◇18話◇兵士の記憶(後編)
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なまえに何が起きたのか、ハンジの性格上、今すぐにでも確認したかった。
ハンジは、ベッドに起き上がれるくらいなら大丈夫だろうから、とリヴァイを強引に説得して、エレンを地下に連れて行ってもらうようお願いした。
元々、エレンの監視役をエルヴィンに任されているのはリヴァイだ。
無理に拒否することも出来ず、リヴァイは、エレンを引き連れて医務室を出て行く。
扉が閉まったのを確認して、ベッド脇の椅子に座っていたハンジとモブリットは、すぐに身体を前のめりにして、なまえを問い詰めた。
「君は誰!?」
「なまえ!?なまえが戻って来たんだろ!?」
ハンジとモブリットの食い気味の質問は、ほぼ同時だった。
一瞬、呆気にとられたように驚いた様子だったなまえは、肩の力を抜くように長い息を吐いた。
「ハンジとモブリットも騙せたなら、リヴァイもきっと騙せたね。
よかった。」
なまえは、ゆっくりと膝を折り曲げて、ホッとしたように言った。
どうやら、彼女は、パラレルワールドから来た方の彼女のようだ。
それなら、記憶にはないはずのエレンのことをどうして知っていたのか。
ハンジとモブリットが訊ねると、エレンの巨人化の爆発に巻き込まれて倒れたとき、なまえが意識を失っていると思っている調査兵達が話していたのが聞こえたのだと教えられた。
そこで、エレンが巨人化出来る人間なことや、そのエレンを守るためになまえが死んだこと、そして、リヴァイの任務内容まで知ってしまったそうだ。
でも、だからってー。
「記憶は分からないままの方が都合がいいし、面倒だから記憶喪失のまま行くんじゃなかったの?
どうして、思い出したフリなんかしたんだい?」
「だって…、リヴァイも、エレンも、可哀想だったから…。」
なまえは、折り曲げた自分の膝を見下ろして呟くように答えた。
そして、そのままの格好で、ハンジとモブリットは見ないまま続ける。
「よく分からないけど、エレンは何も悪くないんでしょう?
それなのに、一生、苦しんで謝り続ける人生なんて、悲しすぎる…。
それに、リヴァイも、恋人が許してるって分かったら、少しは楽になるかなぁって思ったの。」
「そうだね。ありがとう。
なまえがエレンの巨人化に巻き込まれたと聞いた時は、終わったと思ったんだけど
おかげで、リヴァイはこれからも任務を全うしてくれそうだよ。」
「でしょ?これで、私がいなくなってもリヴァイはちゃんと出来るよ。
だから、ちゃんと私が帰れる方法を探してよね。」
なまえが顔を上げて、少し得意気に言う。
あぁ、やっぱり、パラレルワールドというのは別の世界に住んでいる同一人物なのだ。
彼女という人間の心に触れた今、ハンジはそんなことを思っていた。
きっと、ここになまえがいたとしても、同じことをして、同じことを言ったと思うからだ。
「でも、巨人を見て気絶したのに、もう慣れたんだね。
巨人化したエレンを見たのに、もう普通に出来てるなんて、さすがなまえだよ。」
モブリットが何気なく言ったそれが、なまえの張りつめていた糸を切ってしまったようだった。
きっと、リヴァイがいる間は、しっかり恋人の役を務めあげないといけないという緊張感が、なんとか彼女を保っていたのだろう。
それが、巨人という言葉で、恐怖を思い出してしまったようだった。
「こわ…っ、怖かったよぉ~…っ。もうやだぁあっ。」
なまえは膝を抱えて、泣き出してしまった。細い肩がガタガタと揺れているのも分かるくらいに震えている。
エレンが巨人化したと聞いた時も、それになまえが巻き込まれたと聞いた時も、一番に考えたのは、これからの人類のことで、リヴァイの心のことだった。
エレンやなまえの心の心配ではなかった。
いつだって、自分達のことばかり考えているのだとハンジもモブリットも思い知る。
震えて謝るエレンを見て、漸く、彼の苦しみに気づいた今でさえ、なまえが恐怖を必死に堪えながら、約束を守ろうとしていたことにだって気づかないでー。
パラレルワールドというわけのわからない世界に突如として飛ばされて、心細くて、怖くて仕方がないはずのなまえが、ハンジ達が気づかなかったエレンの心の苦しみや、自分がいなくなった時のリヴァイの心のことまで考えてやれていたというのにー。
自分達は、自分達のことばかりだった。
彼女がパラレルワールドからやってきたと知っている自分達しか、彼女の心を守ってやることは出来ないのにー。
焦ったようにモブリットが、ベッドの縁に腰を降ろしてなまえの肩を抱く。
「ごめん、思い出させてごめんっ。怖かったよな、そうだよなっ。
そうだよな…っ。怖いに、決まってるっ。」
「もう…っ、やだぁあっ。家に帰りたい…っ、なんでっ、こんな…っ。」
なまえは小さな子供みたいに、怖いと家に帰りたいを繰り返しながら泣きじゃくった。
いつもリヴァイの腕の中にいるから余計に、モブリットの腕の中で泣きじゃくりながら震わせる細い肩のなまえが小さく見えた。
酷くか弱く、見えたー。
ハンジは、ベッドに起き上がれるくらいなら大丈夫だろうから、とリヴァイを強引に説得して、エレンを地下に連れて行ってもらうようお願いした。
元々、エレンの監視役をエルヴィンに任されているのはリヴァイだ。
無理に拒否することも出来ず、リヴァイは、エレンを引き連れて医務室を出て行く。
扉が閉まったのを確認して、ベッド脇の椅子に座っていたハンジとモブリットは、すぐに身体を前のめりにして、なまえを問い詰めた。
「君は誰!?」
「なまえ!?なまえが戻って来たんだろ!?」
ハンジとモブリットの食い気味の質問は、ほぼ同時だった。
一瞬、呆気にとられたように驚いた様子だったなまえは、肩の力を抜くように長い息を吐いた。
「ハンジとモブリットも騙せたなら、リヴァイもきっと騙せたね。
よかった。」
なまえは、ゆっくりと膝を折り曲げて、ホッとしたように言った。
どうやら、彼女は、パラレルワールドから来た方の彼女のようだ。
それなら、記憶にはないはずのエレンのことをどうして知っていたのか。
ハンジとモブリットが訊ねると、エレンの巨人化の爆発に巻き込まれて倒れたとき、なまえが意識を失っていると思っている調査兵達が話していたのが聞こえたのだと教えられた。
そこで、エレンが巨人化出来る人間なことや、そのエレンを守るためになまえが死んだこと、そして、リヴァイの任務内容まで知ってしまったそうだ。
でも、だからってー。
「記憶は分からないままの方が都合がいいし、面倒だから記憶喪失のまま行くんじゃなかったの?
どうして、思い出したフリなんかしたんだい?」
「だって…、リヴァイも、エレンも、可哀想だったから…。」
なまえは、折り曲げた自分の膝を見下ろして呟くように答えた。
そして、そのままの格好で、ハンジとモブリットは見ないまま続ける。
「よく分からないけど、エレンは何も悪くないんでしょう?
それなのに、一生、苦しんで謝り続ける人生なんて、悲しすぎる…。
それに、リヴァイも、恋人が許してるって分かったら、少しは楽になるかなぁって思ったの。」
「そうだね。ありがとう。
なまえがエレンの巨人化に巻き込まれたと聞いた時は、終わったと思ったんだけど
おかげで、リヴァイはこれからも任務を全うしてくれそうだよ。」
「でしょ?これで、私がいなくなってもリヴァイはちゃんと出来るよ。
だから、ちゃんと私が帰れる方法を探してよね。」
なまえが顔を上げて、少し得意気に言う。
あぁ、やっぱり、パラレルワールドというのは別の世界に住んでいる同一人物なのだ。
彼女という人間の心に触れた今、ハンジはそんなことを思っていた。
きっと、ここになまえがいたとしても、同じことをして、同じことを言ったと思うからだ。
「でも、巨人を見て気絶したのに、もう慣れたんだね。
巨人化したエレンを見たのに、もう普通に出来てるなんて、さすがなまえだよ。」
モブリットが何気なく言ったそれが、なまえの張りつめていた糸を切ってしまったようだった。
きっと、リヴァイがいる間は、しっかり恋人の役を務めあげないといけないという緊張感が、なんとか彼女を保っていたのだろう。
それが、巨人という言葉で、恐怖を思い出してしまったようだった。
「こわ…っ、怖かったよぉ~…っ。もうやだぁあっ。」
なまえは膝を抱えて、泣き出してしまった。細い肩がガタガタと揺れているのも分かるくらいに震えている。
エレンが巨人化したと聞いた時も、それになまえが巻き込まれたと聞いた時も、一番に考えたのは、これからの人類のことで、リヴァイの心のことだった。
エレンやなまえの心の心配ではなかった。
いつだって、自分達のことばかり考えているのだとハンジもモブリットも思い知る。
震えて謝るエレンを見て、漸く、彼の苦しみに気づいた今でさえ、なまえが恐怖を必死に堪えながら、約束を守ろうとしていたことにだって気づかないでー。
パラレルワールドというわけのわからない世界に突如として飛ばされて、心細くて、怖くて仕方がないはずのなまえが、ハンジ達が気づかなかったエレンの心の苦しみや、自分がいなくなった時のリヴァイの心のことまで考えてやれていたというのにー。
自分達は、自分達のことばかりだった。
彼女がパラレルワールドからやってきたと知っている自分達しか、彼女の心を守ってやることは出来ないのにー。
焦ったようにモブリットが、ベッドの縁に腰を降ろしてなまえの肩を抱く。
「ごめん、思い出させてごめんっ。怖かったよな、そうだよなっ。
そうだよな…っ。怖いに、決まってるっ。」
「もう…っ、やだぁあっ。家に帰りたい…っ、なんでっ、こんな…っ。」
なまえは小さな子供みたいに、怖いと家に帰りたいを繰り返しながら泣きじゃくった。
いつもリヴァイの腕の中にいるから余計に、モブリットの腕の中で泣きじゃくりながら震わせる細い肩のなまえが小さく見えた。
酷くか弱く、見えたー。