◇9ページ◇何も知らない
Name change
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モブリット達が酒を買って帰ってくる頃には、リビングのテーブルの上には、美味そうなつまみがズラリと並んでいた。
冷蔵庫にあるもので作ったから大したものではないと名前は謙遜していたが、居酒屋のメニューよりも美味しそうだというハンジ達の感想は、お世辞でもなんでもなかったはずだ。
テーブルに箸を並べだした名前に、ハンジが話しかける。
「それにしてもこんなにたくさんの料理をあっという間に作れるなんて
尊敬するなぁ〜。子供の頃からよく作ったりしてたの?」
「妹の友達に大食いの子がいるんです。その子たちが遊びに来るときは
私が料理を作ってあげてたので、慣れちゃったんです。」
「それは自慢の優しいお姉ちゃんだねぇ〜。」
ハンジが笑顔でそう言ったとき、名前の表情は一瞬強張った。
それはほんの一瞬で、ほんの少しの変化だった。
でも、観察が得意のハンジは見逃さなかったはずだ。
「アハハ、そうだといいんですけどね〜。
マドラー持ってきますね!」
名前は明るく答えたが、俺にはその話題から逃げたように見えた。
キッチンへと走っていく名前の背中を珍しく真面目な目で追いかけたハンジにも、同じように見えたのだろう。
でも、マドラーを持って戻ってきた名前はもう、いつものように何も考えていないような底抜けに明るい笑顔に戻っていた。
「名前ちゃんにも買って来たんだけど、飲める?」
こんなときもしっかりと条件を守っている名前は、ソファに座る俺から少し離れたカーペットの上に腰を下ろした。
名前の隣に腰を降ろしたモブリットが、カクテルの瓶やチューハイ缶を袋から取り出しながら訊ねた。
「わぁ…!ありがとうございます!じゃあ~…、これにしようかなっ。」
フルーツのカクテルを選んだ名前は、モブリットから受け取るともう一度、礼を言った。
それから、ハンジの号令で乾杯をした後、名前はモブリット達と楽しそうに酒を呑み始めた。
すると、ソファに座る俺の隣で、まだ興味津々に名前を見ていたハンジが口を開いた。
「名前、お酒呑めるんだねぇ~。まだ呑めないかと思ってたよ。」
「まだって…?あぁ…!私、23歳ですから、お酒は嗜む程度には飲めますよ~。」
ハンジの言葉の意味を理解したらしい名前は、可笑しそうにアハハと笑った。
このとき、俺も初めて名前の年齢を知った。
年齢を知れば、年相応に見えなくもなかったが、今までの無邪気な子供のような言動は、10代後半もありそうだと俺に思わせていた。
だから、思っていたよりも大人で少し驚いた。
だが、同じ歳だったニファはとても喜んだ。
酒も程よくまわって普段よりも社交的になっていたニファは、飛びつくように名前に抱きついた。
「タメだ!嬉しい〜っ!」
「えっ!そうなんですか!?わぁ、私も嬉しいですっ!」
名前も嬉しそうにニファを抱きしめ返した。
俺の前にいる名前に見慣れていたから、同世代の若い女と一緒にハシャぐ姿を見るのは、不思議な感じがした。
「タメなんだから、敬語なしでいいよ!タメ語で!」
「んー…、うん、ありがとう!」
「約束だよっ!ねぇ、友達になろうよっ!」
「えっ!私と!?嬉しい!!」
「やった!じゃあ、連絡先交換しようよ!」
「あ〜…、ごめん…。私、スマホ持ってないの。」
「へ?スマホを?」
意外な答え過ぎて、ニファはポカンとしていたし、ハンジ達も驚いていた。
そして、それは俺も同じだった。
今時、小学生だってスマホを持ち歩く時代だ。当然のように持っていると思っていた。
なぜスマホを持たないのだとハンジはとても気になっていたようだったが、このタイミングで名前が酒を零してしまってそれどころではなくなってしまった。
着ていた服が酒でびしょ濡れになってしまって、名前は慌てて立ち上がると、着替えてくると自分の部屋へと入って行った。
あのときは、ドジな奴だと思ったのだ。
でも、もしかしたら、わざとこぼしたのかもしれなかった。
そしてそれに、ハンジだけが、気づいていたのかもしれない。
名前に妹がいることも、年齢さえも、ハンジが知りたいと思いながら話したから知れたことだった。
だから、俺が聞かないから、名前のことを何も知らないのだと思っていたのだ。
でも、本当は違っていた。
名前は敢えて、自分のことを俺には話さなかった。
それに俺が気づくのは、まだまだ先の話だ。
俺は君のことを何も知らなかった
でも、君が好きな男を見つめる瞳なら誰より知ってる
リヴァイさんの職場の人達が家に遊びに来た。
とても気さくな人ばかりで、一緒にお酒を呑むのはとても楽しい。
でも、ハンジさんは、私の素性を知りたがっているみたいだった。
だって、誰も、私の本当の気持ちなんて知らないから。
それでいい。それがいい。
私がどんな風にリヴァイさんだけを見つめていたか、知っているのは日記さん、あなただけ。
日記さん、私のことを誰よりも知っているのはあなたよ。
冷蔵庫にあるもので作ったから大したものではないと名前は謙遜していたが、居酒屋のメニューよりも美味しそうだというハンジ達の感想は、お世辞でもなんでもなかったはずだ。
テーブルに箸を並べだした名前に、ハンジが話しかける。
「それにしてもこんなにたくさんの料理をあっという間に作れるなんて
尊敬するなぁ〜。子供の頃からよく作ったりしてたの?」
「妹の友達に大食いの子がいるんです。その子たちが遊びに来るときは
私が料理を作ってあげてたので、慣れちゃったんです。」
「それは自慢の優しいお姉ちゃんだねぇ〜。」
ハンジが笑顔でそう言ったとき、名前の表情は一瞬強張った。
それはほんの一瞬で、ほんの少しの変化だった。
でも、観察が得意のハンジは見逃さなかったはずだ。
「アハハ、そうだといいんですけどね〜。
マドラー持ってきますね!」
名前は明るく答えたが、俺にはその話題から逃げたように見えた。
キッチンへと走っていく名前の背中を珍しく真面目な目で追いかけたハンジにも、同じように見えたのだろう。
でも、マドラーを持って戻ってきた名前はもう、いつものように何も考えていないような底抜けに明るい笑顔に戻っていた。
「名前ちゃんにも買って来たんだけど、飲める?」
こんなときもしっかりと条件を守っている名前は、ソファに座る俺から少し離れたカーペットの上に腰を下ろした。
名前の隣に腰を降ろしたモブリットが、カクテルの瓶やチューハイ缶を袋から取り出しながら訊ねた。
「わぁ…!ありがとうございます!じゃあ~…、これにしようかなっ。」
フルーツのカクテルを選んだ名前は、モブリットから受け取るともう一度、礼を言った。
それから、ハンジの号令で乾杯をした後、名前はモブリット達と楽しそうに酒を呑み始めた。
すると、ソファに座る俺の隣で、まだ興味津々に名前を見ていたハンジが口を開いた。
「名前、お酒呑めるんだねぇ~。まだ呑めないかと思ってたよ。」
「まだって…?あぁ…!私、23歳ですから、お酒は嗜む程度には飲めますよ~。」
ハンジの言葉の意味を理解したらしい名前は、可笑しそうにアハハと笑った。
このとき、俺も初めて名前の年齢を知った。
年齢を知れば、年相応に見えなくもなかったが、今までの無邪気な子供のような言動は、10代後半もありそうだと俺に思わせていた。
だから、思っていたよりも大人で少し驚いた。
だが、同じ歳だったニファはとても喜んだ。
酒も程よくまわって普段よりも社交的になっていたニファは、飛びつくように名前に抱きついた。
「タメだ!嬉しい〜っ!」
「えっ!そうなんですか!?わぁ、私も嬉しいですっ!」
名前も嬉しそうにニファを抱きしめ返した。
俺の前にいる名前に見慣れていたから、同世代の若い女と一緒にハシャぐ姿を見るのは、不思議な感じがした。
「タメなんだから、敬語なしでいいよ!タメ語で!」
「んー…、うん、ありがとう!」
「約束だよっ!ねぇ、友達になろうよっ!」
「えっ!私と!?嬉しい!!」
「やった!じゃあ、連絡先交換しようよ!」
「あ〜…、ごめん…。私、スマホ持ってないの。」
「へ?スマホを?」
意外な答え過ぎて、ニファはポカンとしていたし、ハンジ達も驚いていた。
そして、それは俺も同じだった。
今時、小学生だってスマホを持ち歩く時代だ。当然のように持っていると思っていた。
なぜスマホを持たないのだとハンジはとても気になっていたようだったが、このタイミングで名前が酒を零してしまってそれどころではなくなってしまった。
着ていた服が酒でびしょ濡れになってしまって、名前は慌てて立ち上がると、着替えてくると自分の部屋へと入って行った。
あのときは、ドジな奴だと思ったのだ。
でも、もしかしたら、わざとこぼしたのかもしれなかった。
そしてそれに、ハンジだけが、気づいていたのかもしれない。
名前に妹がいることも、年齢さえも、ハンジが知りたいと思いながら話したから知れたことだった。
だから、俺が聞かないから、名前のことを何も知らないのだと思っていたのだ。
でも、本当は違っていた。
名前は敢えて、自分のことを俺には話さなかった。
それに俺が気づくのは、まだまだ先の話だ。
俺は君のことを何も知らなかった
でも、君が好きな男を見つめる瞳なら誰より知ってる
リヴァイさんの職場の人達が家に遊びに来た。
とても気さくな人ばかりで、一緒にお酒を呑むのはとても楽しい。
でも、ハンジさんは、私の素性を知りたがっているみたいだった。
だって、誰も、私の本当の気持ちなんて知らないから。
それでいい。それがいい。
私がどんな風にリヴァイさんだけを見つめていたか、知っているのは日記さん、あなただけ。
日記さん、私のことを誰よりも知っているのはあなたよ。