◇33話◇彼女の切ない問いと願い
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夜空を舞ったなまえの身体は、地面に叩きつけられる直前で、リヴァイの腕が受け止めていた。
まさか間に合うとは思わなかったのか、なまえはリヴァイの腕の中で目を丸くしている。
でも、今度は間に合った。
初めて、間に合ったー。
ちゃんと、守れた。大切な人を、守れたー。
距離と落ちる速度を考えれば、奇跡だったに違いない。
実際、強い風が吹いて、落ちるなまえの身体を揺らして、リヴァイの背中を押さなければ、間に合わなかったはずだ。
運がよかったー。
ハンジ達も駆けつけ、リヴァイの腕の中で無事な様子のなまえを見つけ、ホッと胸を撫でおろす。
短距離を風の速さで走ったリヴァイは、珍しく息を切らしながらも、腕の中で呆然としているなまえを怒鳴りつける。
「なに…っ、やってんだ、てめぇは…!!」
本当に、心臓が止まるかと思った。
死んでしまうと、本気で思った。
怖かったー。
すごく、とてつもなく、怖かったー。
「すごいね…、リヴァイ…。間に合っちゃうんだ…。」
「ふ、ざけんな…っ!心臓が止まるかと、思ったじゃねぇか!
サヨナラ、とか…っ、二度と、言うんじゃねぇ!」
生きているなまえを確かめるように、首筋に顔を埋めて強く抱きしめた。
よかった。
温かい。生きている。彼女はちゃんと、生きている。
「ねぇ、顔上げて。」
なまえが、自分を抱きしめるリヴァイの耳のあたりに触れた。
空から降ってきたあの日から、なまえからリヴァイに触れることなんて、ほとんどなかったから、驚いてしまう。
言われた通りに顔をあげれば、なまえはなぜか、ひどく傷ついた顔をしていて、怖くなる。
何か、とても怖いことを言われるんじゃないかとー。
本当に、このままサヨナラしようとしているんじゃないかとー。
「私の、目を見て、答えて。」
「…なんだ。」
「空から、私が降りてきた日から今日まで、リヴァイは、幸せだった?」
何を訊かれるのかとひどく怯えていたから、あまりにも分かりきった問いに、リヴァイは拍子抜けだった。
そんなの、答えなんて決まっている。
だから、真っすぐになまえを見て答えてやれる。
「あぁ、幸せだ。今も、お前がいてくれるだけで幸せだ。」
「冷たく、したのに?ヒドイこともいっぱい言ったよ。」
「そんなこと、お前がいなくなっちまうことに比べたら、どうってことねぇ。」
「リヴァイは、ずっと…、私にそばにいてほしいの…?」
「当たり前じゃねぇーかっ。絶対に、もう二度と、放さねぇ…!」
「もし、それが、私を苦しめても…?私は、消えてしまいたくても?
もうこんな世界に、あと一秒だって、いたくなくても…?」
「…っ。」
初めて、リヴァイは答えに詰まる。
あぁ、それを訊きたかったのかと、漸く理解する。
知っていた。
ずっと、なまえが何かに苦しんでいることに気づいていた。
それでも、そばにいたかった。
もう二度と、なまえのいない世界で生きていたくない。
だって、知ってしまったから。なまえのいる世界を知ってしまったからー。
なまえの温もりも、笑顔も、誰かを心から愛おしく思う気持ちも、知ってしまったからー。
だから、それでもー。
目をまっすぐに見て、リヴァイは答えられてしまうのだ。
それが、自分勝手で、我儘な願いだと知っていながらー。
なまえを苦しめていると、分かっていながらー。
答えられてしまうのだー。
「あぁ…!それでもっ、なまえを苦しめても俺は、そばにいてほしい…!」
後ろから、モブリットが、間違っているとかなんとか言ったのが聞こえた。
そんなこと、言われなくたって分かっている。
いっそ、分からないようなクソ野郎でいられた方がマシだと思うくらいに、分かっているのだ。
でも、なまえは目を見て答えろと言ったじゃないか。
それなら、自分は本心を伝える。
なまえに嘘は吐きたくない。
彼女の綺麗な目を見て、嘘なんて吐けない。
「ねぇ、教えてほしいの…。」
目を見て答えてほしいー。
そう言ったはずのなまえは、僅かに目を伏せてしまう。
離れた視線の先で、それでもリヴァイはまっすぐになまえを見つめていた。
なまえがいつ自分の方を向いてくれてもいいように。
いつ自分の方を見ても、ちゃんと視線が絡むように。
それがいつでも、必ずお互いの瞳が重なって、運命さえも絡み合ってくれるようにー。
「あぁ、なんだ。」
「想い出のない私のこと、好きだなって思ったこと、あった?
愛おしいなって、思ったこと一度くらいは、あった…?」
僅かに顔を伏せていても分かる。
ひどく不安そうに、とても寂しそうに、なまえは瞳を揺らしている。
どうしてそんなことを訊くのか、分からなかった。
だって、当然じゃないか。
朝起きて、夜寝るまでずっと、なまえのほんのささいな仕草だって愛おしいのだ。
この目に、焼き付けておかなければと心が焦るくらいにー。
「思わされてばかりだ、クソが。分かりきったこと、訊くんじゃねぇ。」
とても不安そうだから、力強く言ったのに、なまえはただ悲しそうに瞳を揺らしただけだった。
そして、躊躇いがちに何かを言おうと口を開きかけて、諦めた様に閉じてしまう。
「どうした。何でも言え。何だって答えるから。」
ちゃんと聞かないといけないと思った。
ほんのささいな一言だって、聞き逃してしまったら、もう二度と会えない場所になまえが行ってしまうようなー。
そんな気がしていた。
少し待てば、なまえは僅かに伏せていた目を上げた。
不安そうな上目遣いの瞳と、漸く視線が重なる。
そして、なまえは意を決したように、とても簡単なことを願った。
「じゃあ、好きって…言って…?」
あぁ、ほらー。
涙ぐんだ瞳で、上目遣いで、とても切なそうに、そんな可愛らしいことをお願いなんてするからー。
ほら、愛おしいと思ってる。
なまえが何を不安に思っているのかは知らないけれど、そんなこと願わなくたって、幾らでも言ってやるのにー。
「なまえのことがー。」
「待って。名前は、言わないで…。」
なまえの細い指が、唇に触れた。
それがどういう意味なのか、さっぱり分からなかった。
なぜ、名前を呼んではいけないのか。
それでも、なまえが願うのなら、それくらい簡単に叶えられる。
そうすれば、もう二度となまえが離れないのならー。
「好きだ。愛してる。」
なまえの頬を撫でて、愛おしい気持ちを伝えた。
ゆっくりと、綺麗な瞳が見開かれていく。
そして、出来上がった表情は、喜びとはかけ離れていてー。
ひどく傷ついていて、ひどく悲しそうに、ひどく苦しそうに、なまえは唇を噛んだ。
とっくに潤んでいた瞳からは、溢れ出した涙が堪えきれずに溢れ出してー。
「------っ。」
声にならない悲鳴のような嗚咽が、なまえから漏れる。
リヴァイのシャツの胸元をギュッと握りしめて、なまえは子供のように泣きじゃくった。
まるで、迷子になった子供みたいに、家に帰れなくなった子供みたいにー。
声を上げて、嗚咽を漏らして、リヴァイのシャツの胸元を濡らした。
どうして、なまえが泣いたのか。
何がそんなに悲しかったのか。
どんな気持ちで、好きかと聞いたのか。
好きだと言われて、どれほど苦しかったか。悲しかったか。
どうやって知ればよかったのだろうか。
なまえの気持ちが分からなくて、でも、他の誰でもなく自分に縋りつく彼女が愛おしくて、リヴァイは震える華奢な身体を抱きしめた。
記憶にあるよりもひどく細く感じるその身体を、壊してしまいそうなくらいに強く、抱きしめた。
まさか間に合うとは思わなかったのか、なまえはリヴァイの腕の中で目を丸くしている。
でも、今度は間に合った。
初めて、間に合ったー。
ちゃんと、守れた。大切な人を、守れたー。
距離と落ちる速度を考えれば、奇跡だったに違いない。
実際、強い風が吹いて、落ちるなまえの身体を揺らして、リヴァイの背中を押さなければ、間に合わなかったはずだ。
運がよかったー。
ハンジ達も駆けつけ、リヴァイの腕の中で無事な様子のなまえを見つけ、ホッと胸を撫でおろす。
短距離を風の速さで走ったリヴァイは、珍しく息を切らしながらも、腕の中で呆然としているなまえを怒鳴りつける。
「なに…っ、やってんだ、てめぇは…!!」
本当に、心臓が止まるかと思った。
死んでしまうと、本気で思った。
怖かったー。
すごく、とてつもなく、怖かったー。
「すごいね…、リヴァイ…。間に合っちゃうんだ…。」
「ふ、ざけんな…っ!心臓が止まるかと、思ったじゃねぇか!
サヨナラ、とか…っ、二度と、言うんじゃねぇ!」
生きているなまえを確かめるように、首筋に顔を埋めて強く抱きしめた。
よかった。
温かい。生きている。彼女はちゃんと、生きている。
「ねぇ、顔上げて。」
なまえが、自分を抱きしめるリヴァイの耳のあたりに触れた。
空から降ってきたあの日から、なまえからリヴァイに触れることなんて、ほとんどなかったから、驚いてしまう。
言われた通りに顔をあげれば、なまえはなぜか、ひどく傷ついた顔をしていて、怖くなる。
何か、とても怖いことを言われるんじゃないかとー。
本当に、このままサヨナラしようとしているんじゃないかとー。
「私の、目を見て、答えて。」
「…なんだ。」
「空から、私が降りてきた日から今日まで、リヴァイは、幸せだった?」
何を訊かれるのかとひどく怯えていたから、あまりにも分かりきった問いに、リヴァイは拍子抜けだった。
そんなの、答えなんて決まっている。
だから、真っすぐになまえを見て答えてやれる。
「あぁ、幸せだ。今も、お前がいてくれるだけで幸せだ。」
「冷たく、したのに?ヒドイこともいっぱい言ったよ。」
「そんなこと、お前がいなくなっちまうことに比べたら、どうってことねぇ。」
「リヴァイは、ずっと…、私にそばにいてほしいの…?」
「当たり前じゃねぇーかっ。絶対に、もう二度と、放さねぇ…!」
「もし、それが、私を苦しめても…?私は、消えてしまいたくても?
もうこんな世界に、あと一秒だって、いたくなくても…?」
「…っ。」
初めて、リヴァイは答えに詰まる。
あぁ、それを訊きたかったのかと、漸く理解する。
知っていた。
ずっと、なまえが何かに苦しんでいることに気づいていた。
それでも、そばにいたかった。
もう二度と、なまえのいない世界で生きていたくない。
だって、知ってしまったから。なまえのいる世界を知ってしまったからー。
なまえの温もりも、笑顔も、誰かを心から愛おしく思う気持ちも、知ってしまったからー。
だから、それでもー。
目をまっすぐに見て、リヴァイは答えられてしまうのだ。
それが、自分勝手で、我儘な願いだと知っていながらー。
なまえを苦しめていると、分かっていながらー。
答えられてしまうのだー。
「あぁ…!それでもっ、なまえを苦しめても俺は、そばにいてほしい…!」
後ろから、モブリットが、間違っているとかなんとか言ったのが聞こえた。
そんなこと、言われなくたって分かっている。
いっそ、分からないようなクソ野郎でいられた方がマシだと思うくらいに、分かっているのだ。
でも、なまえは目を見て答えろと言ったじゃないか。
それなら、自分は本心を伝える。
なまえに嘘は吐きたくない。
彼女の綺麗な目を見て、嘘なんて吐けない。
「ねぇ、教えてほしいの…。」
目を見て答えてほしいー。
そう言ったはずのなまえは、僅かに目を伏せてしまう。
離れた視線の先で、それでもリヴァイはまっすぐになまえを見つめていた。
なまえがいつ自分の方を向いてくれてもいいように。
いつ自分の方を見ても、ちゃんと視線が絡むように。
それがいつでも、必ずお互いの瞳が重なって、運命さえも絡み合ってくれるようにー。
「あぁ、なんだ。」
「想い出のない私のこと、好きだなって思ったこと、あった?
愛おしいなって、思ったこと一度くらいは、あった…?」
僅かに顔を伏せていても分かる。
ひどく不安そうに、とても寂しそうに、なまえは瞳を揺らしている。
どうしてそんなことを訊くのか、分からなかった。
だって、当然じゃないか。
朝起きて、夜寝るまでずっと、なまえのほんのささいな仕草だって愛おしいのだ。
この目に、焼き付けておかなければと心が焦るくらいにー。
「思わされてばかりだ、クソが。分かりきったこと、訊くんじゃねぇ。」
とても不安そうだから、力強く言ったのに、なまえはただ悲しそうに瞳を揺らしただけだった。
そして、躊躇いがちに何かを言おうと口を開きかけて、諦めた様に閉じてしまう。
「どうした。何でも言え。何だって答えるから。」
ちゃんと聞かないといけないと思った。
ほんのささいな一言だって、聞き逃してしまったら、もう二度と会えない場所になまえが行ってしまうようなー。
そんな気がしていた。
少し待てば、なまえは僅かに伏せていた目を上げた。
不安そうな上目遣いの瞳と、漸く視線が重なる。
そして、なまえは意を決したように、とても簡単なことを願った。
「じゃあ、好きって…言って…?」
あぁ、ほらー。
涙ぐんだ瞳で、上目遣いで、とても切なそうに、そんな可愛らしいことをお願いなんてするからー。
ほら、愛おしいと思ってる。
なまえが何を不安に思っているのかは知らないけれど、そんなこと願わなくたって、幾らでも言ってやるのにー。
「なまえのことがー。」
「待って。名前は、言わないで…。」
なまえの細い指が、唇に触れた。
それがどういう意味なのか、さっぱり分からなかった。
なぜ、名前を呼んではいけないのか。
それでも、なまえが願うのなら、それくらい簡単に叶えられる。
そうすれば、もう二度となまえが離れないのならー。
「好きだ。愛してる。」
なまえの頬を撫でて、愛おしい気持ちを伝えた。
ゆっくりと、綺麗な瞳が見開かれていく。
そして、出来上がった表情は、喜びとはかけ離れていてー。
ひどく傷ついていて、ひどく悲しそうに、ひどく苦しそうに、なまえは唇を噛んだ。
とっくに潤んでいた瞳からは、溢れ出した涙が堪えきれずに溢れ出してー。
「------っ。」
声にならない悲鳴のような嗚咽が、なまえから漏れる。
リヴァイのシャツの胸元をギュッと握りしめて、なまえは子供のように泣きじゃくった。
まるで、迷子になった子供みたいに、家に帰れなくなった子供みたいにー。
声を上げて、嗚咽を漏らして、リヴァイのシャツの胸元を濡らした。
どうして、なまえが泣いたのか。
何がそんなに悲しかったのか。
どんな気持ちで、好きかと聞いたのか。
好きだと言われて、どれほど苦しかったか。悲しかったか。
どうやって知ればよかったのだろうか。
なまえの気持ちが分からなくて、でも、他の誰でもなく自分に縋りつく彼女が愛おしくて、リヴァイは震える華奢な身体を抱きしめた。
記憶にあるよりもひどく細く感じるその身体を、壊してしまいそうなくらいに強く、抱きしめた。