◇18ページ◇役に立つということ
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製薬会社に復職して数日が経過した。
名前は最初に言っていた通り、朝、昼、晩と弁当を持ってきてくれていた。
研究施設に来ていない時間はバイトをしながら、病院の面会時間には母のところに顔を出して、ケニーに借りたスマホで、その日の母の体調や様子をテレビ電話で教えたり、写真や動画を送ってきたりしていた。
普段、あまり連絡を取り合う親子ではないから、今までで一番、母の毎日を知れていたと思う。
夕飯の後の研究中は、名前も研究フロアに残って、研究をしている俺達の代わりに、薬品の管理チェックなどの雑用からその日分の試作薬の評価や結果のデータ入力まで、研究員でなくても出来ることは何でもしてくれた。
自分にできることならやりたい、と名前が俺だけではなくエルド達にも頭を下げたからだ。
ザックレーから、施設のパソコンを使ってもいいと許可まで貰っていたし、小さな雑用で時間をとられるのが煩わしかった俺達は喜んで受け入れた。
宿泊棟の俺の部屋の掃除や洗濯物もしていてくれていたから、俺は本当に、余計なことは何も考えずに薬の研究に集中できていた。
また、名前は、俺が寝ずに働くのを心配して、俺が寝るのを確認するまで研究施設を出ようとはしなかった。
でも、無駄な時間をなくして研究が出来ているという心の余裕もあってか、決まった睡眠時間をとることも出来ていた。
宿泊棟で寝泊まりをしているのは俺だけで、エルド達にはあまり遅くならないうちに帰るように伝えていて、それぞれが、それなりに忙しいものの、身体を壊さずに研究を続けられていた。
「名前ちゃんのデータ結果、すごく見やすくて助かりますね。」
薬の調合をしていると、エルドがパソコンのデータを見ながら感心したように言った。
「そうだな。」
俺は薬の調合を続けながら答えた。
確かに、評価や結果をデータに入れるだけではなく、過去の似たような試薬とも比べられるように作ってくれていたおかげで、次に何をするべきかをすぐに考えることが出来て、時短になっていた。
「なぁ、この部分、何言ってんのか、分かるヤツいる?」
ノートパソコンで資料の確認をしていたグンタが困った様子で顔を上げた。
それは、昨夜、名前が研究施設のパソコンに送って来た資料だった。
母と似たような症状の患者とその治験をしている医者の論文らしく、昨日の夜中に送ったと、今朝、弁当を持ってきた名前がオルオに伝えていた。
英語で書かれたその論文は、独特な治療法を記載しているせいで、普通は使わないような専門用語も多く、読みづらいらしかった。
「なんだ、そんなのもわかんねぇのか。それはなーーー。」
「あぁ、そういうことか。助かる。お前、意外とやるな。」
「違うよ、グンタ。それ、今朝、同じことをオルオも訊いて、
名前ちゃんが教えてあげたんだよ。」
「エルド!!チクるなよ!!」
「ハハ、悪い、悪い。」
本気で怒っているオルオを軽く受け流しながら、エルドがからかっていた。
しっかりとした睡眠と食事で、研究漬けな割には、こうして軽口が言い合えるくらいに、俺達は疲れというものをあまり感じていなかった。
「リヴァイさん、こっちもお願いします。」
「あぁ。」
ペトラが、試験管を幾つか持ってきた。
そのひとつを手に取りながら、中身の確認をしていると、ペトラが話しかけてきた。
「名前ちゃんってどこの大学の医学生ですか?
すごく優秀なんでしょうね。」
「そうだ、俺もそれ聞きたかったんですよ。
もしかして、俺達の後輩ですか?」
すぐそばでデータの確認をしていたエルドも話に加わった。
俺達は全員、帝都大学医学部の出身だった。
だから、同じ大学の医学部生だと思っていたらしかった。
「アイツはただの元ニートのフリーターだ。」
「へ?」
「まぁ、どこでバイトしてるか知らねぇが。」
「え、でも、試薬の評価をしたりしてくれてますよね?」
「あぁ、自分でも出来るくらいな簡単なことはやりてぇと言ってた。」
「…簡単なこと?」
「そうだ。」
「私達が作った試薬の評価や結果をデータに起こしたり
過去の評価を貼り付けたり、グンタも読めない論文を見つけることが簡単なことですか?」
ペトラの口調が少しキツくなったことに気づいて、俺は試験管のチェックをしていた手を止めた。
「…違ぇのか?」
ペトラの方を向いて訊ねれば、疲れたようなため息を吐かれた。
「…リヴァイさん、天才ですもんね。
リヴァイさんなら出来るかもしれないけど、
普通は医学の知識がないと無理ですよ。」
エルドにそう言われるまで、俺はただの雑用だけを名前に頼っていると思っていた。
でも、ただのフリーターだと答えたときのペトラとエルドの驚愕の表情から察するに、どうやら、俺は思い違いをしていたようだと気づいた。
でもー。
「…名前は天才なのか?
ただのバカだと思ってたんだが。」
「バカと天才は紙一重って言いますしね!」
話が聞こえていたらしいオルオが、馬鹿みたいに声を上げるから、グンタに失礼だぞと注意をされていた。
名前は最初に言っていた通り、朝、昼、晩と弁当を持ってきてくれていた。
研究施設に来ていない時間はバイトをしながら、病院の面会時間には母のところに顔を出して、ケニーに借りたスマホで、その日の母の体調や様子をテレビ電話で教えたり、写真や動画を送ってきたりしていた。
普段、あまり連絡を取り合う親子ではないから、今までで一番、母の毎日を知れていたと思う。
夕飯の後の研究中は、名前も研究フロアに残って、研究をしている俺達の代わりに、薬品の管理チェックなどの雑用からその日分の試作薬の評価や結果のデータ入力まで、研究員でなくても出来ることは何でもしてくれた。
自分にできることならやりたい、と名前が俺だけではなくエルド達にも頭を下げたからだ。
ザックレーから、施設のパソコンを使ってもいいと許可まで貰っていたし、小さな雑用で時間をとられるのが煩わしかった俺達は喜んで受け入れた。
宿泊棟の俺の部屋の掃除や洗濯物もしていてくれていたから、俺は本当に、余計なことは何も考えずに薬の研究に集中できていた。
また、名前は、俺が寝ずに働くのを心配して、俺が寝るのを確認するまで研究施設を出ようとはしなかった。
でも、無駄な時間をなくして研究が出来ているという心の余裕もあってか、決まった睡眠時間をとることも出来ていた。
宿泊棟で寝泊まりをしているのは俺だけで、エルド達にはあまり遅くならないうちに帰るように伝えていて、それぞれが、それなりに忙しいものの、身体を壊さずに研究を続けられていた。
「名前ちゃんのデータ結果、すごく見やすくて助かりますね。」
薬の調合をしていると、エルドがパソコンのデータを見ながら感心したように言った。
「そうだな。」
俺は薬の調合を続けながら答えた。
確かに、評価や結果をデータに入れるだけではなく、過去の似たような試薬とも比べられるように作ってくれていたおかげで、次に何をするべきかをすぐに考えることが出来て、時短になっていた。
「なぁ、この部分、何言ってんのか、分かるヤツいる?」
ノートパソコンで資料の確認をしていたグンタが困った様子で顔を上げた。
それは、昨夜、名前が研究施設のパソコンに送って来た資料だった。
母と似たような症状の患者とその治験をしている医者の論文らしく、昨日の夜中に送ったと、今朝、弁当を持ってきた名前がオルオに伝えていた。
英語で書かれたその論文は、独特な治療法を記載しているせいで、普通は使わないような専門用語も多く、読みづらいらしかった。
「なんだ、そんなのもわかんねぇのか。それはなーーー。」
「あぁ、そういうことか。助かる。お前、意外とやるな。」
「違うよ、グンタ。それ、今朝、同じことをオルオも訊いて、
名前ちゃんが教えてあげたんだよ。」
「エルド!!チクるなよ!!」
「ハハ、悪い、悪い。」
本気で怒っているオルオを軽く受け流しながら、エルドがからかっていた。
しっかりとした睡眠と食事で、研究漬けな割には、こうして軽口が言い合えるくらいに、俺達は疲れというものをあまり感じていなかった。
「リヴァイさん、こっちもお願いします。」
「あぁ。」
ペトラが、試験管を幾つか持ってきた。
そのひとつを手に取りながら、中身の確認をしていると、ペトラが話しかけてきた。
「名前ちゃんってどこの大学の医学生ですか?
すごく優秀なんでしょうね。」
「そうだ、俺もそれ聞きたかったんですよ。
もしかして、俺達の後輩ですか?」
すぐそばでデータの確認をしていたエルドも話に加わった。
俺達は全員、帝都大学医学部の出身だった。
だから、同じ大学の医学部生だと思っていたらしかった。
「アイツはただの元ニートのフリーターだ。」
「へ?」
「まぁ、どこでバイトしてるか知らねぇが。」
「え、でも、試薬の評価をしたりしてくれてますよね?」
「あぁ、自分でも出来るくらいな簡単なことはやりてぇと言ってた。」
「…簡単なこと?」
「そうだ。」
「私達が作った試薬の評価や結果をデータに起こしたり
過去の評価を貼り付けたり、グンタも読めない論文を見つけることが簡単なことですか?」
ペトラの口調が少しキツくなったことに気づいて、俺は試験管のチェックをしていた手を止めた。
「…違ぇのか?」
ペトラの方を向いて訊ねれば、疲れたようなため息を吐かれた。
「…リヴァイさん、天才ですもんね。
リヴァイさんなら出来るかもしれないけど、
普通は医学の知識がないと無理ですよ。」
エルドにそう言われるまで、俺はただの雑用だけを名前に頼っていると思っていた。
でも、ただのフリーターだと答えたときのペトラとエルドの驚愕の表情から察するに、どうやら、俺は思い違いをしていたようだと気づいた。
でもー。
「…名前は天才なのか?
ただのバカだと思ってたんだが。」
「バカと天才は紙一重って言いますしね!」
話が聞こえていたらしいオルオが、馬鹿みたいに声を上げるから、グンタに失礼だぞと注意をされていた。