◇17話◇兵士の記憶(前編)
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何かに全身を殴られて、背中から壁に吹っ飛ばされたようだった。
でも、一瞬過ぎて、よく分からなかった。
気づいた時には、頭が痛くて、身体中が痛くて、目も痛くてー。
恐らく自分の身体は、冷たい地面に横たわっているんだろうということくらいしか分からない。
すぐ近くで、まるで建物が崩れるような大きな音が聞こえている。
怖い、怖いー。
「大丈夫ですか!?」
誰かが駆け寄ってきて私の身体を抱え起こした。
その向こうからも、駆け寄ってくるような足音が幾つも聞こえてくる。
それと同時に、焦ったような騒がしい声も聞こえ出したー。
「今の爆発は何だッ!?ハァッ!?なんで旧本部の中に巨人がいるんだ!!」
「知らねぇよッ!!とにかく、爆発になまえさんが巻き込まれたっ!!
すぐに医療兵を呼んできてくれ!!」
「…!?今すぐ連れてくる!!」
私を抱き起した誰かが叫んでいるのが分かった。
でも、私は、さっき目の前で放たれたあの眩しい光に目がやられてしまったようで、痛さで目が開けられなかった。
今、どういう状況なのかよく分からない。
この世界に来るまで、分からないというのがこんなに怖いなんて知らなかったー。
何も分からないから、怖いことばかりだ。もう、嫌だー。
痛い、身体が痛いー。
怖いー。
「何があったっ!?どうして、旧本部の中に巨人がッ!?」
「殺せッ!!すぐに殺せッ!!」
「いや、待て…!コイツ、巨人小僧じゃねぇか!!」
「おい、小僧ッ!!どういうことだ!!なんでてめぇの両腕だけ巨人化してる!?」
「…分かりませんっ。でも、俺ー。」
「リヴァイ兵長を呼べ!!
ソイツをどうするかはリヴァイ兵長の判断だ!」
「すぐ呼んでくる!!」
「なまえさんのことも伝えた方がいい!!
巨人化に巻き込まれて負傷した!!意識がねぇ!!」
「嘘だろッ!?」
遠くから、私の名前も聞こえる。
巨人とか、巨人化とか、何のことを言っているのだろう。
頭が、痛いー。
身体も、痛いー。
「なまえさん、意識ないんですか!?」
「嘘だろ…、マジかよ…。なんで、よりによってなまえが巻きこまれちまうんだよ…っ。」
「なまえさんって、エレンを守るために死んだんですよね…?」
「おい、聞こえてるかもしれねぇだろ、余計なこと言うんじゃねぇ!!」
「す、すみません…っ!でも、エレンを守るために死んだはずのなまえさんが、
なぜか生き返って戻って来てくれたのに、またエレンの巨人化に巻き込まれて死んだら、
もうリヴァイ兵長、壊れてしまうと思って…。」
「エレンは殺処分かもな。さすがに殺すだろ、リヴァイ兵長も。」
彼らがしているのは、この世界のなまえが死んだときの話だろうか。
任務中の戦死のようだったけれど、そうか、エレンという誰かを守って死んだのか。
誰かを守って死ねるなんて、なまえは本当に強い女性だ。この世界で最も強いらしいリヴァイの恋人なだけある。
エレンー。
誰だろう、そのエレンという人は。
あぁ、頭が痛い。もう、嫌だ。こんな世界、本当に最悪だ。
身体も痛いー。
「なまえさん!!ごめんなさい…!!なまえさんっ、俺…!!」
怒号が飛び交う中で、悲痛な叫びが聞こえた。
その向こうで、エレンを殺せと誰かがしきりに繰り返している。
それも1人ではない。
何人もが、エレンを殺せとー。
「ん…っ。」
「なまえさん!!意識が戻った!!医療兵はまだか!!」
ゆっくりと目を開く。
私の上半身を抱え上げて、医療兵はまだかと叫んでいる調査兵の向こうに、大きな腕が見えた。
前にハンジに見せられた巨人のように肌色ではなくて筋肉や血管がむき出しになっているけれど、大きなそれは巨人の腕だ。
アレが私を殴ったのかー。
怖くて逃げたいのに、恐怖で動けない。
「なまえさん…っ、ごめんなさい…っ、おれ…っ。」
悲痛な叫びが聞こえた方に視線を這わせた。
そして、ひどく驚いた。
だって、大きな腕の向こうにあの青年の姿が見えたのだ。
まるで、その腕の持ち主みたいにー。
「エレン!なまえさんに話しかけるんじゃねぇよ!!
お前は近づくなとリヴァイ兵長に命令されてたはずだろ!!」
「ごめんなさい…っ、俺が…、俺のせいで…っ。」
私を怯えた顔で避けていた青年は、泣きそうな顔で繰り返し謝る。そんな彼を、大勢の調査兵が責め立てていた。
どうやら、彼がエレンらしい。
あぁ、だからー。
自分を守るために上官の恋人が死んだことを理解していたから、エレンはあんなに私に怯えていたのかー。
だからきっと、あれは怯えではなくてー。
「殺して、ください…。俺なんて、殺して…っ。」
エレンの頬を涙が伝う。
あぁ、ずっと、彼はひとりで、苦しんでいたんだろうか。
自分を殺してほしいと繰り返してしまうほどに、ひとりきりで苦しんでー。
次第に遠のく意識の向こうで、エレンの悲痛な声だけが響き続けていた。
でも、一瞬過ぎて、よく分からなかった。
気づいた時には、頭が痛くて、身体中が痛くて、目も痛くてー。
恐らく自分の身体は、冷たい地面に横たわっているんだろうということくらいしか分からない。
すぐ近くで、まるで建物が崩れるような大きな音が聞こえている。
怖い、怖いー。
「大丈夫ですか!?」
誰かが駆け寄ってきて私の身体を抱え起こした。
その向こうからも、駆け寄ってくるような足音が幾つも聞こえてくる。
それと同時に、焦ったような騒がしい声も聞こえ出したー。
「今の爆発は何だッ!?ハァッ!?なんで旧本部の中に巨人がいるんだ!!」
「知らねぇよッ!!とにかく、爆発になまえさんが巻き込まれたっ!!
すぐに医療兵を呼んできてくれ!!」
「…!?今すぐ連れてくる!!」
私を抱き起した誰かが叫んでいるのが分かった。
でも、私は、さっき目の前で放たれたあの眩しい光に目がやられてしまったようで、痛さで目が開けられなかった。
今、どういう状況なのかよく分からない。
この世界に来るまで、分からないというのがこんなに怖いなんて知らなかったー。
何も分からないから、怖いことばかりだ。もう、嫌だー。
痛い、身体が痛いー。
怖いー。
「何があったっ!?どうして、旧本部の中に巨人がッ!?」
「殺せッ!!すぐに殺せッ!!」
「いや、待て…!コイツ、巨人小僧じゃねぇか!!」
「おい、小僧ッ!!どういうことだ!!なんでてめぇの両腕だけ巨人化してる!?」
「…分かりませんっ。でも、俺ー。」
「リヴァイ兵長を呼べ!!
ソイツをどうするかはリヴァイ兵長の判断だ!」
「すぐ呼んでくる!!」
「なまえさんのことも伝えた方がいい!!
巨人化に巻き込まれて負傷した!!意識がねぇ!!」
「嘘だろッ!?」
遠くから、私の名前も聞こえる。
巨人とか、巨人化とか、何のことを言っているのだろう。
頭が、痛いー。
身体も、痛いー。
「なまえさん、意識ないんですか!?」
「嘘だろ…、マジかよ…。なんで、よりによってなまえが巻きこまれちまうんだよ…っ。」
「なまえさんって、エレンを守るために死んだんですよね…?」
「おい、聞こえてるかもしれねぇだろ、余計なこと言うんじゃねぇ!!」
「す、すみません…っ!でも、エレンを守るために死んだはずのなまえさんが、
なぜか生き返って戻って来てくれたのに、またエレンの巨人化に巻き込まれて死んだら、
もうリヴァイ兵長、壊れてしまうと思って…。」
「エレンは殺処分かもな。さすがに殺すだろ、リヴァイ兵長も。」
彼らがしているのは、この世界のなまえが死んだときの話だろうか。
任務中の戦死のようだったけれど、そうか、エレンという誰かを守って死んだのか。
誰かを守って死ねるなんて、なまえは本当に強い女性だ。この世界で最も強いらしいリヴァイの恋人なだけある。
エレンー。
誰だろう、そのエレンという人は。
あぁ、頭が痛い。もう、嫌だ。こんな世界、本当に最悪だ。
身体も痛いー。
「なまえさん!!ごめんなさい…!!なまえさんっ、俺…!!」
怒号が飛び交う中で、悲痛な叫びが聞こえた。
その向こうで、エレンを殺せと誰かがしきりに繰り返している。
それも1人ではない。
何人もが、エレンを殺せとー。
「ん…っ。」
「なまえさん!!意識が戻った!!医療兵はまだか!!」
ゆっくりと目を開く。
私の上半身を抱え上げて、医療兵はまだかと叫んでいる調査兵の向こうに、大きな腕が見えた。
前にハンジに見せられた巨人のように肌色ではなくて筋肉や血管がむき出しになっているけれど、大きなそれは巨人の腕だ。
アレが私を殴ったのかー。
怖くて逃げたいのに、恐怖で動けない。
「なまえさん…っ、ごめんなさい…っ、おれ…っ。」
悲痛な叫びが聞こえた方に視線を這わせた。
そして、ひどく驚いた。
だって、大きな腕の向こうにあの青年の姿が見えたのだ。
まるで、その腕の持ち主みたいにー。
「エレン!なまえさんに話しかけるんじゃねぇよ!!
お前は近づくなとリヴァイ兵長に命令されてたはずだろ!!」
「ごめんなさい…っ、俺が…、俺のせいで…っ。」
私を怯えた顔で避けていた青年は、泣きそうな顔で繰り返し謝る。そんな彼を、大勢の調査兵が責め立てていた。
どうやら、彼がエレンらしい。
あぁ、だからー。
自分を守るために上官の恋人が死んだことを理解していたから、エレンはあんなに私に怯えていたのかー。
だからきっと、あれは怯えではなくてー。
「殺して、ください…。俺なんて、殺して…っ。」
エレンの頬を涙が伝う。
あぁ、ずっと、彼はひとりで、苦しんでいたんだろうか。
自分を殺してほしいと繰り返してしまうほどに、ひとりきりで苦しんでー。
次第に遠のく意識の向こうで、エレンの悲痛な声だけが響き続けていた。