◇13話◇パラレルワールド
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「そういうことか…。」
ハンジは納得したように頷いていたけれど、モブリットは絶句して声も出ないようだった。
そして、私は、あまりにも勝手な理由でこのわけのわからない世界に飛ばされたことに絶望していた。
「リヴァイ兵長が心配だったんだろうな。なまえらしいよ…。
助けられるのは自分しかいないのに、自分はもう生きてないからだからー。」
「知らないよっ、そんなのっ!だからって、どうして関係ない私が…っ!
とにかく、早くリヴァイにそれを伝えようっ!もう本物のなまえは死んでるんだって!
ね?そしたら、私はもう帰れるでしょう!?」
私はハンジの両腕を掴んで必死に叫んだ。
この世界で暮らしていた私は、自分の代わりにリヴァイに伝言を伝えて欲しかったようだった。
そのために、私をこの世界に飛ばしたのなら、それをリヴァイに伝えれば、きっと帰れる。
もうこんなところにはいたくない。
リコさえ、私の知っているリコじゃないということだ。
ここには私の知り合いはひとりもいない。
ひとりぼっちだ。
それなのに、巨人がいる。人攫いがいる。
こんな怖いところ、あと1秒だって本当はいたくないー!
それなのにー。
「それじゃダメだよ。なまえは君にリヴァイを助けてくれって頼んだんだろう?
リヴァイは今、なまえが生きてたってことでなんとか自分を保ってるんだ。
そこで、本物のなまえは死んでるなんて言われたら、2度もなまえを失うことになる。」
私の正体が何なのかー、誰よりも真剣に考えてくれていたらしいハンジなら、帰るための協力もしてくれると勝手に思っていた。
だから、反対されてひどくショックを受けた。
「そんな…っ、そんなこと言ったってっ!それが事実なら仕方ないでしょうっ!?
リヴァイもこの世界のなまえも可哀想だけど、でも…っ!私だって可哀想でしょうっ!?
元の世界に家族がいるの!友達だっている!そりゃ、恋人はいないけど!!」
「リヴァイを助けられなかったら君の任務は失敗だよ。
それで本当に元の世界に戻れると思う?」
「…わかんないけど、試してみてもいいと思う。」
「じゃあ、試してみたと仮定しよう。成功すれば、君は元の世界に帰れるだろうね。
それでリヴァイはたぶん、もう二度と立ち直れない。まぁ、それは君には関係ないけどね。
で、君にとって問題なのは、失敗した場合だ。君はどうなると思う?」
「それは…。」
「教えてあげようか?君は元の世界には戻れないどころか、
リヴァイという強い味方も失う。君が本物のなまえじゃないと分かれば、
リヴァイが君を守る必要はなくなるからね。」
「…っ。」
「そしたら、誰もいないこの世界で君は本当にひとりぼっちだ。
巨人のいるこの世界で、君はどうやって生きていくつもり?」
ハンジが出した仮定は、最悪の場合だ。
だから、モブリットが、脅し過ぎだと注意していた。
でも、その最悪の場合が、訪れないとも言い切れない。
もし本当に、私が元の世界に戻れなくて、でも、正体だけはリヴァイ達に知られてしまったらどうなるのか。
考えるのも恐ろしいー。
だって、今の私は、この世界のなまえが積み重ねてきた日々に守られているのだ。
それがなくなってしまったらー。
「私は、どうしたらいいの…?
家に帰りたい…。帰りたいだけなのに…。」
足元もおぼつかないままで、ソファに落ちるように腰を落とした。
そして、頭を抱える。
この世界のなまえがリヴァイを心から愛していたのは、分かった。
あの切ない声が、私にそれを教えてくれている。
そして、リヴァイがこの世界のなまえを心から愛していることも、私を見つめる彼の瞳が教えてくれた。
彼らの悲劇の結末には本当に胸が引き裂かれそうになる。
でも、私がどうやってリヴァイを助ければいいというのだ。
それに、死んだということをちゃんと伝えてくれと言ったのはなまえの方だ。
だから、それをそのまま伝えたらいけないのか。
あぁ、もうどうしたらー。
「ねぇ、なまえ。お互いに協力し合わないか?」
ハンジが私の隣に座った。
ゆっくりと顔を上げれば、とても真剣な目と視線が重なる。
「…協力?」
「リヴァイはこの世界で最も重要な兵士だ。彼が潰れてしまったら人類の為にならない。
だから、君にはこのままなまえのフリをしていてほしい。
そうすれば、とりあえず、リヴァイの件はクリアする。」
「しないよっ!私は偽物なのに、リヴァイを傷つけるだけでしょう!?
それに、そんなこといつまでも続けていられないっ!
私には帰る場所があるのっ!」
「分かってる。だから、記憶を失って天使になって帰ってきたとでも言えばいいよ。
またいつか離れることになるって最初から伝えておけばいいだろう?」
「それこそっ!それこそ、リヴァイを傷つけるよっ。
また離れ離れになるなら、傷が浅いうちにー。」
「もう傷は深くえぐれてるんだ。そして、あと少しで心臓に達するところで君が現れた。
あとは、リヴァイが現実を受け入れるための時間が欲しい。
それを、君に作ってほしいんだ。」
「時間があれば、リヴァイは恋人が死んだことを受け入れられるの…?」
「今までもたくさんの大切な人達を失ってきた。
リヴァイも頭では本当は分かってるはずなんだ。だからきっと、大丈夫。」
「…今の話じゃ、私ばかり協力してるよ。ハンジは何をしてくれるの?」
「あぁ、そうだね。私はなまえが元の世界に帰れる方法を探るよ。
こう見えて、私は調べることに関しては天才だと自負してるんだっ。」
ハンジが自信満々に胸を叩いた。
あの声を思い出した今、私は、パラレルワールド説を信じ切っている。
そして、そんなあり得ない答えを引っ張り出してくれたのはハンジだ。
ハンジなら本当に、私が元の世界に帰れる方法を見つけてくれるかもしれない。
一か八か、なまえからの伝言をリヴァイに伝えて終わりにする、なんていう博打よりもずっと確実な方法をー。
「…分かった。」
「よしっ!」
「でもっ、いつまでも帰る方法が見つからなかったり、
リヴァイにバレて私の立場が危うくなったら、ちゃんとハンジが私を助けてよ?」
「もちろんだよっ!その代わり、君もリヴァイに信じてもらえるように努力してくれよ?」
「…努力する。」
「よしっ!今度こそ、交渉成立だっ!!」
ハンジに握手を求められて、私はおずおずとその手を握った。
その向こうで、モブリットは青い顔をしていた。
これが本当に正しい選択だったのかは、分からない。
もしかすると、酷く後悔することになってしまうのかもしれないー。
そんな不安を感じながら、私は、嬉しそうに繋がる手を振るハンジの笑顔を見ていた。
ハンジは納得したように頷いていたけれど、モブリットは絶句して声も出ないようだった。
そして、私は、あまりにも勝手な理由でこのわけのわからない世界に飛ばされたことに絶望していた。
「リヴァイ兵長が心配だったんだろうな。なまえらしいよ…。
助けられるのは自分しかいないのに、自分はもう生きてないからだからー。」
「知らないよっ、そんなのっ!だからって、どうして関係ない私が…っ!
とにかく、早くリヴァイにそれを伝えようっ!もう本物のなまえは死んでるんだって!
ね?そしたら、私はもう帰れるでしょう!?」
私はハンジの両腕を掴んで必死に叫んだ。
この世界で暮らしていた私は、自分の代わりにリヴァイに伝言を伝えて欲しかったようだった。
そのために、私をこの世界に飛ばしたのなら、それをリヴァイに伝えれば、きっと帰れる。
もうこんなところにはいたくない。
リコさえ、私の知っているリコじゃないということだ。
ここには私の知り合いはひとりもいない。
ひとりぼっちだ。
それなのに、巨人がいる。人攫いがいる。
こんな怖いところ、あと1秒だって本当はいたくないー!
それなのにー。
「それじゃダメだよ。なまえは君にリヴァイを助けてくれって頼んだんだろう?
リヴァイは今、なまえが生きてたってことでなんとか自分を保ってるんだ。
そこで、本物のなまえは死んでるなんて言われたら、2度もなまえを失うことになる。」
私の正体が何なのかー、誰よりも真剣に考えてくれていたらしいハンジなら、帰るための協力もしてくれると勝手に思っていた。
だから、反対されてひどくショックを受けた。
「そんな…っ、そんなこと言ったってっ!それが事実なら仕方ないでしょうっ!?
リヴァイもこの世界のなまえも可哀想だけど、でも…っ!私だって可哀想でしょうっ!?
元の世界に家族がいるの!友達だっている!そりゃ、恋人はいないけど!!」
「リヴァイを助けられなかったら君の任務は失敗だよ。
それで本当に元の世界に戻れると思う?」
「…わかんないけど、試してみてもいいと思う。」
「じゃあ、試してみたと仮定しよう。成功すれば、君は元の世界に帰れるだろうね。
それでリヴァイはたぶん、もう二度と立ち直れない。まぁ、それは君には関係ないけどね。
で、君にとって問題なのは、失敗した場合だ。君はどうなると思う?」
「それは…。」
「教えてあげようか?君は元の世界には戻れないどころか、
リヴァイという強い味方も失う。君が本物のなまえじゃないと分かれば、
リヴァイが君を守る必要はなくなるからね。」
「…っ。」
「そしたら、誰もいないこの世界で君は本当にひとりぼっちだ。
巨人のいるこの世界で、君はどうやって生きていくつもり?」
ハンジが出した仮定は、最悪の場合だ。
だから、モブリットが、脅し過ぎだと注意していた。
でも、その最悪の場合が、訪れないとも言い切れない。
もし本当に、私が元の世界に戻れなくて、でも、正体だけはリヴァイ達に知られてしまったらどうなるのか。
考えるのも恐ろしいー。
だって、今の私は、この世界のなまえが積み重ねてきた日々に守られているのだ。
それがなくなってしまったらー。
「私は、どうしたらいいの…?
家に帰りたい…。帰りたいだけなのに…。」
足元もおぼつかないままで、ソファに落ちるように腰を落とした。
そして、頭を抱える。
この世界のなまえがリヴァイを心から愛していたのは、分かった。
あの切ない声が、私にそれを教えてくれている。
そして、リヴァイがこの世界のなまえを心から愛していることも、私を見つめる彼の瞳が教えてくれた。
彼らの悲劇の結末には本当に胸が引き裂かれそうになる。
でも、私がどうやってリヴァイを助ければいいというのだ。
それに、死んだということをちゃんと伝えてくれと言ったのはなまえの方だ。
だから、それをそのまま伝えたらいけないのか。
あぁ、もうどうしたらー。
「ねぇ、なまえ。お互いに協力し合わないか?」
ハンジが私の隣に座った。
ゆっくりと顔を上げれば、とても真剣な目と視線が重なる。
「…協力?」
「リヴァイはこの世界で最も重要な兵士だ。彼が潰れてしまったら人類の為にならない。
だから、君にはこのままなまえのフリをしていてほしい。
そうすれば、とりあえず、リヴァイの件はクリアする。」
「しないよっ!私は偽物なのに、リヴァイを傷つけるだけでしょう!?
それに、そんなこといつまでも続けていられないっ!
私には帰る場所があるのっ!」
「分かってる。だから、記憶を失って天使になって帰ってきたとでも言えばいいよ。
またいつか離れることになるって最初から伝えておけばいいだろう?」
「それこそっ!それこそ、リヴァイを傷つけるよっ。
また離れ離れになるなら、傷が浅いうちにー。」
「もう傷は深くえぐれてるんだ。そして、あと少しで心臓に達するところで君が現れた。
あとは、リヴァイが現実を受け入れるための時間が欲しい。
それを、君に作ってほしいんだ。」
「時間があれば、リヴァイは恋人が死んだことを受け入れられるの…?」
「今までもたくさんの大切な人達を失ってきた。
リヴァイも頭では本当は分かってるはずなんだ。だからきっと、大丈夫。」
「…今の話じゃ、私ばかり協力してるよ。ハンジは何をしてくれるの?」
「あぁ、そうだね。私はなまえが元の世界に帰れる方法を探るよ。
こう見えて、私は調べることに関しては天才だと自負してるんだっ。」
ハンジが自信満々に胸を叩いた。
あの声を思い出した今、私は、パラレルワールド説を信じ切っている。
そして、そんなあり得ない答えを引っ張り出してくれたのはハンジだ。
ハンジなら本当に、私が元の世界に帰れる方法を見つけてくれるかもしれない。
一か八か、なまえからの伝言をリヴァイに伝えて終わりにする、なんていう博打よりもずっと確実な方法をー。
「…分かった。」
「よしっ!」
「でもっ、いつまでも帰る方法が見つからなかったり、
リヴァイにバレて私の立場が危うくなったら、ちゃんとハンジが私を助けてよ?」
「もちろんだよっ!その代わり、君もリヴァイに信じてもらえるように努力してくれよ?」
「…努力する。」
「よしっ!今度こそ、交渉成立だっ!!」
ハンジに握手を求められて、私はおずおずとその手を握った。
その向こうで、モブリットは青い顔をしていた。
これが本当に正しい選択だったのかは、分からない。
もしかすると、酷く後悔することになってしまうのかもしれないー。
そんな不安を感じながら、私は、嬉しそうに繋がる手を振るハンジの笑顔を見ていた。