◇17話◇兵士の記憶(前編)
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何度目かのため息をこぼしながら、私は1人で、1階にある医務室の窓辺から外を眺めていた。
腰の痛みを訴えてみたところ、リヴァイに抱えられて医務室に連れて来られたのだ。
彼は昔から、なまえに対して、こんなに過保護だったのだろうか。
それとも、恋人の死が、彼を異常なくらいに過保護にしているのだろうか。
とりあえず、リヴァイからは、任務が終わったら速攻で迎えに来る、と言われている。
私はもう何度目かのため息をついた。
窓の外では、調査兵達が訓練をしていた。
リヴァイやハンジ達はまた違う任務があるらしくて、見えるところにはいないけれど、あの恐ろしい巨人の見張りをしている調査兵以外は、いつかの巨人との対戦の為の訓練というのをしているらしい。
ペトラ達のように空を飛んでいる人間が何人もいた。
あの立体起動装置という道具を駆使して、人間は空を飛べるのだそうだ。
そして、その鞘に納められている大きな刃を使って巨人を倒すのだそうだ。
どうやら、訓練では、ハリボテを巨人に見立てて戦いの演習をしているようだった。
『なまえの記憶戻してどうするの?また兵士にしたいの?』
『バカか。もう二度と、なまえに危険な真似はさせねぇ。』
『でも、記憶が戻って戦えるようになったら、ピクシス司令が黙ってないよ。
なまえは彼のお気に入りなんだから、すぐに駐屯兵に呼び戻されるに決まってる。』
今度は乗馬をさせると言い出したリヴァイに、漸くハンジが動き出してくれた。
よく分からないけれど、その説得が効いたようで、リヴァイは訓練のようなものをするのをやめてくれた。
どうやら、なまえは兵士の任務中に戦死したようだった。
だからこそ、もう二度と恋人を失いたくないリヴァイは、兵士としての記憶を取り戻させることは諦めてくれたのだろう。
本当によかった。
それにしても、この世界のなまえは、兵士として巨人と戦っていたのだろうか。
彼らの話しぶりからは、そう読み取れた。
あんな恐ろしい大きな生き物と対峙出来るのだから、強い女性だったに違いない。
私は絶対に無理だ。
あの空を飛ぶ道具の立体起動装置すら腰につけて立てないのだから、そもそもが無理な話なのだ。
ベッドから降りた私は、医務室の奥のデスクでカルテにペンを走らせている医療兵の背中を見つけた。
視線だけを動かして医務室の中を見渡す。
ここにいるのは私と、仕事中の医療兵だけのようだ。
薬の匂いのする医務室はあまり好きじゃない。
だから、リヴァイの執務室に戻りたいだけだ。
でも、ここで待っていろとリヴァイは言った。あの医療兵は、リヴァイの指示に従うに違いない。
それなら、こっそり医務室を抜け出すしかないのは、仕方がないことだと思うのだ。
別に、逃げようとしているわけではないのだから、いいだろう。
音をたてないように忍び足で医務室を出る。
気づかれなかったことにホッとして、息を吐いた。
しばらく歩いたところで、廊下の向かいから歩いてきている調査兵を見つけた。
あれは、リヴァイ班にいた新兵の青年だ。
私のことを見た瞬間に怯えたような表情を見せたときも、不思議に思ったが、リヴァイ達の態度も気になっていた。
この世界で私が初めて会った人達は、とりあえず、知り合いでもそうではなくても、自己紹介をしてくれた。
でも、彼だけは違った。
私の視界に出来るだけ入らないように心掛けているようだったし、リヴァイ達も彼を私に紹介しようとはしなかった。
むしろ、誰も彼の存在に触れなかった。
まるで、いない存在みたいに。私に気づかれたくないみたいにー。
なぜだろう、とずっと気になっていてー。
「こんにちは。」
下を向いて歩いていた彼は、私が声をかけるとビクッと肩を揺らして顔を上げた。
そして、視界に私を捉えれば、驚くくらいに怯えて数歩後退った。
まるで、巨人を始めて見たときの私のようだ。
(それはないか、私は気絶しちゃったし。)
でも、まるで初めて巨人を見た人間のようだと勘違いしてしまうくらいに怯えているのだ。
彼は私が怖いのだろうか。
いや、この世界のなまえが、怖いのだろうか。
「私、君に何かしちゃったのかな?」
「え?」
「私のこと、怖い?死んだ人間だから、怖いのかな?」
「ち、ちが…っ!違います!そうじゃなくて、俺が…!!」
焦ったように彼が顔の前で両手を左右に振った時だった。
目の前で、眩いくらいの光が放たれた。
驚いた時にはもう私は、とてつもなく熱くて硬くて、そして大きな何かに、身体を激しく突き飛ばされていた。
腰の痛みを訴えてみたところ、リヴァイに抱えられて医務室に連れて来られたのだ。
彼は昔から、なまえに対して、こんなに過保護だったのだろうか。
それとも、恋人の死が、彼を異常なくらいに過保護にしているのだろうか。
とりあえず、リヴァイからは、任務が終わったら速攻で迎えに来る、と言われている。
私はもう何度目かのため息をついた。
窓の外では、調査兵達が訓練をしていた。
リヴァイやハンジ達はまた違う任務があるらしくて、見えるところにはいないけれど、あの恐ろしい巨人の見張りをしている調査兵以外は、いつかの巨人との対戦の為の訓練というのをしているらしい。
ペトラ達のように空を飛んでいる人間が何人もいた。
あの立体起動装置という道具を駆使して、人間は空を飛べるのだそうだ。
そして、その鞘に納められている大きな刃を使って巨人を倒すのだそうだ。
どうやら、訓練では、ハリボテを巨人に見立てて戦いの演習をしているようだった。
『なまえの記憶戻してどうするの?また兵士にしたいの?』
『バカか。もう二度と、なまえに危険な真似はさせねぇ。』
『でも、記憶が戻って戦えるようになったら、ピクシス司令が黙ってないよ。
なまえは彼のお気に入りなんだから、すぐに駐屯兵に呼び戻されるに決まってる。』
今度は乗馬をさせると言い出したリヴァイに、漸くハンジが動き出してくれた。
よく分からないけれど、その説得が効いたようで、リヴァイは訓練のようなものをするのをやめてくれた。
どうやら、なまえは兵士の任務中に戦死したようだった。
だからこそ、もう二度と恋人を失いたくないリヴァイは、兵士としての記憶を取り戻させることは諦めてくれたのだろう。
本当によかった。
それにしても、この世界のなまえは、兵士として巨人と戦っていたのだろうか。
彼らの話しぶりからは、そう読み取れた。
あんな恐ろしい大きな生き物と対峙出来るのだから、強い女性だったに違いない。
私は絶対に無理だ。
あの空を飛ぶ道具の立体起動装置すら腰につけて立てないのだから、そもそもが無理な話なのだ。
ベッドから降りた私は、医務室の奥のデスクでカルテにペンを走らせている医療兵の背中を見つけた。
視線だけを動かして医務室の中を見渡す。
ここにいるのは私と、仕事中の医療兵だけのようだ。
薬の匂いのする医務室はあまり好きじゃない。
だから、リヴァイの執務室に戻りたいだけだ。
でも、ここで待っていろとリヴァイは言った。あの医療兵は、リヴァイの指示に従うに違いない。
それなら、こっそり医務室を抜け出すしかないのは、仕方がないことだと思うのだ。
別に、逃げようとしているわけではないのだから、いいだろう。
音をたてないように忍び足で医務室を出る。
気づかれなかったことにホッとして、息を吐いた。
しばらく歩いたところで、廊下の向かいから歩いてきている調査兵を見つけた。
あれは、リヴァイ班にいた新兵の青年だ。
私のことを見た瞬間に怯えたような表情を見せたときも、不思議に思ったが、リヴァイ達の態度も気になっていた。
この世界で私が初めて会った人達は、とりあえず、知り合いでもそうではなくても、自己紹介をしてくれた。
でも、彼だけは違った。
私の視界に出来るだけ入らないように心掛けているようだったし、リヴァイ達も彼を私に紹介しようとはしなかった。
むしろ、誰も彼の存在に触れなかった。
まるで、いない存在みたいに。私に気づかれたくないみたいにー。
なぜだろう、とずっと気になっていてー。
「こんにちは。」
下を向いて歩いていた彼は、私が声をかけるとビクッと肩を揺らして顔を上げた。
そして、視界に私を捉えれば、驚くくらいに怯えて数歩後退った。
まるで、巨人を始めて見たときの私のようだ。
(それはないか、私は気絶しちゃったし。)
でも、まるで初めて巨人を見た人間のようだと勘違いしてしまうくらいに怯えているのだ。
彼は私が怖いのだろうか。
いや、この世界のなまえが、怖いのだろうか。
「私、君に何かしちゃったのかな?」
「え?」
「私のこと、怖い?死んだ人間だから、怖いのかな?」
「ち、ちが…っ!違います!そうじゃなくて、俺が…!!」
焦ったように彼が顔の前で両手を左右に振った時だった。
目の前で、眩いくらいの光が放たれた。
驚いた時にはもう私は、とてつもなく熱くて硬くて、そして大きな何かに、身体を激しく突き飛ばされていた。