床に散らばる下着やパジャマを身に着けて、寝室を出た。
昨夜のリビングの惨劇や無残な料理を思い出した俺は、自分の部屋に着替えを取りに戻った名前についていった。
ベッドやドレッサーをボコボコにされてないかと心配だったのだが、部屋の中は、別段変わった様子はなかった。

「ほら、大丈夫ですよ。リヴァイさんの元恋人ですもん。
　さすがに家具の破壊まではしませんよ。」

名前はそう言って笑ったけれど、安心はしたようだった。
でも、俺もホッとした。
だが、それも束の間だった。
クローゼットを開けた名前が、あんぐりと口を開けたまま固まった。

「どうかしたか？」

俺もクローゼットの中を覗き込んで、驚いた。
お洒落な名前が綺麗にハンガーにかけて並べていたコートやワンピース、シャツにスカート、とにかくすべてが、ゴッソリとなくなっていた。
クローゼットの中にあるのは、小さめのチェストだけだ。
しばらく呆然としていた名前は、ハッとした様子で膝を曲げて屈むとチェストの引き出しを開けた。

「よかったぁ…、下着はあった…。
　じゃなかったら、今日からノーパンで・・・・・・・・。」

チェストの引き出しの中に手を入れた名前の顔色が、一気にサーッと青くなったのに気づいた。
俺も膝を曲げて屈み、チェストの中を覗きこんだ。
色とりどりの下着が乱雑に押し込められていた。
どうやら、アンが散らかしたようだった。
でもそれだけで、顔色が青くなるだろうかと思いながら、なんとなく一番目を引いた真っ赤な下着を手に取って、理解した。
元から小さな面積の下着は、ズタズタに切り裂かれて、ボロボロの紐になっていた。

「・・・・今日からノーパンで。」
「嫌ですよ！！」

それもいいかと思ったが、名前に猛烈に反対されてしまった。
まぁ確かに、俺の前だけでノーパンならいいが、他の野郎の前ではダメだ。
そんなことを考えていると、名前が堪らないという顔をして思い切り吹き出した。

「リヴァイさんの元カノ、ヴァイオレンス過ぎ…っ。
　アハハハハっ、ビックリしすぎて笑いが止まらないっ！」

名前が腹を抱えて笑い出した。
服も下着も失って笑うところではないと思うのだが、名前があまりにも楽しそうに笑うから、俺まで笑ってしまった。