◇20話◇医務室の彼女
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845年、シガンシナ区。
超大型巨人によって外門が破壊され、多数の巨人が襲来。
すぐに調査兵団の兵士達も収集されたが、100年の安寧が突如として破られてしまったショックと恐怖は計り知れず、冷静に対処できた兵士なんて1人もいなかった。
それは、調査兵団に入団して1年ですでに頭角を現していたリヴァイもあまり変わらなかった。
(なまえ…っ!クソ、どこにいやがる…!)
アンカーを飛ばして、早急に巻き取る。
普段は壁外でしか会うことのない巨人達が、シガンシナ区の至るところにいた。
リヴァイは、それらを視界の邪魔だとばかりに討伐しながら、見開く三白眼は、もっともっと小さく華奢な身体を探していた。
会えば憎まれ口ばかり叩く大嫌いな女がいる。
彼女は駐屯兵団の兵士で、シガンシナ区の壁を守っている。
精鋭兵とはまだ呼べないけれど、駐屯兵団トップのピクシスは彼女の実力をかっていて、これから精鋭兵として育てようとしているようだった。
こんな非常事態だ。
きっと実力のある彼女は、最前線で戦わされているに違いない。
本物の巨人の討伐なんて、したことがないくせにー。
「リヴァイ!そんなにガス吹かしたらすぐ切れちゃうよ!」
「うるせぇ、クソメガネ。気が散るから、話しかけるんじゃねぇ。」
せっかく忠告してあげたのに、とブツブツ言いながらハンジが離れていく。
ハンジが何も言わないということは、なまえの姿を見ていないのか。
それとも、言えない何かがあるのかー。
後者ではないことを願いながら、リヴァイは、巨人を討伐しては、なまえの姿を探し続けた。
数体の巨人を討伐したあとだった。
リヴァイの目の前を、超硬質スチールの刃が勢いよく横切った。
前髪が少し切れたようで、黒い髪がハラハラと舞っていた。
少しでもズレていたら、刃はリヴァイの身体に当たっていただろう。
こんな危ないことをするのは誰だー。
リヴァイは舌打ちをして、超硬質スチールの刃が飛んできた方を見た。
幾つか離れた屋根の上に、数名の兵士の姿が見えた。1人は屋根の上に横たわっている。
近くに巨人まで見つけてしまったリヴァイだったが、彼らが巨人に気づいている様子はない。
舌打ちをして、リヴァイはアンカーを飛ばした。
「なまえさん…!!」
彼らの元へ向かっていたリヴァイの耳に、ずっと探していた女の名前が聞こえた。
まさかー。
彼女の名前を呼んだのは、屋根の上で倒れている兵士の身体を泣きながら揺すっている駐屯兵の女だ。
とてつもなく嫌な予感がして、リヴァイはいつもよりもだいぶ多めにガスを吹かして、出来る限り以上に急いだ。
邪魔な巨人を早急に数体討伐し、屋根の上に飛び降りる。
そして、漸くその目に映したのは、シガンシナ区に巨人が襲来したと聞いた時からずっと探していた女だった。
なまえは、血まみれで横たわっていて、意識がないようだ。
そのそばでは、若い男の駐屯兵が呆然と立ち尽くし「ごめんなさい。ごめんなさい。」と繰り返している。
最悪だ。どうしてこんなことにー。
「おい、これはどういうことだ!?」
呆然とした顔で立ち尽くしていた若い駐屯兵の男の胸ぐらを掴み上げた。
よく見れば、彼の足元には、刃が折れた超硬質スチールが転がっている。
この折れた刃先が、さっきリヴァイの目の前に飛んできたのだろう。
「俺が…、失敗して…、折れた刃が飛んでいって…。
それに気づいたなまえが新兵庇って…、背中が切れて…、それで…。」
「…っ!クソがッ!」
リヴァイは、投げ捨てるようにして掴んでいた胸ぐらを離した。
若い駐屯兵の男は、屋根の上に倒れるが、呆然として立ち上がる様子はない。
でも、正直どうでもいい。
なまえに怪我をさせた男のことなんて、どうだってー。
「意識は!」
リヴァイは、泣きながらなまえの身体を揺する若い女の駐屯兵に噛みつくように訊ねた。
彼女が、なまえが庇ったという新兵なのだろう。
自分のせいで、と責めている様子だ。
こんな状況でも正しく動くのが兵士だとしても、本物の巨人を相手にしたことなどない駐屯兵がミスを犯すのは仕方がないのかもしれない。
分かっている。
分かっているけれどー。
「ないんです…っ。さっきから、止血を…っ、してるんですけど…っ。
血がっ、止まらなくて…っ。」
よく見れば、新兵は、自分のジャケットを脱いでなまえの背中を押さえていた。
だがそれも無駄にしか見えないくらいに、ジャケットは真っ赤に染まっている。
すぐに手当てが必要なのは明らかだ。
なまえを横抱きに抱え上げたリヴァイだったけれど、視界には今まさに地獄の中で巨人と戦っている兵士達の姿が幾つも見えている。
いや、巨人の餌になっている、と言った方が正しいのかもしれない。
決して、自分の実力を過信しているわけではないが、今この時、実戦経験のある調査兵が抜けるのは痛いー。
「リヴァイ!それは駐屯兵か!!」
思いがけず、やって来てくれたのはイアンだった。
その後ろからリコとミタビが続く。
彼らもまたなまえと同様にピクシスに実力をかわれている駐屯兵のひとりだ。
なまえを安全な場所へ避難させながら、巨人を討伐することもできるかもしれない。
「なまえが飛んできた刃で背中を切った。出血がひでぇ。」
「なんだってッ!?」
リコ達は驚いた様子で、リヴァイの腕の中で力なく身体を預けている兵士の顔を覗き込む。
そして、それがなまえだと分かると、一気に血の気を失せていた。
頭の回転の速いリコとイアンは、リヴァイが事情と頼みを伝える前に、事態を理解したようだった。
すぐにイアンが、リヴァイからなまえを受け取る。
「私とミタビで、護衛する。
イアンとなまえには近づけないから心配するな。」
「…あぁ。頼んだ。」
本当は自分の手で助けてやりたかったー。
リヴァイは拳を握り、彼らに背を向けた。
すぐにガスを吹かす音がして、振り返る。
どうか、無事でいてほしい。
憎まれ口を叩き合うことが楽しくて、今までずっと黙っていたけれど。
本当はまだ、伝えていないことが、あるからー。
超大型巨人によって外門が破壊され、多数の巨人が襲来。
すぐに調査兵団の兵士達も収集されたが、100年の安寧が突如として破られてしまったショックと恐怖は計り知れず、冷静に対処できた兵士なんて1人もいなかった。
それは、調査兵団に入団して1年ですでに頭角を現していたリヴァイもあまり変わらなかった。
(なまえ…っ!クソ、どこにいやがる…!)
アンカーを飛ばして、早急に巻き取る。
普段は壁外でしか会うことのない巨人達が、シガンシナ区の至るところにいた。
リヴァイは、それらを視界の邪魔だとばかりに討伐しながら、見開く三白眼は、もっともっと小さく華奢な身体を探していた。
会えば憎まれ口ばかり叩く大嫌いな女がいる。
彼女は駐屯兵団の兵士で、シガンシナ区の壁を守っている。
精鋭兵とはまだ呼べないけれど、駐屯兵団トップのピクシスは彼女の実力をかっていて、これから精鋭兵として育てようとしているようだった。
こんな非常事態だ。
きっと実力のある彼女は、最前線で戦わされているに違いない。
本物の巨人の討伐なんて、したことがないくせにー。
「リヴァイ!そんなにガス吹かしたらすぐ切れちゃうよ!」
「うるせぇ、クソメガネ。気が散るから、話しかけるんじゃねぇ。」
せっかく忠告してあげたのに、とブツブツ言いながらハンジが離れていく。
ハンジが何も言わないということは、なまえの姿を見ていないのか。
それとも、言えない何かがあるのかー。
後者ではないことを願いながら、リヴァイは、巨人を討伐しては、なまえの姿を探し続けた。
数体の巨人を討伐したあとだった。
リヴァイの目の前を、超硬質スチールの刃が勢いよく横切った。
前髪が少し切れたようで、黒い髪がハラハラと舞っていた。
少しでもズレていたら、刃はリヴァイの身体に当たっていただろう。
こんな危ないことをするのは誰だー。
リヴァイは舌打ちをして、超硬質スチールの刃が飛んできた方を見た。
幾つか離れた屋根の上に、数名の兵士の姿が見えた。1人は屋根の上に横たわっている。
近くに巨人まで見つけてしまったリヴァイだったが、彼らが巨人に気づいている様子はない。
舌打ちをして、リヴァイはアンカーを飛ばした。
「なまえさん…!!」
彼らの元へ向かっていたリヴァイの耳に、ずっと探していた女の名前が聞こえた。
まさかー。
彼女の名前を呼んだのは、屋根の上で倒れている兵士の身体を泣きながら揺すっている駐屯兵の女だ。
とてつもなく嫌な予感がして、リヴァイはいつもよりもだいぶ多めにガスを吹かして、出来る限り以上に急いだ。
邪魔な巨人を早急に数体討伐し、屋根の上に飛び降りる。
そして、漸くその目に映したのは、シガンシナ区に巨人が襲来したと聞いた時からずっと探していた女だった。
なまえは、血まみれで横たわっていて、意識がないようだ。
そのそばでは、若い男の駐屯兵が呆然と立ち尽くし「ごめんなさい。ごめんなさい。」と繰り返している。
最悪だ。どうしてこんなことにー。
「おい、これはどういうことだ!?」
呆然とした顔で立ち尽くしていた若い駐屯兵の男の胸ぐらを掴み上げた。
よく見れば、彼の足元には、刃が折れた超硬質スチールが転がっている。
この折れた刃先が、さっきリヴァイの目の前に飛んできたのだろう。
「俺が…、失敗して…、折れた刃が飛んでいって…。
それに気づいたなまえが新兵庇って…、背中が切れて…、それで…。」
「…っ!クソがッ!」
リヴァイは、投げ捨てるようにして掴んでいた胸ぐらを離した。
若い駐屯兵の男は、屋根の上に倒れるが、呆然として立ち上がる様子はない。
でも、正直どうでもいい。
なまえに怪我をさせた男のことなんて、どうだってー。
「意識は!」
リヴァイは、泣きながらなまえの身体を揺する若い女の駐屯兵に噛みつくように訊ねた。
彼女が、なまえが庇ったという新兵なのだろう。
自分のせいで、と責めている様子だ。
こんな状況でも正しく動くのが兵士だとしても、本物の巨人を相手にしたことなどない駐屯兵がミスを犯すのは仕方がないのかもしれない。
分かっている。
分かっているけれどー。
「ないんです…っ。さっきから、止血を…っ、してるんですけど…っ。
血がっ、止まらなくて…っ。」
よく見れば、新兵は、自分のジャケットを脱いでなまえの背中を押さえていた。
だがそれも無駄にしか見えないくらいに、ジャケットは真っ赤に染まっている。
すぐに手当てが必要なのは明らかだ。
なまえを横抱きに抱え上げたリヴァイだったけれど、視界には今まさに地獄の中で巨人と戦っている兵士達の姿が幾つも見えている。
いや、巨人の餌になっている、と言った方が正しいのかもしれない。
決して、自分の実力を過信しているわけではないが、今この時、実戦経験のある調査兵が抜けるのは痛いー。
「リヴァイ!それは駐屯兵か!!」
思いがけず、やって来てくれたのはイアンだった。
その後ろからリコとミタビが続く。
彼らもまたなまえと同様にピクシスに実力をかわれている駐屯兵のひとりだ。
なまえを安全な場所へ避難させながら、巨人を討伐することもできるかもしれない。
「なまえが飛んできた刃で背中を切った。出血がひでぇ。」
「なんだってッ!?」
リコ達は驚いた様子で、リヴァイの腕の中で力なく身体を預けている兵士の顔を覗き込む。
そして、それがなまえだと分かると、一気に血の気を失せていた。
頭の回転の速いリコとイアンは、リヴァイが事情と頼みを伝える前に、事態を理解したようだった。
すぐにイアンが、リヴァイからなまえを受け取る。
「私とミタビで、護衛する。
イアンとなまえには近づけないから心配するな。」
「…あぁ。頼んだ。」
本当は自分の手で助けてやりたかったー。
リヴァイは拳を握り、彼らに背を向けた。
すぐにガスを吹かす音がして、振り返る。
どうか、無事でいてほしい。
憎まれ口を叩き合うことが楽しくて、今までずっと黙っていたけれど。
本当はまだ、伝えていないことが、あるからー。