◇31話◇梯子の向こうで見た景色
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久しぶりにリヴァイ達が兵舎に戻って来たから、とあの大男のミケ達が酒場を貸し切った。
今夜は、気心の知れた仲間同士で飲むのだそうだ。
リヴァイに連れられ、ミケ達に引っ張られた私も参加メンバーの1人だった。
こんな生きづらい世界で、日々訓練に心と身体を痛めつけている彼らは、何かを発散させるみたいに酒盛りを愉しんでいた。
私は、全くそんな気分じゃないのにー。
ゲルガーに絡まれだしたリヴァイの目を盗んで、こっそり酒場を出た私は、行く宛てもなく知らない街を彷徨っていた。
月明かりだけが照らす道に、街灯はない。
たぶんこの世界には、電気とかないんだと思う。
文明がだいぶ遅れているのか、発達する気がないのか。
もうそんなこと、どうだっていいけれどー。
少し歩いた先で、非常梯子のついている建物を見つけた。
何を考えたのか分からない。
気づいたら私は、高いところが怖いくせに、せっせと梯子に足と手をかけていた。
一歩一歩上がる度に足がすくむ。
でも、5階建ての建物のゴールはまだまだ遠いー。
何度も降りていきたくなって、それでも、意地を張っているみたいに梯子に足をかけ続けた。
漸く、最後の一段に足をかけたときは、恐怖よりも疲れの方が勝っていたと思う。
うまく力が入らずに震える手と足で身体を押し上げて、屋根の上に転がるように身体を預けた。
そのまま仰向けに倒れ込んだ私の視界いっぱいに、まん丸の月と幾千の星が輝く夜空が広がる。
あの夜、リヴァイと見た星空には敵わないかもしれないけれど、綺麗だ。
この世界は、巨人はいるし、文明も遅れていてなんだかいろいろと面倒くさいし、リヴァイはいるし、本当に最悪だけれど、空だけは綺麗だ。
(もう二度と、この世界の星空なんて見たくなかったのに…。)
腕を両目の上に乗せて、視界を塞いだ。
あの後、会議から帰ってきたリヴァイには、部屋の掃除をしようとして誤って花瓶で全身鏡を割ってしまったのだとモブリットが説明して謝った。
驚いてはいたけれど、特に怒る様子もなかった。
ただ、割れた全身鏡を責任を持って修復すると、壊れた全身鏡を抱えるモブリットのことは、変な人を見るような目で見ていたけれどー。
確かにそうだろう。
もう割れたしまった鏡は、繋ぎ合わせたところで、もう二度と元には戻らない。
割れた部分から歪んで、正しい世界を映してはくれないのだからー。
ハンジとモブリットは、必ず他の方法を探すと言ってくれた。
ペトラも、リヴァイの心の整理がついてから帰るのだと彼らが説明すれば、少しは納得したようだった。
でもー。
私は本当に帰れるのだろうか。
他の方法って、あるのだろうか。
(なまえはこんな高い建物の上で散歩してたのか…。)
きっといつだって、リヴァイと、一緒にー。
今夜は、気心の知れた仲間同士で飲むのだそうだ。
リヴァイに連れられ、ミケ達に引っ張られた私も参加メンバーの1人だった。
こんな生きづらい世界で、日々訓練に心と身体を痛めつけている彼らは、何かを発散させるみたいに酒盛りを愉しんでいた。
私は、全くそんな気分じゃないのにー。
ゲルガーに絡まれだしたリヴァイの目を盗んで、こっそり酒場を出た私は、行く宛てもなく知らない街を彷徨っていた。
月明かりだけが照らす道に、街灯はない。
たぶんこの世界には、電気とかないんだと思う。
文明がだいぶ遅れているのか、発達する気がないのか。
もうそんなこと、どうだっていいけれどー。
少し歩いた先で、非常梯子のついている建物を見つけた。
何を考えたのか分からない。
気づいたら私は、高いところが怖いくせに、せっせと梯子に足と手をかけていた。
一歩一歩上がる度に足がすくむ。
でも、5階建ての建物のゴールはまだまだ遠いー。
何度も降りていきたくなって、それでも、意地を張っているみたいに梯子に足をかけ続けた。
漸く、最後の一段に足をかけたときは、恐怖よりも疲れの方が勝っていたと思う。
うまく力が入らずに震える手と足で身体を押し上げて、屋根の上に転がるように身体を預けた。
そのまま仰向けに倒れ込んだ私の視界いっぱいに、まん丸の月と幾千の星が輝く夜空が広がる。
あの夜、リヴァイと見た星空には敵わないかもしれないけれど、綺麗だ。
この世界は、巨人はいるし、文明も遅れていてなんだかいろいろと面倒くさいし、リヴァイはいるし、本当に最悪だけれど、空だけは綺麗だ。
(もう二度と、この世界の星空なんて見たくなかったのに…。)
腕を両目の上に乗せて、視界を塞いだ。
あの後、会議から帰ってきたリヴァイには、部屋の掃除をしようとして誤って花瓶で全身鏡を割ってしまったのだとモブリットが説明して謝った。
驚いてはいたけれど、特に怒る様子もなかった。
ただ、割れた全身鏡を責任を持って修復すると、壊れた全身鏡を抱えるモブリットのことは、変な人を見るような目で見ていたけれどー。
確かにそうだろう。
もう割れたしまった鏡は、繋ぎ合わせたところで、もう二度と元には戻らない。
割れた部分から歪んで、正しい世界を映してはくれないのだからー。
ハンジとモブリットは、必ず他の方法を探すと言ってくれた。
ペトラも、リヴァイの心の整理がついてから帰るのだと彼らが説明すれば、少しは納得したようだった。
でもー。
私は本当に帰れるのだろうか。
他の方法って、あるのだろうか。
(なまえはこんな高い建物の上で散歩してたのか…。)
きっといつだって、リヴァイと、一緒にー。