◇53ページ◇初日の出
Name change
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小さな駐車場に車を停めた。
早めに家を出たおかげで、初日の出が昇る時間に間に合った。
渋滞の波を外れた俺は、崖の上にある小さな展望台を初日の出を見る場所に選んだ。
ひとりでドライブをしているときに見つけてから何度か来ているが、誰かと会ったことは一度もない。
あまり知られているような場所ではないようで、1人になりたいときによく来ていた。
そこに名前と一緒にやって来たのは、なんだか奇妙な気分だった。
外に出ると、肌を刺すような寒さに身体が悲鳴を上げた。
「寒い~…っ。」
名前は自分の身体を抱きしめるようにして、両腕を擦っていた。
お互いにマフラーも巻いて、手袋もはめて防寒対策は万全のつもりだったが、正月の寒さには敵わなかった。
「こっちだ。」
名前の腰に手を添えて、俺に密着するように抱き寄せた。
ピタリとくっついた身体から名前の温もりが伝わって、心が温まる。そこから、身体まで温まっていくようだった。
甘えるように俺の腰に抱き着いて歩く名前も同じことを思ったのかもしれない。
幸せそうに頬を緩めて、寒いとは言わなくなった。
展望台は駐車場を出てすぐの階段を上ったところにあった。
立派な建物ではないけれど、崖の上に立つ展望台からの見晴らしは完璧だ。
真っすぐに横に延びる地平線が目の前に広がって、名前は思わずと言った様子で「わぁ。」と感嘆の声を漏らしていた。
「今年の初日の出の時間は6時30分頃だったか。もうすぐだな。」
スマホの時計を確認してから、もう一度、視線を地平線に向けた。
2人きりの展望台で、俺と名前は身体を寄せ合って初日の出を待った。
少しすると、オレンジ色の光が青い海の底から生まれて来た。
「来ましたね。」
「あぁ。」
青い海に重なる太陽が、真っすぐ伸びたオレンジ色の地平線を作っていく。
それをただひたすら、俺達は黙って見つめていた。
ゆっくりと顔を出した太陽は、海をオレンジ色に光らせた後、俺と名前の顔も照らした。
そのとき、ふと思ってしまった。
この神々しい光が、この先の俺達の未来をずっと守ってくれるんじゃないか、と。
これからもずっと名前と一緒にいたいー、心を奪われそうになるほどに幻想的な初日の出は、俺にそう強く思わせた。
ふ、と名前を見てみると、オレンジに照らされた横顔の頬に涙が伝っていた。
キラキラとオレンジ色に光る涙は宝石のようでとても綺麗で、とても刹那的だった。
横顔の美しさが、俺の胸を苦しめた。
「名前。」
名前を呼んで、俺の方を向いた名前の頬に手を触れて、そっと涙を拭った。
「今年もよろしくな。」
俺の柔らかい笑みを、日の出は照らしたのだと思う。
名前は一瞬だけ泣き顔になったけれど、すぐに嬉しそうに何度も頷いた。
「はい…っ!こちらこそっ、宜しくお願いします…!」
涙で瞳を潤しながら、名前が力強く答えた。
抱き寄せて、口づけを交わす俺達を海から離れようとしている太陽が照らしていた。
そっと唇を離して、濡れた頬に手を添えた。
「毎年、ここで初日の出を見ような。」
来年も、ではなくて、毎年だと言ったのは、俺なりの願掛けだった。
嬉しそうに頷いた名前を強く抱きしめながら、俺はもう来年の想像をしていた。
必ず、隣には名前がいると信じた。
そう、願った。
特別なことを願ったつもりはない
ただ、君という存在が、俺にとって特別なだけなんだ
年が明けた。
一緒に過ごせるはずじゃなかった今日、私の隣には、私を見つめて柔らかく微笑むリヴァイさんがいた。
海から生まれてくるオレンジ色の光を見つめながら、奇跡は存在するんだと知ったの。
泣いてしまったのは、悲しかったからじゃないの。
嬉しかったの。感動していたの。
来年も再来年も、その先もずっと、一緒に初日の出を見ようねって約束を、ちゃんと守れますように。
早めに家を出たおかげで、初日の出が昇る時間に間に合った。
渋滞の波を外れた俺は、崖の上にある小さな展望台を初日の出を見る場所に選んだ。
ひとりでドライブをしているときに見つけてから何度か来ているが、誰かと会ったことは一度もない。
あまり知られているような場所ではないようで、1人になりたいときによく来ていた。
そこに名前と一緒にやって来たのは、なんだか奇妙な気分だった。
外に出ると、肌を刺すような寒さに身体が悲鳴を上げた。
「寒い~…っ。」
名前は自分の身体を抱きしめるようにして、両腕を擦っていた。
お互いにマフラーも巻いて、手袋もはめて防寒対策は万全のつもりだったが、正月の寒さには敵わなかった。
「こっちだ。」
名前の腰に手を添えて、俺に密着するように抱き寄せた。
ピタリとくっついた身体から名前の温もりが伝わって、心が温まる。そこから、身体まで温まっていくようだった。
甘えるように俺の腰に抱き着いて歩く名前も同じことを思ったのかもしれない。
幸せそうに頬を緩めて、寒いとは言わなくなった。
展望台は駐車場を出てすぐの階段を上ったところにあった。
立派な建物ではないけれど、崖の上に立つ展望台からの見晴らしは完璧だ。
真っすぐに横に延びる地平線が目の前に広がって、名前は思わずと言った様子で「わぁ。」と感嘆の声を漏らしていた。
「今年の初日の出の時間は6時30分頃だったか。もうすぐだな。」
スマホの時計を確認してから、もう一度、視線を地平線に向けた。
2人きりの展望台で、俺と名前は身体を寄せ合って初日の出を待った。
少しすると、オレンジ色の光が青い海の底から生まれて来た。
「来ましたね。」
「あぁ。」
青い海に重なる太陽が、真っすぐ伸びたオレンジ色の地平線を作っていく。
それをただひたすら、俺達は黙って見つめていた。
ゆっくりと顔を出した太陽は、海をオレンジ色に光らせた後、俺と名前の顔も照らした。
そのとき、ふと思ってしまった。
この神々しい光が、この先の俺達の未来をずっと守ってくれるんじゃないか、と。
これからもずっと名前と一緒にいたいー、心を奪われそうになるほどに幻想的な初日の出は、俺にそう強く思わせた。
ふ、と名前を見てみると、オレンジに照らされた横顔の頬に涙が伝っていた。
キラキラとオレンジ色に光る涙は宝石のようでとても綺麗で、とても刹那的だった。
横顔の美しさが、俺の胸を苦しめた。
「名前。」
名前を呼んで、俺の方を向いた名前の頬に手を触れて、そっと涙を拭った。
「今年もよろしくな。」
俺の柔らかい笑みを、日の出は照らしたのだと思う。
名前は一瞬だけ泣き顔になったけれど、すぐに嬉しそうに何度も頷いた。
「はい…っ!こちらこそっ、宜しくお願いします…!」
涙で瞳を潤しながら、名前が力強く答えた。
抱き寄せて、口づけを交わす俺達を海から離れようとしている太陽が照らしていた。
そっと唇を離して、濡れた頬に手を添えた。
「毎年、ここで初日の出を見ような。」
来年も、ではなくて、毎年だと言ったのは、俺なりの願掛けだった。
嬉しそうに頷いた名前を強く抱きしめながら、俺はもう来年の想像をしていた。
必ず、隣には名前がいると信じた。
そう、願った。
特別なことを願ったつもりはない
ただ、君という存在が、俺にとって特別なだけなんだ
年が明けた。
一緒に過ごせるはずじゃなかった今日、私の隣には、私を見つめて柔らかく微笑むリヴァイさんがいた。
海から生まれてくるオレンジ色の光を見つめながら、奇跡は存在するんだと知ったの。
泣いてしまったのは、悲しかったからじゃないの。
嬉しかったの。感動していたの。
来年も再来年も、その先もずっと、一緒に初日の出を見ようねって約束を、ちゃんと守れますように。