◇96話◇賭けの行方
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今、彼女は何を言ったかー。
目を見開き動けなくなったリヴァイの返事を、なまえはただじっと待っているようだった。
しばらく、見つめ合ったままで沈黙が続いた。
漸く、リヴァイは口を開くことが出来たけれど、喉はカラカラに渇いていた。
結局、掠れ声しか出て来なかった。
「…気づいてたのか。」
「気づくよ。ずっと会いたいと思っていた人だもん。」
なまえは困ったように眉尻を下げる。
信じられないと心が震えていた。
でも、嬉しくてー。
分かってくれたことが嬉しくてー。
思わずなまえに手が伸びる。
本当はずっと触れたかったから、抱きしめたかったからー。
でも、愛おしい人に届く前に、なまえがリヴァイの左腕に触れて動きが止まる。
「…ごめん、嘘。」
「…え?」
「この腕のおかげで、分かっただけなの。」
なまえはそう言って、リヴァイの左の前腕あたりを悲しそうにひと撫でした後に続ける。
「彼ね、ここにナイフで刺された傷があるの。」
「…!」
「頭のおかしい人に襲われてる私を助けてくれたときに、ナイフで刺されたの。
それから、傷を隠すみたいに袖の短い服は着なくなった。
たぶん、私が気にすると思って、気を遣ってるんだと思う。」
「…そうか。」
リヴァイは傷のない自分の左腕を見下ろす。
今朝、自分を見たときのなまえの反応も、ファーランの含みのある笑みも、すべてが繋がったー。
この世界のリヴァイは、最初からなまえにメッセージを残していた。
賭けなんて、最初からする気なんて、なかったということじゃないかー。
「どうして、分かってて気づいてねぇフリをした?」
「彼のフリしてるから…、気づいてるってバレたら
帰っちゃうかと思って。」
なまえが目を伏せる。
あぁ、そういうことか、と納得する。
何と答えるべきか考えていれば、なまえが顔を上げて下手くそな笑顔を作って見せた。
「久しぶりのデートは楽しかった?」
「あぁ、なまえの運転してる姿も見られたし、会社にも行けて
仕事してるなまえも見られて、ファーラン達に、も…。」
そこまで言ってやっと、デートをしてやっているつもりだった自分の1日が、いつかこの世界に来たら見てみたいと言っていたことだったと思い出した。
あぁ、一緒に海に行きたいと言ったのも自分だ。
「俺のために、外に連れ出したのか。」
「ハンジかそこらへんが何かしたんだろうなって思ったけど、
奇跡みたいにリヴァイに会えたなら、私はもう大丈夫だって見せたかったの。
ちゃんと、幸せだよって。ずっと、心配してくれてる気がしてたから。」
「…あぁ、心配してた。なまえを泣かせたままだったから…。
笑っててくれて、安心した。」
「そっか。よかった。」
なまえはホッと安心したように息を吐いて、僅かに目を伏せた。
口元は笑みを作っていて、悲しいわけではないのが伝わってくる。
さっきまで2人で見ていた再放送のドラマの最終回のように、今日はなまえにとって、納得してお別れをする最終回だったのだろう。
『仕方ないよね。…住む世界が、違うんだから。』
なまえが、まるで自分に言い聞かせるように言った言葉は、リヴァイの心に突き刺さる。
初めからフェアではなかった賭けは、初めから勝負にはなっていなかった。
だって、彼女はもうこの世界で生きていく未来を受け入れているのだからー。
「笑って、お別れをしよう。」
リヴァイが、なまえの髪をクシャリと撫でる。
柔らかい髪はあの頃のままで、名残惜しく手を放す。
顔を上げたなまえはもう、下手くそな笑顔はしていなかった。
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→◇最終回◇貴方と私の最終回~おやすみのキス~
平和な世界のリヴァイに運命の恋をした夢見る貴女はコチラへ
→◇最終回◇貴方と私の最終回~おはようのキス~
目を見開き動けなくなったリヴァイの返事を、なまえはただじっと待っているようだった。
しばらく、見つめ合ったままで沈黙が続いた。
漸く、リヴァイは口を開くことが出来たけれど、喉はカラカラに渇いていた。
結局、掠れ声しか出て来なかった。
「…気づいてたのか。」
「気づくよ。ずっと会いたいと思っていた人だもん。」
なまえは困ったように眉尻を下げる。
信じられないと心が震えていた。
でも、嬉しくてー。
分かってくれたことが嬉しくてー。
思わずなまえに手が伸びる。
本当はずっと触れたかったから、抱きしめたかったからー。
でも、愛おしい人に届く前に、なまえがリヴァイの左腕に触れて動きが止まる。
「…ごめん、嘘。」
「…え?」
「この腕のおかげで、分かっただけなの。」
なまえはそう言って、リヴァイの左の前腕あたりを悲しそうにひと撫でした後に続ける。
「彼ね、ここにナイフで刺された傷があるの。」
「…!」
「頭のおかしい人に襲われてる私を助けてくれたときに、ナイフで刺されたの。
それから、傷を隠すみたいに袖の短い服は着なくなった。
たぶん、私が気にすると思って、気を遣ってるんだと思う。」
「…そうか。」
リヴァイは傷のない自分の左腕を見下ろす。
今朝、自分を見たときのなまえの反応も、ファーランの含みのある笑みも、すべてが繋がったー。
この世界のリヴァイは、最初からなまえにメッセージを残していた。
賭けなんて、最初からする気なんて、なかったということじゃないかー。
「どうして、分かってて気づいてねぇフリをした?」
「彼のフリしてるから…、気づいてるってバレたら
帰っちゃうかと思って。」
なまえが目を伏せる。
あぁ、そういうことか、と納得する。
何と答えるべきか考えていれば、なまえが顔を上げて下手くそな笑顔を作って見せた。
「久しぶりのデートは楽しかった?」
「あぁ、なまえの運転してる姿も見られたし、会社にも行けて
仕事してるなまえも見られて、ファーラン達に、も…。」
そこまで言ってやっと、デートをしてやっているつもりだった自分の1日が、いつかこの世界に来たら見てみたいと言っていたことだったと思い出した。
あぁ、一緒に海に行きたいと言ったのも自分だ。
「俺のために、外に連れ出したのか。」
「ハンジかそこらへんが何かしたんだろうなって思ったけど、
奇跡みたいにリヴァイに会えたなら、私はもう大丈夫だって見せたかったの。
ちゃんと、幸せだよって。ずっと、心配してくれてる気がしてたから。」
「…あぁ、心配してた。なまえを泣かせたままだったから…。
笑っててくれて、安心した。」
「そっか。よかった。」
なまえはホッと安心したように息を吐いて、僅かに目を伏せた。
口元は笑みを作っていて、悲しいわけではないのが伝わってくる。
さっきまで2人で見ていた再放送のドラマの最終回のように、今日はなまえにとって、納得してお別れをする最終回だったのだろう。
『仕方ないよね。…住む世界が、違うんだから。』
なまえが、まるで自分に言い聞かせるように言った言葉は、リヴァイの心に突き刺さる。
初めからフェアではなかった賭けは、初めから勝負にはなっていなかった。
だって、彼女はもうこの世界で生きていく未来を受け入れているのだからー。
「笑って、お別れをしよう。」
リヴァイが、なまえの髪をクシャリと撫でる。
柔らかい髪はあの頃のままで、名残惜しく手を放す。
顔を上げたなまえはもう、下手くそな笑顔はしていなかった。
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