◇51ページ◇楽しい日
Name change
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「…すぐに帰るんじゃなかったのか。なぜ、増えている。」
ソファに座る俺は、リビングで暴れまわる若者達を眺めながら、絶望的に呟いた。
ジャンとライナーは、なぜか力比べを始めてしまっているし、ひょろひょろのベルトルトは何とも芸術的なカタチで固まっていた。
人間が出来るカタチじゃないが、あれは寝相だと名前から聞いて度肝を抜いた。
そもそも他人の家で寛いで寝るな。
名前が作った美味しい昼食も食い散らかされて、少ししか食べられなかった。
若者の食欲恐るべし、だ。
「このあとベルトルトとデートだったアニが、彼氏はリヴァイさんの家に行ってるって
ユミルに話しちゃったらしくて、面白がって、押しかけて来ちゃいました…。」
俺の隣に腰を降ろした名前は、申し訳なさそうに言って、頭を下げた。
悪いのは名前ではない。
さっきから、わざわざデカい声で「面白いもんねぇかな~。ゴムとか。大人のオモチャとか。オカズの本とか。」と下品なことを言いながらニヤニヤして部屋の中を歩き回っているユミルという女だ。
その隣でヒストリアとか言う小柄の金髪の女が「失礼だよ!」と言っているが、下品女は聞いちゃいない。
アニは基本的にマイペースなようで、窓際の1人用のソファに我が物顔で座って、いつの間にか勝手に俺の本を読み始めている。
「オモチャはないし、ゴムの本はよくわからないけど
おかずの本ならキッチンにあるよ?」
「はぁ!?」
「なんで驚くの?普通、キッチンじゃない?
食べたいものがあるなら作るけど?」
「あぁ…。」
名前がユミルに声をかけた。
ギョッとした顔をして名前を見たユミルは、その勘違いに気づいてバカにしたように腹を抱えて笑い出した。
本当に失礼な奴だ。
勘違いしてしまうくらいに何も知らない純粋で無垢な名前が可愛いのにー。
「あの…?なんで私、笑われてるんですかね?
ライナーにまで不憫な目で見られるのは、凄く腹が立つんですけど。」
「アイツ等が馬鹿なだけだ。お前はそのままでいい。」
隣に座る名前を抱きしめた。
もう本当に、馬鹿な奴らは帰ってくれないだろうか。
なぜ増えたのだ。まだ納得できない。
それもこれも、もとはと言えばアンが名前の服を盗んだせいだ。
でも、アンが家に入れたのは、俺が鍵を変えていなかったからで、元凶はもしかして俺なのか。
最低な気分だ。
「ねぇ、リヴァイさん。これの下巻どこ。」
いつの間にか目の前に立っていたアニが、俺を見下ろした。
本当に、マイペースが過ぎやしないか。
早く帰ってくれないだろうか。
ハンジ達が家に押しかけて来たときと同じくらい、そう思った。
でも、名前はすごく楽しそうだった。
だから俺にとってもその日は、楽しい1日になった。
友人達と笑い合っている君は本当に楽しそうだった
今ではアイツらは君の幸せを祝福してるよ、下手くそな笑顔で
結婚の約束を破棄したいとお願いするために実家に行った帰り、私はエルディア病院にやって来ていた。
ナイル先生との話も終わって、少し疲れた私は、年末を営業していたカフェテリアでココアを頼んだ。
一口飲むと、甘さと温かさが胸に流れてホッとした。
結婚の約束を破棄して、魔法が解けないことに賭けたいという私の我儘を聞いた父と母は、とても驚いていたけれど、快く受け入れてくれた。
幼い頃から、私の夢を全力で応援してくれる父と母だった。
だから、最後くらいは2人のためにできることをしたいと思っていたのに、結局はまた、甘えてしまった。
あちらとのやり取りも任せることになってしまって、迷惑や心配をかけてしまっているという罪悪感は消えない。
「ふぅ…。」
長めの息を吐いて、私はまたココアを口に運んだ。
今日は、リヴァイさんは、ハンジさんのよく分からない実験に付き合わされることになっていると聞いている。
こういうときは必ず帰りが遅くなると憂鬱そうにしていたから、ゆっくり帰ってもいいはずだ。
そう思っていても、早く、リヴァイさんの家に帰りたくなる。
家の掃除をして、美味しいご飯を作って、待っていたい。
熱いココアを強引に喉に流し込んでいると、目の前に白衣の医師が座った。
「やぁ、こんなとこで何やってんの?」
テーブルに肘をついて、ニッと笑ったのはファーランさんだった。
まさか会うとは思っていなかったから、驚いてしまった。
「年末の、御挨拶に…。ナイル先生にはとてもお世話になったので。」
「あ~、リヴァイのお母さんのこと?」
「えっと…、はい。さっきまでナイル先生のところにいたんです。
それで、ココアを飲んだら帰ろうかなと思って。」
「そういうことか。
リヴァイから聞いたよ。やっと付き合うようになったんだって?よかったな。」
ファーランさんが、優しく微笑んだ。
好きだと言ってくれた男の人に、祝福してもらうのは、なんだか申し訳ない気持ちもあった。
でも、リヴァイさんが、親友のファーランさんに私のことを話してくれていたことが、素直に嬉しかった。
「はいっ。」
「嬉しそうな顔しちゃって。」
頬を緩めて答えた私に、ファーランさんは苦笑を返した。
それから少しだけ話をして、私がココアを飲み終わるタイミングでそれぞれ席を立った。
「では、良いお年を。」
「あぁ、名前ちゃんも。可愛い彼女が出来たリヴァイには、
来年はひたすら扉の角に足の指をぶつける1年になるよう祈っとくって言っといて。」
「ふふ、気をつけるように言っておきますね。」
少し笑って、私は小さく手を振ってファーランさんに背を向けた。
でもすぐに、名前を呼ばれた。
「どうしました?」
「保険証、名前ちゃんのだろう?そこに落ちてたよ。」
私が座っていた椅子の辺りをチラリと見て、ファーランさんは私に保険証を差し出した。
「あ、本当だ…!さっき、お財布出したときに落としちゃったのかな…。 」
「保険証はなくなったら困るからね。気をつけてな。」
「すみません、ありがとうございます。」
礼を言って頭を下げ、私はファーランさんから保険証を受け取った。
「いえいえ、どういたしまして。
それじゃ、気をつけて帰ってな。」
「はい、ありがとうございます。」
柔らかく微笑んだファーランさんに背を向けて、私は今度こそ、リヴァイさんの家に帰った。
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医局の自分の部屋に戻ったファーランは、すぐにパソコンを立ち上げた。
そして、患者リストを表示させると、さっき拾った保険証に書かれていた名前を検索窓に入力した。
(名前ちゃんが…?まさか…な。)
緊張して、キーボードのEnterボタンを押す右手の人差し指がなかなか動かなかった。
自分は今、知ってはいけないことを知ろうとしているような気がした。
まるで、パンドラの箱を開けようとしているような気分だ。
一度、深呼吸をして、ファーランは意を決してEnterボタンを押した。
パッと切り替わった画面には、検索した患者の病歴や通院歴が表示された。
「おい、まさか…。嘘だろ…。そういうことかよ…。」
ひとりきりの部屋で、信じられないというファーランの声が画面の向こうに放たれた。
ソファに座る俺は、リビングで暴れまわる若者達を眺めながら、絶望的に呟いた。
ジャンとライナーは、なぜか力比べを始めてしまっているし、ひょろひょろのベルトルトは何とも芸術的なカタチで固まっていた。
人間が出来るカタチじゃないが、あれは寝相だと名前から聞いて度肝を抜いた。
そもそも他人の家で寛いで寝るな。
名前が作った美味しい昼食も食い散らかされて、少ししか食べられなかった。
若者の食欲恐るべし、だ。
「このあとベルトルトとデートだったアニが、彼氏はリヴァイさんの家に行ってるって
ユミルに話しちゃったらしくて、面白がって、押しかけて来ちゃいました…。」
俺の隣に腰を降ろした名前は、申し訳なさそうに言って、頭を下げた。
悪いのは名前ではない。
さっきから、わざわざデカい声で「面白いもんねぇかな~。ゴムとか。大人のオモチャとか。オカズの本とか。」と下品なことを言いながらニヤニヤして部屋の中を歩き回っているユミルという女だ。
その隣でヒストリアとか言う小柄の金髪の女が「失礼だよ!」と言っているが、下品女は聞いちゃいない。
アニは基本的にマイペースなようで、窓際の1人用のソファに我が物顔で座って、いつの間にか勝手に俺の本を読み始めている。
「オモチャはないし、ゴムの本はよくわからないけど
おかずの本ならキッチンにあるよ?」
「はぁ!?」
「なんで驚くの?普通、キッチンじゃない?
食べたいものがあるなら作るけど?」
「あぁ…。」
名前がユミルに声をかけた。
ギョッとした顔をして名前を見たユミルは、その勘違いに気づいてバカにしたように腹を抱えて笑い出した。
本当に失礼な奴だ。
勘違いしてしまうくらいに何も知らない純粋で無垢な名前が可愛いのにー。
「あの…?なんで私、笑われてるんですかね?
ライナーにまで不憫な目で見られるのは、凄く腹が立つんですけど。」
「アイツ等が馬鹿なだけだ。お前はそのままでいい。」
隣に座る名前を抱きしめた。
もう本当に、馬鹿な奴らは帰ってくれないだろうか。
なぜ増えたのだ。まだ納得できない。
それもこれも、もとはと言えばアンが名前の服を盗んだせいだ。
でも、アンが家に入れたのは、俺が鍵を変えていなかったからで、元凶はもしかして俺なのか。
最低な気分だ。
「ねぇ、リヴァイさん。これの下巻どこ。」
いつの間にか目の前に立っていたアニが、俺を見下ろした。
本当に、マイペースが過ぎやしないか。
早く帰ってくれないだろうか。
ハンジ達が家に押しかけて来たときと同じくらい、そう思った。
でも、名前はすごく楽しそうだった。
だから俺にとってもその日は、楽しい1日になった。
友人達と笑い合っている君は本当に楽しそうだった
今ではアイツらは君の幸せを祝福してるよ、下手くそな笑顔で
結婚の約束を破棄したいとお願いするために実家に行った帰り、私はエルディア病院にやって来ていた。
ナイル先生との話も終わって、少し疲れた私は、年末を営業していたカフェテリアでココアを頼んだ。
一口飲むと、甘さと温かさが胸に流れてホッとした。
結婚の約束を破棄して、魔法が解けないことに賭けたいという私の我儘を聞いた父と母は、とても驚いていたけれど、快く受け入れてくれた。
幼い頃から、私の夢を全力で応援してくれる父と母だった。
だから、最後くらいは2人のためにできることをしたいと思っていたのに、結局はまた、甘えてしまった。
あちらとのやり取りも任せることになってしまって、迷惑や心配をかけてしまっているという罪悪感は消えない。
「ふぅ…。」
長めの息を吐いて、私はまたココアを口に運んだ。
今日は、リヴァイさんは、ハンジさんのよく分からない実験に付き合わされることになっていると聞いている。
こういうときは必ず帰りが遅くなると憂鬱そうにしていたから、ゆっくり帰ってもいいはずだ。
そう思っていても、早く、リヴァイさんの家に帰りたくなる。
家の掃除をして、美味しいご飯を作って、待っていたい。
熱いココアを強引に喉に流し込んでいると、目の前に白衣の医師が座った。
「やぁ、こんなとこで何やってんの?」
テーブルに肘をついて、ニッと笑ったのはファーランさんだった。
まさか会うとは思っていなかったから、驚いてしまった。
「年末の、御挨拶に…。ナイル先生にはとてもお世話になったので。」
「あ~、リヴァイのお母さんのこと?」
「えっと…、はい。さっきまでナイル先生のところにいたんです。
それで、ココアを飲んだら帰ろうかなと思って。」
「そういうことか。
リヴァイから聞いたよ。やっと付き合うようになったんだって?よかったな。」
ファーランさんが、優しく微笑んだ。
好きだと言ってくれた男の人に、祝福してもらうのは、なんだか申し訳ない気持ちもあった。
でも、リヴァイさんが、親友のファーランさんに私のことを話してくれていたことが、素直に嬉しかった。
「はいっ。」
「嬉しそうな顔しちゃって。」
頬を緩めて答えた私に、ファーランさんは苦笑を返した。
それから少しだけ話をして、私がココアを飲み終わるタイミングでそれぞれ席を立った。
「では、良いお年を。」
「あぁ、名前ちゃんも。可愛い彼女が出来たリヴァイには、
来年はひたすら扉の角に足の指をぶつける1年になるよう祈っとくって言っといて。」
「ふふ、気をつけるように言っておきますね。」
少し笑って、私は小さく手を振ってファーランさんに背を向けた。
でもすぐに、名前を呼ばれた。
「どうしました?」
「保険証、名前ちゃんのだろう?そこに落ちてたよ。」
私が座っていた椅子の辺りをチラリと見て、ファーランさんは私に保険証を差し出した。
「あ、本当だ…!さっき、お財布出したときに落としちゃったのかな…。 」
「保険証はなくなったら困るからね。気をつけてな。」
「すみません、ありがとうございます。」
礼を言って頭を下げ、私はファーランさんから保険証を受け取った。
「いえいえ、どういたしまして。
それじゃ、気をつけて帰ってな。」
「はい、ありがとうございます。」
柔らかく微笑んだファーランさんに背を向けて、私は今度こそ、リヴァイさんの家に帰った。
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医局の自分の部屋に戻ったファーランは、すぐにパソコンを立ち上げた。
そして、患者リストを表示させると、さっき拾った保険証に書かれていた名前を検索窓に入力した。
(名前ちゃんが…?まさか…な。)
緊張して、キーボードのEnterボタンを押す右手の人差し指がなかなか動かなかった。
自分は今、知ってはいけないことを知ろうとしているような気がした。
まるで、パンドラの箱を開けようとしているような気分だ。
一度、深呼吸をして、ファーランは意を決してEnterボタンを押した。
パッと切り替わった画面には、検索した患者の病歴や通院歴が表示された。
「おい、まさか…。嘘だろ…。そういうことかよ…。」
ひとりきりの部屋で、信じられないというファーランの声が画面の向こうに放たれた。