高校1年生(問題児)~Eren~
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お昼休みの保健室は賑やかだ。
暇つぶしのお喋りをしにくる子や恋の相談をしにくる子、私がこっそり食べようと思っていたお菓子を探しに来る子もいる。
体調が悪い子がいれば、静かにさせるけれど、基本的にいつも元気いっぱいの子達で溢れている。
保健室の中央にテーブルを囲むように置いてある大きなソファでは、今日もいつものメンバーが賑やかにお喋りに花を咲かせている。
中高一貫のこの学校は、みんな心も身体も健康なようだった。
「保健体育か~。懐かしい~。」
お喋りの輪の中に強制参加させられていた私は、自分の学生時代に思いを馳せる。
確かにあの頃も、保健体育の授業の前には男子が妙に浮足立っていたような気がする。
「おう!しかも授業をペトラ先生がしてくれるらしいんだっ!」
嬉しそうに教えてくれたのはコニーだったが、ジャンとライナーも口元のニヤニヤが隠しきれていない。
アルミンとベルトルトは、真面目に教科書を読んでいると思ったら保健体育の教科書だ。予習をしているらしい。
学生たちの憧れの可愛い先生が保健体育を教えてくれるとなれば、男子生徒が興奮してしまうのも分かる気がする。
とにかく、性にも異性にも興味がある。
16歳の男子なんて、大体そういう時期だ。
エレンだけが、ソファに肩ひじを乗せて、暇そうに天井を見上げていた。
「最低だな。」
女子生徒が全員思っていそうなことをピシャリと言ったのはアニだった。
その隣で、ミカサとクリスタは心底蔑むような目を男子達に向けている。
ミカサに恋をしているらしいジャンも、クリスタに恋をしているライナーも、俺は違うとかなんとか言い訳を始めていたけれど、もう遅いと思う。
「クリスタに近寄るんじゃねぇ―よ、イカ野郎。」
ユミルがクリスタを自分の腕の中に閉じ込めるように抱きしめて、ライナーから隠す。
「おい、ユミル。それはまさか俺に言ってんのか。」
「イカ臭ぇって言ってんだよ。その汚ぇ手で触んじゃねぇ。」
「な…っ!ちゃんと洗ってる!!」
ユミルの嫌味を真に受けたライナーが、無意識に自分の事情を暴露してしまった横で、サシャが騒ぎ出す。
「ライナーだったんですね!!どこかからイカの匂いがすると思ってたんです!!
私にもイカ焼きくださいよ!!」
「ライナーだけじゃないから、痛いとこつかないであげて。
そんなことより、サシャは私のお菓子を返しなさい。」
「なまえ先生の食べ物はすべて私のものと決まったのです!!」
「いつの間に!?」
私とサシャがお菓子の取り合いを始めてすぐに、午後の授業の開始を始めるチャイムが鳴った。
お菓子を持ったままでサシャが立ち上がって、逃げる。
「あーーーーっ!!」
絶望的に叫びながら、私は手を伸ばすけれど、風の速さで逃げて行ったサシャの背中はもう見えない。
私の午後の楽しみだったのにー。
「0勝102負け。」
「負け越し更新、おめでとさん。」
ミカサに数えられていたなんて知らなかった。
ユミルに肩を叩かれ、私は肩を落とす。
いつもは女子生徒の後からダラダラと保健室を出て行く男子生徒達が、今日はスキップでもしそうな勢いで立ち上がった。
「おい、エレン、行くぞ。」
扉へ向かっていたジャンが振り向く。
保健室から出て行こうとしている生徒達の中で、エレンだけがまだソファの背もたれに寄り掛かって座って、気だるそうに天井を見上げている。
「俺、授業休むわ。」
「どうしたの?エレン、体調悪いの?朝は元気だったのに。」
天井を見上げたまま言うエレンに、アルミンが心配そうに訊ねた。
けれど、本人は、興味がないからだとこともなげに答える。
ミカサにサボリはよくないと注意されるが、ソファから立ち上がる様子のないエレンを仕方なく保健室で休ませておくと伝え、アルミン達は遅刻しないように教室に戻るよう指示を出した。
「せっかくのペトラ先生の保健体育の授業だったのに、本当によかったの?」
「俺、別に興味ないですから。」
「全く、興味ないからって授業に出なくてもいいわけじゃないんだけどね。
どうする?ベッドで寝とく?」
「あ~…そうしよっかな。」
「じゃあ、奥のベッド使っていいよ。」
「は~い。」
気だるげに返事をして、エレンは奥のベッドへと向かう。
一応、保健室で休んだ生徒は熱を計って記録する決まりになっている。
デスクから体温計をとってベッドへ向かえば、勝手の知っているエレンはベッドに入った格好で座って待ってくれていた。
「どうぞ。」
仕切りカーテンを閉めて、エレンに体温計を渡す。
体温計を受け取ったエレンは、慣れた仕草で体温計を脇に挟む。
つまらなそうに数字が変わっていくのを見下ろしているエレンの伏し目がちな顔を長めの前髪が隠す。
エレンは、そこら辺のアイドルなんかよりも随分と端正な顔立ちをしていると思う。
意志の強い瞳は他の生徒達と一緒にいても目を引いた。
隠れファンが多くいるらしいとペトラから聞いたことがある。
昼休みにやって来るメンバーは、いつも大体決まっていて、エレンもそのメンバーの仲間だ。
今年に新任として入ったばかりの私は知らないけれど、中学の頃からの問題児グループなのだそうだ。
その中でも特にエレンは、他校の生徒と喧嘩ばかりをして問題を起こしていたのだとナイル先生が愚痴っていたのを聞いたこともある。
今もよく喧嘩をしたと傷を作って保健室にやって来るけれど、これでもだいぶ減った方だと聞いて驚いたくらいだ。
付き合いの長いアルミン達が言うには、高校に入ってエレンは少しおとなしくなった代わりに、どこか一匹狼のようなクールな印象がつくようになったらしい。
うん、たぶん、そういう時期だ。
ピピピ…-。
体温計が鳴って、エレンから受け取る。
36.7。だいぶ平熱だ。
体温計をケースに戻しながら、エレンに話しかける。
「よし、問題ないね。これなら、授業も受けられたと思うけど。」
「だから興味ないんだって。」
「興味はなくても、保健体育の授業は大切だよ。好奇心でもいいから
ちゃんと聞いて損はないと思うけどな。」
「教科書の文字で説明されたことなんて、何の役にも立ちませんよ。」
「お~言うね。」
「だろ?」
「でも、それでも知識として頭にあるのとないのとでは全然違うよ。
何も知らないままだと好きな女の子を泣かすことになっちゃうからね。
エレンもミカサを泣かせたくないでしょ。恋人なんでしょう。」
青春はいいなー。
なんて思いながら、エレンの髪をクシャリと撫でて立ち上がろうとして、手首を掴まれた。
驚いた私をエレンが挑むような目で睨みつける。
「…じゃあ、先生が教えてくださいよ。」
「保健体育を?」
「そう、ちゃんと、実技で。」
「実技ってー。」
「まずは、キスからな。」
掴まれていた手首を引っ張られて、私は前のめりにバランスを崩してしまった。
エレンの手が私の後頭部にまわって、ひどく強引に唇が重なった。
驚く暇もない私の腰を抱き寄せた大きな手が、私の背骨をスーッと上になぞる。
思わず鳥肌が立って、私は小さな息を漏らして口を開いてしまった。
その隙を逃さずにエレンの舌が潜り込む。
長い舌で私の舌を絡みとっては、意地悪く吸いながら、私の大人としての理性までも吸い上げようとしているみたいだった。
「んぁ…っ、ふ…っ、は…っ。」
酸素を求めて開く口からは、だらしなく甘い吐息が漏れる。
後頭部の髪に指を絡めて、もう片方の手で腰を引き寄せたまま、エレンは私をかき抱く。
そうして、私の頭と咥内をとろけさせていった。
16歳の男子高校生が、こんなにキスが上手だなんて知らなかったー
脳みそがとろけそうだー。もう、わけがわかんない。
私は今、何をしてるんだっけー。
こんなキス、初めてー…。
今時の男の子らしく、第一ボタンを外してだらしなく着こなしていた白いシャツに、私は必死にしがみつく。
そうしていないと、腰から崩れて落ちそうでー。
「なまえ先生、ちょっとご相談がー。
あれ?いないのか?なまえ先生?」
扉が開いた音の後、エルド先生の声が聞こえた。
そういえば、午後一の授業のときに顔を出すと言っていた。
今すぐやめなくちゃー。
やっと理性が戻ってきそうだったのに、離れようとした私をエレンの手が許してはくれなかった。
さらに強く掻き抱かれて、私はあっけなく16歳の男子高校生に屈してしまう。
何度か私の名前を呼んだエルド先生は、いないのだろうと判断して保健室を出て行った。
廊下を歩き去っていく彼の足音が聞こえなくなった頃、漸く、エレンの唇が離れた。
どこか大人びたエレンの綺麗な瞳に映る私はもう、保健室の先生の顔はしていなかった。
とろんとした瞳も、上気した頬も、女になっていたー。
「バレなくてよかったですね。」
エレンは僅かに口の端だけを押し上げたような笑みを浮かべて、私の濡れた唇を拭った。
目の前にいるのが、いつも見ていた男の子に見えなくて、私はただぼんやりとする意識の中でエレンを見上げるばかりでー。
「俺、やっぱり、保健体育の授業受けてきます。
好きな女を泣かせたくないんで。」
チュッと軽いリップ音を立てて、エレンは私にキスをするとベッドから降りる。
そして、仕切りカーテンを開いて出て行こうとして、振り返った。
「続きは、また今度、教えてくださいね。ー先生。」
ニッと口の端を上げたその笑みがもう、少年みたいだったのか、悪戯な悪い男のものだったのか、私にはもう分からなくてー。
どうやら私はー。
実技経験不足を実感中
あのコは本当に私の知っている可愛い生徒でしたか?
暇つぶしのお喋りをしにくる子や恋の相談をしにくる子、私がこっそり食べようと思っていたお菓子を探しに来る子もいる。
体調が悪い子がいれば、静かにさせるけれど、基本的にいつも元気いっぱいの子達で溢れている。
保健室の中央にテーブルを囲むように置いてある大きなソファでは、今日もいつものメンバーが賑やかにお喋りに花を咲かせている。
中高一貫のこの学校は、みんな心も身体も健康なようだった。
「保健体育か~。懐かしい~。」
お喋りの輪の中に強制参加させられていた私は、自分の学生時代に思いを馳せる。
確かにあの頃も、保健体育の授業の前には男子が妙に浮足立っていたような気がする。
「おう!しかも授業をペトラ先生がしてくれるらしいんだっ!」
嬉しそうに教えてくれたのはコニーだったが、ジャンとライナーも口元のニヤニヤが隠しきれていない。
アルミンとベルトルトは、真面目に教科書を読んでいると思ったら保健体育の教科書だ。予習をしているらしい。
学生たちの憧れの可愛い先生が保健体育を教えてくれるとなれば、男子生徒が興奮してしまうのも分かる気がする。
とにかく、性にも異性にも興味がある。
16歳の男子なんて、大体そういう時期だ。
エレンだけが、ソファに肩ひじを乗せて、暇そうに天井を見上げていた。
「最低だな。」
女子生徒が全員思っていそうなことをピシャリと言ったのはアニだった。
その隣で、ミカサとクリスタは心底蔑むような目を男子達に向けている。
ミカサに恋をしているらしいジャンも、クリスタに恋をしているライナーも、俺は違うとかなんとか言い訳を始めていたけれど、もう遅いと思う。
「クリスタに近寄るんじゃねぇ―よ、イカ野郎。」
ユミルがクリスタを自分の腕の中に閉じ込めるように抱きしめて、ライナーから隠す。
「おい、ユミル。それはまさか俺に言ってんのか。」
「イカ臭ぇって言ってんだよ。その汚ぇ手で触んじゃねぇ。」
「な…っ!ちゃんと洗ってる!!」
ユミルの嫌味を真に受けたライナーが、無意識に自分の事情を暴露してしまった横で、サシャが騒ぎ出す。
「ライナーだったんですね!!どこかからイカの匂いがすると思ってたんです!!
私にもイカ焼きくださいよ!!」
「ライナーだけじゃないから、痛いとこつかないであげて。
そんなことより、サシャは私のお菓子を返しなさい。」
「なまえ先生の食べ物はすべて私のものと決まったのです!!」
「いつの間に!?」
私とサシャがお菓子の取り合いを始めてすぐに、午後の授業の開始を始めるチャイムが鳴った。
お菓子を持ったままでサシャが立ち上がって、逃げる。
「あーーーーっ!!」
絶望的に叫びながら、私は手を伸ばすけれど、風の速さで逃げて行ったサシャの背中はもう見えない。
私の午後の楽しみだったのにー。
「0勝102負け。」
「負け越し更新、おめでとさん。」
ミカサに数えられていたなんて知らなかった。
ユミルに肩を叩かれ、私は肩を落とす。
いつもは女子生徒の後からダラダラと保健室を出て行く男子生徒達が、今日はスキップでもしそうな勢いで立ち上がった。
「おい、エレン、行くぞ。」
扉へ向かっていたジャンが振り向く。
保健室から出て行こうとしている生徒達の中で、エレンだけがまだソファの背もたれに寄り掛かって座って、気だるそうに天井を見上げている。
「俺、授業休むわ。」
「どうしたの?エレン、体調悪いの?朝は元気だったのに。」
天井を見上げたまま言うエレンに、アルミンが心配そうに訊ねた。
けれど、本人は、興味がないからだとこともなげに答える。
ミカサにサボリはよくないと注意されるが、ソファから立ち上がる様子のないエレンを仕方なく保健室で休ませておくと伝え、アルミン達は遅刻しないように教室に戻るよう指示を出した。
「せっかくのペトラ先生の保健体育の授業だったのに、本当によかったの?」
「俺、別に興味ないですから。」
「全く、興味ないからって授業に出なくてもいいわけじゃないんだけどね。
どうする?ベッドで寝とく?」
「あ~…そうしよっかな。」
「じゃあ、奥のベッド使っていいよ。」
「は~い。」
気だるげに返事をして、エレンは奥のベッドへと向かう。
一応、保健室で休んだ生徒は熱を計って記録する決まりになっている。
デスクから体温計をとってベッドへ向かえば、勝手の知っているエレンはベッドに入った格好で座って待ってくれていた。
「どうぞ。」
仕切りカーテンを閉めて、エレンに体温計を渡す。
体温計を受け取ったエレンは、慣れた仕草で体温計を脇に挟む。
つまらなそうに数字が変わっていくのを見下ろしているエレンの伏し目がちな顔を長めの前髪が隠す。
エレンは、そこら辺のアイドルなんかよりも随分と端正な顔立ちをしていると思う。
意志の強い瞳は他の生徒達と一緒にいても目を引いた。
隠れファンが多くいるらしいとペトラから聞いたことがある。
昼休みにやって来るメンバーは、いつも大体決まっていて、エレンもそのメンバーの仲間だ。
今年に新任として入ったばかりの私は知らないけれど、中学の頃からの問題児グループなのだそうだ。
その中でも特にエレンは、他校の生徒と喧嘩ばかりをして問題を起こしていたのだとナイル先生が愚痴っていたのを聞いたこともある。
今もよく喧嘩をしたと傷を作って保健室にやって来るけれど、これでもだいぶ減った方だと聞いて驚いたくらいだ。
付き合いの長いアルミン達が言うには、高校に入ってエレンは少しおとなしくなった代わりに、どこか一匹狼のようなクールな印象がつくようになったらしい。
うん、たぶん、そういう時期だ。
ピピピ…-。
体温計が鳴って、エレンから受け取る。
36.7。だいぶ平熱だ。
体温計をケースに戻しながら、エレンに話しかける。
「よし、問題ないね。これなら、授業も受けられたと思うけど。」
「だから興味ないんだって。」
「興味はなくても、保健体育の授業は大切だよ。好奇心でもいいから
ちゃんと聞いて損はないと思うけどな。」
「教科書の文字で説明されたことなんて、何の役にも立ちませんよ。」
「お~言うね。」
「だろ?」
「でも、それでも知識として頭にあるのとないのとでは全然違うよ。
何も知らないままだと好きな女の子を泣かすことになっちゃうからね。
エレンもミカサを泣かせたくないでしょ。恋人なんでしょう。」
青春はいいなー。
なんて思いながら、エレンの髪をクシャリと撫でて立ち上がろうとして、手首を掴まれた。
驚いた私をエレンが挑むような目で睨みつける。
「…じゃあ、先生が教えてくださいよ。」
「保健体育を?」
「そう、ちゃんと、実技で。」
「実技ってー。」
「まずは、キスからな。」
掴まれていた手首を引っ張られて、私は前のめりにバランスを崩してしまった。
エレンの手が私の後頭部にまわって、ひどく強引に唇が重なった。
驚く暇もない私の腰を抱き寄せた大きな手が、私の背骨をスーッと上になぞる。
思わず鳥肌が立って、私は小さな息を漏らして口を開いてしまった。
その隙を逃さずにエレンの舌が潜り込む。
長い舌で私の舌を絡みとっては、意地悪く吸いながら、私の大人としての理性までも吸い上げようとしているみたいだった。
「んぁ…っ、ふ…っ、は…っ。」
酸素を求めて開く口からは、だらしなく甘い吐息が漏れる。
後頭部の髪に指を絡めて、もう片方の手で腰を引き寄せたまま、エレンは私をかき抱く。
そうして、私の頭と咥内をとろけさせていった。
16歳の男子高校生が、こんなにキスが上手だなんて知らなかったー
脳みそがとろけそうだー。もう、わけがわかんない。
私は今、何をしてるんだっけー。
こんなキス、初めてー…。
今時の男の子らしく、第一ボタンを外してだらしなく着こなしていた白いシャツに、私は必死にしがみつく。
そうしていないと、腰から崩れて落ちそうでー。
「なまえ先生、ちょっとご相談がー。
あれ?いないのか?なまえ先生?」
扉が開いた音の後、エルド先生の声が聞こえた。
そういえば、午後一の授業のときに顔を出すと言っていた。
今すぐやめなくちゃー。
やっと理性が戻ってきそうだったのに、離れようとした私をエレンの手が許してはくれなかった。
さらに強く掻き抱かれて、私はあっけなく16歳の男子高校生に屈してしまう。
何度か私の名前を呼んだエルド先生は、いないのだろうと判断して保健室を出て行った。
廊下を歩き去っていく彼の足音が聞こえなくなった頃、漸く、エレンの唇が離れた。
どこか大人びたエレンの綺麗な瞳に映る私はもう、保健室の先生の顔はしていなかった。
とろんとした瞳も、上気した頬も、女になっていたー。
「バレなくてよかったですね。」
エレンは僅かに口の端だけを押し上げたような笑みを浮かべて、私の濡れた唇を拭った。
目の前にいるのが、いつも見ていた男の子に見えなくて、私はただぼんやりとする意識の中でエレンを見上げるばかりでー。
「俺、やっぱり、保健体育の授業受けてきます。
好きな女を泣かせたくないんで。」
チュッと軽いリップ音を立てて、エレンは私にキスをするとベッドから降りる。
そして、仕切りカーテンを開いて出て行こうとして、振り返った。
「続きは、また今度、教えてくださいね。ー先生。」
ニッと口の端を上げたその笑みがもう、少年みたいだったのか、悪戯な悪い男のものだったのか、私にはもう分からなくてー。
どうやら私はー。
実技経験不足を実感中
あのコは本当に私の知っている可愛い生徒でしたか?
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