◇44ページ◇ドレスアップ
Name change
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ドレッシングルームから出て来た名前は、まさに魔法にかけられたシンデレラだった。
名前が一歩足を踏み出す度に揺れる水色のドレスのレースや裾はまるで、魔法使いが出した妖精たちが悪戯をしているみたいだ。
プロのメイクだけではなく、ヘアメイクもしてもらっていて、普段はおろしている髪も後ろでひとつにまとめているから、いつもよりも大人っぽく見えた。
でも、まとめた髪の辺りに散りばめられている真珠のようなヘアアクセサリーが、名前の無垢な純粋さを残してくれていた。
思わず見惚れてしまったのは、俺だけじゃなかったはずだ。
接客担当の女も、用意していたお世辞も忘れて口を開けたまま固まっていたし、ドレスを選んでいた他の客達の視線も名前に釘付けになった。
名前は、本物のお姫様のようだった。
「あの…、私、普通の洋服を買いに来たつもりだったんですけど。」
自分の着ているドレスを見下ろして、困ったように眉尻を下げた。
午前中は映画を観に行き、カフェでのんびり過ごした。
だが、夜のディナーは、さすがに俺の服では浮いてしまうからと洋服を買いに行くことになったのだ。
それならと俺が連れてきたのが、映画の後に連れてくるつもりだったここだった。
パーティードレスからヨーロッパの貴族が着ているような本格的なドレスまでなんでもござれのドレスショップで、メイクからヘアメイクまでプロが手掛けてくれると人気らしい。
「とってもお似合いですよ、まるで本物のシンデレラみたいです!」
接客担当の女が、やっとセリフを思い出したらしかった。
でも、きっと、それは用意していたセリフでもなんでもなくて、本心だったはずだ。
「ならやっぱり、魔法は解けちゃいますね。」
「え?何か仰いましたか?」
名前が呟くように言ったそれは、接客担当の女には聞こえなかったようだった。
伝えるつもりもなかった様子の名前は、何でもないと誤魔化していたけれど、俺には分かった。
ハッキリと聞こえたわけではなかったが、シンデレラだと呼ばれたときに、一瞬だけ悲しそうな顔をしたから。
「リヴァイさん、どうですか?シンデレラみたい?」
名前がドレスを両手で摘まんで持ち上げて、おどけて見せた。
それは、悲しい何かを誤魔化したようだった。
「いや?シンデレラより綺麗だ。」
俺の返事に名前は驚いたようだった。
頬を染めたのが接客担当の女の方だったことが気になったが、似合わないことを言った自覚ならあった。
だから、今度は俺がそれを誤魔化すように接客担当の女に声をかけた。
「これを全部貰っていく。カードで払う。一括でいい。」
「はい!ありがとうございます!」
接客担当の女にカードを渡し、会計を頼んだ。
ドレッシングルームで待っているように言われ、俺と名前はソファに腰を降ろした。
名前が着ていた俺の服は、いつの間にか綺麗にたたんで上品な袋に詰められて、ソファに置いてあった。
「リヴァイさんはタキシードとか着ないんですか?
王子様みたいなやつもありましたよ。」
「俺は王子様なんてキャラじゃねぇ。」
「でも、リヴァイさんならなんだって似合いますよ。
今日もとってもお洒落だし。」
「俺はいい。魔法使いは私服でやれる。」
「魔法使い?」
名前が首を傾げているうちに、会計が終わったと接客担当の女が戻ってきた。
そして、店の外まで見送ると着替えを入れた袋を手に持った。
「あの、本当に靴は要らないんでしょうか?
素敵なブーツではありますが、ドレスにはちょっと…。」
名前が履こうとしたブーツを見て、接客担当の女が遠慮気味に俺に訊ねた。
「靴は要らねぇ。これも袋に入れておいてくれ。」
「…え?あの、それはどういうー。」
「名前、行くぞ。」
俺は、名前を横抱きに抱え上げた。
「キャァ…っ、ビックリしました。」
まだ驚いた様子でそう言った名前だったけれど、おろしてほしいとは言わなかった。
俺の首に両腕をまわして、甘えるように抱き着いた。
「それは悪かったな。」
俺もご機嫌に喉を鳴らした。
「外に車を待たせてる。」
「車?タクシーですか?」
「いや、そうだな…、現代のカボチャの馬車だ。」
「カボチャの馬車?」
頭に幾つものハテナを浮かべた名前が可笑しくて、驚く顔を見るのが楽しみだった。
名前が一歩足を踏み出す度に揺れる水色のドレスのレースや裾はまるで、魔法使いが出した妖精たちが悪戯をしているみたいだ。
プロのメイクだけではなく、ヘアメイクもしてもらっていて、普段はおろしている髪も後ろでひとつにまとめているから、いつもよりも大人っぽく見えた。
でも、まとめた髪の辺りに散りばめられている真珠のようなヘアアクセサリーが、名前の無垢な純粋さを残してくれていた。
思わず見惚れてしまったのは、俺だけじゃなかったはずだ。
接客担当の女も、用意していたお世辞も忘れて口を開けたまま固まっていたし、ドレスを選んでいた他の客達の視線も名前に釘付けになった。
名前は、本物のお姫様のようだった。
「あの…、私、普通の洋服を買いに来たつもりだったんですけど。」
自分の着ているドレスを見下ろして、困ったように眉尻を下げた。
午前中は映画を観に行き、カフェでのんびり過ごした。
だが、夜のディナーは、さすがに俺の服では浮いてしまうからと洋服を買いに行くことになったのだ。
それならと俺が連れてきたのが、映画の後に連れてくるつもりだったここだった。
パーティードレスからヨーロッパの貴族が着ているような本格的なドレスまでなんでもござれのドレスショップで、メイクからヘアメイクまでプロが手掛けてくれると人気らしい。
「とってもお似合いですよ、まるで本物のシンデレラみたいです!」
接客担当の女が、やっとセリフを思い出したらしかった。
でも、きっと、それは用意していたセリフでもなんでもなくて、本心だったはずだ。
「ならやっぱり、魔法は解けちゃいますね。」
「え?何か仰いましたか?」
名前が呟くように言ったそれは、接客担当の女には聞こえなかったようだった。
伝えるつもりもなかった様子の名前は、何でもないと誤魔化していたけれど、俺には分かった。
ハッキリと聞こえたわけではなかったが、シンデレラだと呼ばれたときに、一瞬だけ悲しそうな顔をしたから。
「リヴァイさん、どうですか?シンデレラみたい?」
名前がドレスを両手で摘まんで持ち上げて、おどけて見せた。
それは、悲しい何かを誤魔化したようだった。
「いや?シンデレラより綺麗だ。」
俺の返事に名前は驚いたようだった。
頬を染めたのが接客担当の女の方だったことが気になったが、似合わないことを言った自覚ならあった。
だから、今度は俺がそれを誤魔化すように接客担当の女に声をかけた。
「これを全部貰っていく。カードで払う。一括でいい。」
「はい!ありがとうございます!」
接客担当の女にカードを渡し、会計を頼んだ。
ドレッシングルームで待っているように言われ、俺と名前はソファに腰を降ろした。
名前が着ていた俺の服は、いつの間にか綺麗にたたんで上品な袋に詰められて、ソファに置いてあった。
「リヴァイさんはタキシードとか着ないんですか?
王子様みたいなやつもありましたよ。」
「俺は王子様なんてキャラじゃねぇ。」
「でも、リヴァイさんならなんだって似合いますよ。
今日もとってもお洒落だし。」
「俺はいい。魔法使いは私服でやれる。」
「魔法使い?」
名前が首を傾げているうちに、会計が終わったと接客担当の女が戻ってきた。
そして、店の外まで見送ると着替えを入れた袋を手に持った。
「あの、本当に靴は要らないんでしょうか?
素敵なブーツではありますが、ドレスにはちょっと…。」
名前が履こうとしたブーツを見て、接客担当の女が遠慮気味に俺に訊ねた。
「靴は要らねぇ。これも袋に入れておいてくれ。」
「…え?あの、それはどういうー。」
「名前、行くぞ。」
俺は、名前を横抱きに抱え上げた。
「キャァ…っ、ビックリしました。」
まだ驚いた様子でそう言った名前だったけれど、おろしてほしいとは言わなかった。
俺の首に両腕をまわして、甘えるように抱き着いた。
「それは悪かったな。」
俺もご機嫌に喉を鳴らした。
「外に車を待たせてる。」
「車?タクシーですか?」
「いや、そうだな…、現代のカボチャの馬車だ。」
「カボチャの馬車?」
頭に幾つものハテナを浮かべた名前が可笑しくて、驚く顔を見るのが楽しみだった。