◇21ページ◇ありがとう
Name change
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風呂から上がった俺は、ソファに座っていた。
テレビでは、見ても見なくてもいいバラエティー番組が流れていて、俺は久しぶりに心の底からのんびりとしていた。
母の検査結果は、ザックレーにも報告をした。
明日からついに、俺は製薬会社の研究員として通常通りの勤務が始まる。
病院の帰りに、研究施設の宿泊棟に着替えや掃除セットを取りに戻った。
今日から、やっと普通に自宅で過ごせるのだ。
こうして風呂にも入って、のんびりしながら、肩の力が抜けたのを改めて実感していた。
少しすると、名前が風呂から上がってきた。
リビングにいる俺と目が合うと、名前は嬉しそうに頬を緩めた。
「昨日も思いましたけど、プライベートのリヴァイさんを見れるのは
特別な感じがしてすごく嬉しいです。
お風呂上りは特に、火照ってる感じがすごく色っぽくてドキドキします。」
「…変態発言だってわかるか、それ。」
「アハハ、分かってなかったです~。」
名前は楽しそうに笑いながら、自分の部屋に戻って行った。
扉の向こうですぐに始まったドライヤーの音を聞きながら、自分の言ったセリフはそのまま自分にも当てはまるということを、名前は気づいているのだろうかと考える。
子供みたいに笑うくせに、火照って上気した頬としっとりとした白い肌、真っすぐ伸びた生脚は、立派な成人した女のものだ。
(同世代のクソガキが相手だったら、アイツ、すぐに食われちまってるだろうな。)
そんなことを考えていると、ドライヤーの音が聞こえなくなった。
それからすぐに名前が部屋から出てきて、キッチンに向かいながら俺に声をかけた。
「リヴァイさん、アイスティー飲みます?
この前、駅前の喫茶店で美味しいアイスティーを見つけてー。」
「それより、名前。」
「ん?なんですか?」
名前が振り返って、視線が重なる。
治療薬が出来上がったら、言おうと思っていたことがあった。
ずっと、伝えたかったことだ。
「ありがとうな。」
「…え?」
俺から感謝の言葉が出てくるとは思わなかったのか、名前は時が止まったみたいに茫然と立ち尽くしていた。
でも、ずっと伝えたかったのだ。
俺は鈍感で、研究や自分の生活でいっぱいいっぱいで、どれだけ名前に助けられていたのか、本当の意味でちゃんと理解しているかは分からない。
名前が寝る間も惜しんで俺に尽くしてくれていたと知ったのだって、つい最近だ。
それでも、名前に支えられていることなら、ずっと前から分かっていた。
感謝すべき相手だと、理解していたのだ。
「母さんの治療薬を作れたのも、うまくいったのも、名前のおかげだ。」
「そんな…っ、リヴァイさんが頑張ったからですよ…!
私は、何もしてません…っ。」
「そんなこと思ってんのは、お前だけだ。」
「そんなことはー。」
「言いから聞け。お前には助けられた。
名前と出逢えて、本当に良かった。
ありがとうな。」
「・・・・はい、よかったです…。」
俺が感謝をしているのに、名前は俺よりも嬉しそうに微笑んだ。
そして、涙が一粒だけ、ゆっくりと頬を伝っていったのが見えた。
もしかしたら、名前もずっと張りつめていたのかもしれない。
だからきっと、俺の感謝の言葉を聞いて、緊張の糸が切れたのだろう。
頬を伝った涙が、床に落ちた。
それは、まるで合図のようだった。
操っていた糸が突然切れたみたいに、名前の身体が膝から崩れ、バタンと大きな音を立てて倒れたのだ。
もしもまた、君が誰かのために無理をして笑ってるのなら、間違ってる
君がしなければならないのは、自分勝手に願いを叫ぶことだ
リヴァイさんが、とても優しく微笑んでくれた。
私には絶対に向けてもらえないだろうと思っていた、この世で最も素敵な微笑みだった。
だから、瞳に焼きつけたかったのに、視界がぼやけてしまったの。
ぼんやりと白くなっていく視界の向こうで、私に手を伸ばすリヴァイさんが見えた気がしたんだけれど、あれは夢が見せた幻かしら。
私はあの手を掴みたい。ギュッと掴んで、永遠に放したくない。
だからよかった。
届かなくて、本当に良かった…。
テレビでは、見ても見なくてもいいバラエティー番組が流れていて、俺は久しぶりに心の底からのんびりとしていた。
母の検査結果は、ザックレーにも報告をした。
明日からついに、俺は製薬会社の研究員として通常通りの勤務が始まる。
病院の帰りに、研究施設の宿泊棟に着替えや掃除セットを取りに戻った。
今日から、やっと普通に自宅で過ごせるのだ。
こうして風呂にも入って、のんびりしながら、肩の力が抜けたのを改めて実感していた。
少しすると、名前が風呂から上がってきた。
リビングにいる俺と目が合うと、名前は嬉しそうに頬を緩めた。
「昨日も思いましたけど、プライベートのリヴァイさんを見れるのは
特別な感じがしてすごく嬉しいです。
お風呂上りは特に、火照ってる感じがすごく色っぽくてドキドキします。」
「…変態発言だってわかるか、それ。」
「アハハ、分かってなかったです~。」
名前は楽しそうに笑いながら、自分の部屋に戻って行った。
扉の向こうですぐに始まったドライヤーの音を聞きながら、自分の言ったセリフはそのまま自分にも当てはまるということを、名前は気づいているのだろうかと考える。
子供みたいに笑うくせに、火照って上気した頬としっとりとした白い肌、真っすぐ伸びた生脚は、立派な成人した女のものだ。
(同世代のクソガキが相手だったら、アイツ、すぐに食われちまってるだろうな。)
そんなことを考えていると、ドライヤーの音が聞こえなくなった。
それからすぐに名前が部屋から出てきて、キッチンに向かいながら俺に声をかけた。
「リヴァイさん、アイスティー飲みます?
この前、駅前の喫茶店で美味しいアイスティーを見つけてー。」
「それより、名前。」
「ん?なんですか?」
名前が振り返って、視線が重なる。
治療薬が出来上がったら、言おうと思っていたことがあった。
ずっと、伝えたかったことだ。
「ありがとうな。」
「…え?」
俺から感謝の言葉が出てくるとは思わなかったのか、名前は時が止まったみたいに茫然と立ち尽くしていた。
でも、ずっと伝えたかったのだ。
俺は鈍感で、研究や自分の生活でいっぱいいっぱいで、どれだけ名前に助けられていたのか、本当の意味でちゃんと理解しているかは分からない。
名前が寝る間も惜しんで俺に尽くしてくれていたと知ったのだって、つい最近だ。
それでも、名前に支えられていることなら、ずっと前から分かっていた。
感謝すべき相手だと、理解していたのだ。
「母さんの治療薬を作れたのも、うまくいったのも、名前のおかげだ。」
「そんな…っ、リヴァイさんが頑張ったからですよ…!
私は、何もしてません…っ。」
「そんなこと思ってんのは、お前だけだ。」
「そんなことはー。」
「言いから聞け。お前には助けられた。
名前と出逢えて、本当に良かった。
ありがとうな。」
「・・・・はい、よかったです…。」
俺が感謝をしているのに、名前は俺よりも嬉しそうに微笑んだ。
そして、涙が一粒だけ、ゆっくりと頬を伝っていったのが見えた。
もしかしたら、名前もずっと張りつめていたのかもしれない。
だからきっと、俺の感謝の言葉を聞いて、緊張の糸が切れたのだろう。
頬を伝った涙が、床に落ちた。
それは、まるで合図のようだった。
操っていた糸が突然切れたみたいに、名前の身体が膝から崩れ、バタンと大きな音を立てて倒れたのだ。
もしもまた、君が誰かのために無理をして笑ってるのなら、間違ってる
君がしなければならないのは、自分勝手に願いを叫ぶことだ
リヴァイさんが、とても優しく微笑んでくれた。
私には絶対に向けてもらえないだろうと思っていた、この世で最も素敵な微笑みだった。
だから、瞳に焼きつけたかったのに、視界がぼやけてしまったの。
ぼんやりと白くなっていく視界の向こうで、私に手を伸ばすリヴァイさんが見えた気がしたんだけれど、あれは夢が見せた幻かしら。
私はあの手を掴みたい。ギュッと掴んで、永遠に放したくない。
だからよかった。
届かなくて、本当に良かった…。