◇26話◇うたた寝の戯言
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「ーそれでね、すっごくカッコいいのっ!もう、胸がキュンッてしてっ。」
目を覚ました私のハシャぐ声は、静かな会議室を1人で賑やかにしていた。
時々、可笑しそうに笑うモブリットは、身体ごと私の方を向けて、話を聞いてくれていた。
大きな机の上で書類は裏返しになって、ペンも置かれてる。
「すごく好きだったんだね、そのドラマ?ってやつ。」
「そうだよっ!それなのに、最終回の日に…。
あ~…、最後、どうなったんだろう…。」
机に上半身を突っ伏して、大きくため息を吐いた。
せめて、ドラマが終わった後くらいにしてくれれば、最終回を観れたのにー。
「どんな結末だったら、なまえは嬉しいんだい?」
「んー…、どんな結末かなぁ…。」
机に突っ伏したままで、ドラマの中の幸せそうな恋人同士を思い浮かべてみた。
違う世界で生きてきた2人が、戸惑いながら、惹かれあって、想い合って、優しさですれ違って、それでも、いろんな困難を乗り越えた。
だから、私はー。
「無理だと思う。」
「無理って?」
「本当は結ばれて欲しい。違う世界で生きてた2人が、両想いになれるなんて奇跡だと思うの。
その奇跡を奪われて欲しくないなぁて思うけど、無理だよ。」
身体を突っ伏したままで、私は、ただぼんやりと、古くなった机の傷に爪を引っかけた。
ヒロインと彼は、文字通り、全く違う世界で生きてきた。
育った環境も、文化も、何もかもが違う。
そんな中で、戸惑いながらも惹かれ合った。
恋愛というのは、1人きりではできないと、私は知っている。
愛して、愛されないと、始まることすら出来ない。
違う世界で生きてきた2人が、想い合えたのは奇跡だと思うのだ。
だから、最終回を前にワクワクしていた私は、2人のハッピーエンドを望んでいた。
でも、それは、本当にハッピーエンドなのだろうか。
彼は、愛するヒロインがそばにいてくれれば幸せだろう。
でも、彼女はそのために、文字通り、すべてを捨てるのだ。
彼の愛以外、すべてをー。
家族も友人も、仕事も、生まれ育った世界の全てをー。
そんなの、無理だー。
「ヒロインは、元の世界に帰らなきゃー。」
「爪が割れてしまうよ。」
モブリットが私の手を掴んだ。
そこで漸く、私は、机の傷に爪を引っかけて、えぐろうとしていたことに気づいた。
私は、何をしているのだろう。
こんなところで、私は何をー。
私はゆっくりと身体を起こした。
「ねぇ、モブリット。」
「ん?」
手首を掴んだまま、モブリットは私の爪に傷が出来てないかを見ていた。
爪なんて割れたって、どうってことないのにー。
「どうして、違う世界の人間と恋に落ちれるんだろうね。」
「…さぁ、どうしてだろうね。よほど惹かれるものがあったんじゃないかな。」
「私なんて、同じ世界の人間とも恋に落ちれなくて
リコに、年がら年中恋人募集中の虚しい女だって言われてたよ。」
「クスッ、そうなんだ。君はとっても魅力的で可愛らしい女性なのに、不思議だね。」
「お世辞でも嬉しい。ありがとう。」
「本当だよ。俺がその世界にいたら、立候補したと思うけどな。」
「…この世界のなまえの恋人が、リヴァイじゃなくて、モブリットだったらよかったな。」
「え?」
私の爪を見ていたモブリットの顔が上がった。
目が合ったのかもしれない。
でも、私は、モブリットの向こうに、リヴァイの横顔を見ていた。
だから、目を反らすように、窓枠のカタチをした狭い空へ視線を移す。
「そうすれば、モブリットは強いから、なまえは私をこの世界に呼ばなかったもの。
私だって、リヴァイの恋人役なんて、しなくてよかったのにー。」
爪は綺麗なままだよー。
返事はしないでそう言って、モブリットの手が離れる。
私は、ただぼんやりと窓の外を眺めていた。
そろそろ夕陽がおりてくる。
リヴァイが帰ってくるー。
目を覚ました私のハシャぐ声は、静かな会議室を1人で賑やかにしていた。
時々、可笑しそうに笑うモブリットは、身体ごと私の方を向けて、話を聞いてくれていた。
大きな机の上で書類は裏返しになって、ペンも置かれてる。
「すごく好きだったんだね、そのドラマ?ってやつ。」
「そうだよっ!それなのに、最終回の日に…。
あ~…、最後、どうなったんだろう…。」
机に上半身を突っ伏して、大きくため息を吐いた。
せめて、ドラマが終わった後くらいにしてくれれば、最終回を観れたのにー。
「どんな結末だったら、なまえは嬉しいんだい?」
「んー…、どんな結末かなぁ…。」
机に突っ伏したままで、ドラマの中の幸せそうな恋人同士を思い浮かべてみた。
違う世界で生きてきた2人が、戸惑いながら、惹かれあって、想い合って、優しさですれ違って、それでも、いろんな困難を乗り越えた。
だから、私はー。
「無理だと思う。」
「無理って?」
「本当は結ばれて欲しい。違う世界で生きてた2人が、両想いになれるなんて奇跡だと思うの。
その奇跡を奪われて欲しくないなぁて思うけど、無理だよ。」
身体を突っ伏したままで、私は、ただぼんやりと、古くなった机の傷に爪を引っかけた。
ヒロインと彼は、文字通り、全く違う世界で生きてきた。
育った環境も、文化も、何もかもが違う。
そんな中で、戸惑いながらも惹かれ合った。
恋愛というのは、1人きりではできないと、私は知っている。
愛して、愛されないと、始まることすら出来ない。
違う世界で生きてきた2人が、想い合えたのは奇跡だと思うのだ。
だから、最終回を前にワクワクしていた私は、2人のハッピーエンドを望んでいた。
でも、それは、本当にハッピーエンドなのだろうか。
彼は、愛するヒロインがそばにいてくれれば幸せだろう。
でも、彼女はそのために、文字通り、すべてを捨てるのだ。
彼の愛以外、すべてをー。
家族も友人も、仕事も、生まれ育った世界の全てをー。
そんなの、無理だー。
「ヒロインは、元の世界に帰らなきゃー。」
「爪が割れてしまうよ。」
モブリットが私の手を掴んだ。
そこで漸く、私は、机の傷に爪を引っかけて、えぐろうとしていたことに気づいた。
私は、何をしているのだろう。
こんなところで、私は何をー。
私はゆっくりと身体を起こした。
「ねぇ、モブリット。」
「ん?」
手首を掴んだまま、モブリットは私の爪に傷が出来てないかを見ていた。
爪なんて割れたって、どうってことないのにー。
「どうして、違う世界の人間と恋に落ちれるんだろうね。」
「…さぁ、どうしてだろうね。よほど惹かれるものがあったんじゃないかな。」
「私なんて、同じ世界の人間とも恋に落ちれなくて
リコに、年がら年中恋人募集中の虚しい女だって言われてたよ。」
「クスッ、そうなんだ。君はとっても魅力的で可愛らしい女性なのに、不思議だね。」
「お世辞でも嬉しい。ありがとう。」
「本当だよ。俺がその世界にいたら、立候補したと思うけどな。」
「…この世界のなまえの恋人が、リヴァイじゃなくて、モブリットだったらよかったな。」
「え?」
私の爪を見ていたモブリットの顔が上がった。
目が合ったのかもしれない。
でも、私は、モブリットの向こうに、リヴァイの横顔を見ていた。
だから、目を反らすように、窓枠のカタチをした狭い空へ視線を移す。
「そうすれば、モブリットは強いから、なまえは私をこの世界に呼ばなかったもの。
私だって、リヴァイの恋人役なんて、しなくてよかったのにー。」
爪は綺麗なままだよー。
返事はしないでそう言って、モブリットの手が離れる。
私は、ただぼんやりと窓の外を眺めていた。
そろそろ夕陽がおりてくる。
リヴァイが帰ってくるー。