◇21話◇強い味方
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから、リヴァイの部屋に戻りたいとお願いしてみた私に、リヴァイはこちらが呆気にとられるくらいにアッサリと了承してくれた。
てっきり、怪我人なんだから医務室でおとなしくしていろと叱られるのかと思った。
でも、検査が必要だからもう少し医務室にいた方がいいという医療兵を強引に説得したのはリヴァイだった。
そして、医務室から寝室のベッドまで私を抱えて運んでくれた。
今朝もリヴァイに抱えられて医務室へ戻って検査をして、心配した骨折や肺の異常もないと、医療兵から嬉しい言葉を貰えた。
とりあえずは、安静にしていれば問題ないらしい。
そして今、リヴァイは任務に戻って、私は寝室のベッドの上から、窓の外を眺めている。
天気は晴れ。
今日も調査兵達は、訓練に抜かりがない。
思い出したくもないアレと戦おうとするなんて、頭のネジがきっと何本も抜けているのだ。
そうじゃないと、ありえない。
それとも、この世界にいる人間は、アレと戦わなければ明日も安心して生きていけないのだろうか。
リヴァイの恋人が、命を失ったみたいにー。
トントンー。
寝室の扉を叩く音がして、窓から視線を移す。
勝手に部屋に入ってくる調査兵しか見たことがなかったから、扉を叩かれて正直驚いた。
返事をすれば、ゆっくりと扉が開いた。
顔を出したのは、駐屯兵の兵団服を着たリコだった。
「リコ!…じゃないのか…。」
「いや、私はリコ・ブレツェンスカだ。」
真面目に答えながら、リコがベッドに歩み寄る。
ベッド脇に立ったリコは、やっぱり、私の知っているリコが兵団服を着ているだけにしか見えなかった。
「ハンジから聞いた。パラレルワールドから来たもう1人のなまえらしいな。
まだ信じられないが…。どうやら本当なんだろうな。」
リコは、私の顔を凝視する。
事情を聞いているらしい。
ハンジとモブリットからは、調査兵団の団長であるエルヴィンにも真相は伝えてあると聞いている。
私がパラレルワールドから来たのを知っているのは、今のところこの4人ということだろうか。
「それで…、どうして、この世界のリコが私に会いに来たの?」
「昨日、背中を打ったんだってな。
ハンジが心配して、私を呼んだんだ。」
「心配?打撲だし、安静にしてれば大丈夫って聞いてるよ。」
「あぁ、問題ない。私もそっちは心配してない。」
「…?そう。少しは心配してほしかった。」
「それは悪かったな。」
全く悪かったとは思っていない調子で言ったリコは、窓際に立って外を眺め出した。
調査兵達が訓練をしている声は、相変わらず、ずっと聞こえていて、本当に感心する。
巨人化してしまったエレンは、地下で身体を休めることに集中することになったらしく、今日はリヴァイもリヴァイ班のみんなと一緒に訓練なのだそうだ。
だから、窓の外にはリヴァイの姿も見えた。
1人だけ大きな剣の持ち方が違っていて、動きも早いから、探そうとしなくても、その姿を見つけることが出来た。
「背中に傷は出来たか?」
「え?傷は出来てないんじゃないかな。
ニファが言うには、青くなっちゃってるらしいけど、
それも次第に消えていくから心配しなくていいって。」
「…そうか。ならよかった。
それは、リヴァイも知ってるのか?」
「さぁ?どうなんだろう。背中を見せたわけじゃないから、わかんないけど、
打撲だけで問題ないってことは知ってるよ。大したことないって分かって安心したみたい。」
「安心ね…。
リヴァイは本当に、あんたをなまえだと信じてるのか…?」
リコは私を見なかった。
窓の外を睨みつけながら、悔しそうに唇を噛んでいた。
握った拳は震えている。
あぁ、彼女はきっと、リヴァイを睨んでいるのだ。
自分の恋人が死んだ事実を受け入れられないだけではなく、偽物を受け入れてしまったからー。
「私が…、騙してるだけだから。責めないであげてほしい…。」
なんで庇ったのか、自分でも分からなかった。
でも、一番近くでリヴァイの苦しみとか、彼女に対する深い愛を見たせいだ。
だって、いつか家族や友人達の元に戻れると希望を持てる私と違って、彼は、絶望だけの暗闇の世界に落とされてしまったのだ。
そんな彼のことを、誰も責めることなんて、きっとできないー。
勢いよく振り返ったリコは、ひどく驚いた様子だった。
「知らない世界の男だろう。勝手に恋人だと思い込まれて、迷惑なんじゃなかったのか。
どうして、庇うんだ。」
「分かんないけど、たぶん、リヴァイは悪くないから。」
「じゃあ、あんたが悪いのか?」
「それはない、絶対に。悪いのは、あなたの親友だと思うの。
私をこんなところに連れてくるから、みんなパニックだもん。」
「…確かに、そうだな。
なまえとアンタは違うとハンジから聞いていたが、根本的には同じらしい。」
リコは困ったように眉尻を下げて、苦笑した。
部屋に入ってきたときは、ピリピリとした空気を放っていた彼女だったけれど、今ので幾分か柔らかくなった気がする。
「それで、私が来た理由はもう一つある。」
リコがベッド脇の椅子に座った。
私の顔を見て、そう言ったのだけれどー。
「もうひとつ?最初のひとつって何なの?」
「クソ野郎の顔を見に来た。
なまえが背中を怪我して、正気でいるか確認するために。
大丈夫そうみたいで、胸糞悪い気分だ。」
「そっか。よく分からないけど、残念だったね。」
「あんたは本当になまえらしいな。他人事だ。」
「他人事だもん。それで、もうひとつの理由は?」
「あんたが元の世界に戻るのに協力をすると伝えに来た。」
「え!?」
リコが私をまっすぐ見る。
この世界のリコのことは知らない。
でも、リコの本気の目は知っている。
そして、誰よりも頼りがいのある人間だと言うこともー。
「私にとってアンタは、なまえみたいな誰かだ。
でも、パラレルワールドにいる私にとって、アンタは死ぬほど大切な友人だろう。
きっとひどく心配しているに決まってる。私は、私のために、アンタに協力する。」
「…ありがとう。リコが味方になってくれたら、すごく心強い。」
この世界に来て初めて、心から安心した。
リヴァイの腕の中よりもずっと、ずっとー。
リコが味方になってくれた。
それだけで、絶対に元の世界に戻れると確信できるくらいに、ホッとしてー。
頬が緩んでしまうから、私は膝を折り曲げて、枕を抱きしめた。
「オルオ!動きが遅い!!エルド、しっかり指示を出せ!!」
リヴァイの怒気を孕んだ声が聞こえてきた。
窓の外を見れば、リヴァイ班のみんなが必死に空を飛んでいた。
「リヴァイって、変な人だよね。
私なら絶対、恋人になんてしないのになぁ~。もっと、爽やかなイケメンがいい。」
部下を指導しているリヴァイは、頼りがいのある上官に見える。
でも、仏頂面で頬を横に伸ばしていたリヴァイを思い出して、思わず吹き出してしまう。
背が小さいくせに誰よりも態度がデカくて、強そうに見えて、本当はひどく儚い。
「人類最強の兵士に向かって、変な人、か…。
そういえば、なまえも同じことを言ってたな。」
「え?そうなの?
じゃあ、なんでリヴァイなんかを恋人にしちゃったんだろ。
馬鹿だなぁ~。だからこんな面倒なことになっちゃったのに。」
驚いてリコの方を見た。
懐かしさを感じているのか、目が合ったリコはとても寂しそうに見えた。
「あぁ、本当にな。なんでだろうな。」
リコの流し目が、窓の外へ向かう。
やっぱり、リコにも分からないらしい。
本当に不思議だ。
あの男のどこに、この世界のなまえが魅力を感じたのか分からない。
確かに顔はイイけれど、タイプの爽やかイケメンではない。
性格だって、もっと穏やかな人の方が好きだ。
恐らく、なまえの部屋の様子や洋服の好みから察するに、この世界のなまえと私は、いろいろな好みが同じなのだと思う。
だから、リヴァイは決して、タイプではないのだと思うのだけれどー。
「本当に…、なまえはどうして、アンタを連れて来たんだろうな。」
窓の外を見ながら、リコが呟く。
自分自身に問うように言ったそれは、とても小さくて、私には聞こえなかった。
てっきり、怪我人なんだから医務室でおとなしくしていろと叱られるのかと思った。
でも、検査が必要だからもう少し医務室にいた方がいいという医療兵を強引に説得したのはリヴァイだった。
そして、医務室から寝室のベッドまで私を抱えて運んでくれた。
今朝もリヴァイに抱えられて医務室へ戻って検査をして、心配した骨折や肺の異常もないと、医療兵から嬉しい言葉を貰えた。
とりあえずは、安静にしていれば問題ないらしい。
そして今、リヴァイは任務に戻って、私は寝室のベッドの上から、窓の外を眺めている。
天気は晴れ。
今日も調査兵達は、訓練に抜かりがない。
思い出したくもないアレと戦おうとするなんて、頭のネジがきっと何本も抜けているのだ。
そうじゃないと、ありえない。
それとも、この世界にいる人間は、アレと戦わなければ明日も安心して生きていけないのだろうか。
リヴァイの恋人が、命を失ったみたいにー。
トントンー。
寝室の扉を叩く音がして、窓から視線を移す。
勝手に部屋に入ってくる調査兵しか見たことがなかったから、扉を叩かれて正直驚いた。
返事をすれば、ゆっくりと扉が開いた。
顔を出したのは、駐屯兵の兵団服を着たリコだった。
「リコ!…じゃないのか…。」
「いや、私はリコ・ブレツェンスカだ。」
真面目に答えながら、リコがベッドに歩み寄る。
ベッド脇に立ったリコは、やっぱり、私の知っているリコが兵団服を着ているだけにしか見えなかった。
「ハンジから聞いた。パラレルワールドから来たもう1人のなまえらしいな。
まだ信じられないが…。どうやら本当なんだろうな。」
リコは、私の顔を凝視する。
事情を聞いているらしい。
ハンジとモブリットからは、調査兵団の団長であるエルヴィンにも真相は伝えてあると聞いている。
私がパラレルワールドから来たのを知っているのは、今のところこの4人ということだろうか。
「それで…、どうして、この世界のリコが私に会いに来たの?」
「昨日、背中を打ったんだってな。
ハンジが心配して、私を呼んだんだ。」
「心配?打撲だし、安静にしてれば大丈夫って聞いてるよ。」
「あぁ、問題ない。私もそっちは心配してない。」
「…?そう。少しは心配してほしかった。」
「それは悪かったな。」
全く悪かったとは思っていない調子で言ったリコは、窓際に立って外を眺め出した。
調査兵達が訓練をしている声は、相変わらず、ずっと聞こえていて、本当に感心する。
巨人化してしまったエレンは、地下で身体を休めることに集中することになったらしく、今日はリヴァイもリヴァイ班のみんなと一緒に訓練なのだそうだ。
だから、窓の外にはリヴァイの姿も見えた。
1人だけ大きな剣の持ち方が違っていて、動きも早いから、探そうとしなくても、その姿を見つけることが出来た。
「背中に傷は出来たか?」
「え?傷は出来てないんじゃないかな。
ニファが言うには、青くなっちゃってるらしいけど、
それも次第に消えていくから心配しなくていいって。」
「…そうか。ならよかった。
それは、リヴァイも知ってるのか?」
「さぁ?どうなんだろう。背中を見せたわけじゃないから、わかんないけど、
打撲だけで問題ないってことは知ってるよ。大したことないって分かって安心したみたい。」
「安心ね…。
リヴァイは本当に、あんたをなまえだと信じてるのか…?」
リコは私を見なかった。
窓の外を睨みつけながら、悔しそうに唇を噛んでいた。
握った拳は震えている。
あぁ、彼女はきっと、リヴァイを睨んでいるのだ。
自分の恋人が死んだ事実を受け入れられないだけではなく、偽物を受け入れてしまったからー。
「私が…、騙してるだけだから。責めないであげてほしい…。」
なんで庇ったのか、自分でも分からなかった。
でも、一番近くでリヴァイの苦しみとか、彼女に対する深い愛を見たせいだ。
だって、いつか家族や友人達の元に戻れると希望を持てる私と違って、彼は、絶望だけの暗闇の世界に落とされてしまったのだ。
そんな彼のことを、誰も責めることなんて、きっとできないー。
勢いよく振り返ったリコは、ひどく驚いた様子だった。
「知らない世界の男だろう。勝手に恋人だと思い込まれて、迷惑なんじゃなかったのか。
どうして、庇うんだ。」
「分かんないけど、たぶん、リヴァイは悪くないから。」
「じゃあ、あんたが悪いのか?」
「それはない、絶対に。悪いのは、あなたの親友だと思うの。
私をこんなところに連れてくるから、みんなパニックだもん。」
「…確かに、そうだな。
なまえとアンタは違うとハンジから聞いていたが、根本的には同じらしい。」
リコは困ったように眉尻を下げて、苦笑した。
部屋に入ってきたときは、ピリピリとした空気を放っていた彼女だったけれど、今ので幾分か柔らかくなった気がする。
「それで、私が来た理由はもう一つある。」
リコがベッド脇の椅子に座った。
私の顔を見て、そう言ったのだけれどー。
「もうひとつ?最初のひとつって何なの?」
「クソ野郎の顔を見に来た。
なまえが背中を怪我して、正気でいるか確認するために。
大丈夫そうみたいで、胸糞悪い気分だ。」
「そっか。よく分からないけど、残念だったね。」
「あんたは本当になまえらしいな。他人事だ。」
「他人事だもん。それで、もうひとつの理由は?」
「あんたが元の世界に戻るのに協力をすると伝えに来た。」
「え!?」
リコが私をまっすぐ見る。
この世界のリコのことは知らない。
でも、リコの本気の目は知っている。
そして、誰よりも頼りがいのある人間だと言うこともー。
「私にとってアンタは、なまえみたいな誰かだ。
でも、パラレルワールドにいる私にとって、アンタは死ぬほど大切な友人だろう。
きっとひどく心配しているに決まってる。私は、私のために、アンタに協力する。」
「…ありがとう。リコが味方になってくれたら、すごく心強い。」
この世界に来て初めて、心から安心した。
リヴァイの腕の中よりもずっと、ずっとー。
リコが味方になってくれた。
それだけで、絶対に元の世界に戻れると確信できるくらいに、ホッとしてー。
頬が緩んでしまうから、私は膝を折り曲げて、枕を抱きしめた。
「オルオ!動きが遅い!!エルド、しっかり指示を出せ!!」
リヴァイの怒気を孕んだ声が聞こえてきた。
窓の外を見れば、リヴァイ班のみんなが必死に空を飛んでいた。
「リヴァイって、変な人だよね。
私なら絶対、恋人になんてしないのになぁ~。もっと、爽やかなイケメンがいい。」
部下を指導しているリヴァイは、頼りがいのある上官に見える。
でも、仏頂面で頬を横に伸ばしていたリヴァイを思い出して、思わず吹き出してしまう。
背が小さいくせに誰よりも態度がデカくて、強そうに見えて、本当はひどく儚い。
「人類最強の兵士に向かって、変な人、か…。
そういえば、なまえも同じことを言ってたな。」
「え?そうなの?
じゃあ、なんでリヴァイなんかを恋人にしちゃったんだろ。
馬鹿だなぁ~。だからこんな面倒なことになっちゃったのに。」
驚いてリコの方を見た。
懐かしさを感じているのか、目が合ったリコはとても寂しそうに見えた。
「あぁ、本当にな。なんでだろうな。」
リコの流し目が、窓の外へ向かう。
やっぱり、リコにも分からないらしい。
本当に不思議だ。
あの男のどこに、この世界のなまえが魅力を感じたのか分からない。
確かに顔はイイけれど、タイプの爽やかイケメンではない。
性格だって、もっと穏やかな人の方が好きだ。
恐らく、なまえの部屋の様子や洋服の好みから察するに、この世界のなまえと私は、いろいろな好みが同じなのだと思う。
だから、リヴァイは決して、タイプではないのだと思うのだけれどー。
「本当に…、なまえはどうして、アンタを連れて来たんだろうな。」
窓の外を見ながら、リコが呟く。
自分自身に問うように言ったそれは、とても小さくて、私には聞こえなかった。