◇92話◇彼女のためなら耐えられる痛みとそうじゃない痛み
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「なまえ!!」
待合室の長椅子に座って、処置室に入った彼とファーランを待っていると、リコがイアンとミタビを引き連れて、ひどく狼狽した表情で走ってやって来た。
そういえば、ファーランが、リコにも連絡しておくと言っていた気がする。
「怪我は!?大丈夫か!?何があった!?」
私の両腕を掴んだリコは、ひどく焦った様子で矢継ぎ早に訊ねる。
イアンとミタビは、私の姿を見て、安心したように息を吐いていた。
「明日、結婚式なのに…、ごめん。」
「なまえが謝ることか!何も悪くないだろ!!
それより、怪我はしてないのか!?もう大丈夫なのか!?」
「私は大丈夫…、でも、リヴァイが左腕を切られちゃってー。」
リコに答えている途中で、処置室の扉が開いた。
ファーランに続いて、彼が出てきた。
左の袖部分をナイフで切られてしまったジャケットは、脱いで片手に持っていた。
でも、着たままのシャツも切れてしまっていたから、彼がその部分に右手を添えていても、腕に巻かれた痛々しい包帯が見えた。
「リヴァイ…っ!」
私は彼に駆け寄った。
名前を呼ばれた彼が、私の方を向く。
さっき、通りがかった看護師に傷の具合について聞いたのだ。
深く切れていて、あと少しで神経を傷つけるところだったとかー。
そんな恐ろしいことになっていたなんて、知らなくてー。
泣きそうな顔をした私に、答えてくれたのは、彼ではなくて、ファーランだった。
「心配すんなって。これくらい、探偵時代にもよくあったしよ。
俺達、慣れてるから。な?」
「あぁ、たいしたことねぇ。」
ニッと笑ったファーランに肩を叩かれて、彼も気にする様子もなく平然と答える。
本当に、大したことがないと思っているようだった。
でもー。
「たいしたことあるよ…!
もっと傷が深かったら、腕が動かなくなってたかもしれないんだよ?!
そんなことになったら…っ!私のために、怪我なんて…っ、しないでよ…っ!」
私は自分のスカートを握りしめて、彼を責めた。
殺されそうになっていた私を助けてくれた人なのにー。
彼は何も、悪くないのにー。
「悪かった。」
「どうして…っ。」
どうして、彼が謝るのか。
助けてやったんだから感謝しろとか、言ったっていいくらいなのにー。
それか、お前のせいで針で縫う大怪我をしてしまったと責められたっていい。
それなのにー。
「ファーランから、変な男がなまえの周りを嗅ぎまわってると聞いてたのに、
勝手に怒って、お前を1人で帰しちまった、おれのせいだ。
追いかけるのがもう少し遅かったら、お前はこれくらいじゃ済まなかったはずだ。」
本当に悪かったー。
そう続けた彼は、心底申し訳なさそうにしていた。
どうしてー。
彼は何も悪くないー。
「馬鹿じゃないの…っ、あなたは何も悪くないでしょ…っ。
悪いのは、私なのに…っ。」
マスコミがいなくなったことにホッとして、油断していた。
危ないから夜は通ったらダメだと言われていたのに、人通りのある大通りではなくて、公園を通ってしまったから、変な男につけられてしまった。
悪いのはー。
「なまえは何も悪くねぇだろ?
悪ぃのは、ナイフ振り回したクソ野郎だ。」
ファーランが、私の頭に手をポンと置いた。
少しだけ顔を上げると、「な?」と優しく微笑まれた。
「さぁ、帰ろうか。車で来てるから、家まで送る。」
リコが私の手を握った。
ファーランの笑みには頷けなかった私は、リコの手を握りしめて小さく頷いた。
でもー。
「いや、いいよ。俺達が連れて帰るから。」
ファーランが、ポケットから自分の車のキーを取り出して見せた。
どうしてとリコが訊ねる前に、リヴァイが答える。
「犯人がまだ捕まってねぇ。なまえを家に帰すのは危険だ。
結婚式前のお前らの家はさすがに連れて帰れねぇだろ。」
「あぁ…、そうだな。ミタビも彼女と同棲してるし…。」
「だから、ま。リヴァイの余った部屋に逆戻りってことで。」
ファーランが、車のキーを上に投げてから捕まえて、ニッと笑った。
もうこれ以上、彼に迷惑をかけられないという私の声は、彼らには聞こえなかったらしい。
満場一致で、私はファーランの車に押し込まれた。
待合室の長椅子に座って、処置室に入った彼とファーランを待っていると、リコがイアンとミタビを引き連れて、ひどく狼狽した表情で走ってやって来た。
そういえば、ファーランが、リコにも連絡しておくと言っていた気がする。
「怪我は!?大丈夫か!?何があった!?」
私の両腕を掴んだリコは、ひどく焦った様子で矢継ぎ早に訊ねる。
イアンとミタビは、私の姿を見て、安心したように息を吐いていた。
「明日、結婚式なのに…、ごめん。」
「なまえが謝ることか!何も悪くないだろ!!
それより、怪我はしてないのか!?もう大丈夫なのか!?」
「私は大丈夫…、でも、リヴァイが左腕を切られちゃってー。」
リコに答えている途中で、処置室の扉が開いた。
ファーランに続いて、彼が出てきた。
左の袖部分をナイフで切られてしまったジャケットは、脱いで片手に持っていた。
でも、着たままのシャツも切れてしまっていたから、彼がその部分に右手を添えていても、腕に巻かれた痛々しい包帯が見えた。
「リヴァイ…っ!」
私は彼に駆け寄った。
名前を呼ばれた彼が、私の方を向く。
さっき、通りがかった看護師に傷の具合について聞いたのだ。
深く切れていて、あと少しで神経を傷つけるところだったとかー。
そんな恐ろしいことになっていたなんて、知らなくてー。
泣きそうな顔をした私に、答えてくれたのは、彼ではなくて、ファーランだった。
「心配すんなって。これくらい、探偵時代にもよくあったしよ。
俺達、慣れてるから。な?」
「あぁ、たいしたことねぇ。」
ニッと笑ったファーランに肩を叩かれて、彼も気にする様子もなく平然と答える。
本当に、大したことがないと思っているようだった。
でもー。
「たいしたことあるよ…!
もっと傷が深かったら、腕が動かなくなってたかもしれないんだよ?!
そんなことになったら…っ!私のために、怪我なんて…っ、しないでよ…っ!」
私は自分のスカートを握りしめて、彼を責めた。
殺されそうになっていた私を助けてくれた人なのにー。
彼は何も、悪くないのにー。
「悪かった。」
「どうして…っ。」
どうして、彼が謝るのか。
助けてやったんだから感謝しろとか、言ったっていいくらいなのにー。
それか、お前のせいで針で縫う大怪我をしてしまったと責められたっていい。
それなのにー。
「ファーランから、変な男がなまえの周りを嗅ぎまわってると聞いてたのに、
勝手に怒って、お前を1人で帰しちまった、おれのせいだ。
追いかけるのがもう少し遅かったら、お前はこれくらいじゃ済まなかったはずだ。」
本当に悪かったー。
そう続けた彼は、心底申し訳なさそうにしていた。
どうしてー。
彼は何も悪くないー。
「馬鹿じゃないの…っ、あなたは何も悪くないでしょ…っ。
悪いのは、私なのに…っ。」
マスコミがいなくなったことにホッとして、油断していた。
危ないから夜は通ったらダメだと言われていたのに、人通りのある大通りではなくて、公園を通ってしまったから、変な男につけられてしまった。
悪いのはー。
「なまえは何も悪くねぇだろ?
悪ぃのは、ナイフ振り回したクソ野郎だ。」
ファーランが、私の頭に手をポンと置いた。
少しだけ顔を上げると、「な?」と優しく微笑まれた。
「さぁ、帰ろうか。車で来てるから、家まで送る。」
リコが私の手を握った。
ファーランの笑みには頷けなかった私は、リコの手を握りしめて小さく頷いた。
でもー。
「いや、いいよ。俺達が連れて帰るから。」
ファーランが、ポケットから自分の車のキーを取り出して見せた。
どうしてとリコが訊ねる前に、リヴァイが答える。
「犯人がまだ捕まってねぇ。なまえを家に帰すのは危険だ。
結婚式前のお前らの家はさすがに連れて帰れねぇだろ。」
「あぁ…、そうだな。ミタビも彼女と同棲してるし…。」
「だから、ま。リヴァイの余った部屋に逆戻りってことで。」
ファーランが、車のキーを上に投げてから捕まえて、ニッと笑った。
もうこれ以上、彼に迷惑をかけられないという私の声は、彼らには聞こえなかったらしい。
満場一致で、私はファーランの車に押し込まれた。