見つけてくれたイケメンはいかがですか?~Erwin~
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『君は強いから、俺なんかいなくても大丈夫だろ。』
電話の向こう、聞こえてきたのはもう嫌というほどに言われ続けていたセリフ。
でもそれを、彼にだけは言って欲しくなかった———そんなセリフだった。
今朝から降り続いていた雨は、仕事終わりには土砂降りに変わっていて、私の傘を壊しそうな勢いで叩いてくる。
私は柄を強く握って、溢れてくる涙を傘で隠した。
「そうだね。うん、私なら大丈夫だよ。だから心配しないで、彼女を大切にしてあげてね。
あっ、もう充電が切れちゃいそう。ごめん、もう切るね。
今までありがとう、さようなら。」
「あぁ、さよ———。」
彼の最後の言葉から逃げるように、私は電話を切った。
幸せそうな恋人同士が笑い合う待受けの写真と、右上に表示されるほとんど満タンの充電が虚しすぎて、スマホの電源も落としてしまう。
人通りの多い定時後のオフィス街。駅へ向かうたくさんの人達が、私の横を忙しなく通り過ぎていく。
皆、とても早足で急いでいるから、傘に隠れて泣いている私に、誰も気づかない。
誰も、気づかない。
『いつも無理を言ってごめんね。
名字さんは何でも出来るから、つい頼っちゃうんだよね。』
『名字さんが担当で本当によかったよ。
最近の子達はすぐに弱音を吐くのに、君は本当に強いね。』
『名前さんって本当に強いですね。いつも頼りにしてます。』
会社でも、友達も、家族といても、私はいつも〝強いコ〟だ。
何でも出来て、そつなくこなして、頼りになる——皆がそう思って、私を褒めてくれる。
だから私は、もっと頑張らなくちゃって思う。
期待を裏切って悲しい顔をさせたくなくて、頑張って、頑張って、努力をしてきた。
そしたら今度は、何でも出来過ぎて一緒にいたら疲れるって、離れていく。
じゃあ、私はどうしたらいいんだろう。
どうしたら、良かったんだろう。
どうすれば、彼にずっと愛されていたんだろう。
『いつも強く輝いてる君が好きだよ。尊敬するよ。』
そう言ってくれたから、沢山頑張って、もっと愛されたくて、彼の好きな私でいられるように努力した。
努力、したのに———。
結局、彼も、甘く笑って、ふわふわしてて、とても可愛らしくて、ひとりじゃ何もできない娘を選んだ。
「守ってあげたいって…っ、なにそれ…っ。
子供じゃないんだから…っ、ばっかじゃ、ないの…っ。」
唇を噛んで、必死に悪態を吐く。
苦しい、胸が痛い。
どうしていつもこうなんだろう。
私だって、本当は守ってもらいたい。
大丈夫?って子供みたいに心配されて、甘やかされてみたい。
強いね、すごいね、なんてもう要らない。
頑張ったね、いっぱい努力したんだねって、私を褒めて。
誰か、私は本当は弱いんだって、気づいて——。
本当は、寂しがりで、ひとりぼっちで泣いてるの。
誰か。
ねぇ、誰か——、私はここにいる。
私はここにいるの。
気づいて——。
私を、抱きしめて———。
「…ッ。」
苦しい。胸が痛くて、息が出来ない———。
立っていられなくなって、傘を捨てて座り込んで、ブラウスの上から心臓を握りしめた。
過呼吸というやつかもしれない。
土砂降りの雨が、もっと泣けって言ってるみたいに、私の頬に強く叩きつける。
背中に、肩に、心臓を握りしめる手に、冷たい雨があたって、寒い。悲しい。
苦しい。
「大丈夫かい?」
不意に聞こえてきた優しい低い声と同時に、私に叩きつけていた雨が止んだ。
ゆっくりと顔を上げる。
大きな青い傘を私に差し出しながら、とても心配そうに見つめるのは、スミス部長だった。
電話の向こう、聞こえてきたのはもう嫌というほどに言われ続けていたセリフ。
でもそれを、彼にだけは言って欲しくなかった———そんなセリフだった。
今朝から降り続いていた雨は、仕事終わりには土砂降りに変わっていて、私の傘を壊しそうな勢いで叩いてくる。
私は柄を強く握って、溢れてくる涙を傘で隠した。
「そうだね。うん、私なら大丈夫だよ。だから心配しないで、彼女を大切にしてあげてね。
あっ、もう充電が切れちゃいそう。ごめん、もう切るね。
今までありがとう、さようなら。」
「あぁ、さよ———。」
彼の最後の言葉から逃げるように、私は電話を切った。
幸せそうな恋人同士が笑い合う待受けの写真と、右上に表示されるほとんど満タンの充電が虚しすぎて、スマホの電源も落としてしまう。
人通りの多い定時後のオフィス街。駅へ向かうたくさんの人達が、私の横を忙しなく通り過ぎていく。
皆、とても早足で急いでいるから、傘に隠れて泣いている私に、誰も気づかない。
誰も、気づかない。
『いつも無理を言ってごめんね。
名字さんは何でも出来るから、つい頼っちゃうんだよね。』
『名字さんが担当で本当によかったよ。
最近の子達はすぐに弱音を吐くのに、君は本当に強いね。』
『名前さんって本当に強いですね。いつも頼りにしてます。』
会社でも、友達も、家族といても、私はいつも〝強いコ〟だ。
何でも出来て、そつなくこなして、頼りになる——皆がそう思って、私を褒めてくれる。
だから私は、もっと頑張らなくちゃって思う。
期待を裏切って悲しい顔をさせたくなくて、頑張って、頑張って、努力をしてきた。
そしたら今度は、何でも出来過ぎて一緒にいたら疲れるって、離れていく。
じゃあ、私はどうしたらいいんだろう。
どうしたら、良かったんだろう。
どうすれば、彼にずっと愛されていたんだろう。
『いつも強く輝いてる君が好きだよ。尊敬するよ。』
そう言ってくれたから、沢山頑張って、もっと愛されたくて、彼の好きな私でいられるように努力した。
努力、したのに———。
結局、彼も、甘く笑って、ふわふわしてて、とても可愛らしくて、ひとりじゃ何もできない娘を選んだ。
「守ってあげたいって…っ、なにそれ…っ。
子供じゃないんだから…っ、ばっかじゃ、ないの…っ。」
唇を噛んで、必死に悪態を吐く。
苦しい、胸が痛い。
どうしていつもこうなんだろう。
私だって、本当は守ってもらいたい。
大丈夫?って子供みたいに心配されて、甘やかされてみたい。
強いね、すごいね、なんてもう要らない。
頑張ったね、いっぱい努力したんだねって、私を褒めて。
誰か、私は本当は弱いんだって、気づいて——。
本当は、寂しがりで、ひとりぼっちで泣いてるの。
誰か。
ねぇ、誰か——、私はここにいる。
私はここにいるの。
気づいて——。
私を、抱きしめて———。
「…ッ。」
苦しい。胸が痛くて、息が出来ない———。
立っていられなくなって、傘を捨てて座り込んで、ブラウスの上から心臓を握りしめた。
過呼吸というやつかもしれない。
土砂降りの雨が、もっと泣けって言ってるみたいに、私の頬に強く叩きつける。
背中に、肩に、心臓を握りしめる手に、冷たい雨があたって、寒い。悲しい。
苦しい。
「大丈夫かい?」
不意に聞こえてきた優しい低い声と同時に、私に叩きつけていた雨が止んだ。
ゆっくりと顔を上げる。
大きな青い傘を私に差し出しながら、とても心配そうに見つめるのは、スミス部長だった。
1/3ページ