◇12ページ◇病
Name change
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余程、追い出されたくなかったのか。
それとも、ただ単純に名前の手際が良かったのか。
俺が出勤の準備をしている間に朝食の準備は完璧に終わっていた。
いつもと変わらないクオリティの料理がダイニングテーブルに並んでいるのを見て、思わず感心してしまったくらいだ。
「いつも何時に起きてるんだ?」
朝食を口に運びながら、俺は疑問に思っていたことを訊ねた。
サンドイッチを頬張ろうとしていた名前が、動きを止める。
そして、キラキラさせた瞳で俺を見ると、ワーとかキャーとか小さな歓声を上げだした。
起床時間を訊かれただけで、こんなに感動できる人間を見たのは、後にも先にも名前だけだ。
「もういい。訊く気も失せた。」
「え~!!せっかくリヴァイさんが私に興味を持ってくれたのに…!」
「お前に、じゃない。起床時間が気になっただけだ。」
素っ気なく答えれば、名前は頬を膨らませて口を尖らせた。
昨日の雷の夜が嘘のように、いつも通りの朝だった。
むしろ、大雨が通り過ぎたその朝は、雲ひとつない真っ青な空が広がっていて、とても気持ちのいい朝だった。
名前は明るかったし、俺も掴みどころのない名前の弱みを知れた気がして少しだけ優越感を覚えいていた。
いつも通りの美味しい朝食を終えて、仕事へ向かう俺を名前が見送る。
それもいつもと同じだった。
「いってらっしゃい。」
扉を開く前に、名前はいつも笑顔でそう言って、触れるだけのキスをする。
もう慣れてしまったそれに、俺が驚くことはないし、何か感情が生まれるわけでもない。
「あぁ。今日も定時には終わるはずだ。」
「はい!美味しい夕食作って待ってますねっ。
リクエストはありますか?」
「ねぇ。」
「いつも通り!オッケーです!」
名前が親指と人差し指で円を作って、元気に答える。
ハンジ達を家に引き連れて帰ったあの日から、俺は帰る時間を朝のうちに伝えるようにしていた。
スマホを持っていない名前には口頭で予定を伝えておくしかなかったからだ。
定時で帰ると言っておきながら、遅くなることもなかったわけではない。
急な研究依頼が入れば、珍しく残業をするときだってあった。
それでも、とりあえずは、名前に予定を伝えるようにしていたのは、試すような真似をした罪悪感が消えていなかったからだと思う。
それから、定時で帰ると伝えたはずの俺の帰りが遅くなってしまっても、嫌な顔ひとつしないで受け入れてくれる名前だったから、それが、急に変更になるかもしれない予定でも伝えやすかったのだ。
「それじゃ、お仕事、頑張って来てくださいね。
気をつけて行ってらっしゃい。」
名前が顔の横で、小さな手のひらを小さく左右に振った。
突然、おかしな女が俺の家に住むと勝手に決めて、強引に転がり込んできて1か月も経っていないが、こうやって名前に見送られる出勤が当たり前になりつつあった。
そんな頃だった。
マンションのエントランスを出ると、俺のスマホが鳴った。
ガキの頃から、顔を合わせる度にくだらない喧嘩を繰り返していた叔父のケニーからの着信だった。
便りがないのがいい便りだと本気で言っているケニーとは、普段から頻繁にお互いに連絡を取り合うようなことはしていない。
そんな珍しい男からの着信に、俺は嫌な予感が過った。
思った通り、それは良い知らせではなかった。
ケニーの感情を押し殺したような、わざとふざけた調子の声は、俺の頭をガツンと殴った。
それは、母親が倒れて救急車で運ばれたことを知らせる連絡だった。
それとも、ただ単純に名前の手際が良かったのか。
俺が出勤の準備をしている間に朝食の準備は完璧に終わっていた。
いつもと変わらないクオリティの料理がダイニングテーブルに並んでいるのを見て、思わず感心してしまったくらいだ。
「いつも何時に起きてるんだ?」
朝食を口に運びながら、俺は疑問に思っていたことを訊ねた。
サンドイッチを頬張ろうとしていた名前が、動きを止める。
そして、キラキラさせた瞳で俺を見ると、ワーとかキャーとか小さな歓声を上げだした。
起床時間を訊かれただけで、こんなに感動できる人間を見たのは、後にも先にも名前だけだ。
「もういい。訊く気も失せた。」
「え~!!せっかくリヴァイさんが私に興味を持ってくれたのに…!」
「お前に、じゃない。起床時間が気になっただけだ。」
素っ気なく答えれば、名前は頬を膨らませて口を尖らせた。
昨日の雷の夜が嘘のように、いつも通りの朝だった。
むしろ、大雨が通り過ぎたその朝は、雲ひとつない真っ青な空が広がっていて、とても気持ちのいい朝だった。
名前は明るかったし、俺も掴みどころのない名前の弱みを知れた気がして少しだけ優越感を覚えいていた。
いつも通りの美味しい朝食を終えて、仕事へ向かう俺を名前が見送る。
それもいつもと同じだった。
「いってらっしゃい。」
扉を開く前に、名前はいつも笑顔でそう言って、触れるだけのキスをする。
もう慣れてしまったそれに、俺が驚くことはないし、何か感情が生まれるわけでもない。
「あぁ。今日も定時には終わるはずだ。」
「はい!美味しい夕食作って待ってますねっ。
リクエストはありますか?」
「ねぇ。」
「いつも通り!オッケーです!」
名前が親指と人差し指で円を作って、元気に答える。
ハンジ達を家に引き連れて帰ったあの日から、俺は帰る時間を朝のうちに伝えるようにしていた。
スマホを持っていない名前には口頭で予定を伝えておくしかなかったからだ。
定時で帰ると言っておきながら、遅くなることもなかったわけではない。
急な研究依頼が入れば、珍しく残業をするときだってあった。
それでも、とりあえずは、名前に予定を伝えるようにしていたのは、試すような真似をした罪悪感が消えていなかったからだと思う。
それから、定時で帰ると伝えたはずの俺の帰りが遅くなってしまっても、嫌な顔ひとつしないで受け入れてくれる名前だったから、それが、急に変更になるかもしれない予定でも伝えやすかったのだ。
「それじゃ、お仕事、頑張って来てくださいね。
気をつけて行ってらっしゃい。」
名前が顔の横で、小さな手のひらを小さく左右に振った。
突然、おかしな女が俺の家に住むと勝手に決めて、強引に転がり込んできて1か月も経っていないが、こうやって名前に見送られる出勤が当たり前になりつつあった。
そんな頃だった。
マンションのエントランスを出ると、俺のスマホが鳴った。
ガキの頃から、顔を合わせる度にくだらない喧嘩を繰り返していた叔父のケニーからの着信だった。
便りがないのがいい便りだと本気で言っているケニーとは、普段から頻繁にお互いに連絡を取り合うようなことはしていない。
そんな珍しい男からの着信に、俺は嫌な予感が過った。
思った通り、それは良い知らせではなかった。
ケニーの感情を押し殺したような、わざとふざけた調子の声は、俺の頭をガツンと殴った。
それは、母親が倒れて救急車で運ばれたことを知らせる連絡だった。