がろうとした俺の腕を、名前が焦った様子で捕まえた。
素直な名前は、俺の望んだ通りに、動いてくれた。
ソファに座り直した俺に、名前は頬を染めて、躊躇いがちに口を開いた。
「…スマホを持ってたら、リヴァイさんの連絡先、知りたくなるから、
持ってないことに、しました…。」
「・・・・は?」
言っている意味が、いまいち理解出来なかった。
ポカンとする俺に、名前は顔を真っ赤にして早口で言い訳を捲し立てだした。
「だ、だって…!最初からスマホ持ってないって言ってたら
リヴァイさんの連絡先知らなくても、教えてもらえなかったって
悲しくもならないから、だから…っ。」
「…別に、連絡先を教えるくらいしてやるし、
そもそも、魔法ってやつで家は調べられたなら、
俺の連絡先くらい簡単に知れるんじゃねぇのか。」
「それは…!魔法の力が弱まっていて…っ、出来ませんでした…っ。」
「…あぁ、そうかよ。なんでもいいが、連絡先知らねぇから、
今までも随分とめんどくせぇことが多かっただろ。」
「そ、それは…っ!それもあるけど、でも…っ!
連絡先を知っちゃったら、今度は、既読スルーとかされたら悲しいし、
電話はないかなとか、LINEの返事はまだかなとか待っちゃって、寂しくなっちゃうから…!」
「・・・・バカなのか。」
「違います、大好きなんです!!」
顔を真っ赤にして、名前が真剣に愛を叫んだ。
風船から空気が抜けるように、毒気が消えていく。
俺は、片手に額を乗せて顔を伏せて、呆れと共に長いため息を吐いた。
「とにかく、連絡先を知らねぇのは不便だ。教えろ。」
「え、でも,既読スルー地獄がー。」
「しねぇよ。」
「…いえ、いいんです。リヴァイさんは忙しい人だって分かってるから。
むしろ、すぐに返信があった方がビックリして心配になっちゃいます。」
「どっちだよ。」
「基本的に既読スルーでお願いします。」
おかしなお願いをして、名前は頭を下げた。
すぐではなくとも、時間のある時に返事くらいすると言って、俺は名前と連絡先を交換した。
一応、ちゃんと入っているかと自分のスマホを確認した。
名前の名前が表示されているのを見ると、無意識に頬が緩んだ。
「あの…、リヴァイさん…。」
「ん、なんだ?」
スマホを見ていた顔を上げると、名前がとても不安そうに俺を見ていた。
「嘘吐いて、すみませんでした…。」
「別に怒ってねぇよ。
スマホがねぇっていうわけの分からねぇ嘘くらい。
理由を聞いても、よく分からなかった。」
「…すみません。」
「もう謝らなくていい。」
「嫌いに、ならないでください…。」
名前は目を伏せて、自信なさげに懇願した。
昨夜、電話越しでジャンが、俺に嫌われたら名前は生きていけないと言っていたのを思い出した。
「そんなことで嫌いにならねぇから。」
「…本当ですか?」
「あぁ、嫌いじゃねぇ。
嫌いなやつと連絡先を交換したいとは思わねぇだろ。」
「そっか…。よか、ったぁ…っ。」
名前はホッとしたように息を吐いた。
ひどく嬉しそうで、頬が染まっていて、俺に嫌われていないと分かっただけで、本当に安心していて、それがなぜかひどく可愛らしく見えてー。
キュンー。
胸から、聞いたことのない音が聞こえた気がした。
「名前。」
「ん?なんですか?」
「…いや、名前を呼んでみただけだ。」
「なんですか、それ。」
名前がクスクスと笑った。
一体、俺はどうしてしまったのだろう。
また、胸からおかしな音がしたのだ。
スマホの中にあった君の名前は消えたのに
俺の唇に残った君の名前は、永遠に消えそうにない
スマホの中に、リヴァイさんの名前がある。
私はそれを何度も確かめる。
その度に、嬉しかったり、悲しかったり、私の気持ちは変わるの。
いつかこのスマホからリヴァイさんの名前が消えるとき
リヴァイさんのスマホから私の名前が消えるとき
そのときを考えるのはやめよう。
今はただ、繋がらない心の代わりに、電波で繋がった絆を、素直に喜ぼう
嘘を吐かれていたショックと怒りは消えたわけじゃない。
だが、それよりも、俺は、スマホを隠していた理由が気になっていた。
だから、テーブルの上に置かれたスマホをガン見しながら、ずっと考えて、考えて、考えてー。
気づいたら、朝だっただけだ。
そこまで考えて、結局、出てきた答えは、1つしかなかった。
(俺に連絡先を知られたくなかったんだろうな。)
唯一出てきた答えが頭に浮かび続けて、無意識に舌打ちが出た。
好きだ、好きだ、と言っておいて、倒れるまで俺に尽くしておいて、連絡先は知られたくないとはどういうことだ。
とんだツンデレ野郎だ。
いや、駆引き上手か。
俺にスマホの存在を気づかせてもいなかったのだから、駆け引きにすらなっていない。
あぁ、本当に意味が分からないー。
そんなことが頭の中をグルグルと回っていれば、寝室の扉が開く音がした。
振り返れば、フラフラと足元も覚束ない様子で名前が歩いてきた。
疲れが残った身体は、いきなり休んだことで余計に重たくなってしまっているのかもしれない。
「…おはよう、ございます…。
リヴァイさん…、今日は、早いですね…。」
名前は目をこすりながら、ゆっくりと近づいてきた。
「いや、そうでもねぇよ。」
「そう、ですか…?
今から、朝ご飯、作りますね…。ふわぁ~…。」
名前は、両手で口元を隠して、欠伸を噛み殺した。
そして、俺に背を向けてキッチンに向かおうとして、ふ、と何かに気づいたらしく、足を止めた。
ゆっくりと振り返った名前は、俺を通り越してリビングのテーブルの上を見た。
そして、自分のスマホを見つけてしまったらしく、面白いくらいにギョッとした顔をした。
「え…、なんで…?あれ、えっと…、それ…、どうしたんですか…?」
名前が、軽くパニックになりながら、テーブルの上のスマホを指さした。
「あぁ、家の中で見つけたんだ。
俺のじゃねぇし、名前もスマホは持ってねぇはずだし。
持ち主がいねぇから、警察に届けようかと思ってここに置いてある。」
「…あ~…、そうですか…。それがいいですね。
失くした人も探してるかもしれないし。」
名前は目を泳がせながらも、この期に及んで、まだ嘘を吐き通す気のようだった。
それなら、それに乗っかってやる気で、俺は口を開いた。
「そうだな。エレンって男が、来週は飲みに来てほしいみてぇだったからな。
スマホがねぇと連絡も取れねぇから、困るだろ。」
「へ、へぇ~。そうなんですねぇ…。
でも、スマホの持ち主が、飲みに行く気がないなら、
別にいいんじゃないですかね?」
「そうか?一晩中、ピコンピコンとLINEが鳴り続けてたから返信はした方がいいんじゃないか?
約束破って夜に電話して悪かっただとか、でも昼間も電話出ねぇじゃんとか、
おっさんに惚れたとかマジかよありえねぇとか、見たくもねえのに画面にポップアップがー。」
「切腹します…!死に急ぎ野郎の分も…!」
「お前はすぐに侍流で謝ろうとするのをやめろ。」
ついに観念した名前を、俺はソファに座らせた。
戸惑いながら、隣に座った名前に、俺はとりあえず、体調を訊ねた。
不思議そうに首を傾げた後、名前はハッと目を見開いた。
「そうだ…!私、倒れましたよね…っ!?」
「思い出したか。どこか痛ぇところはねぇか?」
「いえ…、さっきまでは少し頭がぼんやりしてたんですけど…。
スマホのこととか、エレンへのイラつきとかで、今はすごくしっかりしてます。」
「そうか、そりゃよかった。」
「…はい。」
シュンと萎んでしまった名前に、俺はため息を零した。
それは、スマホを隠していたくらいで腹を立ててしまった大人げない自分に対してのものだった。
俺のために倒れるまで頑張ってくれていた名前の、そんな小さな嘘くらい許してやればいいのにー。
何がそんなに悔しくて、ショックなのか。俺には分からなかった。
それがまた、俺をイライラさせてしまっていたのかもしれない。
でも、申し訳なさそうに縮んでいる名前を前にすると、不思議と怒りという感情は消えていった。
とりあえず、倒れたことについては過労だろうが、今日はバイトを休んで病院へ行くように伝えた。
俺も仕事を午前休をとってついていくと言えば驚いていたが、病院へ行く途中に倒れてもいけない。
それに、ザックレーには名前が倒れたことも伝えて許可を貰っていることを言えば、渋々だったが受け入れた。
「倒れるほど無理をさせて、悪かった。」
「いえ…!それは…、私が好きでしてたことなので…!」
「それでも、だ。お前は俺が好きで無理をしていたのに気づいてくれたのに、
俺は気づきもしねぇで頼りきっちまった。本当に、悪かった。」
「いえ、本当に、リヴァイさんは謝らないでくださー。」
謝罪を受け入れる気のない唇を塞ぎたくて、自分の唇を重ねた。
名前が驚いて動きを止めたのを確認して、俺は唇を離した。
「黙って、謝られとけ。」
「…はい。」
「それでいい。」
名前の髪をクシャリと撫でると、俺の母親みたいだと少し照れ臭そうに教えてくれた。
そういえば、子供の頃に、俺も同じようにされたことがある。
どうやら、俺は親にしてもらっていたことを名前にもしていたらしい。
(仔犬から、子供へ格上げか?)
あぁ、だから、嘘を吐かれてショックだったのだろうか。
俺はそう思った。
自分の子供に、隠し事をされたら、きっと親はショックを受ける。
きっと、そういう感情だ。
そう、納得して、俺は話を次の話題に変えた。
「それで、どうして、スマホを持ってることを俺に隠した。」
「…それは…。」
名前は言い淀んだ。
俺をチラリと見ては、目を伏せる、という行動を繰り返しながら、必死に言い訳を探しているようだった。
ジャンは、訊ねればちゃんと教えてくれると言ったが、教える気があるようには見えなかった。
それでも信じて待ってみたが、名前が口を開くことはなかった。
「言えねぇならいい。だが、今後一切、俺はお前を信じない。」
「待って…!ちゃんと話します…!」
諦めて立ち上がろうとした俺の腕を、名前が焦った様子で捕まえた。
素直な名前は、俺の望んだ通りに、動いてくれた。
ソファに座り直した俺に、名前は頬を染めて、躊躇いがちに口を開いた。
「…スマホを持ってたら、リヴァイさんの連絡先、知りたくなるから、
持ってないことに、しました…。」
「・・・・は?」
言っている意味が、いまいち理解出来なかった。
ポカンとする俺に、名前は顔を真っ赤にして早口で言い訳を捲し立てだした。
「だ、だって…!最初からスマホ持ってないって言ってたら
リヴァイさんの連絡先知らなくても、教えてもらえなかったって
悲しくもならないから、だから…っ。」
「…別に、連絡先を教えるくらいしてやるし、
そもそも、魔法ってやつで家は調べられたなら、
俺の連絡先くらい簡単に知れるんじゃねぇのか。」
「それは…!魔法の力が弱まっていて…っ、出来ませんでした…っ。」
「…あぁ、そうかよ。なんでもいいが、連絡先知らねぇから、
今までも随分とめんどくせぇことが多かっただろ。」
「そ、それは…っ!それもあるけど、でも…っ!
連絡先を知っちゃったら、今度は、既読スルーとかされたら悲しいし、
電話はないかなとか、LINEの返事はまだかなとか待っちゃって、寂しくなっちゃうから…!」
「・・・・バカなのか。」
「違います、大好きなんです!!」
顔を真っ赤にして、名前が真剣に愛を叫んだ。
風船から空気が抜けるように、毒気が消えていく。
俺は、片手に額を乗せて顔を伏せて、呆れと共に長いため息を吐いた。
「とにかく、連絡先を知らねぇのは不便だ。教えろ。」
「え、でも,既読スルー地獄がー。」
「しねぇよ。」
「…いえ、いいんです。リヴァイさんは忙しい人だって分かってるから。
むしろ、すぐに返信があった方がビックリして心配になっちゃいます。」
「どっちだよ。」
「基本的に既読スルーでお願いします。」
おかしなお願いをして、名前は頭を下げた。
すぐではなくとも、時間のある時に返事くらいすると言って、俺は名前と連絡先を交換した。
一応、ちゃんと入っているかと自分のスマホを確認した。
名前の名前が表示されているのを見ると、無意識に頬が緩んだ。
「あの…、リヴァイさん…。」
「ん、なんだ?」
スマホを見ていた顔を上げると、名前がとても不安そうに俺を見ていた。
「嘘吐いて、すみませんでした…。」
「別に怒ってねぇよ。
スマホがねぇっていうわけの分からねぇ嘘くらい。
理由を聞いても、よく分からなかった。」
「…すみません。」
「もう謝らなくていい。」
「嫌いに、ならないでください…。」
名前は目を伏せて、自信なさげに懇願した。
昨夜、電話越しでジャンが、俺に嫌われたら名前は生きていけないと言っていたのを思い出した。
「そんなことで嫌いにならねぇから。」
「…本当ですか?」
「あぁ、嫌いじゃねぇ。
嫌いなやつと連絡先を交換したいとは思わねぇだろ。」
「そっか…。よか、ったぁ…っ。」
名前はホッとしたように息を吐いた。
ひどく嬉しそうで、頬が染まっていて、俺に嫌われていないと分かっただけで、本当に安心していて、それがなぜかひどく可愛らしく見えてー。
キュンー。
胸から、聞いたことのない音が聞こえた気がした。
「名前。」
「ん?なんですか?」
「…いや、名前を呼んでみただけだ。」
「なんですか、それ。」
名前がクスクスと笑った。
一体、俺はどうしてしまったのだろう。
また、胸からおかしな音がしたのだ。
スマホの中にあった君の名前は消えたのに
俺の唇に残った君の名前は、永遠に消えそうにない
スマホの中に、リヴァイさんの名前がある。
私はそれを何度も確かめる。
その度に、嬉しかったり、悲しかったり、私の気持ちは変わるの。
いつかこのスマホからリヴァイさんの名前が消えるとき
リヴァイさんのスマホから私の名前が消えるとき
そのときを考えるのはやめよう。
今はただ、繋がらない心の代わりに、電波で繋がった絆を、素直に喜ぼう