◇61ページ◇会いたい
Name change
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席を店内に移動し、ソファ席にエレン達を並んで座らせて、俺は向かいの椅子に腰をおろした。
アルミンは、警察で取り調べを受けている犯罪者のように神妙な顔をしていた。
すぐに顔に出るからとテーブルの木目を数えるだけしているようにミカサに命令されていたエレンは、俺につむじを見せ続けていた。
とにかく、エレンもアルミンもミカサも、黙秘権があると勘違いしているのか、口は閉じてしまったまま、言い訳をする様子すらない。
「おい、アルミン。ミカサ。お前ら、名前のことを知ってるな。」
訊ねるつもりはなかった。
もうバレているから観念しろという威圧だった。
ビクリと肩を揺らしたアルミンは、助けを求めるようにチラリとミカサを見た。
「知りません。」
ミカサは表情一つ変えずに俺を見据えて、まるでロボットのように感情のない声で答えた。
正直に話す気はない、という返事に俺は片眉を上げた。
それは名前の意思か、ミカサ達の意思か。
「研究所に来たのも研修の為じゃねぇな。急に研修なんてのが来るからおかしいと思ったんだ。
でも、何のために…、あぁ、そうか。
アルミン、お前、途中で腹が痛ぇと出て行ったな。あのとき何かしてたんだな。
何を…、スマホか。俺のスマホ盗んで、名前のデータが消えるように仕組んだな。
ミカサのクソ面倒くせぇ質問は、その間、俺達の意識をスマホから反らすためか。
あの坊主頭のバカとフランスパンのバカも、邪魔をするためだけに来たんだろ。
そういえば、ミカサ、お前はいつも2番だと言ってたな。1番が名前か。
坊主頭のバカが言ってた研究バカが名前なんだろ、あぁ?」
息継ぎもせずに捲し立てた。
久しぶりにこんな長文を喋った。
でも、俺の考えに間違いはない自信があった。
信じられないが、そう考えれば全ての辻褄が合うのだ。
あの研修は、今、振り返ってもおかしいことだらけだった。
でも、アルミンとミカサは何も答えず、沈黙が流れた。
俺は、テーブルの上に乗せた両手を強く握りしめて拳を作った。
「言え。言ってくれ。名前はどこにいる…?
どうして…、俺の前から消えた…っ。
お願いだ…、教えてくれ…っ。教えて、ほしい…!」
テーブルに額を押しつけて、頭を下げた。
声も、拳も、震えていた。
3ヵ月、必死に探して見つからなかった手がかりを漸く目の前に捕らえたのだ。
どうしても、行方を聞き出さなきゃならなかった。
どうしても、行方が、知りたかったー。
名前はどこへ行ってしまったのか。なぜこんなことになったのか。
まだ俺は、名前を愛していてもいいのかー。
「…リヴァイさん、頭を上げてください。」
申し訳なさそうなアルミンの声にそう言われたが、俺は頭を上げなかった。
答えてくれるまでこのままでいると、勝手に決めていた。
途方に暮れるような空気は、頭を下げた向こうに感じていた。
「…アルミン、ミカサ。もう教えてやろうぜ。
お前らだって、こんなの納得してねぇだろ?」
「で、でも…!」
折れてくれたようなエレンの声に、俺は勢いよく顔を上げた。
教えてくれー。
懇願するような俺の目に、アルミンは何とも言えない顔をして目を反らした。
「もうほとんどバレてるじゃねぇか。リヴァイさんに全部言いあてられた俺達の負けだ。
リヴァイさんは天才だから、少しでも隙を見せたら作戦はお終いだって名前の言う通りだ。」
エレンが大真面目な顔で言った。
「隙を見せていろいろやらかしたのはエレン、あなた。
電話をしたらダメだとジャンから言われていたのに電話をして
リヴァイさんにスマホの存在がバレたから、私達が尻拭いをする羽目になった。」
「…な、なぁ、アルミン。お前も、もう観念するべきだって思うだろ?」
冷たいミカサの視線に、エレンは気まずい顔をして目を反らした。
話を振られたアルミンは、チラリとエレンを見た後に大きくため息を吐いた。
そして、覚悟を決めた目で、俺を見た。
「さっき、リヴァイさんが言った通りです。
僕がリヴァイさんのスマホに細工をして、遠隔操作できるようにしました。
そして、名前が消えたタイミングで、リヴァイさんのスマホからデータを削除しました。」
そんな小細工をしなくても済むように、俺と連絡先の交換をしないと決めていた名前だったが、エレンがその計画を壊してしまったせいで、急遽、機械に強いアルミンが力を貸すことになったということだった。
思った通りだったが、実際に聞くと、ショックだった。
アルミン達に腹も立った。
白状したアルミンを思わず睨みつけた俺を、ミカサが睨みつけた。
でも、正直そんなことはどうでもよかった。
俺が知りたいのは、ただひとつだけだ。
「それで、今、名前はどこにいる。」
俺は苛立ったように言った。
初めから、こんな風に、全てを消して俺の前から消えるつもりだったのだと分かって、名前が分からなくなった。
スマホからデータを消したカラクリが分かった今、名前のことを知らない女だと繰り返したファーランとハンジ達も、俺の知らないところで口裏を合わせていたのかもしれなかった。
誰かが、ファーラン達にそうするように指示を出したのだ。
それは誰か。
名前なのかー。
「…言えません。」
「言え。」
「ダメなんです…。名前が覚悟を決めてしたことだから、
僕達がそれを勝手に教えることは出来ないです…。」
「いいから言え!!」
テーブルを叩いて立ち上がった。
カフェにいた他の客が何事かとこちらを見たようだったが、気にする余裕はなかった。
俺は焦っていたのだと思う。
漸く見つけたはずの手がかりだったのに、その先に繋がらなければ意味がなかった。
でも、俺を見返す申し訳なさそうな顔をしたアルミンは、絶対に話さないと決めてしまっているようだった。
指の爪を全部剥いだって話さないヤツの顔だ。
「クソ…ッ!」
俺はテーブルに拳を振り下ろして、ガタッと音を立てて椅子に座った。
せっかく名前へと繋がる手がかりを見つけたというのに、結局また振り出しかー。
このまま一生、俺は名前に会えないのだろうか。
そんな絶望的な考えが頭を過りだしたときだった、アルミンが遠慮がちに口を開いた。
「僕達からは話せないけど、もしかしたら…、あの人なら教えてくれるかもしれないです。」
アルミンが、消えかけた希望に、もう一度、光を灯すような手がかりをくれるかもしれない人物を教えてくれた。
それは、俺もよく知る男だった。
俺にはもう、ガラスの靴もないけれど
必ず君を見つけると約束したから
アルミンは、警察で取り調べを受けている犯罪者のように神妙な顔をしていた。
すぐに顔に出るからとテーブルの木目を数えるだけしているようにミカサに命令されていたエレンは、俺につむじを見せ続けていた。
とにかく、エレンもアルミンもミカサも、黙秘権があると勘違いしているのか、口は閉じてしまったまま、言い訳をする様子すらない。
「おい、アルミン。ミカサ。お前ら、名前のことを知ってるな。」
訊ねるつもりはなかった。
もうバレているから観念しろという威圧だった。
ビクリと肩を揺らしたアルミンは、助けを求めるようにチラリとミカサを見た。
「知りません。」
ミカサは表情一つ変えずに俺を見据えて、まるでロボットのように感情のない声で答えた。
正直に話す気はない、という返事に俺は片眉を上げた。
それは名前の意思か、ミカサ達の意思か。
「研究所に来たのも研修の為じゃねぇな。急に研修なんてのが来るからおかしいと思ったんだ。
でも、何のために…、あぁ、そうか。
アルミン、お前、途中で腹が痛ぇと出て行ったな。あのとき何かしてたんだな。
何を…、スマホか。俺のスマホ盗んで、名前のデータが消えるように仕組んだな。
ミカサのクソ面倒くせぇ質問は、その間、俺達の意識をスマホから反らすためか。
あの坊主頭のバカとフランスパンのバカも、邪魔をするためだけに来たんだろ。
そういえば、ミカサ、お前はいつも2番だと言ってたな。1番が名前か。
坊主頭のバカが言ってた研究バカが名前なんだろ、あぁ?」
息継ぎもせずに捲し立てた。
久しぶりにこんな長文を喋った。
でも、俺の考えに間違いはない自信があった。
信じられないが、そう考えれば全ての辻褄が合うのだ。
あの研修は、今、振り返ってもおかしいことだらけだった。
でも、アルミンとミカサは何も答えず、沈黙が流れた。
俺は、テーブルの上に乗せた両手を強く握りしめて拳を作った。
「言え。言ってくれ。名前はどこにいる…?
どうして…、俺の前から消えた…っ。
お願いだ…、教えてくれ…っ。教えて、ほしい…!」
テーブルに額を押しつけて、頭を下げた。
声も、拳も、震えていた。
3ヵ月、必死に探して見つからなかった手がかりを漸く目の前に捕らえたのだ。
どうしても、行方を聞き出さなきゃならなかった。
どうしても、行方が、知りたかったー。
名前はどこへ行ってしまったのか。なぜこんなことになったのか。
まだ俺は、名前を愛していてもいいのかー。
「…リヴァイさん、頭を上げてください。」
申し訳なさそうなアルミンの声にそう言われたが、俺は頭を上げなかった。
答えてくれるまでこのままでいると、勝手に決めていた。
途方に暮れるような空気は、頭を下げた向こうに感じていた。
「…アルミン、ミカサ。もう教えてやろうぜ。
お前らだって、こんなの納得してねぇだろ?」
「で、でも…!」
折れてくれたようなエレンの声に、俺は勢いよく顔を上げた。
教えてくれー。
懇願するような俺の目に、アルミンは何とも言えない顔をして目を反らした。
「もうほとんどバレてるじゃねぇか。リヴァイさんに全部言いあてられた俺達の負けだ。
リヴァイさんは天才だから、少しでも隙を見せたら作戦はお終いだって名前の言う通りだ。」
エレンが大真面目な顔で言った。
「隙を見せていろいろやらかしたのはエレン、あなた。
電話をしたらダメだとジャンから言われていたのに電話をして
リヴァイさんにスマホの存在がバレたから、私達が尻拭いをする羽目になった。」
「…な、なぁ、アルミン。お前も、もう観念するべきだって思うだろ?」
冷たいミカサの視線に、エレンは気まずい顔をして目を反らした。
話を振られたアルミンは、チラリとエレンを見た後に大きくため息を吐いた。
そして、覚悟を決めた目で、俺を見た。
「さっき、リヴァイさんが言った通りです。
僕がリヴァイさんのスマホに細工をして、遠隔操作できるようにしました。
そして、名前が消えたタイミングで、リヴァイさんのスマホからデータを削除しました。」
そんな小細工をしなくても済むように、俺と連絡先の交換をしないと決めていた名前だったが、エレンがその計画を壊してしまったせいで、急遽、機械に強いアルミンが力を貸すことになったということだった。
思った通りだったが、実際に聞くと、ショックだった。
アルミン達に腹も立った。
白状したアルミンを思わず睨みつけた俺を、ミカサが睨みつけた。
でも、正直そんなことはどうでもよかった。
俺が知りたいのは、ただひとつだけだ。
「それで、今、名前はどこにいる。」
俺は苛立ったように言った。
初めから、こんな風に、全てを消して俺の前から消えるつもりだったのだと分かって、名前が分からなくなった。
スマホからデータを消したカラクリが分かった今、名前のことを知らない女だと繰り返したファーランとハンジ達も、俺の知らないところで口裏を合わせていたのかもしれなかった。
誰かが、ファーラン達にそうするように指示を出したのだ。
それは誰か。
名前なのかー。
「…言えません。」
「言え。」
「ダメなんです…。名前が覚悟を決めてしたことだから、
僕達がそれを勝手に教えることは出来ないです…。」
「いいから言え!!」
テーブルを叩いて立ち上がった。
カフェにいた他の客が何事かとこちらを見たようだったが、気にする余裕はなかった。
俺は焦っていたのだと思う。
漸く見つけたはずの手がかりだったのに、その先に繋がらなければ意味がなかった。
でも、俺を見返す申し訳なさそうな顔をしたアルミンは、絶対に話さないと決めてしまっているようだった。
指の爪を全部剥いだって話さないヤツの顔だ。
「クソ…ッ!」
俺はテーブルに拳を振り下ろして、ガタッと音を立てて椅子に座った。
せっかく名前へと繋がる手がかりを見つけたというのに、結局また振り出しかー。
このまま一生、俺は名前に会えないのだろうか。
そんな絶望的な考えが頭を過りだしたときだった、アルミンが遠慮がちに口を開いた。
「僕達からは話せないけど、もしかしたら…、あの人なら教えてくれるかもしれないです。」
アルミンが、消えかけた希望に、もう一度、光を灯すような手がかりをくれるかもしれない人物を教えてくれた。
それは、俺もよく知る男だった。
俺にはもう、ガラスの靴もないけれど
必ず君を見つけると約束したから