◇76ページ◇瞳に映る夜景
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誰にも内緒の約束が始まって3日が経っていた。
毎晩、リヴァイ先生の愉快なお友達の話を聞きながら紅茶を飲むだけだ。
時間にして1時間程度で、これは浮気と呼ぶのか、私には分からない。
もしも、総ちゃんが私に内緒で他の女の人と真夜中に紅茶を飲んでいたら嫌だろうか。
想像してみたけれど、よく分からなかった。
今日はいつもよりも肌寒いと思っていたら、夜になって雪が降った。
それに紅茶を飲みながら気づいた私とリヴァイ先生は、大きな窓辺に立って、夜空を見上げた。
ハラハラと舞う雪は、魔法使いに仕えている妖精みたいだと思った。
雪を見つめているリヴァイ先生の横顔は、この夜景よりも綺麗だった。
「魔法の世界にいるみたい。」
ポツリ、心の声が漏れていた。
何を想ってそう思ったのだろう。
ハラハラと舞う妖精のような雪と、キラキラと輝く眠らない街。そして、綺麗な横顔。そのすべてが、まるで別世界のようだった。
「魔法の世界はこんなもんじゃねぇ。もっと綺麗で、幻想的だ。」
リヴァイ先生が、意地悪く片方だけ口の端を上げた。
まただ。
自分だけ魔法の世界を知っているという自慢気な顔に、私の中でまたドロリとした何かが生まれた。
「誰と見たんですか?」
冷たい空気に乗った私の声は、氷みたいになってリヴァイ先生の耳に届いた気がした。
きっとそのせいだ。
幸せそうに夜空を見上げていたリヴァイ先生が、一瞬だけ、悲しそうに瞳を揺らしたのはー。
「シンデレラ。」
舞い落ちる白い雪を見上げながら、リヴァイ先生が言った。
思ってもいない答え過ぎて、聞き間違えたのだと思った。
だから、もう一度聞き直してみれば、やっぱり、リヴァイ先生は、シンデレラと一緒に魔法の世界の美しい夜景を見たのだと答えた。
その横顔はひどく切なそうだった。
それなのに、シンデレラと言うリヴァイ先生の声には、彼女への愛おしさが乗っていた。
さっきの私の声とは違って、とても温かいままで私の耳に届いたのだ。
「また、シンデレラと魔法の世界の夜景が見たいですか?」
「あぁ、見てぇな。」
リヴァイ先生は、雪の舞う夜空を見上げたままで言う。
あぁ、まただ。
ドロリとした黒い何かが溢れて零れ落ちる。
そして、心臓まで痛くなるのだ。
「それなら、私のとこになんか来てないで、
シンデレラを誘って見に行けばいいじゃないですか。」
私はまた冷たく言う。
どうして、リヴァイ先生みたいに温かい声で話せないんだろう。
きっと、隣にいるのが総ちゃんなら、私は優しいことが言えた気がする。
「シンデレラは、王子と結婚するから。」
「え?」
私はリヴァイ先生の方を向いた。
リヴァイ先生は、相変わらず、雪が舞い落ちる夜空を見上げていた。
その横顔はただただ綺麗で、寂しいと思っているのか、もう吹っ切れているのか、私には分からなかった。
「シンデレラ、結婚しちゃうんですか?」
「魔法が解けたシンデレラを王子が見つけちまったらしい。」
「シンデレラの王子様は、リヴァイ先生なんだと思ってました…。」
「俺は王子なんてガラじゃねぇ。」
リヴァイ先生が初めて、夜空から視線を落とした。
苦笑したその横顔は、やっぱり綺麗で、私は気持ちを読むことは出来なかった。
「じゃあ、シンデレラにとって、リヴァイ先生は何だったんですか?」
私の声はやっぱり、冷たかったと思う。
たぶん、シンデレラに腹が立っていたのだ。
リヴァイさんにこんなにも愛されているのに、他の人と結婚しようとしてしまえるシンデレラに、ひどく腹が立った。
「魔法使い。」
「え?」
「俺は、シンデレラに心底惚れて、
王子から奪っちまいたいと思ってる悪い魔法使いだ。」
リヴァイ先生は自虐的に言って、また夜空を見上げた。
今夜も、夜景を見上げるリヴァイ先生の心はここにはない。
少なくとも、私はそう感じる。
そして、その理由がやっとわかった。
リヴァイ先生は、私の隣に並んで夜景を見上げながら、シンデレラと見た魔法の景色を思い出しているのだ。
だから、同じ夜景を見ているはずなのに、私とは違うものが見えている。
もしも、私もその魔法の世界の夜景を見ることが出来たら、同じものを瞳に映せるのだろうかー。
「私も、魔法の世界の夜景を見てみたいな。」
無意識に心の声が漏れていた。
リヴァイ先生が、その声を拾ってしまって私の方を向く。
「連れて行ってやろうか。」
「え、」
「ブライダルチェックをやめて、結婚も取りやめるなら、
俺はいつだって連れてってやるよ。」
リヴァイ先生に言われて、私はハッとする。
婚約者がいて、今だってその人との結婚の為にブライダルチェックとして入院しているのに、他の男の人に夜景を見に連れて行ってもらおうとするなんて、最低だ。
きっと、リヴァイ先生は、軽い女だと思ったはずだ。
嫌だなー。
リヴァイ先生に、婚約者がいるのに他の男の人と夜景を見に行ける女だと思われたら、嫌だ。
「まさか、婚約者がいるのに、リヴァイ先生と夜景なんて見に行けないですよ。
ふふ、リヴァイ先生も冗談がブラック過ぎます。」
私は笑って誤魔化した。
「だろうな。分かってた。」
小さく何かを呟いて、リヴァイ先生はまた夜空を見上げた。
その横顔は泣きそうで、悲しそうで、抱きしめてあげたくなってしまって、私は冷たい窓に手を添えた。
私とリヴァイ先生は、同じ夜空を見上げながら、違う夜景を見ていた。
それが寂しいのはきっと、私だけなんだー。
貴方の瞳に映るものを、私も見てみたい
それはきっとこの世で最も美しいんだって、そんな気がするの
隣に君がいるのに、どんな夜景を見上げてもあの日には敵わない。
その理由なら、分かってる。
君の心が、俺にないからだ。
だから今夜も、俺と君は同じ夜空を見上げて、違う夜景を見ている。
それが寂しいのは、きっと俺だけなんだー。
毎晩、リヴァイ先生の愉快なお友達の話を聞きながら紅茶を飲むだけだ。
時間にして1時間程度で、これは浮気と呼ぶのか、私には分からない。
もしも、総ちゃんが私に内緒で他の女の人と真夜中に紅茶を飲んでいたら嫌だろうか。
想像してみたけれど、よく分からなかった。
今日はいつもよりも肌寒いと思っていたら、夜になって雪が降った。
それに紅茶を飲みながら気づいた私とリヴァイ先生は、大きな窓辺に立って、夜空を見上げた。
ハラハラと舞う雪は、魔法使いに仕えている妖精みたいだと思った。
雪を見つめているリヴァイ先生の横顔は、この夜景よりも綺麗だった。
「魔法の世界にいるみたい。」
ポツリ、心の声が漏れていた。
何を想ってそう思ったのだろう。
ハラハラと舞う妖精のような雪と、キラキラと輝く眠らない街。そして、綺麗な横顔。そのすべてが、まるで別世界のようだった。
「魔法の世界はこんなもんじゃねぇ。もっと綺麗で、幻想的だ。」
リヴァイ先生が、意地悪く片方だけ口の端を上げた。
まただ。
自分だけ魔法の世界を知っているという自慢気な顔に、私の中でまたドロリとした何かが生まれた。
「誰と見たんですか?」
冷たい空気に乗った私の声は、氷みたいになってリヴァイ先生の耳に届いた気がした。
きっとそのせいだ。
幸せそうに夜空を見上げていたリヴァイ先生が、一瞬だけ、悲しそうに瞳を揺らしたのはー。
「シンデレラ。」
舞い落ちる白い雪を見上げながら、リヴァイ先生が言った。
思ってもいない答え過ぎて、聞き間違えたのだと思った。
だから、もう一度聞き直してみれば、やっぱり、リヴァイ先生は、シンデレラと一緒に魔法の世界の美しい夜景を見たのだと答えた。
その横顔はひどく切なそうだった。
それなのに、シンデレラと言うリヴァイ先生の声には、彼女への愛おしさが乗っていた。
さっきの私の声とは違って、とても温かいままで私の耳に届いたのだ。
「また、シンデレラと魔法の世界の夜景が見たいですか?」
「あぁ、見てぇな。」
リヴァイ先生は、雪の舞う夜空を見上げたままで言う。
あぁ、まただ。
ドロリとした黒い何かが溢れて零れ落ちる。
そして、心臓まで痛くなるのだ。
「それなら、私のとこになんか来てないで、
シンデレラを誘って見に行けばいいじゃないですか。」
私はまた冷たく言う。
どうして、リヴァイ先生みたいに温かい声で話せないんだろう。
きっと、隣にいるのが総ちゃんなら、私は優しいことが言えた気がする。
「シンデレラは、王子と結婚するから。」
「え?」
私はリヴァイ先生の方を向いた。
リヴァイ先生は、相変わらず、雪が舞い落ちる夜空を見上げていた。
その横顔はただただ綺麗で、寂しいと思っているのか、もう吹っ切れているのか、私には分からなかった。
「シンデレラ、結婚しちゃうんですか?」
「魔法が解けたシンデレラを王子が見つけちまったらしい。」
「シンデレラの王子様は、リヴァイ先生なんだと思ってました…。」
「俺は王子なんてガラじゃねぇ。」
リヴァイ先生が初めて、夜空から視線を落とした。
苦笑したその横顔は、やっぱり綺麗で、私は気持ちを読むことは出来なかった。
「じゃあ、シンデレラにとって、リヴァイ先生は何だったんですか?」
私の声はやっぱり、冷たかったと思う。
たぶん、シンデレラに腹が立っていたのだ。
リヴァイさんにこんなにも愛されているのに、他の人と結婚しようとしてしまえるシンデレラに、ひどく腹が立った。
「魔法使い。」
「え?」
「俺は、シンデレラに心底惚れて、
王子から奪っちまいたいと思ってる悪い魔法使いだ。」
リヴァイ先生は自虐的に言って、また夜空を見上げた。
今夜も、夜景を見上げるリヴァイ先生の心はここにはない。
少なくとも、私はそう感じる。
そして、その理由がやっとわかった。
リヴァイ先生は、私の隣に並んで夜景を見上げながら、シンデレラと見た魔法の景色を思い出しているのだ。
だから、同じ夜景を見ているはずなのに、私とは違うものが見えている。
もしも、私もその魔法の世界の夜景を見ることが出来たら、同じものを瞳に映せるのだろうかー。
「私も、魔法の世界の夜景を見てみたいな。」
無意識に心の声が漏れていた。
リヴァイ先生が、その声を拾ってしまって私の方を向く。
「連れて行ってやろうか。」
「え、」
「ブライダルチェックをやめて、結婚も取りやめるなら、
俺はいつだって連れてってやるよ。」
リヴァイ先生に言われて、私はハッとする。
婚約者がいて、今だってその人との結婚の為にブライダルチェックとして入院しているのに、他の男の人に夜景を見に連れて行ってもらおうとするなんて、最低だ。
きっと、リヴァイ先生は、軽い女だと思ったはずだ。
嫌だなー。
リヴァイ先生に、婚約者がいるのに他の男の人と夜景を見に行ける女だと思われたら、嫌だ。
「まさか、婚約者がいるのに、リヴァイ先生と夜景なんて見に行けないですよ。
ふふ、リヴァイ先生も冗談がブラック過ぎます。」
私は笑って誤魔化した。
「だろうな。分かってた。」
小さく何かを呟いて、リヴァイ先生はまた夜空を見上げた。
その横顔は泣きそうで、悲しそうで、抱きしめてあげたくなってしまって、私は冷たい窓に手を添えた。
私とリヴァイ先生は、同じ夜空を見上げながら、違う夜景を見ていた。
それが寂しいのはきっと、私だけなんだー。
貴方の瞳に映るものを、私も見てみたい
それはきっとこの世で最も美しいんだって、そんな気がするの
隣に君がいるのに、どんな夜景を見上げてもあの日には敵わない。
その理由なら、分かってる。
君の心が、俺にないからだ。
だから今夜も、俺と君は同じ夜空を見上げて、違う夜景を見ている。
それが寂しいのは、きっと俺だけなんだー。