◇30話◇絶望
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ズーーーーーーン…-。
もし、今の私に効果音をつけるのなら、それが一番しっくりくると思う。
とりあえず、話をしようー。
そう言って、私とペトラをリビングに連れて来たモブリットは、片付けのために寝室へ行ってしまった。
ソファに座って頭を抱える私の視界の端には、窓辺に置かれた1人掛けの椅子に座って外を眺めているペトラがいる。
(え…?どういうこと?なんで?
…もう帰れないの?私、帰れないの?)
両手で抱えた頭の中は、混乱と困惑、絶望でいっぱいだった。
もうこんな恐ろしい世界にはいたくない。
帰りたいのにー。
どうしてー。
しばらく頭を抱えていれば、片付けの終わったモブリットがリビングに戻って来た。
片手にはそれなりに大きな紙袋を持っている。
「鏡の破片はとりあえず、すべてこの袋に入れておいた。
繋ぎ合わせれば、もしかしたら、またー。」
「そしたら、私がまた粉々に割ります。」
モブリットが僅かに残してくれた希望をかき消すように、ペトラが冷たく宣言する。
もう本当に、意味が分からない。
どうして、彼女がそんなことをー。
そもそも、なぜ彼女は、鏡のことを知っているのかー。
「ペトラ、どういうことか説明してくれないか。」
モブリットはソファに腰を降ろすと、鏡の破片の入った紙袋を私との間に守るように置いた。
あぁ、もう本当に、頭が痛い。
もうすぐ、会議も終わる時間なのにー。
リヴァイが、来てしまうー。
「雨の日、巨人研究所の中で、モブリットさんがハンジさんと話してるのを聞いたんです。」
「え…!?あ…、もしかして、あの物音ってペトラだったのか…?!」
「パラレルワールドとか、なまえさんが偽物だとか、最初は信じられませんでした。
だから、一緒についてきて、モブリットさんの目を盗んで家に入って確かめたんです。
なまえさんが帰ってきてくれて嬉しかったのに…。すべて、嘘だったんですね。」
「それじゃ、君は、すべてわかった上で、
彼女が元の世界に帰るための唯一の道かもしれなかったあの鏡を
割ったってことかい?」
「私はリヴァイ兵長を守らないといけないんです。
もう二度と、あんな風に壊れてしまわないように、私がー。」
「ペトラ!君は、何をしてしまったか分かってるのか!?」
勢いよく立ち上がったモブリットが、声を荒げた。
驚いてその背中を見上げれば、怒りに満ちて、肩が震えていた。
いつも穏やかだからこそ、彼が本気で怒っている姿は、ひどく迫力があって、ペトラもビクッと肩を震わせて怯えていた。
「…っ!だってっ!仕方ないじゃないですか!!
彼女が元の世界に帰ってしまったら、リヴァイ兵長はどうなるんですか!?
もう見たくないんです…っ!リヴァイ兵長の苦しんでる姿は…っ、見てられないんですっ。」
ペトラも立ち上がって、声を荒げた。
カッと目は見開かれて、握った拳は震えている。
彼女も彼女なりに、正義を持って、愛を持って、したことだったのだろう。
花瓶を振り上げて鏡を割ることが、彼女にとっての正義だったのだ。
きっとー。
「だからって、関係のない彼女を俺達の問題に巻き込んで
この世界に留めてもいいってことにはならないだろう!?
君のせいで、彼女はもう二度と、家族や友人のいる世界に戻れないかもしれないんだ!!」
モブリットが怖い声で怒鳴りつける。
正義だと信じて強硬手段に出たペトラの強く見開かれた瞳が、僅かに揺れる。
それは、温厚なはずのモブリットの怒りが怖かったからか。
それとも、自分がしでかしたことの大きさに気づいたからかー。気づいていたのに、自分の想いのためだけに私を地獄に落としたことへの罪悪感か。
あぁ、もう本当に、この世界は怖い。
大嫌いだ。
大嫌いだけれどー。
「もういいよ、モブリット…。」
私は、モブリットの手首を握った。
絶望と混乱と悔しさで、私の手は震えていた。
「なまえ…、ごめん…。俺とハンジさんが話を聞かれたりなんかしたから…。」
「誰のせいでもないよ。誰も悪くない。
誰も、誰かを傷つけようとして、こんなことになったわけじゃないのに…。
喧嘩、しないで…。」
モブリットの手首を掴んでいた手が、滑るように落ちる。
両膝に肘を乗せて、伏せた顔を両手で覆った。
もう、泣きそうだー。
本当に、最悪だ。
どうしたらいいんだろう。
もう帰れないのだろうかー。二度と、私の生まれ育った世界にー。
家族や友人に、会えないのだろうかー。
私は一生この世界で、なまえとして生きていくのかー。
「ごめんなさい…っ。私…っ、ただ、リヴァイ兵長を守りたかった…っ。
苦しんでほしくなくて…っ。
なまえさん…っ。なんで…っ、死んじゃったの…っ、なんで…っ。」
ペトラが泣き崩れる。
床に膝をついて、顔を両手で覆って、ただ泣きながら謝り続けていた。
ほら、誰も悪くないのだ。
誰もー。
悪意なんて、どこにもない。
ただ、そこにあるのは、誰かを思いやる気持ちだけー。
なんてー。
なんて、絶望的な悲劇だろうー。
もし、今の私に効果音をつけるのなら、それが一番しっくりくると思う。
とりあえず、話をしようー。
そう言って、私とペトラをリビングに連れて来たモブリットは、片付けのために寝室へ行ってしまった。
ソファに座って頭を抱える私の視界の端には、窓辺に置かれた1人掛けの椅子に座って外を眺めているペトラがいる。
(え…?どういうこと?なんで?
…もう帰れないの?私、帰れないの?)
両手で抱えた頭の中は、混乱と困惑、絶望でいっぱいだった。
もうこんな恐ろしい世界にはいたくない。
帰りたいのにー。
どうしてー。
しばらく頭を抱えていれば、片付けの終わったモブリットがリビングに戻って来た。
片手にはそれなりに大きな紙袋を持っている。
「鏡の破片はとりあえず、すべてこの袋に入れておいた。
繋ぎ合わせれば、もしかしたら、またー。」
「そしたら、私がまた粉々に割ります。」
モブリットが僅かに残してくれた希望をかき消すように、ペトラが冷たく宣言する。
もう本当に、意味が分からない。
どうして、彼女がそんなことをー。
そもそも、なぜ彼女は、鏡のことを知っているのかー。
「ペトラ、どういうことか説明してくれないか。」
モブリットはソファに腰を降ろすと、鏡の破片の入った紙袋を私との間に守るように置いた。
あぁ、もう本当に、頭が痛い。
もうすぐ、会議も終わる時間なのにー。
リヴァイが、来てしまうー。
「雨の日、巨人研究所の中で、モブリットさんがハンジさんと話してるのを聞いたんです。」
「え…!?あ…、もしかして、あの物音ってペトラだったのか…?!」
「パラレルワールドとか、なまえさんが偽物だとか、最初は信じられませんでした。
だから、一緒についてきて、モブリットさんの目を盗んで家に入って確かめたんです。
なまえさんが帰ってきてくれて嬉しかったのに…。すべて、嘘だったんですね。」
「それじゃ、君は、すべてわかった上で、
彼女が元の世界に帰るための唯一の道かもしれなかったあの鏡を
割ったってことかい?」
「私はリヴァイ兵長を守らないといけないんです。
もう二度と、あんな風に壊れてしまわないように、私がー。」
「ペトラ!君は、何をしてしまったか分かってるのか!?」
勢いよく立ち上がったモブリットが、声を荒げた。
驚いてその背中を見上げれば、怒りに満ちて、肩が震えていた。
いつも穏やかだからこそ、彼が本気で怒っている姿は、ひどく迫力があって、ペトラもビクッと肩を震わせて怯えていた。
「…っ!だってっ!仕方ないじゃないですか!!
彼女が元の世界に帰ってしまったら、リヴァイ兵長はどうなるんですか!?
もう見たくないんです…っ!リヴァイ兵長の苦しんでる姿は…っ、見てられないんですっ。」
ペトラも立ち上がって、声を荒げた。
カッと目は見開かれて、握った拳は震えている。
彼女も彼女なりに、正義を持って、愛を持って、したことだったのだろう。
花瓶を振り上げて鏡を割ることが、彼女にとっての正義だったのだ。
きっとー。
「だからって、関係のない彼女を俺達の問題に巻き込んで
この世界に留めてもいいってことにはならないだろう!?
君のせいで、彼女はもう二度と、家族や友人のいる世界に戻れないかもしれないんだ!!」
モブリットが怖い声で怒鳴りつける。
正義だと信じて強硬手段に出たペトラの強く見開かれた瞳が、僅かに揺れる。
それは、温厚なはずのモブリットの怒りが怖かったからか。
それとも、自分がしでかしたことの大きさに気づいたからかー。気づいていたのに、自分の想いのためだけに私を地獄に落としたことへの罪悪感か。
あぁ、もう本当に、この世界は怖い。
大嫌いだ。
大嫌いだけれどー。
「もういいよ、モブリット…。」
私は、モブリットの手首を握った。
絶望と混乱と悔しさで、私の手は震えていた。
「なまえ…、ごめん…。俺とハンジさんが話を聞かれたりなんかしたから…。」
「誰のせいでもないよ。誰も悪くない。
誰も、誰かを傷つけようとして、こんなことになったわけじゃないのに…。
喧嘩、しないで…。」
モブリットの手首を掴んでいた手が、滑るように落ちる。
両膝に肘を乗せて、伏せた顔を両手で覆った。
もう、泣きそうだー。
本当に、最悪だ。
どうしたらいいんだろう。
もう帰れないのだろうかー。二度と、私の生まれ育った世界にー。
家族や友人に、会えないのだろうかー。
私は一生この世界で、なまえとして生きていくのかー。
「ごめんなさい…っ。私…っ、ただ、リヴァイ兵長を守りたかった…っ。
苦しんでほしくなくて…っ。
なまえさん…っ。なんで…っ、死んじゃったの…っ、なんで…っ。」
ペトラが泣き崩れる。
床に膝をついて、顔を両手で覆って、ただ泣きながら謝り続けていた。
ほら、誰も悪くないのだ。
誰もー。
悪意なんて、どこにもない。
ただ、そこにあるのは、誰かを思いやる気持ちだけー。
なんてー。
なんて、絶望的な悲劇だろうー。