今日も空が赤くなりだした頃に、リヴァイは帰ってきた。
兵団ジャケットはクローゼットにかけてきたようで、シャツになっていた。
寝室に入ってくると、リヴァイは、胸元にあるベルトのようなものを雑に外しながらベッドに歩み寄る。
そしてー。
ベッド脇に座ると、しなだれかかるように私を抱きしめた。
耳元から、長いため息が聞こえて、彼がひどく疲れているのを教えてくれた。
今日はずっと訓練をしていたからだろうか。
部下の前では、強くて頼れる上官なのに、リヴァイも恋人の前では弱いところを見せていたようだ。
さすがに、恋人のフリをしてくれと言われているし、突き飛ばすことは出来なかった。
こういうとき、なまえはどうしてあげていたのだろう。
仕方なく、頭を撫でてみる。
それがマズかった。
調子に乗らせた。
リヴァイがキスをしてこようとしたので、両頬をつまんで抵抗する。

「まだ、おもいださへーのは。」
「まだ思い出しません。」

仏頂面の頬を伸ばして、リヴァイは眉を顰める。
そもそも、思い出す記憶もないのだ。
あとどれくらい、私にとって意味も何もない時間を過ごせば、家に帰れるのだろう。
リヴァイが、恋人の記憶を戻すのを諦めてくれるとも思えないのだけれどー。

「で、今日は何してたんだ。」

私の両手が頬から離れると、リヴァイはベッドの縁に座り直した。
そして、シャツの胸元を緩めながら、訊ねる。

「リコが来てくれて、さっきまでいたの。
　だからおかげで、今日は暇じゃなかった。」
「あぁ、そういえば、ハンジが昨日のことを早馬で伝えたっつってたな。　
　怪我を心配してきたのか。」
「それは心配してないって。」
「なら、何しに来たんだ。」
「んー、なんか、私が背中に怪我をしたから、リヴァイが正気か気になったって。」
「…そうか。」
「それで、訓練してるリヴァイ見て睨んでた。」
「身に覚えがなさすぎて、胸糞悪ぃな。」
「残念だったね。」
「他人事だな。」
「ふふ、リコにも言われちゃった。」

可笑しそうに笑えば、リヴァイが私の髪をクシャリと撫でた。
初めて会ったときは、敵でしかなかったのに、この世界で私が無事でいるためには彼に頼るしかないだなんてー。
絶対に私を傷つけない優しい瞳は、今日も私の向こうの彼女を見ている。