◇50ページ◇冗談じゃない
Name change
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まだしっとり濡れていた名前の身体をバスタオルで包んで、自分の寝室のベッドまで運んだ俺は、ほんの少しの休む暇すら与えず無我夢中で抱いた。
会えなかった時間を埋めたくて、絶対に誰にも渡さないのだと俺の心にも名前の心にも刻みつけたくて。
もしかしたらいつか、俺達の想いを無視して、引き裂かれてしまうんじゃないかという不安に心を支配されていたのだ。
きっとそれは、優しく抱くことなんてしてやれなかった俺の欲望まみれの身体を必死に受け止めていた名前も同じだったのだと思う。
身体がひとつに溶け合ってしまうくらいに抱き合った俺達は、お互いにベッドのヘッドボードに背中を預けて座った。
俺は汗ばむ体をそのままに、名前の肩を抱き寄せた。
シーツを胸の前まで手繰り寄せた名前は、俺の肩に頭を乗せて甘える。
「明日、パパに会いに行って、結婚の話をなしにして欲しいってお願いしてきます。」
「出来るのか?」
「分かりません…。パパとママが了承してくれても、あちらの都合もあるだろうし…。
でも、何度でも許してもらえるように頭を下げてきます。」
「なら、俺も一緒に行く。名前だけが頭を下げることじゃねぇ。」
俺はそう言ったのだけれど、名前は、俺の肩に頭を乗せたままで、弱々しく首を横に振った。
そして、少しだけ身体を起こして、意志の強い瞳で俺をまっすぐに見つめた。
「婚約の話を出してきたのはあちらだったけど、
それを受けると答えたのは私です。それを断りたくなったのも私です。」
「どっちにしろ、そう思わせたのは、俺だろ。」
「リヴァイさんにこれ以上、迷惑をかけたくないんです。
自分がしでかしたことだから、自分で責任をとらせてください。」
「…分かった。でも、うまくいかねぇときは俺に言え。」
「はい、わかりました。」
名前はホッとしたように息を吐いた。
本当は、俺からあの男に「名前は渡さない。」と言ってやりたかったのだ。
だって、あの写真に写っていた男の名前を見る目は、女を見る目だった。
愛おしい女を見る男の目だった。
気持ちのない結婚だと名前は言っていたから、あの男の気持ちに気づいていないのだと思う。
それならそれで都合はいいが、結婚の断りをするときにあの男と2人きりになるかもしれないのなら、避けたかった。
でも、名前の決意も固いようだった。
名前の両脇の下に手を入れた俺は、そのまま抱き上げて自分の膝の上に馬乗りにさせた。
シルクのような肌をシーツが滑り落ちて、白い綺麗な身体が晒された。
恥ずかしそうにした名前の頬に手を添えた。
「ずっと、俺のそばにいろよ。」
真剣な俺の瞳に、名前は、シーツに伸ばそうとした手を止めて、真っすぐに俺を見つめ返してくれた。
「はい。ずっと、そばにいます。
魔法が解けてしまわないように、私、頑張りますね。」
名前はふわりと柔らかく微笑んだ。
俺の片眉がピクリと上がる。
「…その魔法ってのは何なんだ。まさか本当に魔法が使えるわけじゃねぇんだろ。」
少しだけ乱れて頬に張り付いていた髪を綺麗にしてやりながら、俺は訊ねた。
「暗いトンネルの中で迷子になってた私の手を引いて導いてくれた魔法です。
-こんな風に。」
名前はそう言って、俺の手を握った。
いつもは指を絡めるように繋ぐのに、そのときは、子供の手を大人が包むような握り方だった。
「魔法は解けそうだったんです。だから私はもう、全てを諦めてた。
だって、本当なら今頃、魔法は解けてるはずだったんですよ。
リヴァイさんの誕生日だって一緒にはいられなかったかもしれなかった。」
名前は握りしめた手を一瞬だけ解いた後、いつものように指を絡めるように繋ぎ直した。
そして、繋がった俺と名前の手を愛おしそうに見つめながら、続けた。
「でも、私達はまだ一緒にいる。魔法は続いてる。」
名前は頬を緩めて、とても嬉しそうにしていた。
そして、そこにある奇跡を確かめるように、絡んだ指をギュッとギュッと握りしめていた。
「きっと、リヴァイさんが、私に新しい魔法をかけてくれたんです。
だから…、魔法は解けないって言ってください。
私にとって大切なのは、リヴァイさんがくれる魔法だから。」
俺を見つめる名前は、とても真剣だった。
それで本当に、魔法というのが解けないのだと信じているようだった。
このままきっと、名前は俺に魔法の正体を話す気はないのだろう。
求められるままに、俺は名前の頬に手を添えてから、口を開いた。
「魔法は解けねぇよ。俺達はずっと一緒だ。」
「はい!これでもう大丈夫ですねっ。」
そう言って微笑んだ名前が、ほんの一瞬だけ悲しそうに瞳を揺らしたのを、俺は見逃さなかった。
一体、名前は何を抱えているのだろう。
どうすれば俺は、それを一緒に背負ってやれるのだろう。
分からなくて、ただ抱きしめることしかしてやれなかった。
それでも、ゆるゆると背中に手をまわす名前は、俺を求めてくれていた。
君が微笑んだシーツは今ではすごく冷たくて
君に包んでほしくなる
ただいま、日記さん。
リヴァイさんと離れて、そして、私、分かったの。
本当に大切なものが何なのか。
パパもママも、妹も大好き。キクだって、本当は好きよ。
でも、私は、リヴァイさんを愛してる。
魔法が続くように、努力をしなくちゃ。
諦めちゃダメよね。
愛する人と生きていくことは、きっと、私とリヴァイさんじゃなくたって、みんな、難しいことのはずだから。
運命の恋だって、大切に大切に育てなきゃ、壊れてしまうこともあるんだって、昔、誰かに聞いたことがあるの。
それなら、素敵なリヴァイさんに不相応な恋をしている私は、もっともっと頑張らなきゃダメよね。
誰を傷つけても、リヴァイさんと生きていきたいと、私はそう、思ってしまったのだから。
会えなかった時間を埋めたくて、絶対に誰にも渡さないのだと俺の心にも名前の心にも刻みつけたくて。
もしかしたらいつか、俺達の想いを無視して、引き裂かれてしまうんじゃないかという不安に心を支配されていたのだ。
きっとそれは、優しく抱くことなんてしてやれなかった俺の欲望まみれの身体を必死に受け止めていた名前も同じだったのだと思う。
身体がひとつに溶け合ってしまうくらいに抱き合った俺達は、お互いにベッドのヘッドボードに背中を預けて座った。
俺は汗ばむ体をそのままに、名前の肩を抱き寄せた。
シーツを胸の前まで手繰り寄せた名前は、俺の肩に頭を乗せて甘える。
「明日、パパに会いに行って、結婚の話をなしにして欲しいってお願いしてきます。」
「出来るのか?」
「分かりません…。パパとママが了承してくれても、あちらの都合もあるだろうし…。
でも、何度でも許してもらえるように頭を下げてきます。」
「なら、俺も一緒に行く。名前だけが頭を下げることじゃねぇ。」
俺はそう言ったのだけれど、名前は、俺の肩に頭を乗せたままで、弱々しく首を横に振った。
そして、少しだけ身体を起こして、意志の強い瞳で俺をまっすぐに見つめた。
「婚約の話を出してきたのはあちらだったけど、
それを受けると答えたのは私です。それを断りたくなったのも私です。」
「どっちにしろ、そう思わせたのは、俺だろ。」
「リヴァイさんにこれ以上、迷惑をかけたくないんです。
自分がしでかしたことだから、自分で責任をとらせてください。」
「…分かった。でも、うまくいかねぇときは俺に言え。」
「はい、わかりました。」
名前はホッとしたように息を吐いた。
本当は、俺からあの男に「名前は渡さない。」と言ってやりたかったのだ。
だって、あの写真に写っていた男の名前を見る目は、女を見る目だった。
愛おしい女を見る男の目だった。
気持ちのない結婚だと名前は言っていたから、あの男の気持ちに気づいていないのだと思う。
それならそれで都合はいいが、結婚の断りをするときにあの男と2人きりになるかもしれないのなら、避けたかった。
でも、名前の決意も固いようだった。
名前の両脇の下に手を入れた俺は、そのまま抱き上げて自分の膝の上に馬乗りにさせた。
シルクのような肌をシーツが滑り落ちて、白い綺麗な身体が晒された。
恥ずかしそうにした名前の頬に手を添えた。
「ずっと、俺のそばにいろよ。」
真剣な俺の瞳に、名前は、シーツに伸ばそうとした手を止めて、真っすぐに俺を見つめ返してくれた。
「はい。ずっと、そばにいます。
魔法が解けてしまわないように、私、頑張りますね。」
名前はふわりと柔らかく微笑んだ。
俺の片眉がピクリと上がる。
「…その魔法ってのは何なんだ。まさか本当に魔法が使えるわけじゃねぇんだろ。」
少しだけ乱れて頬に張り付いていた髪を綺麗にしてやりながら、俺は訊ねた。
「暗いトンネルの中で迷子になってた私の手を引いて導いてくれた魔法です。
-こんな風に。」
名前はそう言って、俺の手を握った。
いつもは指を絡めるように繋ぐのに、そのときは、子供の手を大人が包むような握り方だった。
「魔法は解けそうだったんです。だから私はもう、全てを諦めてた。
だって、本当なら今頃、魔法は解けてるはずだったんですよ。
リヴァイさんの誕生日だって一緒にはいられなかったかもしれなかった。」
名前は握りしめた手を一瞬だけ解いた後、いつものように指を絡めるように繋ぎ直した。
そして、繋がった俺と名前の手を愛おしそうに見つめながら、続けた。
「でも、私達はまだ一緒にいる。魔法は続いてる。」
名前は頬を緩めて、とても嬉しそうにしていた。
そして、そこにある奇跡を確かめるように、絡んだ指をギュッとギュッと握りしめていた。
「きっと、リヴァイさんが、私に新しい魔法をかけてくれたんです。
だから…、魔法は解けないって言ってください。
私にとって大切なのは、リヴァイさんがくれる魔法だから。」
俺を見つめる名前は、とても真剣だった。
それで本当に、魔法というのが解けないのだと信じているようだった。
このままきっと、名前は俺に魔法の正体を話す気はないのだろう。
求められるままに、俺は名前の頬に手を添えてから、口を開いた。
「魔法は解けねぇよ。俺達はずっと一緒だ。」
「はい!これでもう大丈夫ですねっ。」
そう言って微笑んだ名前が、ほんの一瞬だけ悲しそうに瞳を揺らしたのを、俺は見逃さなかった。
一体、名前は何を抱えているのだろう。
どうすれば俺は、それを一緒に背負ってやれるのだろう。
分からなくて、ただ抱きしめることしかしてやれなかった。
それでも、ゆるゆると背中に手をまわす名前は、俺を求めてくれていた。
君が微笑んだシーツは今ではすごく冷たくて
君に包んでほしくなる
ただいま、日記さん。
リヴァイさんと離れて、そして、私、分かったの。
本当に大切なものが何なのか。
パパもママも、妹も大好き。キクだって、本当は好きよ。
でも、私は、リヴァイさんを愛してる。
魔法が続くように、努力をしなくちゃ。
諦めちゃダメよね。
愛する人と生きていくことは、きっと、私とリヴァイさんじゃなくたって、みんな、難しいことのはずだから。
運命の恋だって、大切に大切に育てなきゃ、壊れてしまうこともあるんだって、昔、誰かに聞いたことがあるの。
それなら、素敵なリヴァイさんに不相応な恋をしている私は、もっともっと頑張らなきゃダメよね。
誰を傷つけても、リヴァイさんと生きていきたいと、私はそう、思ってしまったのだから。