◇14ページ◇我儘じゃなかったんだ
Name change
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フロントガラスを叩きつける激しい雨に、慌ただしく左右に振れるワイパーは何の役にも立たなかった。
夜の闇と雨に反射する車のライトも邪魔して、前がよく見えず、俺の口からは無意識に舌打ちが漏れた。
オルオの愛車に飛び乗って研究施設を出た俺だったが、名前が行きそうな場所に心当たりなんてなかった。
そもそも、俺は名前のことをほとんど知らないのだ。
今だって、本当に独りきりでいるのかすら分からない。
もしかすると、友人の家にいるのかもしれない。
それでも、名前が独りで雷に怯えているのかもしれないと思うと、居ても立っても居られなかったのだ。
赤信号で止まった俺は、スマホを取り出してハンジに電話をかけた。
呼び出し音が鳴ったのを確認してから、車のスピーカーとスマホを繋いだ。
信号が青になってすぐに、ハンジが電話に出た。
「もしも~し。こんな時間にどうした~?」
気の抜けた声を聞きながら、俺は車のアクセルを踏んだ。
「お前、名前をどこかで見たことがあるって言ってたよな。」
「あ~、言ったね。それがどうかした?」
「思い出したのか。」
「どうして?」
「今から探しに行く。だが、俺にはアイツが行きそうな場所に心当たりがない。」
「どうしたの、急に。名前は追い出したんじゃなかった?」
「…お前の言う通りだった。アイツは我儘なんか言ってなかった。間違えてたのは俺だった。」
「それで探しに行くの?勝手じゃない?」
「…分かってる。」
「…まぁ、私が何か言うことじゃないけどさ。
とにかく、悪いけど、アレは私の勘違いだったみたいだ。
エルヴィンが子役時代から応援してる女優に似てただけだった。」
「チッ。」
舌打ちと共に、ハンドルを握る手に力がこもる。
ハンジの曖昧な記憶だけが、俺の乏しい情報源だったのだ。
それくらい、俺は名前のことを何も知らなかった。
何も分からないのであれば、マンションや駅周辺を虱潰しに探し回るしかないか。
そんなことを考えていた俺に、スマホの向こうからハンジが話しかける。
「居候が出て行っただけなのにわざわざ雨の中、探しに出るなんて不思議だなってのは置いといて。」
「置いとくくらいなら言うな。」
「まぁまぁ。でさ、もし、名前を見つけたらどうするの?
また居候させるのはリヴァイの自由だけど、お母さんのことが解決するまでは
その無茶な生活を続けるんだろう?また名前は心配するよ。」
名前を見つけてからのことを考えていなかった俺は、ハンジに指摘されて気づいた。
また居候させるつもりなのか、自分でもよく分からなかった。
とにかく、今、雷に怯えているかもしれない名前を独りにはさせられない、その一心だった。
それから、罪悪感もあったのだと思う。
「お母さんのこと、名前は知らないみたいだったし、
話してないんだろう?」
「あぁ。わざわざ居候に話すようなことじゃねぇ。」
「でも、それで、名前は泣くほど心配してたんだよ?
また家に戻っても、同じことの繰り返しじゃないかな。」
「…話して、口出ししねぇように言う。
話せば、アイツは分かるはずだ。」
「へぇ、信じてるんだ。」
「…分からない。ただ…、そう思っただけだ。」
信じている、とは違う気がした。
ただ、ほんの短い間だったけれど、俺の知る名前は、いつも俺の味方だった。
ただひたすらに、馬鹿みたいに、いつも俺を笑って許してくれたからー。
「そっか。でも、リヴァイのことが大好きな娘だから
お母さんが病気で入院してるって知ったら、凄く心配するね。」
「…そうかもな。」
「この前は何を言っても無駄そうだったから言わなかったけど、
リヴァイが風呂場で倒れたって電話してきたとき、
名前、自分のせいだって泣いてたんだ。」
「どうしてアイツのせいになるんだ。」
「リヴァイの身体がボロボロなのに気づいてたのに、
仕事を休めって言う勇気が自分になかったから、倒れるまで仕事をさせてしまった。
そう言って、泣いてたんだよ。違うと言ったけど…、まだ責めてるかも。」
「…バカなやつだ。」
「もし見つかったら、名前は悪くないってリヴァイから言ってあげなよ。
あ、それから、名前の居そうな場所だけどー。」
「分かるのか!?」
「いや、全く。」
「チッ。」
「でも、まだリヴァイのことが好きなら、君が倒れないか心配して
マンションのそばにいるかもしれないなぁと思ったの。」
「…探してみる。助かった。」
「は~い。頑張ってね~。」
通話が終了になったのを確認した俺は、アクセルを強く踏み込んで自宅マンションへ急いだ。
もう一度、君を探させてくれ
どんなに激しい雨が降っていようが、雷が鳴っていようが、必ず見つけ出すから
夜の闇と雨に反射する車のライトも邪魔して、前がよく見えず、俺の口からは無意識に舌打ちが漏れた。
オルオの愛車に飛び乗って研究施設を出た俺だったが、名前が行きそうな場所に心当たりなんてなかった。
そもそも、俺は名前のことをほとんど知らないのだ。
今だって、本当に独りきりでいるのかすら分からない。
もしかすると、友人の家にいるのかもしれない。
それでも、名前が独りで雷に怯えているのかもしれないと思うと、居ても立っても居られなかったのだ。
赤信号で止まった俺は、スマホを取り出してハンジに電話をかけた。
呼び出し音が鳴ったのを確認してから、車のスピーカーとスマホを繋いだ。
信号が青になってすぐに、ハンジが電話に出た。
「もしも~し。こんな時間にどうした~?」
気の抜けた声を聞きながら、俺は車のアクセルを踏んだ。
「お前、名前をどこかで見たことがあるって言ってたよな。」
「あ~、言ったね。それがどうかした?」
「思い出したのか。」
「どうして?」
「今から探しに行く。だが、俺にはアイツが行きそうな場所に心当たりがない。」
「どうしたの、急に。名前は追い出したんじゃなかった?」
「…お前の言う通りだった。アイツは我儘なんか言ってなかった。間違えてたのは俺だった。」
「それで探しに行くの?勝手じゃない?」
「…分かってる。」
「…まぁ、私が何か言うことじゃないけどさ。
とにかく、悪いけど、アレは私の勘違いだったみたいだ。
エルヴィンが子役時代から応援してる女優に似てただけだった。」
「チッ。」
舌打ちと共に、ハンドルを握る手に力がこもる。
ハンジの曖昧な記憶だけが、俺の乏しい情報源だったのだ。
それくらい、俺は名前のことを何も知らなかった。
何も分からないのであれば、マンションや駅周辺を虱潰しに探し回るしかないか。
そんなことを考えていた俺に、スマホの向こうからハンジが話しかける。
「居候が出て行っただけなのにわざわざ雨の中、探しに出るなんて不思議だなってのは置いといて。」
「置いとくくらいなら言うな。」
「まぁまぁ。でさ、もし、名前を見つけたらどうするの?
また居候させるのはリヴァイの自由だけど、お母さんのことが解決するまでは
その無茶な生活を続けるんだろう?また名前は心配するよ。」
名前を見つけてからのことを考えていなかった俺は、ハンジに指摘されて気づいた。
また居候させるつもりなのか、自分でもよく分からなかった。
とにかく、今、雷に怯えているかもしれない名前を独りにはさせられない、その一心だった。
それから、罪悪感もあったのだと思う。
「お母さんのこと、名前は知らないみたいだったし、
話してないんだろう?」
「あぁ。わざわざ居候に話すようなことじゃねぇ。」
「でも、それで、名前は泣くほど心配してたんだよ?
また家に戻っても、同じことの繰り返しじゃないかな。」
「…話して、口出ししねぇように言う。
話せば、アイツは分かるはずだ。」
「へぇ、信じてるんだ。」
「…分からない。ただ…、そう思っただけだ。」
信じている、とは違う気がした。
ただ、ほんの短い間だったけれど、俺の知る名前は、いつも俺の味方だった。
ただひたすらに、馬鹿みたいに、いつも俺を笑って許してくれたからー。
「そっか。でも、リヴァイのことが大好きな娘だから
お母さんが病気で入院してるって知ったら、凄く心配するね。」
「…そうかもな。」
「この前は何を言っても無駄そうだったから言わなかったけど、
リヴァイが風呂場で倒れたって電話してきたとき、
名前、自分のせいだって泣いてたんだ。」
「どうしてアイツのせいになるんだ。」
「リヴァイの身体がボロボロなのに気づいてたのに、
仕事を休めって言う勇気が自分になかったから、倒れるまで仕事をさせてしまった。
そう言って、泣いてたんだよ。違うと言ったけど…、まだ責めてるかも。」
「…バカなやつだ。」
「もし見つかったら、名前は悪くないってリヴァイから言ってあげなよ。
あ、それから、名前の居そうな場所だけどー。」
「分かるのか!?」
「いや、全く。」
「チッ。」
「でも、まだリヴァイのことが好きなら、君が倒れないか心配して
マンションのそばにいるかもしれないなぁと思ったの。」
「…探してみる。助かった。」
「は~い。頑張ってね~。」
通話が終了になったのを確認した俺は、アクセルを強く踏み込んで自宅マンションへ急いだ。
もう一度、君を探させてくれ
どんなに激しい雨が降っていようが、雷が鳴っていようが、必ず見つけ出すから