◇15ページ◇謝罪
Name change
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身体を洗い終わって湯船に浸かったタイミングで、風呂の扉がゆっくりと開いた。
真っ赤に顔を染めた名前は、タオルを巻いて身体を隠していた。
「…お邪魔、します…。」
躊躇いがちに言って風呂場に入って来た名前は、風呂用の椅子に座った。
でも、どうしたらいいか分からないような様子で、目のやり場に困っているのか目を伏せたままで動かなかった。
「洗ってやろうか。」
「だ、大丈夫です…!!」
焦ったように返事をした名前は、漸く、身体を洗う気になったらしかった。
ジロジロ見るのも可哀想で、俺は湯船の縁に肘をついて、ただぼんやりと天井を見上げていた。
背中を流してやりたいだとか、自分の身体を洗わせてやるだとか、大胆なことを笑って言っていたから、名前は裸を見られるくらい平気なのだと思っていた。
23歳らしいし、普通の女だってそれなりに男の経験もある歳だろう。
モテそうな名前なら、同世代の男達も放っておかないだろうし、1度会っただけの男の家に転がり込めるくらいだから、性に対しても奔放だと思っていたが、そうでもないのだろうか。
今の名前の様子は、まるで無垢な少女のようだ。
(まさかな。)
万が一、極端に経験が少ないのだとしても、処女なんてのはありえない。
ただ単純に恥ずかしいだけだろう。
そんなことを考えている間に、名前は身体を洗い終わったようだった。
身体を洗うためにタオルを外したようで、濡れたタオルを胸元から流して心許なげに隠しているだけだった。
「あの…、お邪魔しても…、いいですか…?」
「あぁ。」
俺は伸ばしていた脚を折り曲げて、自分の前の方へ入るように促した。
小さな足が、躊躇いがちにゆっくりと湯舟へと触れた。
出来る限り身体を隠しながら風呂に入った名前は、俺と向かい合うように座りながら、タオルを外して湯船の縁に置いた。
揺れるお湯の向こうに見え隠れする肌は、名前が膝を抱えるように座ることで隠れて見えなくなった。
「あの…。」
名前は、抱えた膝に顔を埋めるように伏せていた。
小さな声だったけれど、静かな風呂の中では、揺れるお湯の音すら響くくらいで、しっかりと俺の耳に届いた。
「なんだ。」
「…ごめんなさい。嫌いって…、ハッキリ言ってくれたのに…、
どうしても、リヴァイさんが気になって…、倒れてたらどうしようと思ったら
どこにも行けなくって…。」
「…だから公園なんかにいたのか。」
「本当に…ごめんなさい…。それで、またリヴァイさんに迷惑をかけちゃって…。
お風呂から上がったら、帰ります…。」
「帰る家はねぇんだろ。」
「…本当は、幼馴染が1人暮らししてる家があるんです…。
いつでも来いって言ってくれてるから、私はもう、大丈夫です。」
「男か。」
「橋から飛び降りようとしたときに探しに来たのが、幼馴染です。」
「あ~…あの長髪がクソほど似合わねぇ男か。」
「先輩のリーゼントに憧れて伸ばしだしたんです。似合わないのに。
自分ではイケてると思ってるので、それは言わないであげてください。」
顔を伏せたままだったけれど、その幼馴染の話になった途端に、名前の声色は少し楽し気に変わっていた。
俺は名前の腕を掴むと、強引に自分の方に引っ張った。
「あ…!」
驚き過ぎて抵抗も出来ないままの名前は、きっと気づいたときにはもう、俺の鎖骨のあたりに頬を埋めて寄り掛かっていたはずだ。
柔かい感触が俺の胸元に押しつけられていた。
さすがにそれは可哀想な気がして、俺は名前の両肩を持つと、強引に身体の向きを変えた。
何をされているのか分かっていない名前の身体は、俺の思いのままだった。
背中を向けた格好にした名前を、俺は後ろから抱きしめた。
小さな肩がビクッと震えた。
強張る身体から、緊張が俺にも伝わるようだった。
「すまなかった。」
名前の肩に顔を埋めて、頭を下げた。
風邪を引くだとか、身体を温めるためだとか、嘘ではないけれど、口実に過ぎなかった。
身体も裸になれば、心も裸になれるかもー、なんて女々しいことを考えた。
素直な謝り方を、俺は知らなかったのだ。
「…いえ、あの、お風呂はとても有難かったので、裸を見られたくらいは、大丈夫です。
それよりあの…、勝手に裸を見てしまって本当に申し訳なー。」
「嫌いなんて、思ってない。」
「…え?」
「言い訳は、しない。何を言ったところで、
名前を傷つけて、雨の中に放り出したことに変わりはねぇ。
でも、信じてくれ。嫌いなんて、思ってない。思ったことも、ない。」
「…っ。」
「ヒドイことを言った。本当に、すまなかった。」
名前は俯いたままで、何度も首を横に振っていた。
身体も小さく震えていて、泣いているのが分かった。
また、泣かせてしまった。
でも、今度は傷つけたわけじゃない。
あの日からずっと重たかった肩が少しずつ、軽くなっていくようだった。
「名前が幼馴染の男の家に行きてぇなら好きにすればいい。
俺は今も明け方近くに帰ってきて、朝早く家を出て行くから、
名前が思ってるようなお試し恋人なんてもんは出来ねぇ。」
「私は…ーっ。」
「いいから聞け。名前の相手はしてやれねぇが、俺は忙しくて家のことも何も出来ねぇ。
だから…、名前が家に居てくれると、助かる。」
「…居ても、いいんですか…?」
「名前が消えたら、困るんだ。俺を…、支えてほしい。」
後ろから名前を抱きしめる両腕に力が入った。
エルドから聞くまで、支え合うなんていう関係が家族以外に存在するなんて知らなかった。
もし、アンと恋人だった頃にそれを知っていても、結果は同じだっただろう。
アンは俺に支えてもらいたかっただけで、支える気はなかった。
俺はアンに支えてもらおうとはしなかっただろうし、弱みを見せるのも嫌だった。
でも、名前になら、こうして縋れてしまう。
不思議だった。
男女の関係ではないから、居候だから、俺は気を許せたんだ。
心の中で、俺は幾つもの理由を上げていた。
「はい…っ。ありがとう、ございます…っ。」
俺の腕の中で、名前は涙声で何度も頷いていた。
冷えた身体が、風呂と名前の温度で温まっていくのが、ひどく心地よかった。
支えを失って歩けなくなったのは、本当に俺だけ?
何日ぶりかな、日記さん。
久しぶり、てほどでもないのだろうけど、私にはとても長い時間、サヨナラしていたような気分だったの。
だから、今も信じられない。
私の恋に、また新しいページが追加されるなんて。
リヴァイさんは、やっぱりとても優しくて、私はどんどん好きになっていくばかり。
「支えて欲しい。」
リヴァイさんから、そんなことを言われるなんて思ってもなかったの。
私に出来るすべてを尽くして、リヴァイさんを支えていくわ。
どんなに小さな悲しみさえもリヴァイさんに近づけないようにするの。
リヴァイさんの為なら、なんだってしたい。
だって、私はリヴァイさんがいたからこうして生きていられるんだもの。
私をずっと支えてくれたリヴァイさんに、私は何だってしたい。
真っ赤に顔を染めた名前は、タオルを巻いて身体を隠していた。
「…お邪魔、します…。」
躊躇いがちに言って風呂場に入って来た名前は、風呂用の椅子に座った。
でも、どうしたらいいか分からないような様子で、目のやり場に困っているのか目を伏せたままで動かなかった。
「洗ってやろうか。」
「だ、大丈夫です…!!」
焦ったように返事をした名前は、漸く、身体を洗う気になったらしかった。
ジロジロ見るのも可哀想で、俺は湯船の縁に肘をついて、ただぼんやりと天井を見上げていた。
背中を流してやりたいだとか、自分の身体を洗わせてやるだとか、大胆なことを笑って言っていたから、名前は裸を見られるくらい平気なのだと思っていた。
23歳らしいし、普通の女だってそれなりに男の経験もある歳だろう。
モテそうな名前なら、同世代の男達も放っておかないだろうし、1度会っただけの男の家に転がり込めるくらいだから、性に対しても奔放だと思っていたが、そうでもないのだろうか。
今の名前の様子は、まるで無垢な少女のようだ。
(まさかな。)
万が一、極端に経験が少ないのだとしても、処女なんてのはありえない。
ただ単純に恥ずかしいだけだろう。
そんなことを考えている間に、名前は身体を洗い終わったようだった。
身体を洗うためにタオルを外したようで、濡れたタオルを胸元から流して心許なげに隠しているだけだった。
「あの…、お邪魔しても…、いいですか…?」
「あぁ。」
俺は伸ばしていた脚を折り曲げて、自分の前の方へ入るように促した。
小さな足が、躊躇いがちにゆっくりと湯舟へと触れた。
出来る限り身体を隠しながら風呂に入った名前は、俺と向かい合うように座りながら、タオルを外して湯船の縁に置いた。
揺れるお湯の向こうに見え隠れする肌は、名前が膝を抱えるように座ることで隠れて見えなくなった。
「あの…。」
名前は、抱えた膝に顔を埋めるように伏せていた。
小さな声だったけれど、静かな風呂の中では、揺れるお湯の音すら響くくらいで、しっかりと俺の耳に届いた。
「なんだ。」
「…ごめんなさい。嫌いって…、ハッキリ言ってくれたのに…、
どうしても、リヴァイさんが気になって…、倒れてたらどうしようと思ったら
どこにも行けなくって…。」
「…だから公園なんかにいたのか。」
「本当に…ごめんなさい…。それで、またリヴァイさんに迷惑をかけちゃって…。
お風呂から上がったら、帰ります…。」
「帰る家はねぇんだろ。」
「…本当は、幼馴染が1人暮らししてる家があるんです…。
いつでも来いって言ってくれてるから、私はもう、大丈夫です。」
「男か。」
「橋から飛び降りようとしたときに探しに来たのが、幼馴染です。」
「あ~…あの長髪がクソほど似合わねぇ男か。」
「先輩のリーゼントに憧れて伸ばしだしたんです。似合わないのに。
自分ではイケてると思ってるので、それは言わないであげてください。」
顔を伏せたままだったけれど、その幼馴染の話になった途端に、名前の声色は少し楽し気に変わっていた。
俺は名前の腕を掴むと、強引に自分の方に引っ張った。
「あ…!」
驚き過ぎて抵抗も出来ないままの名前は、きっと気づいたときにはもう、俺の鎖骨のあたりに頬を埋めて寄り掛かっていたはずだ。
柔かい感触が俺の胸元に押しつけられていた。
さすがにそれは可哀想な気がして、俺は名前の両肩を持つと、強引に身体の向きを変えた。
何をされているのか分かっていない名前の身体は、俺の思いのままだった。
背中を向けた格好にした名前を、俺は後ろから抱きしめた。
小さな肩がビクッと震えた。
強張る身体から、緊張が俺にも伝わるようだった。
「すまなかった。」
名前の肩に顔を埋めて、頭を下げた。
風邪を引くだとか、身体を温めるためだとか、嘘ではないけれど、口実に過ぎなかった。
身体も裸になれば、心も裸になれるかもー、なんて女々しいことを考えた。
素直な謝り方を、俺は知らなかったのだ。
「…いえ、あの、お風呂はとても有難かったので、裸を見られたくらいは、大丈夫です。
それよりあの…、勝手に裸を見てしまって本当に申し訳なー。」
「嫌いなんて、思ってない。」
「…え?」
「言い訳は、しない。何を言ったところで、
名前を傷つけて、雨の中に放り出したことに変わりはねぇ。
でも、信じてくれ。嫌いなんて、思ってない。思ったことも、ない。」
「…っ。」
「ヒドイことを言った。本当に、すまなかった。」
名前は俯いたままで、何度も首を横に振っていた。
身体も小さく震えていて、泣いているのが分かった。
また、泣かせてしまった。
でも、今度は傷つけたわけじゃない。
あの日からずっと重たかった肩が少しずつ、軽くなっていくようだった。
「名前が幼馴染の男の家に行きてぇなら好きにすればいい。
俺は今も明け方近くに帰ってきて、朝早く家を出て行くから、
名前が思ってるようなお試し恋人なんてもんは出来ねぇ。」
「私は…ーっ。」
「いいから聞け。名前の相手はしてやれねぇが、俺は忙しくて家のことも何も出来ねぇ。
だから…、名前が家に居てくれると、助かる。」
「…居ても、いいんですか…?」
「名前が消えたら、困るんだ。俺を…、支えてほしい。」
後ろから名前を抱きしめる両腕に力が入った。
エルドから聞くまで、支え合うなんていう関係が家族以外に存在するなんて知らなかった。
もし、アンと恋人だった頃にそれを知っていても、結果は同じだっただろう。
アンは俺に支えてもらいたかっただけで、支える気はなかった。
俺はアンに支えてもらおうとはしなかっただろうし、弱みを見せるのも嫌だった。
でも、名前になら、こうして縋れてしまう。
不思議だった。
男女の関係ではないから、居候だから、俺は気を許せたんだ。
心の中で、俺は幾つもの理由を上げていた。
「はい…っ。ありがとう、ございます…っ。」
俺の腕の中で、名前は涙声で何度も頷いていた。
冷えた身体が、風呂と名前の温度で温まっていくのが、ひどく心地よかった。
支えを失って歩けなくなったのは、本当に俺だけ?
何日ぶりかな、日記さん。
久しぶり、てほどでもないのだろうけど、私にはとても長い時間、サヨナラしていたような気分だったの。
だから、今も信じられない。
私の恋に、また新しいページが追加されるなんて。
リヴァイさんは、やっぱりとても優しくて、私はどんどん好きになっていくばかり。
「支えて欲しい。」
リヴァイさんから、そんなことを言われるなんて思ってもなかったの。
私に出来るすべてを尽くして、リヴァイさんを支えていくわ。
どんなに小さな悲しみさえもリヴァイさんに近づけないようにするの。
リヴァイさんの為なら、なんだってしたい。
だって、私はリヴァイさんがいたからこうして生きていられるんだもの。
私をずっと支えてくれたリヴァイさんに、私は何だってしたい。