◇10話◇逃がさない
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空が真っ赤に染まりだした頃、リヴァイは漸く旧調査兵団本部に戻ってきた。
長距離索敵陣形や連帯強化の訓練、エレンの巨人化についての確認等することは幾らでもある。
他に気になることがあろうとも、そんなことしてる場合じゃないと心が叫んでも、兵士長という肩書が消えるわけではない。
部下の命を預かっているという立場が、なくなるわけじゃない。
兵士という仕事が、こんなにも心を擦り減らすものだと思い知るのは、ファーランとイザベルが死んだあの日以来だ。
あれからすぐになまえに出逢って、少しずつ、自分の未来というものを信じられるようになっていたのにー。
早くなまえに会いたくて、生きていることを確かめたくて、自室へと向かうリヴァイの足は無意識に速くなる。
「何やってんだ。」
自室の前にニファが立っているのに気づいて、リヴァイは訝し気に訊ねる。
慌てて敬礼をした彼女は、なまえが部屋から出ないように見張っていたと答えた。
確かに、今のなまえは記憶喪失で、自分達のことを恐怖の対象として見ている。
だから、見張っていないと部屋から逃げてしまうかもしれないとは思っていた。
でも、明らかにそんな態度を見せれば怖がらせるだけだと思って、よく読んでいた本まで渡して、何も言わずに部屋に鍵をかけたのだ。
だから、逃げるわけなんか、ないー。
それなのに、ひどく嫌な予感がしたー。
見張りをしていたのがハンジの班員だったから、余計に不安を煽られる。
「何も余計なことはしてねぇだろうな。」
「…えっと…っ。ハンジ分隊長が…、巨人を見せてしまって…。
そしたら、気絶しー。」
最後まで聞く気も失せた。
最悪だー!絶対に、あれだけは見せたくなかったのにー!
リヴァイは焦ったように扉に鍵をさす。
すぐに鍵があき、勢いよく扉を開く。
その瞬間、冷たい風が吹いてリヴァイとニファの髪を靡かせた。
執務室の開いた窓で、白いカーテンが、あの日のなまえが着ていた白いワンピースのようにユラユラと揺れている。
外の声が聞こえないようにと思って、窓は閉めていたはずだ。
それがどうして、開いているー。
「なまえ!!」
大声で名前を叫んだ。
今の彼女が、今までのようにそれに笑顔で返事をしてくれるとは思っていない。
それでも、姿は現してほしいと願った。
でも、執務室の中にも、寝室にも、なまえの姿はどこにもなかった。
漸く帰ってきてくれた大切な人の姿が、またリヴァイの前から消えたー。
「ニファッ!!調査兵全員に命令だ!!
今すぐなまえの捜索に取り掛かれ!!なにがなんでもなまえを見つけろ!!」
「は…っ、はいッ!!」
ニファが焦った様子で部屋から飛び出していく。
ハンジなら強硬手段に出る可能性があることも分からなかったわけじゃない。
目を離した自分の責任だー。
リヴァイは、髪を痛いくらいに握りしめ、唇を噛む。
なまえが死んだなんて、そんなこの世で最も最低な嘘で苦しむのはもう二度と御免だ。
死んだ方がマシだと思う地獄に放り込まれるくらいなら、自分に怯えるなまえに傷つけられた方がいい。
その方が、ずっと、ずっと幸せだと言える。
なまえが生きているなら、それだけでいいー。
だから、お願いだ。
もう二度と、消えないでー。
ひとりに、しないでー。
長距離索敵陣形や連帯強化の訓練、エレンの巨人化についての確認等することは幾らでもある。
他に気になることがあろうとも、そんなことしてる場合じゃないと心が叫んでも、兵士長という肩書が消えるわけではない。
部下の命を預かっているという立場が、なくなるわけじゃない。
兵士という仕事が、こんなにも心を擦り減らすものだと思い知るのは、ファーランとイザベルが死んだあの日以来だ。
あれからすぐになまえに出逢って、少しずつ、自分の未来というものを信じられるようになっていたのにー。
早くなまえに会いたくて、生きていることを確かめたくて、自室へと向かうリヴァイの足は無意識に速くなる。
「何やってんだ。」
自室の前にニファが立っているのに気づいて、リヴァイは訝し気に訊ねる。
慌てて敬礼をした彼女は、なまえが部屋から出ないように見張っていたと答えた。
確かに、今のなまえは記憶喪失で、自分達のことを恐怖の対象として見ている。
だから、見張っていないと部屋から逃げてしまうかもしれないとは思っていた。
でも、明らかにそんな態度を見せれば怖がらせるだけだと思って、よく読んでいた本まで渡して、何も言わずに部屋に鍵をかけたのだ。
だから、逃げるわけなんか、ないー。
それなのに、ひどく嫌な予感がしたー。
見張りをしていたのがハンジの班員だったから、余計に不安を煽られる。
「何も余計なことはしてねぇだろうな。」
「…えっと…っ。ハンジ分隊長が…、巨人を見せてしまって…。
そしたら、気絶しー。」
最後まで聞く気も失せた。
最悪だー!絶対に、あれだけは見せたくなかったのにー!
リヴァイは焦ったように扉に鍵をさす。
すぐに鍵があき、勢いよく扉を開く。
その瞬間、冷たい風が吹いてリヴァイとニファの髪を靡かせた。
執務室の開いた窓で、白いカーテンが、あの日のなまえが着ていた白いワンピースのようにユラユラと揺れている。
外の声が聞こえないようにと思って、窓は閉めていたはずだ。
それがどうして、開いているー。
「なまえ!!」
大声で名前を叫んだ。
今の彼女が、今までのようにそれに笑顔で返事をしてくれるとは思っていない。
それでも、姿は現してほしいと願った。
でも、執務室の中にも、寝室にも、なまえの姿はどこにもなかった。
漸く帰ってきてくれた大切な人の姿が、またリヴァイの前から消えたー。
「ニファッ!!調査兵全員に命令だ!!
今すぐなまえの捜索に取り掛かれ!!なにがなんでもなまえを見つけろ!!」
「は…っ、はいッ!!」
ニファが焦った様子で部屋から飛び出していく。
ハンジなら強硬手段に出る可能性があることも分からなかったわけじゃない。
目を離した自分の責任だー。
リヴァイは、髪を痛いくらいに握りしめ、唇を噛む。
なまえが死んだなんて、そんなこの世で最も最低な嘘で苦しむのはもう二度と御免だ。
死んだ方がマシだと思う地獄に放り込まれるくらいなら、自分に怯えるなまえに傷つけられた方がいい。
その方が、ずっと、ずっと幸せだと言える。
なまえが生きているなら、それだけでいいー。
だから、お願いだ。
もう二度と、消えないでー。
ひとりに、しないでー。