◇最終ページ◇Happily ever after
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ゆっくりと開いた扉から、私は部屋に入った。
白い絨毯の敷かれた広めの廊下を緊張しながら歩けば、その先にもう一枚扉があった。
そこもゆっくりと開くと、広いリビングに繋がっていた。
その奥には全面ガラス張りの大きな窓と、その前に白衣を着たリヴァイさんの後ろ姿があった。
扉が開いた音に気が付いて、リヴァイさんが振り返る。
まるで時が戻ったみたいに、10年以上前の日付が書かれていたあの古い写真と同じだった。
さっきまで緊張してゆっくりとしか歩けなかった私の足が、まるで離れていた時間を埋めようとしているみたいに駆け出した。
「リヴァイさん…っ。」
飛びついた私をリヴァイさんの華奢に見えて筋肉質な身体がしっかりと抱き留めた。
紅茶の香りにふわりと包まれて、黒髪がサラリと揺れるから、胸がキュッと苦しくなる。
「会いたかったです…っ。」
「俺も、ずっと会いたかった。」
リヴァイさんは私を強く抱きしめた。
その温もりを確かめるみたいに、ギュッと、ギュッと何度も抱きしめられた。
しばらくただ強く抱きしめ合った後、リヴァイさんがゆっくりと腕を離した。
「ガラスの靴は持ってきたか?」
目の前に立った私に、リヴァイさんが訊ねた。
緊張したままで、私はユミルから渡された小瓶をリヴァイさんに見せた。
「注意事項は?」
「ヒストリアから聞きました。これを持ってたら記憶が戻るって。」
「正確には、それを点滴で身体に入れたら、記憶障害の原因を消せる。
それで、漸く記憶が戻る。」
「そっか…。よかった…。」
ホッとして、息が漏れた。
不安がないわけではなかったけれど、リヴァイさんとの記憶を思い出せるのは、素直に嬉しかった。
「俺も、お前が勇気を出してくれて嬉しい。」
リヴァイさんがクシャリと髪を撫でた。
それが、なんだかくすぐったくて、私は目を伏せて頬を緩めた。
「昨日の夜、自分の日記を読みました。
リヴァイさんは、魔法の薬を作る研究員さんだったんですね。」
「医師名簿に俺の名前がない理由、分かったみたいだな。」
「それは、研究員さんの白衣ですか?
それとも魔法使いの制服?」
「あ~…、これは、初めからやり直すならこれだと
ファーランに無理やり着せられた。」
リヴァイさんが、なんとも言えない顔をして白衣の胸ポケットの辺りに触れた。
カジュアルな私服姿だったエレン達に対して、このお城のようなホテルにいたヒストリア達はそれらしい格好をしていたのを思い出す。
どうやらあれは、白タキシードをそつなく着こなしていたファーランさんの指示だったようだ。
「そうだったんですね。
でも、白衣とっても似合ってますよ。」
クスクスと笑う私に、リヴァイさんは苦笑を返した。
そして、すぐに話を変えられてしまった。
「去年のクリスマス、この向かいにあるホテルに泊まったんだ。」
リヴァイさんに言われて、私は窓の向こうに視線を向けた。
確かに向かい合うように立派なホテルに建っていた。
「何をしてやれば名前が喜ぶか分からなくて、このホテルに気づいたときはもう予約もいっぱいで。
仕方なくそこのホテルにして、そこから見える夜景を見せてやると
シンデレラ城のある魔法の世界みたいだと泣くほど喜んでくれて、俺の方が嬉しかった。」
「それが…、リヴァイさんがシンデレラと見た魔法の世界に一番近い夜景ですか?」
「次こそは、夜景じゃなくて、魔法の世界に連れて行きたいと思ってた。
クリスマスは過ぎちまったけど、ここに一緒にいられて、俺は今、あのときより嬉しい。」
リヴァイさんが、愛おしそうに私の頬を撫でる。
優しい温もりに、私は胸が締め付けられそうだった。
嬉しさと、ずっとずっと悲しい思いをさせてしまっていた苦しさでー。
そんな私に、リヴァイさんが続ける。
「馬にもネズミ共にも何度も訊かれたと思うが、
永遠に解けない魔法をかけてもいいか?」
「はい…っ。」
私が頷くと、リヴァイさんは、窓際にあった棚の引き出しを開けた。
そこから取り出したのは、ガラスの靴だった。
驚く私の足元に、左右揃ったガラスの靴が並べられた。
「驚くことはないだろ?
何度割れて壊れても、俺が何度でも魔法で出してやる。」
リヴァイさんがしたり顔で口の端を上げた。
嬉しくて、胸が詰まった。
私は、履いていたヒールを脱いで、リヴァイさんに差し出されたガラスの靴に足を入れた。
ピタリとサイズの合ったそれに、本当にシンデレラになったみたいだった。
でも、私は彼女とは違う。
だって、私が愛したのは王子様ではなくて、魔法使いだからー。
そして、魔法使いさんも、私を王子様の元へ連れて行く気なんてないのだ。
「結婚しよう。
そして、0時を過ぎても一緒にいよう。ずっと。」
リヴァイさんにプロポーズをされて、私の感情は一気に涙になって溢れた。
嬉しくて、嬉しくて、心臓が悲鳴を上げる。
「…っ、はい…っ。」
涙を流しながら、私は何度も頷いた。
そんな私をリヴァイさんが抱き上げる。
見下ろす私を、嬉しそうに笑みを浮かべたリヴァイさんが見つめ返した。
自ら眩いくらいに光り輝く魔法のお城の向こうには、心を奪われそうな幻想的な夜景が広がる。
ここは、魔法の世界。
キラキラと輝く妖精のような星達に見守られて、漸く結ばれた私とリヴァイさんの唇が重なった。
魔法の世界で、シンデレラと魔法使いは永遠に幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし。
1階に降りたファーランとヒストリアを、エレン達がロビーで待っていた。
ソファを彼らで占領してグッタリとしている。
そのそばでは、小瓶をシンデレラに渡すという仕事のみだったユミルが、涼しい顔をしてスマホを見ていた。
対照的な様子に、ファーランとヒストリアは顔を見合わせてクスリと笑った。
彼らがホテル中を走り回って騒いでいることは、名前の妹の野梨子から電話で聞いていた。
怖い怖い魔法使いから命令をされた馬とネズミと駒達は、とても頑張ってくれたらしい。
あそこで彼らの頑張りがなければ、名前の母親は、幸せが約束されている結婚を破談にはさせなかったはずだ。
今頃、幸せな時間を過ごしている魔法使いとシンデレラの陰の功労者は、彼らに違いない。
ソファの背もたれに首を乗せて天井を見上げていたエレンが、視線だけをこちらに向けた。
そして、ファーランに気が付いて、小さく手を上げた。
「あ~、ファーランさん。お疲れ様で~す。」
「そっちこそ、お疲れみたいだな。」
苦笑するファーランに、エレン達からは疲れ果てた視線だけが返って来た。
「それで、俺達の部屋ってどこっすか?
早くシャワー浴びて寝てぇ。」
「何言ってんだ。お前らの部屋なんてとってるわけねぇだろ。」
「はぁ!?」
ソファでグッタリしていたエレンの身体が、文字通り飛び起きた。
ファーランとエレンのやりとりを聞いていたミカサ達も、絶句した顔をしていた。
どうやら、自分達もこのホテルに泊まれるつもりだったらしい。
「お前らな、このホテルに泊まるのがいくらするか分かってんの?
一番安い部屋でも、超高級ホテルもビックリする値段だぞ。
そのスウィートルームをとって、馬とネズミと駒の為の部屋まで用意してやる金なんかねぇよ。」
「知りませんよ…!!俺達、すげぇ頑張ったんですよ!!
せめて、向かいのホテルでもいいから泊まらせてくださいよ!!」
「向こうも超高級ホテルだから。」
「そんなー。」
「さぁ、帰るぞ~。」
エレンだけじゃなく、アルミン達まで騒ぎだした。
だが、ファーランは彼らの文句をスルーして、ホテルのエントランスへと向かう。
エレン達とは違って体力を使うこともせず、初めからホテルに泊まれないことを知っていたヒストリアとユミルは、当然のようにファーランに続いた。
だが、エレン達はロビーのソファから動き出さずに、泊まらせてくれとまだ駄々をこねている。
ファーランが後ろを振り返った。
「おい、お前ら。0時を過ぎても魔法は解けねぇかもしれないが、
リムジンの返却時間は0時を過ぎたら延滞料金がかかっちまうんだよ。
払える金、持ってんのか?」
「そんなの…!リヴァイさんに払わせてくださいよぉお!!」
「へぇ、それを自分で言えるのか、エレン?」
「…分かりましたよ!!帰ればいいんでしょ!!」
逆ギレ気味にエレンは諦めた。
相当、リヴァイが怖いらしい。
一番駄々をこねていたエレンが諦めたことで、アルミン達も仕方なくソファから立ち上がった。
とりあえず、こちらも、めでたし、めでたし?
白い絨毯の敷かれた広めの廊下を緊張しながら歩けば、その先にもう一枚扉があった。
そこもゆっくりと開くと、広いリビングに繋がっていた。
その奥には全面ガラス張りの大きな窓と、その前に白衣を着たリヴァイさんの後ろ姿があった。
扉が開いた音に気が付いて、リヴァイさんが振り返る。
まるで時が戻ったみたいに、10年以上前の日付が書かれていたあの古い写真と同じだった。
さっきまで緊張してゆっくりとしか歩けなかった私の足が、まるで離れていた時間を埋めようとしているみたいに駆け出した。
「リヴァイさん…っ。」
飛びついた私をリヴァイさんの華奢に見えて筋肉質な身体がしっかりと抱き留めた。
紅茶の香りにふわりと包まれて、黒髪がサラリと揺れるから、胸がキュッと苦しくなる。
「会いたかったです…っ。」
「俺も、ずっと会いたかった。」
リヴァイさんは私を強く抱きしめた。
その温もりを確かめるみたいに、ギュッと、ギュッと何度も抱きしめられた。
しばらくただ強く抱きしめ合った後、リヴァイさんがゆっくりと腕を離した。
「ガラスの靴は持ってきたか?」
目の前に立った私に、リヴァイさんが訊ねた。
緊張したままで、私はユミルから渡された小瓶をリヴァイさんに見せた。
「注意事項は?」
「ヒストリアから聞きました。これを持ってたら記憶が戻るって。」
「正確には、それを点滴で身体に入れたら、記憶障害の原因を消せる。
それで、漸く記憶が戻る。」
「そっか…。よかった…。」
ホッとして、息が漏れた。
不安がないわけではなかったけれど、リヴァイさんとの記憶を思い出せるのは、素直に嬉しかった。
「俺も、お前が勇気を出してくれて嬉しい。」
リヴァイさんがクシャリと髪を撫でた。
それが、なんだかくすぐったくて、私は目を伏せて頬を緩めた。
「昨日の夜、自分の日記を読みました。
リヴァイさんは、魔法の薬を作る研究員さんだったんですね。」
「医師名簿に俺の名前がない理由、分かったみたいだな。」
「それは、研究員さんの白衣ですか?
それとも魔法使いの制服?」
「あ~…、これは、初めからやり直すならこれだと
ファーランに無理やり着せられた。」
リヴァイさんが、なんとも言えない顔をして白衣の胸ポケットの辺りに触れた。
カジュアルな私服姿だったエレン達に対して、このお城のようなホテルにいたヒストリア達はそれらしい格好をしていたのを思い出す。
どうやらあれは、白タキシードをそつなく着こなしていたファーランさんの指示だったようだ。
「そうだったんですね。
でも、白衣とっても似合ってますよ。」
クスクスと笑う私に、リヴァイさんは苦笑を返した。
そして、すぐに話を変えられてしまった。
「去年のクリスマス、この向かいにあるホテルに泊まったんだ。」
リヴァイさんに言われて、私は窓の向こうに視線を向けた。
確かに向かい合うように立派なホテルに建っていた。
「何をしてやれば名前が喜ぶか分からなくて、このホテルに気づいたときはもう予約もいっぱいで。
仕方なくそこのホテルにして、そこから見える夜景を見せてやると
シンデレラ城のある魔法の世界みたいだと泣くほど喜んでくれて、俺の方が嬉しかった。」
「それが…、リヴァイさんがシンデレラと見た魔法の世界に一番近い夜景ですか?」
「次こそは、夜景じゃなくて、魔法の世界に連れて行きたいと思ってた。
クリスマスは過ぎちまったけど、ここに一緒にいられて、俺は今、あのときより嬉しい。」
リヴァイさんが、愛おしそうに私の頬を撫でる。
優しい温もりに、私は胸が締め付けられそうだった。
嬉しさと、ずっとずっと悲しい思いをさせてしまっていた苦しさでー。
そんな私に、リヴァイさんが続ける。
「馬にもネズミ共にも何度も訊かれたと思うが、
永遠に解けない魔法をかけてもいいか?」
「はい…っ。」
私が頷くと、リヴァイさんは、窓際にあった棚の引き出しを開けた。
そこから取り出したのは、ガラスの靴だった。
驚く私の足元に、左右揃ったガラスの靴が並べられた。
「驚くことはないだろ?
何度割れて壊れても、俺が何度でも魔法で出してやる。」
リヴァイさんがしたり顔で口の端を上げた。
嬉しくて、胸が詰まった。
私は、履いていたヒールを脱いで、リヴァイさんに差し出されたガラスの靴に足を入れた。
ピタリとサイズの合ったそれに、本当にシンデレラになったみたいだった。
でも、私は彼女とは違う。
だって、私が愛したのは王子様ではなくて、魔法使いだからー。
そして、魔法使いさんも、私を王子様の元へ連れて行く気なんてないのだ。
「結婚しよう。
そして、0時を過ぎても一緒にいよう。ずっと。」
リヴァイさんにプロポーズをされて、私の感情は一気に涙になって溢れた。
嬉しくて、嬉しくて、心臓が悲鳴を上げる。
「…っ、はい…っ。」
涙を流しながら、私は何度も頷いた。
そんな私をリヴァイさんが抱き上げる。
見下ろす私を、嬉しそうに笑みを浮かべたリヴァイさんが見つめ返した。
自ら眩いくらいに光り輝く魔法のお城の向こうには、心を奪われそうな幻想的な夜景が広がる。
ここは、魔法の世界。
キラキラと輝く妖精のような星達に見守られて、漸く結ばれた私とリヴァイさんの唇が重なった。
魔法の世界で、シンデレラと魔法使いは永遠に幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし。
1階に降りたファーランとヒストリアを、エレン達がロビーで待っていた。
ソファを彼らで占領してグッタリとしている。
そのそばでは、小瓶をシンデレラに渡すという仕事のみだったユミルが、涼しい顔をしてスマホを見ていた。
対照的な様子に、ファーランとヒストリアは顔を見合わせてクスリと笑った。
彼らがホテル中を走り回って騒いでいることは、名前の妹の野梨子から電話で聞いていた。
怖い怖い魔法使いから命令をされた馬とネズミと駒達は、とても頑張ってくれたらしい。
あそこで彼らの頑張りがなければ、名前の母親は、幸せが約束されている結婚を破談にはさせなかったはずだ。
今頃、幸せな時間を過ごしている魔法使いとシンデレラの陰の功労者は、彼らに違いない。
ソファの背もたれに首を乗せて天井を見上げていたエレンが、視線だけをこちらに向けた。
そして、ファーランに気が付いて、小さく手を上げた。
「あ~、ファーランさん。お疲れ様で~す。」
「そっちこそ、お疲れみたいだな。」
苦笑するファーランに、エレン達からは疲れ果てた視線だけが返って来た。
「それで、俺達の部屋ってどこっすか?
早くシャワー浴びて寝てぇ。」
「何言ってんだ。お前らの部屋なんてとってるわけねぇだろ。」
「はぁ!?」
ソファでグッタリしていたエレンの身体が、文字通り飛び起きた。
ファーランとエレンのやりとりを聞いていたミカサ達も、絶句した顔をしていた。
どうやら、自分達もこのホテルに泊まれるつもりだったらしい。
「お前らな、このホテルに泊まるのがいくらするか分かってんの?
一番安い部屋でも、超高級ホテルもビックリする値段だぞ。
そのスウィートルームをとって、馬とネズミと駒の為の部屋まで用意してやる金なんかねぇよ。」
「知りませんよ…!!俺達、すげぇ頑張ったんですよ!!
せめて、向かいのホテルでもいいから泊まらせてくださいよ!!」
「向こうも超高級ホテルだから。」
「そんなー。」
「さぁ、帰るぞ~。」
エレンだけじゃなく、アルミン達まで騒ぎだした。
だが、ファーランは彼らの文句をスルーして、ホテルのエントランスへと向かう。
エレン達とは違って体力を使うこともせず、初めからホテルに泊まれないことを知っていたヒストリアとユミルは、当然のようにファーランに続いた。
だが、エレン達はロビーのソファから動き出さずに、泊まらせてくれとまだ駄々をこねている。
ファーランが後ろを振り返った。
「おい、お前ら。0時を過ぎても魔法は解けねぇかもしれないが、
リムジンの返却時間は0時を過ぎたら延滞料金がかかっちまうんだよ。
払える金、持ってんのか?」
「そんなの…!リヴァイさんに払わせてくださいよぉお!!」
「へぇ、それを自分で言えるのか、エレン?」
「…分かりましたよ!!帰ればいいんでしょ!!」
逆ギレ気味にエレンは諦めた。
相当、リヴァイが怖いらしい。
一番駄々をこねていたエレンが諦めたことで、アルミン達も仕方なくソファから立ち上がった。
とりあえず、こちらも、めでたし、めでたし?