◇29話◇鏡の向こうの世界
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ほんの一瞬の出来事だった。
鏡に幾つものヒビが入ったと思ったら、向こうに見えていた見覚えのない部屋の様子が消えた。
気づいた時には、何の変哲もない全身鏡があって、呆然とするリコの顔を映していた。
リヴァイを呼んでいたファーランは、鏡を見ていなかったからまだ気づいていないようだ。
「何か見つかったか。」
リヴァイがやってきて、ファーランに訊ねる。
「リコの親友の女なんだけどさ、鏡の向こうにいるみてぇなんだ。」
「は?」
「ほら、ここに・・・・。あれ?」
漸く、鏡を見たファーランが、何の変哲もない鏡になっているのに気づく。
そこにはもう、なまえの姿はない。
真っ青なリコの姿、ポカンとしたファーランの姿、相変わらず表情の乏しいリヴァイの姿を、現実世界に忠実に映しているだけだ。
「リコ、なまえはどこ行った?」
「…さぁ。無事ならいいんだが。
たぶん、誰かが向こうの鏡を割った。こっちに帰れるかもう分からない。」
真っ青になっているのは変わらないが、リコは鏡の向こうを睨みつけながら答える。
一瞬、なまえの向こうに見えた知らない誰か。
薄暗くて良く見えなかったが、その誰かは花瓶を振り上げていた。
あの花瓶はどこへ振り落とされたのだろう。
さっきのヒビが、向こうの鏡を映したということなら、向こうの鏡が割れたということだ。
それなら、花瓶は鏡に振り落とされ、なまえは無事だったと信じるしかない。
「リヴァイ、どうする。向こうの鏡が割れちまったって。」
「…そうだな。とりあえず、お前らには休息が必要みてぇだ。
少し寝てろ。あとは、俺とイザベルが探す。」
「え~…、やっぱ、そうだよなぁ。最近、仕事終わりは女探してって
あんまり寝てなかったからなぁ。ちょっと寝てくるわ。」
ファーランは、片手に額を乗せて疲れたように言いながら、ベッドへ向かう。
なまえのベッドで勝手に寝る気らしい。
そして、リヴァイは全く信じていないようだった。
それはそうだろう。
リコ自身、ついさっき自分が見たもの、なまえの声、そのすべてが、現実にあったものなのかいまだに自信がない。
悪い夢でも見ていたような気分だった。
だって、人間が鏡の向こうに住んでいるなんて、誰が信じるのだろう。
パラレルワールドなんてものを、誰がー。
でも、もし、あれが本当になまえだったのなら、自分の大切な親友はとてつもない厄介事に巻き込まれているようだ。
そしてー。
「リヴァイ、その手にあるものはなんだ。」
リコが少し視線を落とせば、リヴァイの手元が良く見えた。
誰がどう見ても、彼が持っているそれは、女性の下着だ。
なまえらしい可愛らしい色と柄のパンティとブラを、リヴァイはしっかり握っている。
「あぁ、残念ながら色気のあるもんはひとつもなかった。
どうやら、男がいねぇってのは本当らしい。」
「…他にも恋人がいるかどうか調べる方法は幾つもあっただろう。」
「これが一番手っ取り早い。
あと俺の探偵としての探求心と好奇心が、この小せぇ布切れを探せとー。」
「最低だな、お前。」
リコが、心からの軽蔑の目を変態男に向けていた頃、私はそれどころではなかった。
だからもちろん、私が、自分のいないところで辱めを受けていることだって、知る由もなかった。
鏡に幾つものヒビが入ったと思ったら、向こうに見えていた見覚えのない部屋の様子が消えた。
気づいた時には、何の変哲もない全身鏡があって、呆然とするリコの顔を映していた。
リヴァイを呼んでいたファーランは、鏡を見ていなかったからまだ気づいていないようだ。
「何か見つかったか。」
リヴァイがやってきて、ファーランに訊ねる。
「リコの親友の女なんだけどさ、鏡の向こうにいるみてぇなんだ。」
「は?」
「ほら、ここに・・・・。あれ?」
漸く、鏡を見たファーランが、何の変哲もない鏡になっているのに気づく。
そこにはもう、なまえの姿はない。
真っ青なリコの姿、ポカンとしたファーランの姿、相変わらず表情の乏しいリヴァイの姿を、現実世界に忠実に映しているだけだ。
「リコ、なまえはどこ行った?」
「…さぁ。無事ならいいんだが。
たぶん、誰かが向こうの鏡を割った。こっちに帰れるかもう分からない。」
真っ青になっているのは変わらないが、リコは鏡の向こうを睨みつけながら答える。
一瞬、なまえの向こうに見えた知らない誰か。
薄暗くて良く見えなかったが、その誰かは花瓶を振り上げていた。
あの花瓶はどこへ振り落とされたのだろう。
さっきのヒビが、向こうの鏡を映したということなら、向こうの鏡が割れたということだ。
それなら、花瓶は鏡に振り落とされ、なまえは無事だったと信じるしかない。
「リヴァイ、どうする。向こうの鏡が割れちまったって。」
「…そうだな。とりあえず、お前らには休息が必要みてぇだ。
少し寝てろ。あとは、俺とイザベルが探す。」
「え~…、やっぱ、そうだよなぁ。最近、仕事終わりは女探してって
あんまり寝てなかったからなぁ。ちょっと寝てくるわ。」
ファーランは、片手に額を乗せて疲れたように言いながら、ベッドへ向かう。
なまえのベッドで勝手に寝る気らしい。
そして、リヴァイは全く信じていないようだった。
それはそうだろう。
リコ自身、ついさっき自分が見たもの、なまえの声、そのすべてが、現実にあったものなのかいまだに自信がない。
悪い夢でも見ていたような気分だった。
だって、人間が鏡の向こうに住んでいるなんて、誰が信じるのだろう。
パラレルワールドなんてものを、誰がー。
でも、もし、あれが本当になまえだったのなら、自分の大切な親友はとてつもない厄介事に巻き込まれているようだ。
そしてー。
「リヴァイ、その手にあるものはなんだ。」
リコが少し視線を落とせば、リヴァイの手元が良く見えた。
誰がどう見ても、彼が持っているそれは、女性の下着だ。
なまえらしい可愛らしい色と柄のパンティとブラを、リヴァイはしっかり握っている。
「あぁ、残念ながら色気のあるもんはひとつもなかった。
どうやら、男がいねぇってのは本当らしい。」
「…他にも恋人がいるかどうか調べる方法は幾つもあっただろう。」
「これが一番手っ取り早い。
あと俺の探偵としての探求心と好奇心が、この小せぇ布切れを探せとー。」
「最低だな、お前。」
リコが、心からの軽蔑の目を変態男に向けていた頃、私はそれどころではなかった。
だからもちろん、私が、自分のいないところで辱めを受けていることだって、知る由もなかった。